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笹川陽平氏
笹川陽平氏「中国人に言っておきたいこと」より(上) より続きます。 「社会主義は大嫌い」 ――そう言えば、田中角栄が訪中した時、毛沢東が「日本のお蔭で中国がまとまった」というようなことを言っていましたね。 【笹川】そうです。余談になりますが、毛沢東の偉いところは、革命を起こした一カ月後くらいに、日本の軍事顧問団を招請しているのです。そして、「とにかく日本の軍人さんに我が国を見てほしい。自分のやり方がうまく行っているか、行っていないか、率直な批判をいただきたい」と言って、二カ月間、国内を見せてから、自宅に招いた。そこには周恩来もいたし、たくさんの政治家が集まっていた。その場で日本側の団長が「私は社会主義なんか大嫌いだ。この国で社会主義なんか成功するわけがない」というようなことを言ったら、毛沢東はニコニコして聞いていた。それぐらい度量のある人でした。 ――それはおもしろいエピソードですね。戦争の時代を知っている人のほうがフランクで、言いたいことを言い、聞くべきことを聞いていたような気がします。戦争を知らない世代が日中関係の窓口になり始めたら、途端に向こうの建前に気押(けお)され、位負けしたような印象は否めないのですが、いかがですか。 【笹川】厳しい指摘ですね。私自身、もう少し勉強しなければいけないと思っています。たとえば、「日本人の軍人が満洲に残って、中国の空軍を育てた」とか「日本人の医師が中国のために残って、北京大学の医学部に尽力した」とか、中国の国づくりの基礎段階から多くの日本人が協力してきた事例をきちんと勉強して言わないといけないな、と。 ――日本では「同文同種(どうぶんどうしゅ)」という言葉があまりにも長く語られ過ぎた。そうでないとうことは、日中共同声明の頃から言われているにもかかわらずです。顔を見ていると分かり合えたような気になるのでしょうか。 【笹川】そういう点で、日本ほど人種的な国際化が遅れている国はないでしょうね。致し方ないといえば致し方ないのかもわかりませんが。いずれにしても、中国に日本を理解してもらうための努力を日本はしていないし、日本も中国のことをよくわかっていない。お互いに知ったかぶりの思い込みで、好き勝手を言っているだけ。そこでは建設的な話し合いの場ができにくいのも事実です。 ――訪中した政治家などは押し寄せてくる反日情報の洪水に恐れをなして、言うべきことも言わないのではないか。あるいは何を言ってもムダと沈黙してしまう・・・・・。 【笹川】あちらの会見場はだいたい馬蹄形で、隣り合わせに座るにもかかわらず、マイクロフォンを使って、向こうが一方的に15分も20分も喋る。こちらは聞いた後で感想を言う。それでおしまいというスタイルです。お互いに横向いて一方的に喋っても、ディスカッションになりません。隣の日本国首相に向かって喋る型をとりながら、実は自分の国民に対して「俺はこういう強いことを言っておるぞ」をいうところを見せているのです。 ――ああいう設定は計算ずくでやっているのですか。 【笹川】そう思われてもしょうがないですね。しかし、意見が合う、合わないは別として、言うべきことを言わないと駄目です。残念ながら、「ちょっと待ってください」と話を中断させ、スパッと切り込むような度量のある人はいません。私はまともに相手の目をみすえて、言ってやりますよ。 ――胆力の違いですね。日本の政治家や外交官は、もっと“ケンカ”すべきです。生産的な“ケンカ”を。 【笹川】お互いの将来を思って論じ合うのは大事なことですよ。日韓の間で「船上論争」なんていうのをやって双方言いあったことがありましたが、ののしり合うだけでは意味がありません。日本の政治家は写真を撮りに行っているだけだから(笑)。 ――ああ、小沢一郎の大朝貢団(だいちょうこうだん)(笑)。日本財団は日本語の書籍を中国の大学などに寄贈していますね。 【笹川】既に250万冊を超えました。まだまだ続けます。また、私どもは『近代日本を知る100冊の本』という英文図書を世界中の図書館や研究所に配布していますが、いま、中国については『現代日本を知る100冊の本』を翻訳出版して中国の若い人たちに届けようと鋭意努力しているところです。 ――共産党設立に関わるプロパガンダを、日本側の政治家は真に受けているところがあるけれど、近現代史の学者さんにも左っぽい人が多くて、日中歴史共同研究などはけっこう譲歩しているでしょう。 まさに曲学阿世 【笹川】私は彼らを「曲学阿世(きょくがくあせい)」だと書きましたが、日中歴史共同研究は即刻やめるべきです。学問の良心を持っているのなら、国家レベルのああいう事業に加わってはいけません。国家という枠にはまってしまいますから。中国の学者で「笹川さんのところの研究は自由にできるけれども、あれは辛い」と言っている人もいます。 そもそも、ああいうことを政治家が提起すること自体、軽薄なのです。学問のことは学問の世界に任せておく。「われわれ政治家なんていい加減なんだから、真実の追究は学者に任せよう」。それでおしまいの話でしょう。 ――大平政権のとき「歴史認識は将来にゆだねよう」と提案したら、中国側がケシカラン!といったわけですが、ここには、さきほど会長が言われた革命中国のレゾンデートルとかかわる政治問題があるわけですね。つまり、日本側は中国に「政治で負けてる」わけです。 【笹川】そうです。日本には何とか審議会の委員になるのが好きな学者先生がいらっしゃいます。しかし、きちんとした研究をしていて、官僚が「鬱陶しい」と思うような人は審議会に入れません。あんなものは学者が受けるべき仕事ではないのです。 ――実に明快なご指摘です。 【笹川】日本の学者、知識人に期待したいのは、未来志向で国民を覚醒させるリードオフマンとしての役割です。ところが、悲観的であることがインテリゲンチャとしての一つの素要のように錯覚し、反省ばかりしたり、後付けの理屈ばかり並べている方が多いのは残念でなりません。 ――インテリは眉間に皺を寄せていないといけないんです(笑)。 【笹川】それから、外国に行って日本の悪いところを指摘することが知識人だと思い込んでいる方もいらっしゃる。でも、日本人としての誇りを喪失したら、日本人ではありません。どこの国の知識人も、自分の国に対して誇りを持ち可能性を信じて発言しています。自国の悪口なんて、よほどの場合でないと口に出しません。 ――最後に一つ、うかがっておきたいのは、中国に対して日本が援助疲れしていると書かれていますが、悪いのは日本のほうで、善意の安売りをし過ぎたのではないかと思うのです。この点、いかがですか。 【笹川】私はこう考えています。海に囲まれた日本とういう国は、お互いの信頼関係の中で惻隠(そくいん)の情を持ってやってきた。この文化は世界で特出したすばらしいものだと思います。しかし、グローバリゼーションの中で、対外的には通用しない。それどころか、欠陥と言ってもいいほどです。 ――どういうことですか。 【笹川】善いことをしても「俺はこういうことをやった」と人に言わないのは、日本の中で「陰徳(いんとく)」とされます。本当はそうあるべきだと私も感じます。でも、国際社会では駄目です。中国に対して、「ODAをこんなにやった」と日本人は言わないでしょう。一方の中国は「日本との共同作業だ」と表現しています。「共同」とは「中国と日本が対等でやった」ということになる、だから、日本が何兆円ものODAを出したことを、中国人は知りません。しかし、中国政府に向かって、「日本のODAでやったということを国民に伝えなさい」と政府は求めなければいけない。日本国民の税金で賄われているのですから。 ――その通りですね。 【笹川】とはいえ、やはり日本人としてのよさを失いたくはありませんよね。日本人としてのアイデンティティのところがきちんとできれば、日本の国もいい方向に進むのではないかと思っています。何と言ったって、世界中の人の間で日本への好感度が高いでしょう。東西南北3千キロの国土において、北海道でスキーをやっている時に、沖縄で海水浴もできる。四つのシーズンがはっきり分かれていて、山は緑に囲まれ、清い水が流れている。国民性が穏やかで犯罪率が低い。しかも、民族対立と宗教対立がない。世界でこんないい国は他にあるでしょうか。 ――まったく。 【笹川】私は中国のあちこちで「歴史を鑑にせよ、とおっしゃるが、そのとおり・・・・・お互いに近現代史の一部をみるのでなく、隣国同士仲好くやってきた二千年の歴史を鑑としましょう」といっているんです。若い人たちは自信をもって隣国とつき合っていって欲しいと切に思うのです。 引用ここまで。 笹川陽平氏は現在日本財団の会長の傍ら、故笹川良一氏の遺志を継いで現在ハンセン病制圧活動を積極的に行っているが、その活動と同時にハンセン病の元患者や家族などの人権問題の解消にも取組んでおられます。 笹川陽平氏は、世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧特別大使であり、外務省からハンセン病人権啓発大使にも委嘱されている。 笹川陽平氏の活動はハンセン病だけにとどまらない。「医療」、「教育」、「食糧問題」を活動の柱として幅広い活動をしている。 日本財団の活動報告を見ると一見「中華人民共和国」寄りか、と思われがちですが、そうではありません。 そのひとつを紹介すると、陽平氏が中国・南京大学で教授や学生たちの前でスピーチした内容(南京大学でのショート・スピーチ)が、笹川陽平氏のブログに掲載されています。これを中国の大学で話したのか、と思うほど興味深い内容です。 できれば、ご一読願いたい。 笹川陽平氏のブログを読むと、中国だけでなく諸外国の要人や政府関係者に対してもはっきり言うべきことは言う、その姿勢は父、良一氏を彷彿させるものがあります。 真に世界平和の為に休む間もなく、世界を飛びまわられる氏の姿こそ、真の国際人であり、良一氏が目指した「八紘一宇」の精神の実現ではないでしょうか? |
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2012年06月28日
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保守派の新しい歴史教科書をつくる会副会長を務めたこともあるノンフィクション作家の工藤美代子氏は「完璧な紳士」と笹川陽平氏を『余韻のある生き方』(PHP新書)で評価、賞賛しています。 日本財団会長やWHO及び日本国政府のハンセン病大使など要職を務められる笹川陽平氏は雑誌「歴史通」編集長インタビュー・2011.年5月号で次のように述べられています。
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