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「こらっ!ひまわり待てよ!!」
「きゃー」
教会の控え室ではタキシードの仁と可愛らしいピンクのドレスを着た向日葵が走り回っている。
またあれから1年が経った。
毎日たくさんの宝物に囲まれながら私の人生はいっそう輝いていた。私は真っ白なシルクのウェディング
ドレスを着て鏡の前に立ち、窓から差し込む七色に光る陽に透けたヴェールの向こう側に映る自分の姿を
眺めた。外は青い海と夏の陽射しと新緑の季節。大好きなこの季節に愛しあう私たちは結婚式を挙げる。
「まま、きれい〜」
向日葵が走りよってきた。
「ほんと、綺麗だな…」
仁は私の前に立ち、私の頭から足元までを眺め愛しそうに言った。
「仁も、かっこいいよ」
私は笑って言った。
「ごめんな、結局こんなに時間かかって…。ほんとはもっと早くに式あげたかったんだけど…」
「いいよ、仁忙しかったし。だって3年も待った女だよ?待つのには慣れました」
私は笑った。
「ひまわりは〜?かわいい〜?」
向日葵が私たちを見上げた。
「もちろん、向日葵がいちばん可愛くて綺麗に決まってるだろ?」
仁は向日葵を抱き上げて笑った。向日葵は満足そうに笑って仁の首に手を回した。そこで控え室のドアが
開いた。
「そろそろお時間ですので式場の方へお願いいたします。」
「よし、じゃあ行くか!ひまわり!」
仁は向日葵を抱いたまま部屋を後にした。
私は光の差し込むそのシンとした部屋で古くなった携帯電話を取り出しそっと耳にあてた。
(あやこ?俺だけど…こんな形で終わるなんて思ってね〜よ?いつか絶対綾子を迎えに行くから待ってろ
よな…。綾子を幸せにするのは他の奴じゃなくて俺だって信じてるから…いや、絶対そうだから、誰から
のプロポーズも受けずに俺を待っててほしい。じゃあ、いつか…)
あの日、仁が私にくれた最初のプロポーズだった。
3年間怖くて聞くことの出来なかった留守電。今では私の宝物だよ?仁には内緒だけどこれは絶対ずっと
とっておくからね…仁は知らないけど…いつまでもずっと忘れない。この気持ちを…。
そしてそんな想いを胸に私も教会に向かった。眩しい太陽と純白の入道雲と真っ青な空の下、仁が私にむ
かって笑ってる。向日葵が幸せそうに仁に抱きついている。もう他に欲しいものなんて何も無かった。そ
して私たちの大切なたくさんの人たちの前で私たちは永遠の愛を誓い、神様の前で誓いのキスをした。教
会式が終わり、ひらひらと舞うピンクや黄色や白のフラワーシャワーのトンネルを歩いた。
「あやいさん!きれい!!」
藍ちゃんが嬉しそうに言った。
「ありがとう!ブーケトスは藍ちゃんが取ってね」
「まかせといて!!!」
藍ちゃんは不敵な笑顔を浮かべて言った。
「ほんとにありがとうね」
私はちょっと涙ぐんだ。
「ほらみんながブーケ投げるの待ってるよ!」
私は藍ちゃんに背中を押されて階段の上にあがり、そして真夏の空にブーケを投げた。
思いの他遠くに飛んだブーケを追って皆が振り返った。するとそこには息を切らせた和也が立っていた。
「あ…俺取っちゃったんですけど…」
和也は少し回りを見渡しながら言った。
「あ…じゃあ、やりなおししますか?」
式場の人が言った。
「いや、じゃあ、取ったついでに俺があげたい女性にあげてもいいですか?」
和也は言った。そして走ってきて乱れたスーツを直しネクタイを締めなおしてすたすたと藍ちゃんの前に
歩いていった。
「このブーケ受け取ってください。」
和也は照れ笑いしながらも真剣な目で言った。
「はい。」
そこにいた全員が固唾を飲んで見守る中、藍ちゃんは嬉しそうにその花束を受けとった。そして和也は今
度は私と仁の前まで歩いてきた。
「今日は、ほんとにおめでとう。これからも幸せにな」
「ありがとうな…和也」
「ありがとう…ていうか…あの藍ちゃんとは…」
私は小さく聞いた
「皆で会ってるうちに意気投合したんだ。あいつは俺がちゃんと幸せにするから心配すんなよな。もうお
前は安心だしな。」
「びっくりしたよ。でも和也なら安心だよ。泣かせたら許さないからね」
和也を睨んで私は笑った。
「和也、ほんと今までありがとうな。お前が守ってくれたものを今度は俺が守っていくから…」
仁は頭を下げた。
「では、皆様お写真とりますので並んでいただけますか?」
その合図で皆が笑顔でカメラに向かった。
今、私の眼に映るのは原色に彩られた輝く世界。素敵なことはここから始まる。幸せはリンクして皆が笑
う。私の大切な物や人々、行き交うサインを見逃すことなく全てのものに命をそして愛を…
そういう小さな始まりと終わりを積み重ねながら歩いていく。仁と2人で…。
・・・END・・・
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