●連続小説‐SIGN‐●

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私が書いたはじめての小説「SIGN」

こんなに長い小説になると思ってなかったのだけど(笑)

はじめは面白半分でちょこっと書いていたら

思いのほか好評で、どんどんと長編になっていってしまったという感じです。。。


人間には少なからず、インの部分とアウトな部分とあると思うのだけど

私はその自分のインの部分でこの小説を書き上げたような気がします。

本当の自分っていうのはなかなか普段は出てこないもので、実際に考えてみても

なにを求めているのか、いちばん何が欲しいのかわからない…

この小説を書いているあいだ、夢中で透明なものを垣間見てる気がしてた

その気持ちを表現するのはすごく難しいのだけど…

自分の心の中にあるものが勝手に文章になっていくといった感じで

心が透明になっていくような気がしたの。。。

何かをしていてこんな気持ちになったことはないから、これからも

自分を知るための術として、小説を書いていこうかなと思う。

曲は小説のイメージ通りだったので、勝手に主題歌にしちゃってるのだけど

鬼束ちひろの「SIGN」です。良かったら聞いてみてください!


余談ですが…

ペンネームは、私が小説を書き始めたときに、読んでくれてよろこんだ友達が

「いささか先生!続き今日もよろしくお願いします!」

という言葉から…あて字で「好咲(いささか)」に決まったのです(笑)

「こらっ!ひまわり待てよ!!」

「きゃー」

教会の控え室ではタキシードの仁と可愛らしいピンクのドレスを着た向日葵が走り回っている。

またあれから1年が経った。

毎日たくさんの宝物に囲まれながら私の人生はいっそう輝いていた。私は真っ白なシルクのウェディング

ドレスを着て鏡の前に立ち、窓から差し込む七色に光る陽に透けたヴェールの向こう側に映る自分の姿を

眺めた。外は青い海と夏の陽射しと新緑の季節。大好きなこの季節に愛しあう私たちは結婚式を挙げる。


「まま、きれい〜」

向日葵が走りよってきた。

「ほんと、綺麗だな…」

仁は私の前に立ち、私の頭から足元までを眺め愛しそうに言った。

「仁も、かっこいいよ」

私は笑って言った。

「ごめんな、結局こんなに時間かかって…。ほんとはもっと早くに式あげたかったんだけど…」

「いいよ、仁忙しかったし。だって3年も待った女だよ?待つのには慣れました」

私は笑った。

「ひまわりは〜?かわいい〜?」

向日葵が私たちを見上げた。

「もちろん、向日葵がいちばん可愛くて綺麗に決まってるだろ?」

仁は向日葵を抱き上げて笑った。向日葵は満足そうに笑って仁の首に手を回した。そこで控え室のドアが

開いた。

「そろそろお時間ですので式場の方へお願いいたします。」

「よし、じゃあ行くか!ひまわり!」

仁は向日葵を抱いたまま部屋を後にした。

私は光の差し込むそのシンとした部屋で古くなった携帯電話を取り出しそっと耳にあてた。

(あやこ?俺だけど…こんな形で終わるなんて思ってね〜よ?いつか絶対綾子を迎えに行くから待ってろ

よな…。綾子を幸せにするのは他の奴じゃなくて俺だって信じてるから…いや、絶対そうだから、誰から

のプロポーズも受けずに俺を待っててほしい。じゃあ、いつか…)

あの日、仁が私にくれた最初のプロポーズだった。

3年間怖くて聞くことの出来なかった留守電。今では私の宝物だよ?仁には内緒だけどこれは絶対ずっと

とっておくからね…仁は知らないけど…いつまでもずっと忘れない。この気持ちを…。

そしてそんな想いを胸に私も教会に向かった。眩しい太陽と純白の入道雲と真っ青な空の下、仁が私にむ

かって笑ってる。向日葵が幸せそうに仁に抱きついている。もう他に欲しいものなんて何も無かった。そ

して私たちの大切なたくさんの人たちの前で私たちは永遠の愛を誓い、神様の前で誓いのキスをした。教

会式が終わり、ひらひらと舞うピンクや黄色や白のフラワーシャワーのトンネルを歩いた。

「あやいさん!きれい!!」

藍ちゃんが嬉しそうに言った。

「ありがとう!ブーケトスは藍ちゃんが取ってね」

「まかせといて!!!」

藍ちゃんは不敵な笑顔を浮かべて言った。

「ほんとにありがとうね」

私はちょっと涙ぐんだ。

「ほらみんながブーケ投げるの待ってるよ!」

私は藍ちゃんに背中を押されて階段の上にあがり、そして真夏の空にブーケを投げた。

思いの他遠くに飛んだブーケを追って皆が振り返った。するとそこには息を切らせた和也が立っていた。

「あ…俺取っちゃったんですけど…」

和也は少し回りを見渡しながら言った。

「あ…じゃあ、やりなおししますか?」

式場の人が言った。

「いや、じゃあ、取ったついでに俺があげたい女性にあげてもいいですか?」

和也は言った。そして走ってきて乱れたスーツを直しネクタイを締めなおしてすたすたと藍ちゃんの前に

歩いていった。

「このブーケ受け取ってください。」

和也は照れ笑いしながらも真剣な目で言った。

「はい。」

そこにいた全員が固唾を飲んで見守る中、藍ちゃんは嬉しそうにその花束を受けとった。そして和也は今

度は私と仁の前まで歩いてきた。

「今日は、ほんとにおめでとう。これからも幸せにな」

「ありがとうな…和也」

「ありがとう…ていうか…あの藍ちゃんとは…」

私は小さく聞いた

「皆で会ってるうちに意気投合したんだ。あいつは俺がちゃんと幸せにするから心配すんなよな。もうお

前は安心だしな。」

「びっくりしたよ。でも和也なら安心だよ。泣かせたら許さないからね」

和也を睨んで私は笑った。

「和也、ほんと今までありがとうな。お前が守ってくれたものを今度は俺が守っていくから…」

仁は頭を下げた。



「では、皆様お写真とりますので並んでいただけますか?」

その合図で皆が笑顔でカメラに向かった。

今、私の眼に映るのは原色に彩られた輝く世界。素敵なことはここから始まる。幸せはリンクして皆が笑

う。私の大切な物や人々、行き交うサインを見逃すことなく全てのものに命をそして愛を…

そういう小さな始まりと終わりを積み重ねながら歩いていく。仁と2人で…。


                                   ・・・END・・・

仁は波打ち際で遊んでいる向日葵を優しく抱き上げて振り向いた。

「なに……?なんで…?」

私は訳も分からずにそのまま二人を見つめた。

「ごめんな…遅くなった。」

仁は私の目の前まで向日葵を抱き歩いてきた。

走ってきたのか、肩で呼吸をしていて少し髪が濡れていていた。

「どうして…なにが?…わからないよ…」

私の涙はとうとう我慢できずに瞳から零れ落ちた。

「意味ねーじゃん。3人じゃなきゃ。」

フラッシュバックした。出逢ったあの日みたいに、今度はネオンじゃなくて夕日をバックにしていっそう

キラキラして仁は言った。私はそれがまぶしすぎてそして涙が出すぎてほんとうに仁のことが見えなくな

った。

「何言ってるの?じん…その子は…」

「ひまわり…だろ?」

「どうして…?そうだけど…なんでそれ知ってるの?」

私は涙をぽろぽろこぼしながら言った。

「情けね〜な…おれ…ほんっと馬鹿。でももう今度こそお前とこの向日葵を離さねーよ」

「だから…どうして?」

「たくさんの俺らの周りの人や全ての瞬間がこうして俺らの為にまわってくれたんだよ。ごめんな…ずっ

と大変だったよな…ほんとごめんな…」

仁は言った。

「でも…仁には守るべきものがあるでしょう?」

「お前ら以外に何もねーよ」

仁はきっぱりと強く言った。

「でも…」

涙と鼻水だらけの私を目の前に仁は続けた。

「俺の目の前に映るこの世界。この海も空も緑も全部俺らだけのためにある。俺はそう思える。たくさん

のものを見てたくさんのことも知った。いくら増えたって大切なものってそう簡単に消えたり霞んだりし

ないんよな。いつまでたっても色鮮やかなまま完璧な映像としていつも頭の真中にある。それがいつも綾

子の笑った顔だったんだ。」

「でも、仁には仁の居場所があるでしょう?」

「もう、心配すんなよ。ヒゲも説得したし、事務所の社長もオッケーくれたし、あとは誰かさんだけなん

だけどな。しかも想定外にひとり増えて倍率高くなってるし…」

仁は優しく笑った。

「ひまわり。ごめんな…ずっとそばに居なくて…」

仁は向日葵の鼻のあたまに人差し指で触れた。

「…まま?」

向日葵は不思議そうに仁の顔と私の顔を交互に見た。

「だって…もう決心してたのに…急にそんな嬉しいこと言われても…」

「急じゃないだろ?お前ちゃんと3年前留守電聞いたのかよ?」

私は黙って首を横に振った。

「まったく、これだよ…ほんとに今度こそちゃんと聞けよ…?」

仁は向日葵を降ろして私の方をまっすぐに向いた。

「あやこ 結婚してください。ひまわり 君のパパにして下さい」

仁は頭を下げた。

私はどうしていいかわからず次から次へと涙をぽろぽろ落としながら仁を見つめていた。私が黙っている

と仁は顔を上げて言った。

「あやこ?もう一回プロポーズ聞きたいって言ってももう言わねーよ?」

仁は笑った。

そしてただ仁を見つめている私に突然キスをした。きっと白雪姫は目覚めるときこんな気持ちだったのか

もしれない。ずっととまっていた時が、冷たくなってしまった身体が急に熱を持って鼓動とともに動き出

す瞬間を…すべてに輝きが戻る瞬間を…

「これ、誓いのキスな、それとこれ…3年前に渡すはずだった婚約指輪」

仁は自分のシルバーのネックレスにつけていたダイヤのリングをはずして私の指にはめた。そして照れく

さそうに笑って、私を抱きしめた。もう忘れてしいそうだった仁のぬくもり、愛して病まないその腕に胸

に抱きしめられて私はうなずいた。

「うん…ずっとずっと仁が好きだったよ…ほんの少しの時間だって忘れたこと無かった。離れていたけど

私の心はいつだって仁と一緒にいたよ…」

そして、もう1度仁のきれいに輝く瞳を見つめて私は言った。

「私とひまわりとずっと一緒にいてください。いいよね?ひまわり?」

私は向日葵の可愛らしい瞳に尋ねた。

「うん」

ひまわりは嬉しそうにうなずいた。

ダイヤは夕日色に輝きイエローダイヤモンドみたいに見えた。この日の夕日をたぶんずっと私は忘れな

い。他に創りだすことのできない今日この瞬間だけに降り注ぐこのオレンジと金色と赤とグレーと水色の

コントラストを…そしてその優しく壮大な光の中の3人のシルエットを…。

その日の夜は眠れなかった。向日葵はとても疲れたのかあっという間に寝てしまい、私は遠くに聞こえる

波の音を静かに聞きながら向日葵の寝顔を眺めていた。 そしてやっと明け方少し浅い眠りについて夢を

見た。その夢は向日葵がずっと大きくなっていてキレイな真っ白のワンピースを着て幸せそうに赤ちゃん

を抱いているという夢だった。ピンクの花や黄緑の花が一面に咲いている風の吹きすさぶ高原で、空は作

ったような青でそこからは水色の海が広がっているのが見えた。そして私は空を飛んでそのまま水色の海

に空からザブンともぐりイルカのようにすいすいとそのどこまでも続く海の中を泳ぐという夢だった。目

が覚めると、また静かな波音が心地よく聞こえ空はうっすらとオレンジに色づいていた。夢の余韻で朦朧

としながらしばらく部屋の障子の木枠を眺めていたら、嘘みたいに爽快な気持ちになっていて心がかなり

大丈夫になっていた。

そしてこの島で過ごす最後の日に私はあの留守電を聞くことに決めた。そして今度こそ本当に仁を思い出

に変えて新しい毎日を迎えていこうと決心した。3年目にしてこの場所でこの時だからできた決断だと思

う。


残りの2日間は思い出の場所を向日葵とめぐった。そして島に滞在する最後の日には、私は向日葵を連

れて夕日を見に行くことにした。水平線に消えていく金色に輝く太陽を向日葵に見せてあげたかった。あ

んなに壮大でそれでいて繊細に消えていくその毎日起こっている世紀の瞬間を…。



「あっという間だったな…」

夕暮れ近くなり、人気のなくなった砂浜の入り口の木の階段に腰掛けて私は言った。波打ち際の近くでは

向日葵がいつものようにぴょんぴょんと跳ねて小さな波と追いかけっこをしている。だんだんと空がオレ

ンジがかって太陽と水平線が近くなりはじめていた。私はズボンのポケットから携帯電話を出してゆっく

りと画面を開き、そのオレンジに反射して光る画面をじっと見つめていた。さすがに簡単に3年間分の決

心はすぐにはつかないもんだな…。そしてもう1度向日葵の方を見ると向日葵の体は金色の光の上に綺麗

なシルエットとなって私の眼に映った。私にはその光景がかつての仁の姿にダブって見えた。そしてゆっ

くりと親指を留守メモのボタンにおいた。そのとき、私の横を誰かが横切った。顔をあげるとその影はま

っすぐに向日葵に向かって歩いて行った。夕日と海と波と空と太陽とがキラキラと輝いてまぶしかっ

た。私は目を細めてその影を追って立ち上がった。

「じん!」

私は驚いて叫んだ。

「ぼうし!」

向日葵が私の手から麦藁帽子を取った瞬間に魔法がとけ全ての時間が動き出したようだった。

「久しぶり……」

たぶん普通だったらこんな言葉とっさに出てこないと思う。私は驚きと自分の溢れてしまいそうな気持ち

を必死に隠し、平静を装うためにこの言葉を選んだように思う。

「ひさしぶり…」

仁も言った。

やっぱり仁はかなり大人びていて、もう男の子というよりもしっかりと男の人という感じだった。白いT

シャツから見える優しかった腕も手も少し細くなっていた。

「…どうして…ここにいるの?」

私は涙を必死にこらえて言った。

「仕事、急に来ることになって……。懐かしくてここに来たんだ」

仁は優しい眼で言った。

「まま〜?」

ひまわりがシャツの裾をつかんで私を覗き込んだ。

「あや…お前の?」

仁が私の名前を呼びかけてやめた事にすぐ気づいた。私を名前で呼ばなかったことで私は悟った。そう過

去にはどうしたって戻れない、そしてそれは仁の優しさだってことにも気がついた。

「そう…わたしの子だよ。可愛いでしょ」

私は向日葵を抱き上げた。

「結婚したんだな…おめでとう。」

「うん。」

私は少しうつむいてうなずいた。

「じんは?新しい彼女は?」

「オレは忙しくてそれどころじゃないな…でもお前が幸せなら良かった。ずっと心配だったから…」

仁は優しく、そして寂しそうな眼をして言った。

「うん。私は今すごく幸せだよ。もう心配しないで。私は大丈夫だから…」

最期の言葉をしっかり泣かずに伝えるだけで精一杯だった。

「そっか…じゃあ安心だな。」

仁は風に吹かれながら言った。そしてあの夏みたいに展望台の手摺に手をかけて海を眺めた。

「あ〜、ここはほんとに変わらね〜な。もう3年も経って俺だってお前だって世の中だってこんなに変わ

ってるのにな…」

しばらく仁は青く光る海を懐かしそうに愛しそうに眺めていた。

「よし、じゃあオレ行くわ…これから仕事だし!お前も頑張れよ。離れてもいつでも応援してるからな」

仁は最高に輝いた笑顔で言った。その笑顔にも髪にも肩にも腕にも私の涙の粒が光を添えた。

「仁も頑張ってね。きっと大変だろうけどテレビのこっち側からいつも応援してるから…」

さようなら仁。運命の再開で今度こそほんとの別れ…こんなに愛しているのに2度も別れなければいけな

いなんてね…ほんと皮肉だよ…何度も心の中で愛してると言った。言葉にできなくても、その愛しい髪

に、頬に、触れる事ができなくても目の前にいる仁にありったけの私の気持ちを伝えたかった。もう二度

と後悔しないように…。笑顔で歩いていけるように…。

「ありがとな。元気で…。」

仁はきれいな手をそっとあげた。

「うん。元気で…」

私も手をあげた。

「ばいば〜い」

真似をして向日葵が手を振った。

「おう、ママの言う事ちゃんと聞いて元気に育てよ」

仁は優しく向日葵の頭を麦藁帽子の上からさわった。そして階段を下りていった。こうして仁の後ろ姿を

何度抱きしめたり見送ったりしたことだろう。いつもありったけの想いで仁の背中を見ていた。少しの抜

かりもなく少しの不安もなく信じきってこの背中を愛してた…。仁の姿がまだ見えているうちに涙は待っ

てはくれず溢れてきた。仁の背中がぼやけて白い霧のように見えた。ほんとはずっとずっと大丈夫なんか

じゃなかった。もちろん幸せだったし、後悔もしていない。でも仁と別れたあの冬の日の留守電やメール

はまだ怖くて見ることができないでいた。そう簡単にはいかないけど…

「まま…だいじょうぶ〜?どうしたの?」

向日葵が心配そうに私の足にしがみついた。

「ごめんね…大丈夫だよ…ごめんね」

私はしゃがんで向日葵を抱きしめた。

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