■■読書のススメ■■

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」の感想を更新しました♪古典ってやっぱりすごいな〜。

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 今日は、東野圭吾「手紙」
82歳の義祖母のおうちに行ったら、テーブルの上に置いてあり、
「それ、あげるよ」と言われ、思わずもらってきました(笑)。
「感想は…」と聞くと、無言でブンブン首を振るだけ。
これは一体、どういう意味なの!?

【あらすじ】
 弟の進学費用のために、強盗殺人という罪を犯した兄・剛志。
弟・直貴のもとに、月に一回刑務所の兄から手紙が届く。
「強盗殺人犯の弟」というレッテルに、直貴は苦しみ続けるが…。
【ここに感銘!!】
「しかしね、本当の死と違って、社会的な死からは生還できる」
平野は言った。
「その方法は一つしかない。こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない。
君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりが出来れば、
誰も君を無視できなくなる。その第一歩を刻む場所がここだ」
           (引用:東野圭吾「手紙」文春文庫P321〜322)

【感想】

自分の中に厳然と存在する差別意識。

ホームレスの人とすれ違った時、無意識に違う道を選んでしまうような、

人を憐れみの気持ちで見てしまう時、自分の中に無意識に浮かぶ優越感とか、

道徳や倫理で「人を差別してはいけない」と習った自分と、

危険や厄介ごとを本能的に避けようとする自分と。

見たくはない、できれば伏せておきたい自分との対面。

差別意識はまったくないと、曇りなく言える人は果たしているだろうか?



学生時代、実習中に「自己覚知」ということをしきりにさせられた。

簡単に言うと、自分の中にある負の感情を自覚して整理するということだ。

劣等感、思考の癖、生育暦……

それらを白日の下にさらして、自覚しなければならない。

これは、嫌な作業だ。何度も泣いた。

でも、それをしておかなくては、仕事をして人に対峙するとき、

無意識に隠れている「自分」の問題が相手に投影されて、

対人援助は立ちゆかなくなるのである。

そのとき、私が対峙せざるを得なかったのが、この「差別意識」である。

自分には傲慢にもないと思っていた。

でも、スーパーバイザー(先生みたいな人)とのやり取りで、

それを自覚せざるを得なかった。

ショックだった。

でも、仕方ない、あるんだもの。

あると自覚して、そこからだ。



この「手紙」という作品は、

「強盗殺人犯の弟」という宿命を負ってしまった主人公の、

自分の将来との、それにかかわる世間との、そして兄との葛藤が描かれる。


差別意識は、いろんな形で彼に注がれる。

まともに目を合わせない人。

親切な鎧をつけながら、腫れものに触るように接してくる人。

自分の恵まれた境遇に守られて、正義感に高揚する人。

もちろん、学歴、家柄、職業、様々な社会的差異に遭遇する。


そんな彼に、一人だけ「差別は仕方ない」とはっきり言う人がいた。

彼が就職した社長である。

彼は、気づく。

自分は「犯罪者の弟」という悲劇の主人公を演じてきたのではないか?と。

「強盗殺人者の弟」という社会的な死を認め、

そこから再生するしかないのではないか。




これは、誰の罪なのか?

なぜ、自分が犯罪を犯したわけではないのに、このような仕打ちにあうのか?

最後、彼はどんな結論に達するのであろうか?




一読者として、ラストでいい方向に少しでも近づいて…と祈る気持ちだ。

それは、自分が救われたいから(勝手なんだよね)。

でも、いい方向って一体なんだろう?



この小説を読んで、よかった。お義祖母ちゃん、ありがとう!(笑)

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閉じる コメント(18)

これは、とても考えさせられる作品でした。弟の為に手を汚した兄の心情も、その思いをわかりつつも受け入れられない弟の葛藤も伝わって来て、とてもやるせない気持ちになりました。「犯罪者」に対する世間の目の怖ろしさ。自分もきっとその中の一人になるんだと思うと、正義って何なのかわからなくなりますね・・・。

2007/7/4(水) 午前 0:30 べる 返信する

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東野さんは、ほとんど読んだことがありませんが、私はてっきりミステリー作家かと思っていましたが、これを読む限りはちょっと社会派という感じですね。また、読んでみることにいたします。

2007/7/4(水) 午前 1:29 [ gak*1*66* ] 返信する

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べるさん、最後はずーんときて、そんなに簡単に答えは出ないよ…と言われている気がしました。東野圭吾さんってはじめて読みましたが、こういう作品を書くんですね。私も新聞とか読むたびに、東野氏が書く世間の目になっているのだと思います。ところで、べるさん、この作品ってミステリなんでしょうか?

2007/7/4(水) 午前 10:05 mepo 返信する

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gakiさん、私も東野圭吾さんはミステリ作家だとばかり思っていました。でも、こういう作品もミステリっていうんでしょうか?本楽大学・ミステリ学部に入ったのに、ミステリ作品の区別もつかないとは情けない!(笑)もし読まれたら、ぜひご感想をお聞かせくださいね。

2007/7/4(水) 午前 10:09 mepo 返信する

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このテーマはほんと重かったです。差別されちゃう主人公に同情したり、周囲の人たちに憤りを感じたりしても、じゃあ自分がもしその「周囲の人」に実際なった時に一体何ができるんだ?とすごく無力感にとらわれました。おっしゃる通り、「いい方向」「救い」がどっちを向いたらあるんだろ?というあたりには、未だに答えが見つかってない感じです。

2007/7/4(水) 午後 10:21 Cutty 返信する

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これはミステリではないと思います。私はミステリの一番大きな定義は「謎」があるかどうか、だと思っているので(正解かどうかはわかりませんが^^;)、これはあてはまらない気がします。東野さんは、こういう考えさせる作品を書かれることは多いですね。ミステリで読まれるならば「容疑者Xの献身」あたりはいかがでしょうか。

2007/7/5(木) 午前 1:32 べる 返信する

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Cuttyさん、お義祖母ちゃんのお家で、気軽に手にとって、気軽に読み始めたら、とんでもない目に遭いました(笑)。小さい頃に読んだ「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンを思い出しました。昔、新聞で犯罪記事とか見ると怖くて仕方がなかったんです。罪も含めて人を受け入れるって、言葉ほど簡単じゃないですね。結局、安易な解決はなく、その重いテーマを留めるしかないような作品だなあと思いました。

2007/7/5(木) 午前 9:20 mepo 返信する

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べるさん、お答えいただき、ありがとうございます!これはミステリではないのですかね?う〜ん、ますますミステリの定義がわからんです…(笑)。「容疑者Xの献身」は、ミステリなのですね〜。図書館でかりてみようと思います。また、おばあちゃんちに転がってないかな?(笑)

2007/7/5(木) 午前 9:23 mepo 返信する

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読みましたよ〜。重いテーマですが、私も読んでよかったと思いました。でも映画はちょっと見れなかったなぁ・・。社長の言葉通り、「正解」はない問題なのですが、まずは現実を受け入れることから始まるのですかね・・・。

2007/7/5(木) 午後 0:30 krtk0707 返信する

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あんびるさん、読まれていましたか!映画版もあるんですよね。これも観たいと思っていましたが、イマイチでしたか?観るの迷うなあ…。物語が、安易に再生の方向に進まない、かといって全く絶望ってことでもないところが、現実感ありました。

2007/7/5(木) 午後 3:58 mepo 返信する

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体調は戻られたでしょうか?

2007/7/5(木) 午後 4:01 mepo 返信する

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多くの人が避けて通る問題に 真っ向から取り組んだ作品ですよね。何が正しいのか考えるほどわからなくなります。映画・・・TVで放映ないかな。
過去の記事にトラバさせてくださいね。

2007/7/5(木) 午後 5:16 Tommy 返信する

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Tommyさん、TBありがとうございます。そろそろ映画もテレビ放映されますかね?直貴役は山田孝之さんだと知っていたので、途中から彼の顔が浮かんで仕方ありませんでした(笑)。最後、「兄貴、俺達なんで生まれてきたんだろうな…」みたいなとこは、さすがにぐっときました。

2007/7/5(木) 午後 5:33 mepo 返信する

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あまりミステリの定義なんか気にしないほうが・・・。
出版社にしたらミステリ作家の作品だから、ミステリとして商売をしているだけかな。
日本人はジャンルにとらわれすぎてると、おもっています。
これも差別意識の一種、だったりして(笑)

2007/7/7(土) 午前 2:36 CAVE 返信する

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CAVEさん、はあ、本楽大学ミステリ学部に入学したので、ミステリを少し読まねば!と気合が空回りしております(笑)。そうですね、ジャンル問わず面白い本があったらどんどん読みたいです。そっか、ジャンルの区別も差別意識!?

2007/7/9(月) 午後 1:27 mepo 返信する

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この作品は良かったですね。たくさんの事を考えました。ジャンルかあ。買う時の指針になって便利、つーぐらいかもですね。

2007/7/11(水) 午後 6:21 ゆきあや 返信する

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ゆきあやさん、この作品はお好きでしたか。読み終わった後、少し気持ちが重かったですが、読んでよかったです。ミステリというジャンルは、今まであまりに縁遠かったので、ついつい「これってミステリ?」と警戒してしまう私です(笑)。ゆきあやさんからしたら、考えられない人間!?

2007/7/11(水) 午後 11:51 mepo 返信する

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内緒さん<そういう「秘密」って、少なからず付き合い方に影響を与えているのでしょうか?多分、そうですよね。学生時代、あることで深刻な悩みを抱えている人ととても仲良くなって、後でその秘密を聞きましたが、あまり関係は変わりませんでしたね。秘密を知る前の付き合いが大きかったと思います。秘密を先に知ってしまったら、どうなったかはわかりませんけど…。そういう意識って、ひょんなことで顔を出しますね。私も社長さんの言葉は、ひしひしと迫りましたね。貴重なご意見、ありがとうございます。

2007/7/15(日) 午前 9:48 mepo 返信する

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