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誤嚥性肺炎に適切な対処をすることは医師の注意義務に当然含まれる。「誤嚥の関与する肺炎を積極的に診断し、適切な抗菌薬治療を選択しないと、不十分な治療になって致死的状態に陥ったり、過剰な治療で耐性菌を増やしたりなど負の効果をもたらすことになる」(「JAID/JSC感染症治療ガイドライン」日本化学療法学会雑誌62巻1号31頁)。
立正佼成会附属佼成病院では誤嚥性肺炎と診断された患者のユナシンの点滴を5日間で中止し、治療効果の低い抗菌薬ファロムの内服へと変更した。この病院の対応に問題はないか。カルテの記載から判断するならば、延命につながる全ての治療を拒否し、点滴による生命維持も好ましく思っていない長男の意向に引きずられたとすることが自然である。
誤嚥性肺炎ではユナシンの利用が一般的である(長瀬隆英「誤嚥性肺炎」山口徹他編『今日の治療指針 私はこう治療している ポケット判2008』医学書院228頁、石田直「誤嚥性肺炎」山口徹他編『今日の治療指針 私はこう治療している2012』医学書院294頁)。
「誤嚥性肺炎と診断された場合、本邦ではSBT/ABPCが最も頻用されている」(「JAID/JSC感染症治療ガイドライン」日本化学療法学会雑誌62巻1号32頁)。これはスルバクタム/アンピシリン (Sulbactam / Ampicillin)である。商品名はユナシンである。
薬の投与期間が不十分であると治療効果は減弱する。投与期間の目安は7から10日である(日本呼吸器学会他『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』日本呼吸器学会、2011年、25頁。日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会『成人院内肺炎診療ガイドライン』日本呼吸器学会、2008年、41頁。永田正喜、青木洋介「抗菌薬療法の実際」日本内科学会雑誌100巻12号3549頁)。
「投与期間は、標準的に定められている日数を基準に、個別の要因を加えて調節する」(井口光孝「抗菌薬開始後の経過観察」レジデントノート2011年7月号829頁)。標準的な日数と異なる日数としたならば病院側に説明責任がある。それが最善の選択であることの立証責任も病院にある。
佼成病院の医師は佼成病院裁判の証人尋問でカルテ記載の死因は誤診で、正しい死因を院内感染と主張しており、過剰な治療を改めたと主張するかもしれない。しかし、その主張に乗るとしても院内感染で死亡したとなるため、適切な治療でなかったことは明らかである。
注射用抗菌薬から経口抗菌薬への切り替え基準には下痢がないことがあげられる(井口光孝「抗菌薬開始後の経過観察」レジデントノート2011年7月号829頁)。しかし、患者は下痢中であった。
注射用抗菌薬から経口抗菌薬への切り替えは外来治療で効果的と説明される。そこでは医療費削減、医療経済の有用性が指摘される(柳原克紀「臨床研究―肺炎における臨床研究の最新の知見は?」日本呼吸器学会誌2巻6号710頁)。佼成病院は過少医療のためにファロムの内服に変更したのではないか。
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