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--- 犬の白はある日、仲良しの黒が犬殺しにつかまるところを目撃してしまう。 怖さのあまりその場から逃げ出すと、真っ白だった白の体が、 いつの間にか真っ黒に変わってしまっていた… 『どろんこハリー』みたいな話なのだけれど、 白は物理的に汚れて色が変わってしまったのではないらしい。 どうやら、犬殺しに狙われた黒を助けなかったときから、 なぜか急に真っ黒い体になってしまったのだ。 理由の無い不条理の変身の話ではないようだ。 臆病であったことに対する罰みたいで、 気持ちの良い話ではない。 黒い体と臆病であった自分に絶望した白が、 月に向かって懺悔のような告白をする場面がある。 「お月様! お月様! わたしは黒君を見殺しにしました。わたしの体のまっ黒になったのも、大かたそのせいかと思っています。しかしわたしはお嬢さんや坊ちゃんにお別れ申してから、あらゆる危険と戦って来ました。それは一つには何かの拍子(ひょうし)に煤(すす)よりも黒い体を見ると、臆病を恥(は)じる気が起ったからです。けれどもしまいには黒いのがいやさに、――この黒いわたしを殺したさに、あるいは火の中へ飛びこんだり、あるいはまた狼と戦ったりしました。が、不思議にもわたしの命はどんな強敵にも奪われません。死もわたしの顔を見ると、どこかへ逃げ去ってしまうのです。わたしはとうとう苦しさの余り、自殺しようと決心しました。ただ自殺をするにつけても、ただ一目(ひとめ)会いたいのは可愛がって下すった御主人です。勿論お嬢さんや坊ちゃんはあしたにもわたしの姿を見ると、きっとまた野良犬(のらいぬ)と思うでしょう。ことによれば坊ちゃんのバットに打ち殺されてしまうかも知れません。しかしそれでも本望です。お月様! お月様! わたしは御主人の顔を見るほかに、何も願うことはありません。そのため今夜ははるばるともう一度ここへ帰って来ました。どうか夜の明け次第、お嬢さんや坊ちゃんに会わして下さい。」
白は悔い改めて善きことをしようとしたのではなかったのだ。 投げやりになって、死を願った(犬が!)ときに、 それが意図せず誰かの命を救うことになっただけなのだ。 臆病を恥じて急に正義の味方になった犬の話だとしたなら、 ハリウッド映画みたいで、それはそれで気持ちの良い話でも、ないのだけれど。 それにしても、犬にまで自殺を決意させてしまう芥川って…ォィォィ でも、「シロ」でも「しろ」でもなく、「白」というところがかわいい。 花村萬月の小説でも「白」という犬がでてきたことを思い出した。 あれを読んだときも、「白」というのがかわいいな、と思った。 |
芥川龍之介
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近頃やっと気がついたけれど、 |
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