■■読書のススメ■■

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 今日は、太宰治「新釈諸国噺」
去る6月19日は、太宰治の桜桃忌でした。
昭和23年のこの日、太宰の死体が発見され、
それは奇しくも太宰の誕生日でもありました。
前から読んでみたかったこの作品、6月19日に読みました。

【あらすじ】
 井原西鶴の全著作の中から、太宰が気に入った小品を選び、
自由に書き綴った作品。
武家義理、永代蔵、諸国噺、胸算用など題材は広く求められ、
舞台も蝦夷、奥州、関東、関西、中国、四国、九州と諸地方にわたる。
【ここに感銘!!】
川に落ちた銭は、いたずらに朽ちるばかりであるが、人の手から手へ渡った金は、いつまでも生きて世にとどまりて人のまわり持ち。
           (引用:太宰治「新釈諸国噺」P122新潮文庫)
【感想】

人情、金、義理、名奉行の裁き。

様々な要素が、極端な人物設定で、時に滑稽に、時に野暮に、時に粋に、

時に悲哀をもって、ユーモラスに描かれ、笑えると同時にじんとくる。

読んでいるうちに、落語を聞いているような錯覚に陥る。

一文が息つく暇のないぐらい長い。

しかし、それがまったく気にならないほどリズムに乗った気持ちのいい文章。

太宰治、あっぱれである。

井原西鶴もこのような文章を書く人だったのだろうか?



一番気に入ったのは、冒頭の「貧の意地」

「世の中をついでに生きているような人もおりますが…」というような、

落語にでも出てきそうな野暮人間、原田内助が主人公。



大晦日に借金を清算するめどが立たず、

思い余った女房が親戚から十両の小判を恵んでもらってくる。

それをこの野暮人間、あまりの幸福にわけがわからなくなって(笑)、

7人の友人たちを誘って飲めや歌えの大宴会。

調子に乗った原田内助、十両を実感させようと小判を皆に回し始める。


はて…?一両足りない…。


皆は、自分は潔白とばかりに肌着まで脱ぐが、困ったのが短慶坊、

懐に小判一両もっていたがために、身の潔白を証明できない。

言い訳はするまい、いざ、腹を切ってお詫びを…と血気だったところに、

行燈の下から小判が一枚出てきた。

ほっと息をつく一同。

しかし、客人が持ってきた重箱のふたにきらりと光る小判一枚。

さあ、どうする?小判は十一枚だ。

友人たちは、小判は最初から十一枚だったと、ふざけたことを言う。

短慶坊の窮地を救おうと、出したはずの一両であるものを。



収まりがつかない普段はてんでダメ男の原田内助、

一世一代の頑張り方を見せる。

原田内助、貧なりといえども武士のはしくれ、お金も何も欲しくござらぬ。
この一両のみならず、こちらの十両も、みなさんお持ち帰りください

などと、やせ我慢で頑張る。

しかし、一両出した本人は名乗り出ない。

仕方がないので、帰り際、玄関の隅に一両を置いて、一人一人帰らせ、

出した人はこっそり持ち帰ってくれるよう頼む。

そして…。

はたして女房が玄関に出てみると、小判はなかった。

「どなたでしょうね。」と夫は聞いた。
原田は眠そうな顔をして、
「わからん。お酒はもう無いか。」と言った。



野暮の極みを見せる原田内助は、ユーモラスに悪戦苦闘する。

しかし最後は、泥の中に一粒の砂金でもすくったがのごとく、

ほんの少しのきらめきを垣間見せる。



長屋暮らしの庶民の中には、

原田内助のような「困ったちゃん」みたいな人が一人か二人はいたのだろう(「自虐の詩」のイサオみたいに)。

隣近所、親戚のような共同体がそれをうまくフォローして、

このような人も排除されずに、彼らのような人が、

ほんの少しだけ垣間見せる美徳をすくえる土壌があったのではないか?

と、勝手に想像してしまう。

もちろん、しがらみもたくさんあっただろうけど。



今後、太宰中期の作品をもう少し読んでみたいと思った。

「太宰治」書庫の記事一覧

閉じる コメント(12)

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mepoさんご指摘の太宰のながいながい文章、あのたまらないリズム感は読むたびに「すごいなぁ」と感心を通り越して呆れてしまいます。こういう人を戯作者っていうんでしょうね^^本作は記憶の彼方ですが、ひさしぶりに読み返したくなってしまいました!

2007/6/22(金) 午前 0:22 ang*1jp

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あんごさん、あのような太宰の文章ははじめて読みました!ちょっと感動でしたね。安吾の「不良少年とキリスト」の内容を思い出しました。ほんとにコメディアンだったんですね。こんなに笑い泣きみたいな感じだとは思わなかったので。こう、東北人特有の自虐のギャクって感じでよかったですね(笑)。太宰中期の作品をいくつか読んでみようと思っています。

2007/6/22(金) 午後 7:22 mepo

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御伽草子が好きなんですが、これもいいですよね。久しぶりに、「貧の意地」を青空文庫で読んできました。あんな文章、書きたいですね^^、の前にトルコライスを食べたいですw

2007/6/23(土) 午前 9:43 月の骨

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月の骨さん、そいじゃ次は「御伽草子」を読もうと思います!今、「青空文庫」で大体の名作は読めますね。でも、私、ネットで読書に慣れてなくて、読んだ気がしないんです…。いつか慣れる日が来るのでしょうか!?そうなんです!あんな文章を書きたいなと思わせるんですよね。わかっていただけて、嬉しい〜♪じゃ、トルコライス、空輸で出前しときますね!(爆)

2007/6/23(土) 午後 2:04 mepo

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わー、太宰だーーー!!恥ずかしながらこれは未読です^^;。相変わらずの素晴らしい書評で、ぜひ読んでみたくなりました。とりあえず「お酒はもう無いか」がすごく気に入りました(爆)。桜桃忌でしたねえ。玉川上水(三鷹ではないですが、わりと、近いのです)を、紫陽花を見がてら散歩してみようかな。

2007/6/23(土) 午後 9:26 Cutty

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わー、Cuttyさんだーーー!!(笑)お久しぶりです!お元気でしたか?30も過ぎたのに、いまだに太宰など読んでおります(笑)。そうでしょう?「お酒はもう無いか」のセリフがいいんですよ…ってCuttyさん一緒に飲みたいだけ!?(爆)いいですねえ、私も紫陽花の花など愛でながら、Cuttyさんとご一緒したいです♪

2007/6/24(日) 午前 1:49 mepo

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「桜桃忌」を満喫されたようですね。このお話もいい話ですね。これが現代っ子の集まりだったら、どんな落ちになるかと思うとちょっと怖い気がします。ちなみにあの日は、ぎりぎりで終電に乗ることに成功し、タクシーを使わずに家に帰りました。

2007/6/24(日) 午前 9:49 [ gak*1*66* ]

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新潮文庫だと「晩年」の中に入っているのでしょうか。
「桜桃忌」は若い頃に一度行きました。
図書館の不要本コーナーで「太宰治集」を拾いました。最近、私のブログでも太宰治を取り上げました。暇な時でもどうぞ…。

2007/6/24(日) 午前 10:41 [ kof*65* ]

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gakiさん、「桜桃忌」をおしえていただき、ありがとうございました!当日は、私だけしっかり太宰を楽しみました(笑)。でも、その日は当日に帰れてよかったですね〜。あまり徹夜が続くと、身体が悲鳴をあげますね!どうぞご自愛ください。これをさらに現代っ子版で誰か作家さんが、書いてくれないですかね?

2007/6/25(月) 午前 11:01 mepo

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kofu65yさん、はじめまして!ご訪問、ありがとうございます。ごめんなさい、出典を書いていなかったですね。これは新潮文庫の「御伽草子」の中に入っておりました。図書館の不要コーナーで拾ったなんて、うらやましい!kofu65yさんのブログでも太宰について書かれているのですね。後ほど、お邪魔します〜。コメント、ありがとうございました!

2007/6/25(月) 午前 11:03 mepo

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古い記事に失礼します。
「自虐の詩」を連想されたとのことですが、太宰の世界はまさにあれかもしれません。酸いも甘いも、笑いも侘しさも全部ひっくるめて人生であり、それが一つの人格、作品に混在しているところに太宰の魅力があると思うのです。
トラバさせて下さいね。

2012/11/26(月) 午前 2:00 大三元

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大三元さん、古い記事にコメントをいただき、ありがとうございます。大三元さんは、何年もかけて地道に太宰全集を読まれているのですね。すごいです。

人生のすべての要素が、ひとつの作品に入っているってとんでもないことですよね。普通の人は、平面的にひとつしか書けないことを、作家は彫刻のように立体的にしかも言葉だけを使って表現するのですから。しかも、一見ぞっとする程悲劇的なことが角度を変えるとユーモアになってしまうのですから、その振れ幅が一人の人間の中にあると思うと、精神を持ちこたえるのも大変でしょうね。

TBありがとうございました。さっそく、記事を読ませていただきます。

2012/12/29(土) 午後 11:48 mepo

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