■■読書のススメ■■

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」の感想を更新しました♪古典ってやっぱりすごいな〜。

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 今日は、恩田陸「光の帝国 常野物語」
月読通信アニスさんにこの本をご紹介いただき、図書館に借りに行ったところ、
田舎の図書館にもかかわらず三人待ちだということ。
やっと順番が回ってきたので、早速読んだところその世界観にすっぽりとはまってしまいました…。
【あらすじ】
不思議な能力をもつ常野一族は、
時代を経るとともに全国に離散して、
ふつうの人々の中に埋もれて暮らしている。
その能力ゆえに起きる不思議な出来事を通じて、
常野の人々はまた呼び寄せられるように常野に戻ってゆくのだが…。
【感想】
 現代小説はさらっと軽く読めるものというイメージがあった。

しかし、この本は、日本の民話を取り入れて、

民話独特の背筋がぞーっとなると同時にどこか懐かしいという感覚を覚える。

それは昔話にとどまらず現代の病にもつながってゆき、

すっかりその世界観のとりこになる。



この小説は10の短編からなる。

「常野」という不思議な場所と人々が登場し、

互いに関連しながらも、ひとつずつ独立した物語となっている。

6番目の「光の帝国」がいちばん奥深くに入り込んだが、

1番目の「大きな引き出し」が、書物の読み方・使い方を、

とても上手に表現してくれていた。
常野からきた春田一家は、
膨大な書物を暗記できるという不思議な能力をもつ。
長男・光紀は、小学校四年生にしてほとんど日本の古典を暗記していた。
家族から「しまう」能力を隠すように言われている光紀は、面白くない。
なぜ、世間に隠さなければならないのか…?
  (恩田陸「光の帝国 常野物語」『大きな引き出し』集英社文庫)

春田一家の膨大な書物を完全に暗記することを、

作者は書物を「しまう」という表現を使っている。

「シェイクスピアを『しまう』」、「ホルストの『惑星』を『しまう』……

書物を「しまう」という表現はなんて奥行きのある言葉なのだろう。

記憶するときの感覚を平易な言葉で表現してくれている。



光紀の担任の先生は、

「そりゃあ、覚えていられれば便利かもしれないな。
でも、覚えればいいってものでもないだろう。
意味も知らずに丸暗記したって、それに何かの意味があるとは思えない。
それよりも、
最低限必要な事だけを覚えて、
それをいろいろ組み合わせて応用できるようにする
方が
よっぽど面白いし、大切なことだと思うぞ」

という。「効率的」に学習することが大切だと言う。



折口信夫「死者の書」で、死者である大津皇子の魂に感応する藤原郎女は、

何かに憑かれるように阿弥陀経の千部写経を達成した後、大津皇子の魂に出会う。

彼女は、膨大な量を写経しなければ、死者の霊と同じレベルでは出会うことはなかった。

それこそ憑かれたように書物の魂を丸ごと飲み込むぐらいでなければ、

文字の羅列は言霊として響かなかったのだ。



光紀の悩みは、「しまった」膨大な書物がまだ「響かない」ことにある。

しまった引き出しの中身が響いてくる瞬間を待つ態勢に入っている。

あるひとつの事件をきっかけに、ついに膨大な情報が「響く」ときがやってくる。

しかも文字を超えて直接人から。

何のために「しまう」のか?

その意味をしることで、光紀は能力の意味を知る。

 僕はちゃんとみんなを『しまって』いる。
僕の中で、いつまでもみんな僕と一緒に『響き』続ける。
だから大丈夫です、ねえ、先生?

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閉じる コメント(24)

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gakiさん、上記のコメントをアニスさんと勘違いしてしまい申し訳ありません(冷汗)。「言霊」という言葉は、少し誤解されやすい言葉ですが、恩田陸さんは、その言葉を使わずにここまで表現できるとは恐れ入りました。本当に面白かったです。「本霊」という言葉も気になりますね〜。

2006/5/21(日) 午前 6:04 mepo 返信する

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アニスさん、改めまして本のご紹介、ありがとうございます(間違いを指摘していただき感謝です。冷汗)「国道を降りて…」もじんとくるお話でしたね。あんな風にプロポーズされたら、イチコロ…ってそちらはなくて(笑)、ツル先生とのみさきの再開に呆けたように待っていたツル先生を思うと、じんとしてしまいました。『蒲公英草紙』『エンドゲーム』、ぜひ読もうと思います。特に『蒲公英草紙』は楽しみです。

2006/5/21(日) 午前 6:11 mepo 返信する

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しろねこさんも恩田作品たくさん読まれているのですね〜。「三月は深き紅の淵を」が、しろねこさんの別格ですか!読みます、ぜひ。私も最初に食べたもの(本)が気に入ってしまうタイプなんですよね(笑)。トラックバックありがとうございます。ぜひ、記事読ませていただきますね。

2006/5/21(日) 午前 6:14 mepo 返信する

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あんごさん、未読の作品の記事を読んでいただきありがとうございます。でも、一遍だけなのでネタバレは防げたか!?(言い訳)恩田さんは、本当に面白かったです。すっかり小説の世界に入り込んでしまい、その余韻は2〜3日は続きました。「しまう」という何気ない言葉をここまで人に響く形にできるなんてすごい人だと思いました。

2006/5/21(日) 午前 6:17 mepo 返信する

トラバありがとうございました。僕はこの作品、恩田陸のベストです。僕もがんばって本を読んでしまってはいるのですが、響く前に忘れたりして、なかなか上手くいきませんね(^^)でも、読んでいることがいずれ役立てばこんなに嬉しいことはないでしょう。

2006/5/22(月) 午前 0:37 maa*aka** 返信する

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人生・探求さん、こちらこそトラックバックありがとうございます。「響く前に忘れたりして」ってありがちですよね〜(笑)私も自慢じゃありませんがしょちゅう忘れます。最近は、読書備忘録のブログが大活躍していますが。「読書」は今すぐに役に立たなくても、いつかじわじわと効いてくるものですよね、きっと。または、役に立たなくても楽しいものは楽しいです。

2006/5/22(月) 午前 0:42 mepo 返信する

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恩田陸作品は「夜のピクニック」を読んだだけで他の作品を読んだ事がないのですが、おもしろそうですねー。上のコメントで皆さんベストだなんて!益々読みたくなりました。暗記を「しまう」と表現するなんてスマートだなー。是非読んでみたいと思います。

2006/5/22(月) 午後 10:30 [ poc*ino* ] 返信する

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pockinonさん、「夜のピクニック」は面白かったでしょうか?私は今回初めて恩田さんの作品を読んで、彼女の世界観に連れて行かれてしまいました(笑)日常の何気ない言葉を使って、奥深いことを表現できるなんて、作家さんはすごいな〜と感心します。もし、読まれたらぜひ感想をお聞かせ下さいね。

2006/5/22(月) 午後 10:44 mepo 返信する

TBさりがとうございました。この作品は独特の雰囲気を持っていて好きですね。読んだ後嬉しくなりました。「夜のピクニック」はまた全然違う爽やかイメージですが、恩田さんの高校時代の体験からのみずみずしいリアル感で自分も一緒に歩いているようでした。これも好きな作品でしたよ。

2006/7/1(土) 午前 11:07 ヒデジぃ 返信する

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ヒデジぃさん、こちらこそTBありがとうございます。「読んだ後嬉しくなった」とはとてもわかります。私なんて、2〜3日は余韻に浸っていました(笑)「夜のピクニック」もよく聞きますね。高校生のお話なんですよね?また、風味が違いそうで興味津々です。

2006/7/1(土) 午後 1:57 mepo 返信する

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こんにちは〜。事後報告になってしまいましたが、本日書いた記事の中にこちらの記事のURLを転載させて頂きました。ご了承下さい。「光の帝国」読みました〜♪

2006/7/13(木) 午後 7:33 [ poc*ino* ] 返信する

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pockinonさん、リンクを貼っていただきありがとうございます♪早速、記事拝見しました。「光の帝国」の記事かと思いきや、「図書室の海」だったのですね〜。この短編集は、まだ未読ですのでチャレンジしてみたいです。「光の帝国」のご感想はいかがでしたか?

2006/7/13(木) 午後 7:43 mepo 返信する

こんばんは、ごはんです。わたしもこの作品が恩田さんに触れる第1作でした。と、いってもそれ以降触れ合ってないのですが・・・(笑)次に読むべき本は、なんでしょうか。

2006/9/12(火) 午後 8:40 [ ぼのぼの ] 返信する

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mepoさん、何とも印象的なレビューですね。読んで感心してしまいました。「蒲公英草紙」でもそうでしたが、春田家の物語は人々の心を共有することで得られる温かさのような切なさのようなそんな気持ちがいいです。TBしますねー。

2006/9/13(水) 午前 0:04 [ anv**_1996 ] 返信する

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ごはんさん、こんばんは。ごはんさんもこの作品が、第一作めでしたか!奇遇ですね。私も恩田陸初心者でよくわからないのですが、↑上記アニスさんのコメントによれば「光の帝国」の続篇として「蒲公英草子」「エンドゲーム」があるそうです。「蒲公英草子」は読みましたが、よかったですよ。また、皆さまのブログでよく見掛けるのは「三月は深き紅の淵を」ですかね。これもとても面白かったです♪恩田陸に関しては、アニスさんとしろねこさんがお詳しいですよ!

2006/9/13(水) 午後 6:30 mepo 返信する

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Anvilさん、トラックバックありがとうございます。やはり春田家の人々の話が私にとっては一番印象的でした。「蒲公英草子」も哀しいラストだけど、どこかほっこりした物語でしたね。「エンドゲーム」はお読みになりましたか?私はまだなのです。私もトラバさせてくださいね〜♪

2006/9/13(水) 午後 6:32 mepo 返信する

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情報ありがとうございます。続篇を探してみます。

2006/9/15(金) 午後 4:09 [ ぼのぼの ] 返信する

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ごはんさん、拙い情報で申し訳ありません‥。続篇読まれたら、ぜひ感想をお聞かせくださいね。楽しみにしております♪

2006/9/16(土) 午前 3:48 mepo 返信する

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トラバありがとうございました〜。
なるほど、折口の『死者の書』とリンクしてくるところなんかはいかにもmepoさんらしいですね。「大きな引き出し」は、幼い少年が自分の能力を持て余したり葛藤したりする様子をとても暖かく描いていて印象的な短篇でした。恩田自身「春田家の物語にしてもよかった」と言っている通り、どんどん物語が拡がっていきそうな心地よさがありますね。続篇もありますが、どうも直接的な続篇でもないみたいですし、いずれ“常野世界”のキャンバスが埋まるくらいの作品を書き続けて欲しいです。

2009/2/15(日) 午前 10:34 大三元 返信する

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大三元さん、こちらこそTBありがとうございました!
そうですね、「光の帝国」の続編もいくつか読んでみたのですが、私はやはりこの作品がいちばん好きです。文字を飲み込むとかしまうとか、ファンタジーは、現実の道具だけでは表現できない感じが表現できるんですね。ファンタジーやSFはまったく範囲外だったので、ちょっと見方が変わりました。

2009/2/16(月) 午前 11:01 mepo 返信する

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