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僕が君にしてあげられる事は?
「そのへんで・・・」と恵子 僕は涙を流した。
「ああやっぱりあんたなんか生むんじゃ無かった。」 恵子の母は、又そう言った。 それは恵子の父の葬儀の、一段落した後の
事だった。 恵子の父は、10年間ガンと戦い、
転移に転移を繰り返した末に、亡くなった。 恵子も母も、葬儀では涙を見せなかったので、
なんと気丈な母娘だ! と、廻りの人から 見られていた。 父が亡くなった時には、恵子は学校に居て
死には会えなかった。 しかし、10年の間に散々希望も打ち砕かれて
二人共何の感慨もないようであった。 「あんたのせいよ、あんたさえいなかったら・・・」
あ母さん、式場の人に聞こえるよ。 「そうね、あんたは車で待ってなさい。」 車の鍵を恵子に渡すと、母は控室へと向かった。 やじさんの独り言:
本当はそうでは無かったんじゃよ 大好きな父親じゃったからの〜 泣きじゃくったそうなんじゃ |
プレイヤー
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「大丈夫かい?」その声に振り向くと
点滴の支柱によりかかるような
恵子がいた。
どうして外に?
「君が心配で・・・」
顔色が蒼白な恵子に言われて僕は
苦笑した。
「母はいつもああなんだ。気にする事はない」
気にしているのは、恵子なんじゃ?
「今はそういう事にしておいてくれ」
僕が君にしてあげられる事は?
「そのへんで・・・」
一緒にベンチに腰掛けた恵子が、
僕の手の上に、手を重ねた。
その手はとても冷たかった。
やじさんの独り言:
どんな親でも親は親 付き合って行くしか
なかったんじゃろうの〜
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気がつくと僕は病院の外にいて、
胸が引き絞られるような感覚に、耐えていた。
恵子はあれを、生まれてから今の今まで
ず〜と聞かされ続けてきたんだろうか?
僕は自分の母親に、あんなふうに言われ続けたら?
と、思わずにはいられなかった。
(僕の母親は病気で亡くなったと父親から
聞いているが、おそらく物心付く前に
離婚したんだろうと思っていた。)
よしてくれ・・・
恵子の苦悩を思い量る事は、僕にはできなかった。
やじさんの独り言:
近所だったからよく泣き声を聞いたもんじゃ
辛かったろうの〜
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さっきと同じ答えが返ってきた後、
恵子の母親はこう続けた・・・
「この娘はいつも親の顔に泥を塗ってばかり、
本当に産まなければ良かった。
生きているだけで私には本当に迷惑。
甘ったれでグズで、私がいないと何もできない。
放っておいたら、ピアノを弾いてばっかり、
現実逃避しかしやしない。
こんな娘は生きていたってろくな人間には
なりゃしない。
本当に死ねばいいのに。」
僕は直ぐに言い返そうと口を開いた。 が、
その前に割り込んだ声があった。
-ごめんなさい。
-生まれてきてごめんなさい。
恵子の声だった。
何が原因だったか? 恵子は何が辛かったのか?
そんな事はもうどうでも良かった。
ただ僕はその直後、恵子の母親に対して
怒鳴り散らした事だけは覚えている・・・
やじさんの独り言:
この話は本当じゃったんじゃの〜
ウソであって欲しいと願っていたんじゃが
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僕はその女性に「お母さんですか?」
と尋ねた。 すると
「産みたくて生んだんじゃないけどね」
「薬を飲んだんだって? もっと確実な方法で
死ねば良かったのに。」
僕は耳を疑った。
「お母さんじゃないんですか?」
すると又
「産みたくて生んだんじゃないけどね」と、
同じ答えが返ってきた。
やじさんの独り言:
これは本当にあったんじゃよ 可哀想にの〜
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