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横田順弥『火星人類の逆襲』は明治時代を舞台にしたSF小説である。NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺(ばなし)』に登場したバンカラ集団「天狗倶楽部」が火星人類と戦う。
本書はH.G.ウェルズ『宇宙戦争』の勝手な続編である。『宇宙戦争』は火星人類がロンドンを襲撃し、人類を圧倒したが、地球の細菌によって滅ぼされた。本書は、その後の明治44年8月に帝都・東京に襲来する。『宇宙戦争』と同じく火星人類の戦闘機械は高熱光線を発し、帝都を焼き払う。今度の火星人は細菌対策をしていた。
この危機に押川春浪、吉岡信敬らの天狗倶楽部が立ち上がった。『いだてん』で初めて天狗倶楽部を知った人は度肝を抜かれただろう。一般的な明治時代のイメージとは異なるノリの集団であり、脚本家・宮藤官九郎の遊びと思った人もいたかもしれない。しかし、実在した集団である。
『いだてん』の天狗倶楽部にはチャラい感じがあったが、本書は任侠的である。現代の半グレ・ヤンキーとは全く異なる。天狗倶楽部の押川春浪は冒険小説やSF小説を書いており、現代流に言えばライトノベルのようなもので、オタク文化の担い手になる。この点でも現代の半グレ・ヤンキーとは気質が異なる。
21世紀人から見ても天狗倶楽部はエキセントリックである。江戸時代を知っている明治人には理解不能な新人類と映っただろう。夏目漱石が『こころ』で先生を明治の精神に殉じさせたくなる訳である。後の大正デモクラシーやモボ・モガなども、いきなり生まれた訳ではなく、天狗倶楽部のような明治時代の流れがあったからだろう。この流れが近代日本を主導せず、軍国主義・全体主義・精神論根性論で塗りつぶされたところに日本の不幸がある。
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