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【ファイルWo2】2007.11.02 『だらしない』ってなあに?
スジャータちゃんは、庶民が好きで、よく庶民の真似をします。
それで、最近お行儀が悪くなりました。行儀がいい庶民もいるわけですから、何か勘違いしているようです。
今もマントルピース横のロッキングチェアで足を組んで、ふんぞり返って、ペットボトルのジュースをラッパ飲みしています。
それはそれで、とっても可愛いのですが、シルベさんとしてはスジャータちゃんの先生の立場から注意しないわけにはいきません。
「スジャータちゃん、だらしないよ」
シルベさんが注意すると、珍しい玩具をみつけた子供のように、スジャータちゃんの顔がぱっと輝きました。
「シルベさん、今なんていったの?」
「なんていったのじゃありません。だらしのない格好は止めなさい」
「『だらしない』ってなあに?それって庶民の言葉?」
「何言ってるんですか!『だらしない』は『だらしない』でしょ。庶民も上流階級もありません」
「口を差し挟むようですが…」
メリーさんが割って入った。
「『だらしない』は、庶民の言葉ですらありません。下俗の言葉です。正しい日本語は『しだらがない』です」
「『しだらがない』って?」
「だからシルベさんが言っていた『だらしない』のことです。『しだらがない』を下品な人達がひっくりかえして『だらしがない』にしたのです。つまりは符牒・隠語(ふちょう・いんご)の類(たぐい)ですね」
「なんだあ。『だらしない』って下品な言葉なんだね。スジャータ、うれしいよお!庶民を通り越して下品になれるんだね。さっそく使うよお」
「スジャータお嬢様、いけません!」
メリーさんが強い口調でたしなめた。
「えっ、本当ですか?」
「本当ですよ。だから『しだらがない』ことを、『ふしだら』というのです。『ふだらし』なんて言葉は無いでしょう?」
「そういわれてみればそうですね」
「『しだら』とは邦楽の手拍子のことで、『しだらがない』とは調子が乱れることを意味していたのでこの言葉ができたという説があります。
また、『しだら』がインドの言葉『スートラ』から来たという説もあります。『修多羅』ですね。これは、金襴(きんらん)の立派な袈裟(けさ)に付けられる美しい飾り紐のことです。この紐がないとお袈裟をキッチリと身に着けることができません。その様子を『修多羅が無い』と言うようになったのです」
「『スートラ』って、植木等さんの『スースースーダララッタ』にも似ていますね。植木さんはご実家が、お寺だっていうことだし、歌詞は青島幸男さんだけれども・・・。
『しだら』がひっくり返ったのは、『あらたしい(新たしい)』が『あたらしい』になったのと同じですか?」
「そうです」
「だったら、『やど(宿)』を『どや』って引っ繰り返して簡易宿泊所を表現するのと同じですか?手品師や芸人が『たね』を引っ繰り返して『ねた』言うのと同じですか?ジャズマンが『ベース』を引っ繰り返して『スーベ』言うのと同じですか?ジャズマンが『ピアノ』を引っ繰り返して『ヤノピ』と言うのと同じですか?ジャズマンが『トロンボーン』を引っ繰り返して『ボントロ』と言うのと同じですか?ジャズマンが『ラッパ』を引っ繰り返して『パツラ』と言うのと同じですか?ジャズやってた芸人の『タモリ』が本名の『森田』を引っ繰り返したのと同じですか」
「わーい!シルベさんは下品な言葉を沢山知っているね!さすがは庶民だね」
「そうですよ。いまシルベさんが例示した言葉を使う人達はみんな下品で軽薄な人達でしょ?」
「メリーさん。そんな、下品で軽薄だって決め付けなくても・・・。メリーさんは固いなあ!」
「そうか、シルベさんは、下品で軽薄な庶民なんだね。シルベさんを庶民学の先生に選んだスジャータちゃんは本当に偉いねえ。えっへん!
スジャータ、シルベさんのことをますます尊敬しちゃったよお!シルベ先生、これからもよろしくね☆」
「スジャータちゃん、そういうのは尊敬しているとは言いません!」
シルベさんは、スジャータちゃんの先生を引き受けたことを心底後悔した。
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