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一行一行に魂を込めて書いている。
この一作品を書くのに、命を5年分くらい削っていそうな、感じ。
そういう種類の、小説だと思った。
女たらしの女性の話なので、いくつかセックス描写があるけれど、
どれもあまりいやらしさは感じない。
ただ、物語のちょうど真ん中で、不思議な「伯爵夫人」に買われて、
亡くなった息子の身代わりをつとめるところだけは、
妙にナマナマしくいやらしい。
それでも、わたしが普段思う体臭まみれの肉体のナマナマしさとはかなり違っていて、
どことなくロココ調というか、ゴディバのチョコレート的な上品な甘ったるさがある。
古めかしい、というのか。
セックス描写に限らず、終始、文学文学しているというか、やはり古めかしい。
ヨーロッパの古典文学をひとつも読んだことがないことが見え見えで、
上品な比喩がひとつも無く、風景描写は一行で終わるような、
ロマンティックも感傷もそぎ落とした無機質な現代の小説もわたしはけっこう好きだけれど、
今でも中山可穂みたいなこういう若い作家はやはり居て、
そしてコアなファンが居るということが、
ある意味新鮮な気がした。
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