初めてお読みくださる方は、書庫の「fantajista」から入って、説明文(言い訳ともいう)読んでください。よろしくお願いたしますm(・ω・m) 移動の車の中で携帯がなった。あきらからだった。 「もしもし。」 『いまどこ?』 「どこって、移動中。ちょうど今からお前の家に行こうと思ってたんだ。」 『お前らは最近俺の家を喫茶店か何かと間違ってんじゃないか?人んちで待ち合わせすんなよ。』 「?待ち合わせってなに。誰かいんのか?」 なんだ、また偶然かよ。あきらははき捨てるようにそう言うと、違うんだよ、と思い直したように少し興奮したように言った。 『類が帰ってくるんだ。』 「え?類が?いつ。」 『今日。成田着5時25分だって。』 そういうと、花沢家に電話をかけることになった経緯とこれからの予定を話した。 「分かった。じゃあ、俺はこれから成田に行くよ。じゃあ、また電話する。」 あきらからの電話を切って、時計を見た。 時間的にはギリギリといったところか。 どういうつもりで帰ってくるのだろう。 昨日、不安げに牧野の様子を話す優紀ちゃんを思い浮かべた。 類がNYに行ってからもう10日ほど経つ。その間、誰にも連絡はなかった。 俺はもう類はこっちに帰ってこないかもしれないんじゃないかと思い始めていた。 戻ってくるとしたら、それは牧野への気持ちの整理が出来たときだろう。 気持ちの整理。 それはすなわち、牧野のことを諦められたとき・・・・。 俺は、牧野は絶対に類のことを好きなんだと思う。でも、今の牧野にそれを自覚させるのは到底難しそうだ。 この数週間ですっかりくせになってしまったため息を、いつもよりさらに大きく息を吐いた。 「ごめん。行き先変更して。成田空港に行ってくれる?5時過ぎには着けるかな?」 大丈夫です。運転手は静かにそう答えると、車線を変更して少しスピードを上げた。 しばらくして、また携帯がなった。液晶にうつしだされ名前を、しばらく信じられない思いで見つめた後、電話を取った。 「・・・・・・・もしもし?」 『総二郎?俺。類。』 怒鳴りつけてやろうと思っていた。類が落ち込んでようがどうだろうが、一度は怒鳴りつけてみんながどれだけ心配してたと思ってるんだと。 でも、電話口から聞こえた類の声は、いつもの類だった。 何の曇りもない、いつもの類の声だった。 『もしもし、総二郎?聞こえてる?』 「あ、ああ。」 『飛行機の中。もうすぐ成田に着くんだ。』 「・・・・・・知ってるよ。」 『え?なんで知ってんの?誰かに聞いた?』 「あきらにね。お前んちに電話したら、ババが教えてくれたって。」 『・・・・・・もしかして、心配してた・・・・?』 しばらくの沈黙の後、少し申し訳なさそうにそう言う類の言葉に、さすがの俺もムッとした。 「当たり前だろう!ばっかじゃねーの?お前!」 『・・・・・・・・・・耳が痛いよ、総二郎。隣の人までびっくりしてるよ。』 運転手もびっくりしたようにルームミラーで一瞬俺を見た。 『・・・・・・・・・・ごめん。悪かったよ、連絡もしないで。でも、帰ってきたから。俺はもう大丈夫だから。ごめんね。』 そう言う類の声は、しっかりしていた。何かを見つけたような、そんなふうに聞こえてホッとした。それでも、何か一言は言ってやりたかった。 「まったく、今頃何しに帰って来るんだよ。」 わざと怒ったような口ぶりでそう言うと、電話の向こうで大きく深呼吸をする気配がした。 『なにって、牧野を俺だけのものにするために帰るんだよ。』 電話を切った後も、しばらく顔のほてりはおさまらなかった。 まったく、よくも恥ずかしげもなくあんなせりふが吐けるもんだ。 なんにしても、しっかりとした類の声に安心していた。 俺は携帯を握りなおし、あきらに電話した。 『もしもし。』 「今、類から電話がかかってきた。帰るって。」 『ホントか?。』 「いつもの類だったよ。俺はもう大丈夫だって。いや、いつもの類というよりちょっとバージョンアップしてるかもしれない。」 『マジかよ。なんだよそれ。』 「まあ、本人を見たら分かるかも。あきら、本当に大丈夫かもしれないぞ。」 『そうか。楽しみにしてるよ。こっちは今まさに優紀ちゃんを車に乗せるところだよ。これから牧野を拾って空港に行かすよ。』 「わかった。向こうで待ってるよ。」 『OK。じゃ、後で。』 少し安心したのか、急に眠気が襲ってきた。あの事件以来、熟睡できた日なんてなかったからか。 「ぼっちゃま。そろそろ到着いたします。」
運転手の声でハッと目が覚めた。窓の外を見ると、滑走路と飛行機が目に入った。 「・・・・・俺、どれくらい寝てた?」 「30分ほどでしょうか。」 運転手がそう答えたときには、車はもうターミナルの車寄せまで来ていた。 「到着ロビーのほうでよろしいでしょうか。」 「うん、そこでいい。」 あと少しで着くという所で、意外な台数の渋滞に巻き込まれた。 「今日は何かあるのかな?」 「どなたか著名な方が来日されるのでしょうか。」 車は一向に動く様子がない。車の時計は5時30分を過ぎていた。 「ここから歩いて行くよ。そんなに時間もかからないと思うから、悪いけど待っててくれる?また電話するから。」 お気をつけて、と言う運転手の言葉を背に俺は車を降りた。 渋滞の車の脇を抜けてロビーに向かって走った。 ロビーには人があふれかえっていた。かろうじて遠くに見える到着口の看板を目印に、人をかきわけて優紀ちゃんと牧野を探した。 人ごみの中に取り残されたように不安げな表情の優紀ちゃんを見つけた。 そばに牧野の姿は見えない。 少し背伸びをしながらかきわけて進んでいくが、なかなか追いつけない。 優紀ちゃんが誰かに突き飛ばされたようによろめくのが見えた。 「優紀!」 あわてて周りにいる人を押しのけるようにしてそばにかけよる。 泣きながら牧野を心配している。 もう大丈夫。きっと間に合う。類が牧野を救ってくれる、という妙な確信が俺を動かした。 優紀の腕をつかみ、エスカレーターを駆け上がった。こんな人混みじゃ牧野どころか類さえも見つけれやしない。2階からなら少しは見つけれるかもしれない。 人の波はピークを超えたようで、2階に上がった頃には少し空間にゆとりができていた。1階のフロアを見渡せることができる渡り廊下に立って、手すりの向こうに牧野の姿を探した。 「いた!あそこに!」 優紀の指差す方向を見ると、帰る道の分からなくなった子供みたいにぼんやりとたたずんでいる牧野を見つけた。そしてその先に類を見つけた。 もともと色素の薄い茶色い髪がより一層茶色く見える。背筋を伸ばしてまっすぐ牧野を見ている。 その姿に、類の決心が見えたような気がした。 牧野が類の姿に気付く。しばらく時間が止まったように二人とも動かない。 牧野はどうするのか、不安が胸によぎった瞬間、牧野が類に向かって走り出した。 勢いよくぶつかった牧野を、類はしっかりと抱きとめた。 もう大丈夫だ。 両手で顔をおおった優紀が、ため息とも嗚咽ともつかない声で「よかった・・・。」とつぶやいた。 「よかったな。」 俺の言葉に、優紀は何度もうなずく。 一瞬、類と目があったような気がした。気のせいか、と思ったとき、類は少し背をかがめた。牧野はこっちに背を向けている。それはほんの一瞬のようだったが・・・。 「・・・・・・ねえ、花沢さん、今何したのかな。」 優紀が、信じられない、と言う風につぶやいた。 「いや、なにって・・・・。」 目が合ったのはきっと気のせいではない。俺たちに見せ付けたんだろう。 類にしたらにくいことをしてくれるじゃないか。 照れくさそうに、うつむいたままの類がこっちに背を向けて歩き出した。その後を牧野がついていく。 「手なんかつないでるよ。」 優紀がうれしそうに笑いながら二人の後姿を見ている。 「類!」 俺は大きな声で類を呼んだ。足を止めて二人が振りかえる。 驚いたように俺を見上げる優紀を両手でぐっと引き寄せ、頬にキスをした。 本当は、類がしたのと同じことをしたかったのだが、大きな声で呼んだおかげで、類たち以外の人も俺たちを見ていたから、さすがにそれは出来なかった。 「あきらに見せ付けに行こうぜ!」 類が笑いながら牧野とつないだままの手を上げた。 「なんてことするんですか!みんな見てるじゃないですか!」 突然の俺の行動に、真っ赤な顔をして優紀が怒ってる。 「だって、類に見せ付けられて悔しかったんだよ。」 そういうと、優紀の手を取ってエスカレーターに向かった。 |

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