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根絶遠いシックハウス

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シックハウス症候群の健康被害は減少傾向にあるものの、なくなってはいない。厚生労働省がホルムアルデヒドなど化学物質十三種類について室内濃度の指針値を決めたのは十年前。最近では新物質の問題も出ている。厚労省は来年にも新たな規制方針を打ち出す構えだが、シックハウス根絶は容易ではない。

【東京新聞・特報】 2012年12月24日

奥州市立胆沢第一小学校で2010年2月頃、校舎の老朽化に伴う工事中に、児童たちに発症したシックスクール症候群。2年半以上が経過し、現在も症状に苦しんでいる子どもたちへの理解が薄れている。今年7月の市議会だよりに、子どもたちが回復したかのような報告が掲載され、10月の紙面で回答を修正して掲載する事態となった。保護者らは「現状を知ってもらいたい」と強く訴える。(鈴木希)

 「現在はいずれの児童も快適な学習環境のもと、元気に活動しています」

7月の市議会だよりのコーナー「あれはどうなった」で、「あれから2年 シックスクール対策は」に対する市教委側の回答が掲載された。いまだに症状を抱える子どもの保護者らから異論が上がり、10月の紙面で、「定期的に治療を継続しています」と回答を差し替えて再掲載した。

 シックスクール症候群を発症した子どもたちの苦しみは、2年半以上がたった今も続いている。

同市胆沢区に住む中学1年の女子生徒(13)は当時、同小の4年生だった。父親(44)によると、当初は同症候群と診断されたが、10年8月には化学物質過敏症も加わり、症状が悪化したため転校。その後、転校先の学校の協力を得て対策をとってきた。

中学に進学してからも、制汗剤や野焼きの煙などに接すると、強い頭痛や吐き気などを訴えている。症状が出ると早退し、酸素ボンベを付けるなどしながら、解毒のために病院で点滴をうつ。同級生と別の「避難教室」で授業を受け、体育や美術などは受けることができないという。

市教委学校教育課によると、当時は22人の児童が同症候群を発症。重症化した4人は、今も定期通院している。市教委は10年、発症の原因や対応策を検討する第三者委員会を設置するなどし、保護者と継続的に面会しながら空気清浄機の設置や別室での授業対応、休んだ子どもへの訪問指導などを行っているという。佐藤健司課長は「学習機会を保障するなど、最低限だが連携して対応している。子どもたちの負担がいくらかでも軽減できれば」と話す。

市議会だよりを巡る経緯について、市教委では、対策マニュアルを基に小学校で対策を講じ、快適な学習環境の確保に努力していることを説明しようとしたところ、編集委員会の段階で表現が一部削られ、「説明不足になった」としている。

しかし、子どもたちや保護者らの不満は募る。女子生徒の父親は、第三者委による被害児童や保護者への聞き取りなどは行われておらず、実情が伝わっていないことに憤りを感じている。空気清浄機の設置も、実現するまで何度も要望し、時間を要した。父親は「問題はまだ終わっていない。今も苦しんでいる子どもたちがいることをしっかり認識してほしい」と話している。


2012年11月21日 読売新聞

改装した部屋や新しい家具、芳香剤のにおい――。こうしたものに接すると、目がちかちかしたり、頭痛がしたりする。その場を離れると症状が軽くなるなら「シックハウス症候群」かもしれない。こじらせる前に対処が必要だ。

建材や家具、日用品には様々な有害物質が使われ、一部が蒸発して室内の空気を汚す。先月、埼玉や千葉の浄水場で基準値を超えて問題となったホルムアルデヒドは有害物質の代表格。接着剤や衣類、たばこの煙にも含まれており、気体になると低濃度でも目やのどに強い刺激を与える。

このほか、洗浄剤や塗料に使われるトルエン、油性マーカーや芳香剤に含まれるキシレンなどがあり、頭痛や吐き気、脱力感を引き起こす。こうした症状がシックハウス症候群と呼ばれる。自宅や職場の改装、新しい日用品の購入を契機に発症することが多い。

シックハウス症候群はなぜ起きるのか、詳細はまだ解明されていない。北里大学名誉教授の相澤好治さん(衛生学)によると、中毒やアレルギーとは異なる病気とされ、患者には中年の女性やもともとアレルギーがある人が多い。「診断方法も確立しておらず、症状や環境から推測しているのが現状」と指摘する。診察に時間がかかることもあり、専門の医師が少ないという。

予防策としては、症状を引き起こす物質を避けることが一番だ。可能なら発生源を取り除き、より安全なものに換える。建材や家具が発生源なら暖房などで室温を上げ、原因物質を強制的に放散させる方法もある。これから改築・改装を予定しているなら、工務店や設計者に材料選びの希望を伝えておくことが肝心だ。

ただ、症状に気づいても発生源を特定できないケースも多い。症状が気になれば、こまめな換気や活性炭入りマスクの着用を心がけることも必要だ。運動や入浴も効果的だ。

シックハウス症候群は発生源から離れれば症状が回復するのが特徴だ。ただ、悪化すると、洗剤やヘアワックス、印刷物などのにおいで体調を崩してしまう「化学物質過敏症」になる危険もある。

岩手県内の小学校では2010年、校舎の改修中に集団発生した。19人がシックハウス症候群と診断され、一部の児童は化学物質過敏症に進行した。治療した盛岡病院呼吸器・アレルギー科医師の水城まさみさんは「症状が悪化する前に対処することが必要だった」と話す。

化学物質による頭痛や脱力感の急性症状には、タチオンなどの解毒剤や15〜30分ほどの酸素吸引が有効。アレルギー症状を伴うなら抗アレルギー薬も選択肢だという。(阿部彰芳)


朝日新聞 体とこころの通信簿

勤務先でシックハウス症候群にかかったなどとして、元慶応大国際センター助手の榎本恵子さん(43)が損害賠償などを求めていた訴訟の控訴審で、東京高裁は18日、学校法人慶応義塾に約445万円の支払いを命じた。

高世(たかせ)三郎裁判長は「勤務場所などでシックハウス症候群が発症するような濃度や量の化学物質が存在しないように配慮すべきだった」と指摘した。

高裁判決によると、榎本さんは02年4月から、1年の有期雇用で助手として勤務。03年3月にセンターが新設建物に移転後、全身に倦怠感(けんたいかん)や頭痛などの症状が出るようになり、同4月には働けなくなった。

同7月に退職し、同症候群と診断された。1審東京地裁判決(09年3月)は200万円の賠償を命じたが、同症候群の原因が勤務先の職場環境にあるとは認めなかった。

毎日新聞 2012年10月18日 23時33分

厚生労働省は、シックハウス症候群の原因となる化学物質の規制強化の検討を始める。

現在は13の化学物質に室内濃度の指針値を設けているが、対象を増やす方針だ。28日からの有識者検討会で議論する。

シックハウス症候群は、建材や家具から揮発した化学物質で頭痛やのどの痛みなどを起こす疾患。厚労省は対策のため、室内の空気1立方メートル当たりの濃度指針値をホルムアルデヒド0・1ミリグラム▽トルエン0・26ミリグラム▽キシレン0・87ミリグラム−−などと定めている。

関係者によると、今回は床材や接着剤に含まれる「2エチル1ヘキサノール」や水性塗料に含まれる「テキサノール」などが検討対象に挙がる見込み。

13の化学物質以外の使用が進み、新改築した建物で体調を崩すケースが新たに報告されているためだ。

対象物質の見直しは02年以来10年ぶり。指針値自体に強制力はないものの、建築基準法の建材規制や住宅性能評価の根拠、新築校舎引き渡しの基準として活用され、建築業界が対象物質を使わない対策を進めるなど一定の効果を上げている。


毎日新聞 2012年09月21日

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