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それでは本題に入ります。最初はマンションだまし売りの問題です。法律用語で不利益事実不告知と言います。不利益な事実を告知しないでマンションを販売する問題です。
私は2003年に東急不動産から江東区東陽の新築分譲マンション301号室を購入しましたが、それは不利益事実を隠した、だまし売りでした。マンション引き渡し後に隣が建て替えられて日照・通風・眺望がなくなるという不利益事実を隠して販売されたものでした。 そのマンションの隣の土地はマンション建設後に工務店の作業所兼住居に建て替えられるという計画がありました。建て替えによって、301号室は日照・通風・眺望がなくなります。また、工務店であるために騒音も発生します。 隣の土地といっても道路を挟んでのものではなく、同じ敷地内にあります。1メートルもあるかないかという手を伸ばしたら届く距離に壁ができることになります。 東急不動産は、隣の土地の所有者から建て替えの話を聞き、購入検討者に説明すると約束していました。ところが、購入検討者に説明せず、だまし売りしました。 私が真相を知ったのは引渡し後です。消費者契約法第4条第2項に基づき、売買契約を取り消しました。消費者契約法は消費者の権利を守るための法律です。消費者契約法第4条第2項は不利益事実不告知を定めています。業者が商品の不利益事実を説明せずに販売した場合に、契約を取り消すことができます。 ところが、東急不動産は取り消しに応じなかったため、売買代金2870万円の返還を求めて、2005年2月に東急不動産を提訴しました。東京地方裁判所は2006年8月30日に判決を出し、東急不動産に売買代金全額の支払いを命じました(東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)。 東京高等裁判所で3000万円の支払いを骨子とする一審判決に沿った内容で訴訟上の和解が成立しました。訴訟上の和解は2006年12月に成立し、控訴審では1度も口頭弁論が開かれませんでした。東京地裁判決は消費者契約法により不動産売買契約が取り消された先例として、『不動産取引判例百選』に紹介されています(今西康人「マンション販売における不動産業者の告知義務」安永正昭、鎌田薫、山野目章夫編『不動産取引判例百選第3版』31頁)。 この裁判の経験を書籍『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』にしました。『東急不動産だまし売り裁判』は非公開の弁論準備手続きを含め、裁判のやり取りを生々しく再現したことが特徴です。裁判の公開の原則からすると好ましいことではありませんが、多くの裁判では口頭弁論よりも外からは見えにくい弁論準備手続で方向性が決まるという面があります。好ましいこととは思っていませんが、それが現実になっています。その弁論準備手続のやり取りを描き出した点で大きな意義があると考えます。 |
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