歴史を鑑とせよ、とおっしゃるが、そのとおり――ならば近現代史の一部だけでなく、仲好くやってきた二千年の歴史を鑑としよう――そう言ってるんです(笑)
知識人も日本を知らない
――日本人の多くが書く中国論はどこかに贖罪感(エクスキューズ)が潜んでいます。ところが、この『隣人・中国人に言っておきたいこと』を読むと、きわめて率直に書いてある。変な遠慮がなく、率直で、こういう言い方をすればいいのにというモデルを提供しています。南京大学でのスピーチを拝見すると、実にストレートに言うべきことを言っておられる。日本の政治家はなぜこういうことを行ってくれないのか(笑)。と同時に、「日本の協力で中国の経済が発展した」という笹川会長の話を聞いた中国の人たちの反応が気になりました。どんなものだったのですか。
【笹川】みんな「事実を知らなかった」ということです。天安門事件のあと、G7で中国への経済制裁を解くように日本が働きかけたことや、真っ先に円借款を行ったという程度の事実すら、彼らは知りません。中国の人は共産党が流すニュースを通じてしか知ることができないから、実際の日本をまったく知らないと言ってもいいほどです。
――一般の人はそうでしょうね。
【笹川】いや、知識人も含めてです。彼らの認識は、1945年のルース・ベネディクト著「菊と刀」のレベルで止まっている。中国人は等身大の日本人を理解していない――そのことをハッキリ認識すべきです。最近、私は「中国の共産党が現在あるのは、ひょっとすると日本のお陰かもしれない」という話をしています。「あなた方が使っているマルクス・レーニン主義の本から始まって、ロシアのものは日本語から中国語に翻訳されている。ロシア語から中国語に直訳された共産主義の文献はないはずだ。あなた方は日本から勉強した」と。聞いていた中国人は学者も含めて、みんなきょとんとするんですよ。ただし、日本に来たことのある人は別。一回来れば、自分たちが勉強したこと、教わったこと、持っている情報とまったく違うということに気がつき、間違いなく変わります。観光を含めて、人の交流を深めるのは本当に重要です。
――日本財団は、実に多彩な分野での交流を支援されています。そのうちの一つに自衛官と人民解放軍軍人との交流がありましたね。これはどういう経緯で始まったのですか。
【笹川】中国が貧しかった時代から、国家レベルの指導者、各省の幹部、あるいはメディアの人たち、女性の代表と、あらゆる階層の人たちを日本に呼びました。合計すれば1万人を超えるでしょう。その途中で、誰も手をつけていない分野として軍人の交流があったことに気がついた。軍人というのは、どこの国でも基本的には戦争が嫌いだと私は思っています。自分が命を落とす話ですからね。そこで、2001年に10年計画でスタートさせました。
最初は日中の両方から文句を言われました(笑)。その間、小泉純一郎元首相の靖國神社参拝、あるいは中国の潜水艦の日本領海通過問題、教科書問題等々もありました。それでも続けたのですが、最後の最後、野球でいえば九回の裏で、中国側が「延期したい」と言ってきました。
――尖閣の領海侵犯?
【笹川】そうです。私は延期を認めないと答えました。この事業はいまだかつて一度も延期したことがなく、スケジュールも決まっていましたから。すると、「中止はしないでほしい。延期してくれ」と言う。しかし、「金を出すのはこちらだから、あなた方はそんなことうを言う権利はない」と返答して、中止しました。
――そういう毅然とした言動こそ日本政府がとるべき態度だと思いますが(笑)、この交流事業に成果はありましたか。
【笹川】私は「あった」ととらえています。日本の自衛官はほとんど中国に行ったことがないし、中国人はなおさらです。日本より中国側に対する影響が大きいでしょう。屯田兵あがりみたいな人たちが“勉強してきた日本”とあまりにも違うことにショックを受けていました。彼らが学校で教わってイメージしているのは「軍事大国の道を歩んでいる日本」です。そのイメージを否定する現実に次々と出合うのですから。
初めの頃は統幕長のご自宅に彼らを招いてもらって、すき焼きパーティーをやったりしたのですが、奥さんが台所で野菜を切り、旦那さんが鍋に出汁を注ぐ・・・・・。
――ナマの家庭のすき焼きパーティーですね。
【笹川】それが三軍の統帥にあたる統幕長の家庭です。しかも、家屋も敷地も大したことがない。中国の将軍は邸宅に住み、車は二台か三台あって、運転手にコックに女中がいるだけでなく、自宅専用の事務官もつきます。
――カルチャーショックでしょうね。
【笹川】それから軍服を着た人を町で見かけない。
――どこが「軍事大国を目指している」のか、と思うでしょうね。
【笹川】彼らが頭を整理するのに時間がかかったはずです。そういう体験を毎年二十人が得た。中国からは20人、日本からは10人です。少しユーモラスな例ですが、人民解放軍の機関誌で「解放軍報」という反日の拠点みたいな凄まじい新聞があります。そこの人が日本に来まして、「等身大の日本を見ることができた。その日本と自分がいままで書いてきたことに、大きな落差を感じている」と言って帰った。後日、隣国の日本を知らずしてこれからの中国はあり得ないと考え、「旅行費用を出すから、日本にいっぺん行ってこい」と娘を説得したら、「お父さん、二週間ぐらいの旅行で反日をやめたの」と娘から冷やかされたとか(笑)。
「靖國」の反応は?
――さては、いたれりつくせりで洗脳されたか!?(笑)。
【笹川】いま、日中双方ともに、再開してほしいという声が出ています。どこの国でも、対立のない国などありません。それはそれとして、民間がシャッポを被って交流する。この意義が何かをよく説明し、基本的なところが再確認できたら再開するつもりです。
――日本に呼んだ中国人の訪問先として靖國神社も入っているようですが、どういう感想が出てきましたか。
【笹川】北京大学の学生たちは「お墓がどこにあるんですか」と尋ねてきました。「お墓はそれぞれのふるさとにある」と説明すると、今度は「社殿の中には何があるんですか」という話になった。
――神社という概念が分からない?
【笹川】彼らには理解できないでしょうね。ご承知のように、中国は易姓革命の時代から、前政権は全て悪です。だから、前政権の墓を暴くことが現政権に対する忠誠心の表れになる。その感覚からすると、「靖國に行くことは軍国主義を指導した人たちと思想的に心情が通じているからだ。本当にそれが嫌いならその墓を暴くべきだ」というのが、中国の一般国民の考え方です。とはいえ、戦後、長い間、靖國神社の参拝は政治問題化しなかった。胡耀邦総書記の政治的基盤を守るために、中曽根康弘元首相が「忖度外交」をして行かなくなってから、政治イシューになりました。やはり日本は、もっときちんとした日本文化の説明をしていかなければいけませんね。
――日本に対する恨み辛み、あるいは政治的な思惑もあって、中国はいろいろな事を好き勝手に言う。その割に本当の日本のことが理解されていない。
【笹川】それは非常に単純な話なのです。中国共産党なるもののレーゾンデートル(存在意義)は、抗日戦争に勝利したというところから始まります。その理由付けを中国の国民に様々な技術を弄してやっているに過ぎない。ほとんどの中国人は情報が入らないから、共産党が発信する情報を信ずる以外になく、そういう形になっているだけのことです。
投稿文字数の関係から(下)に続きます。
ありがとうございます。
大変勉強になりました。
イイね○です。
転載させていただきます。
[ 琴鈴 ]
2012/6/28(木) 午後 9:50
次へ行きます。
いいね
2012/6/28(木) 午後 10:45
すばらしい記事ですね。報道の自由も表現の自由も存在しない国では、政府による国民の先導がきわめて容易で、知らされない、教えられない民が、反日に導かれることなど朝飯前でしょうね。そんなふうに事実が国民に知らされない国に対し、日本がどれほどODAなどで大金を出しているか、ガツンと言って知らせてやりたいです。逆に、支那国民に知らせることもせず、ただただ黙って金を垂れ流す日本政府はおろかとしかいいようがないです。
[ 桃実 (Momomi) ]
2012/6/28(木) 午後 10:56
( ´ー`)y─┛チァーパーボェー
共産党のコントロールしている社会との付き合い方で 日本が主導権を如何に取るかが問題なのです。
イイね!
2012/6/28(木) 午後 11:16
イイね!
(上)を読ませて頂きましたので、(下)に行きます。
[ daisinshoten ]
2012/6/28(木) 午後 11:24
転載させて頂きます。
応援&今日のイイ ポチ凸
2012/6/29(金) 午前 0:09
日本政府はアジアの留学生、支那人も受け入れてるようですが
なるほどこういう事情であれば、有意義な部分があるのでしょうね。とても面白く、勉強になりました。
いいね*
[ -- ]
2012/6/29(金) 午後 1:55
コメントを頂戴し、またご支援賜り、誠に有難う御座います。
訪問コメントを優先したく、纏めコメントで失礼致します。
もちろん、頂いたコメントは全て拝読させて頂いております。
日頃のご配慮に感謝します。
2012/7/16(月) 午後 7:20