映画レビュー
ソーシャル・ネットワーク世界で約5億人もの利用者を抱えるSNS「Facebook」の誕生と飛躍の裏に隠された人間模様を描く。
監督は「ファイト・クラブ」のデヴィット・フィンチャー。 主演は「イカとクジラ」で一躍注目の若手俳優となったジェシー・アイゼンバーグ。 その他、スパイダーマンの新シリーズで主演を射止めたアンドリュー・ガーフィールドや 人気シンガーソングライターのジャスティン・ティンバーレイクなど若手俳優が顔を揃えている。 SNSとは「ソーシャル・ネットワーク・サービス」の略でネットワーク上のコミュニケーションサービスの事を指す。日本で人気となっている「Mixi」もその代表の一つである。ネットワーク上を介して、自らの趣味や職業、或いは住んでいる地域などの情報を元に自分と合いそうな他人を探しだし、コミュニケーションが取れるサービス、というのが大まかな概要である。SNSはその、現実社会に存在する物理的な距離感を超えてコミュニケーションがとれるという魅力から若者を中心に爆発的な人気となっている。
「Facebook」はそうしたSNSの中でも、世界最大利用者数をほこり、アメリカではなんと浸透率が70%を超えているというから驚きである。その波は一時的な時好ではなく、もはや日常生活に根付いたコミュニケーションツールにさえなりつつある。
この映画はそんな、時代の中心とも言える「Facebook」の裏側にあった物語を描いている。フィクションを交えていたとしても、こうして実在する人物、会社をリアルタイムに描く事自体が異例だが、その対象がこれほど時代の最先端とは、まさに珍事に近いことだろう。
しかし、デヴィット・フィンチャーは素晴らしい。そうした企業の裏にあった金銭や人間関係による泥沼のエピソードを、単なるスキャンダラスな物語として見せないのである。
物語は、過去と現在をフラッシュバックで繋ぎながら同時進行で進んでゆく。「Facebook」を設立したマーク・ザッカーバーグを中心とする人物達の現状を過去によって説明する、といった相互関係で構成されていのである。しかし、そこを単なる説明で終わらせない。マーク・ザッカーバーグという人間を、過去と現在で照らし合わせていくことによって、どんどんと立体的な人物像へと浮かび上がらせていくのだ。マーク・ザッカーバーグという男を囲みこむ「秀才」という名の殻を打ち破り、その内側の愚劣さや幼さを小あぶり出していく、見事な心理描写である。
こうした人物の明確な掘り起こしは、複雑な構成を丁寧かつ明瞭な形で書き起こした脚本のアーロン・ソーキンの力も大きい。また、独特のスピード感を演出した編集や、それらをサポートする映像や音楽も秀抜である。観客が常に画面から目を離せない。案外シンプルで平板になりやすいプロットが、ここまで魅力的でスタイリッシュな形になるとは予想外だった。
また役者のアンサンブルも素晴らしく、バランスの良さ、質共に文句の付けようがない。特にマーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグとショーン・パーカーを演じたジャスティン・ティンバーレイクは出色だった。キャラクターにぴたりと嵌っただけではなく、特に膨大な台詞に呼吸をさせていた。
と、いったように作品の出来としては申し分がないと思う。
しかし、私個人的な意見として、何故かもう一つ作品に入っていけなかったというのも本音である。 理由の一つとして考えられるのは、「Facebook」が身近な存在ではないからである。
現在、日本では「Mixi」や「GREE」などのSNSの人気に押されて「Facebook」があまり浸透していないという事実がある。その為、「Facebook」の内情そのものには興味が沸かず、スキャンダラスな魅力を感じないのだ。しかしどうだろう。この映画はそうした内幕劇の中の醜聞を見せることが狙いだろうか。私には、前述したように、むしろ異端的秀才達の中にある人間性を見つめることにこそ本作の狙いだと映るのだ。 では、何故この作品に違和感を感じるのか。それはこの作品があまりにも固めすぎているところにあるのではないか。映し出される人間は、絵としては見事だが、その見えているもの以外に想像させられることがあまりない。台詞により間という間が埋められ、膨大な情報に溢れていることで、想像させる隙を与えられないことが原因だと思う。物語は疑問で成り立っていると思う。ある人物がいたとして「この人はどういう人なのだろう」、「これから一体どうするんだろう」と考えを膨らませる。その興味こそが好奇心を揺さぶるのだと思うが、この映画はどうもその隙を与えてくれない。この映画を見終わっても、今ひとつ誰かに話したくならなかったのはこの点が影響しているのかも知れない。
作品の完成度としては非常に高い。 一見の価値はあることは間違いない。 わたしの中でも秀作としてしっかりと記憶の中に刻まれた。 ただ、好きな作品としては思い出すだろうか。 わたしにはそういう作品だった。 |
最新の画像
Cafe‘Cat Man Bouquet’/スタジオクマノ
8ヶ月ぶりですね。 更新頻度がこれなんで見てる人がいるかわかりませんが、初めて東京で企画展に参加するので告知させていただきます。 ポー...
未登録です








