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J.K.ローリング著、松岡祐子訳『ハリー・ポッターと死の秘宝』(Harry Potter and the Deathly Hallows)は世界的ベストセラーとなった人気シリーズの最終巻(第7作)である。第6作までで全世界で計3億部も売り上げ、63言語に翻訳された。著者は、英国で最も収入の多い女性になった。シリーズを原作とした映画もヒットを重ねた。映画『ハリー・ポッターと死の秘宝PART 1』は2018年11月16日に金曜ロードショーで放映された。
ハリポタ人気は学園物の要素が背景にある。読者にとって新鮮な魔法の世界と馴染みのある学園の世界が組み合わさったところに妙味がある。これに対して本書は闇の帝王との戦い一色である。しかも、目の前の敵を倒していくという単純なアクションではない。むしろ逃避行である。そのために重苦しい。物語の完結編だから読むが、児童文学のハリポタファンには挫折した人もいるのではないか。
重苦しさの一つに「穢れた血」の迫害など人種差別批判の要素がある。ナチスの害悪は欧米社会に大きな影響を与えていることが理解できる。これは『STAR WARS』でも感じられることである。映画ではあまり明確ではないが、小説では帝国がエイリアン種族を迫害していた。この点、日本にはナチスに甘い感覚がある(林田力『投資マンション不買運動』「欅坂46のハロウィン衣装がナチス酷似」)。それはグローバルスタンダードに対応できないだろう。
魂を別の場所に保管することで身の安全を確保する防御策は『ドラえもん のび太の魔界大冒険』の魔王を連想する。保護呪文は石ころ帽子のようである。
駄目キャラ的な存在だったロンは大きく成長した。堀井雄二監修、三条陸原作、稲田浩司作画『DRAGON QUEST ダイの大冒険』のポップのようなキャラクターである。
本書のタイトルは出版に先行して出版元のブルームズベリー社がウェブサイトで発表した。時事通信は「ハリー・ポッターと死の聖人」と訳した(「ハリポタ完結編は「死の聖人」」時事通信2006年12月22日)。タイトル発表当時、著者は自身のウェブサイトで、主要キャラクターが完結編で殺害される可能性のあることをほのめかしていた。
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