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そこに彼を置いたあと、何回となく「訴えたい」視線を彼はわたしにおくってきた。
だから私も、何回か彼を見つめた。
なのに・・・・
やっぱり、置いてきぼりにしてしまった。
私の彼、黒いスーツケースを。
昨日まで2泊3日で、NPO法人まほろば教育事業団の中高生セミナーが、福岡太宰府天満宮にある施設で開催され私は、食事係で参加した。
一日目の夜中に部屋に帰ったとき、近所に住む叔母の訃報を知った。
翌夕が通夜とのこと。
二日目、昼食の支度を終えた後、家に帰り通夜に出席、三日目の朝食の支度をはじめる朝五時に到着するよう逆算して夜中の一時に家を出て朝四時太宰府に到着。
昼食の支度を終えると閉会式を待たずに、葬儀参列のため出発。
大勢のスタッフの皆さんに盛大に?見送られ、帰宅の途についたのに・・・・・・
気がついたのは、滞りなく葬儀も終わり、家に帰ってからのことだった。
”彼”がいない!!!
中を誰かに見られることなど全く想定外で、何でもかんでもどたばたと押し込んだ私の彼がいない!!!
とたんに、あの視線を思い出した。
見つめられている感じからうまれるあの感覚は、実は長い人生のうち幾度も幾度も体験してきた苦い感覚、苦い予感とでもいおうか、そしてそれは未だはずれたことがない、常に大当たりのものなのだ。
恥ずかしさのあまり、流れ続ける汗をこすりこすり、担当者にTEL.
「学生スタッフの忘れ物かと思いましたよ。急いでお送りします」
「申し訳ありません。お手数おかけいたしますが、着払いでお願いいたします。」
「中はごらんになりました?」ききたかったけれど、ああ、きけなかった・・・
家人はみんなくすくす笑っていた・・・・・ああああ・・・・・
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