アルバム:Rachmaninov Piano Concerto No. 2, Rhapsody on a Theme of Paganini 演 奏 者:Vladimir Ashkenazy (pf) 指 揮 者:Andre Previn 管弦楽団:London Symphony Orchestra 録 音:1970, 1971 レーベル:LONDON 最近、気ぜわしい日々が続いているために、なかなかゆっくりCDを聴く機会がなく、このコーナーも週末限定になりそうだったのですが、久しぶりに、ラフマニノフの協奏曲が「どうしても、とっても聴きたい」という気持ちになりました。なので、今朝、iPodに落として通勤時間を使って聴くことに。 普段、あまりラフマニノフの作品は聴かないにもかかわらず、意外と持っているCDの数は多いのですが、今日の私の気分に合っていたのは、アシュケナージの演奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第2番でした。 他にすぐ思いつく演奏家は、リヒテル、ホロヴィッツ、スルタノフ、ラフマニノフ本人の演奏で、多分他にもいくつかあったような・・・なかったような。 今回、アシュケナージを選んだのには、さらっと聴き流せる軽さが欲しい、と感じたからです。 アシュケナージは「手があと5ミリ大きければ」と言っていたそうです。ラフマニノフを演奏するにあたり、ではなく、どの曲を演奏するにしても、手がもう少し大きければこうしたい、こう出来るのに、という思いが強かったのでしょう。弾き易さだけでなく、音楽面でも色々ともどかしいこともあったのかも知れません。私たち聴衆にとっては、それでも、アシュケナージの持っているもので十分すぎる素晴らしい演奏だと思います(好むと好まざるは別問題)。過去形で書いているのは、現在はピアニストとしてよりも指揮者としての活動の方が中心なので、悪しからず。 アシュケナージは、旧ソ連出身ですが、国の音楽に対する考え方、政策に納得がいかず、国の圧力から逃げるために、奥さんの故郷のアイスランドへと行き(亡命)国籍を取得した・・・その結果、チャイコフスキーのコンクールでの優勝の記録は抹消されてしまった、という、波乱万丈に満ちた若かりし頃だったと記憶しています(違っていたらどなたか訂正して下さい)。 ソ連邦樹立に導いたロシア革命に到るまでの年月もまた、演奏家にとっても作曲家にとっても色々と大変な時代だったと思います。ラフマニノフも例外ではないでしょう。 プロコフィエフが自分とラフマニノフについて面白い比較をしていた書籍がありました(出典は忘れましたが、プロコフィエフの伝記系の書物でした)。 プロコフィエフがギリギリのところまで政府に反対する思想を隠そうとしなかったところ、ラフマニノフは比較的あっさりと受け入れ、音楽活動がしやすい環境に自身を置いたこと。また、二人ともアメリカに渡っていますが、プロコフィエフは自分の音楽を徹底的に追求していたのに対し、ラフマニノフは聴衆が受け入れやすい作品を用意したこと。(もちろん、ラフマニノフは彼なりに、難を逃れるためドレスデンに行ったりしていましたが。) 第2番が完成されたのは、渡米の7、8年前なので、この作品にこの発言は当てはまらないと思いますが、それでも第3番は、アメリカへの演奏旅行のために作曲されたことを考えると、なんとなく納得もいきます。 いつの時代も、作曲家の多くは政治に翻弄されながら、でも力強くそれに立ち向かいながら作品を書いていたのかしら。 ラフマニノフの作品を聴くと、いつもそんなことを考えてしまいます。 《収録曲》
ラフマニノフ 1. Piano Concerto No. 2 in C minor, Op. 18 2. Rhapsody on a Theme of Paganini |
本日の Rachmaninov
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アルバム:Rachmaninoff: The Sea and the Gulls 指 揮 者:James DePriest 管弦楽団:The Oregon Symphony 録 音:1987年10月23日、24日@Arlene Schnitzer Concert Hall レーベル:DELOS 私はディプリーストの指揮がとても好きです。人間の持つ、深い温かみを感じるのです。 数年前、ディプリーストが東京都交響楽団の指揮をしたのを聴きに行ったことがありましたが、あまりにも懐かしく、思わず涙ぐんでしまったほどです。その指揮者の音、海を渡ってきたんだな・・・と。 学生時代、あまりコンサートに足を運ぶことのなかった私ですが、この演奏が録音されたArlene Schnitzer Concert Hallは、それは本当に素晴らしい、まるで映画のワン・シーンに使われそうな美しいホールです。リンク先では残念ながらホールの全貌を見ることはできませんが、ちょこっとだけ写真が出ています。 こちらの方が、より分かりやすいかも → http://www.orsymphony.org/schnitz/ 初めてこのホールに行ったのは高校生のころ。ミュージカル「My Fair Lady」を観に行きました。美しい舞台だけではなく、観客もみな、本当に美しく、男性はタキシード、女性はイヴニングドレス、もう、見るもの全てが輝いていました。お化粧すらしていない私は、なんだか恥ずかしさを覚えて、休憩時間も自席で小さくなっていたのを思い出します。 このCDから話がずいぶんとそれてしまいましたが、でも、この一枚を手にすると、必ずその日のことを思い出し、その後も年に数回訪れた時の様子を思い出し、懐かしい気持ちに浸ります。 そもそも、このアルバムを買ったのも、ある日のそのホールでのこの作品の演奏が妙に気に入り、翌日、地元のCDショップで買ったのでした。 ラフマニノフにまだ興味を持つ前のことでしたが、ゆったりとした曲調、柔らかな音色、嫌味の無いダイナミークの幅、全てに魅了され、試験勉強をしながらよく聴いていました。 この一枚は、色々な意味で私にとっては思い出深いものです。今も、過去にタイムスリップしながら、ホールの豪華絢爛な雰囲気、ロビーやホワイエでの美しい貴婦人方、殿方のシルエット、演奏会終了後のブロードウェイの賑わい、それらが実に鮮やかに蘇ります。 《収録曲》
ラフマニノフ 1. La Mer et les Mouettes 2. Symphony No. 2 in E minor, Op. 27 3. Vocalise, Op. 34 No. 14 |
アルバム:Rachmaninov: Piano Concerto No. 3 - Gavrilov / Muti 演 奏 家:アンドレイ・ガヴリーロフ(Andrei Gavrilov) 指 揮 者:リッカルド・ムーティ(Riccardo Muti) 管弦楽団:フィラデルフィア管弦楽団(The Philadelphia Orchestra) 録 音:1986年10月@Memorial Hall, Fairmount Park, Philadelphia レーベル:EMI 第3番の協奏曲は、母が学生時代にアレクシス・ワイセンベルグの演奏会で聴いて未だに興奮冷めやらずで、ワインでも飲みながらこの作品の話題になると、必ずワイセンベルグの話になります。三楽章をアンコールで弾いたことがさらに印象を強めたらしく、うら若き乙女には確かに強烈に記憶に残る演奏会だったのではないかと思います。 私は、チッコリーニの演奏でシューマンの協奏曲とこの作品を一晩で聴きましたが(ご高齢なのにスゴイパワーです)、さらに、やはりアンコールにはラフマ3番の3楽章。これ、もしかしたらアンコールの定番なのでしょうか? 母の思い出話を聞いたのは学生時代ですが、この話をして急にこの曲が聴きたくなったのか、食事の後に地元のCD店に買いに行った記憶があります。 録音のせいかも知れませんが、兎に角ピアノの音が全て聴こえてきて、細かいパッセージも美しく鮮明に奏でられているのがよく分かります。 ロシア人作曲家の作品を聴いて思うのは、ビューンという風の音が聴こえてくる感じがする、ということでしょうか。そよ風でもなく、嵐でもなく、でも寒々しい大きな流れの風。決して、曲が寒々しいわけではないのですが、壮大な作品が多い、と言うことなのかも知れません。 ロシア王朝の建築物に象徴される、外側は殺風景でも中が豪華絢爛の、少し尖った感じの美しさと似たような雰囲気があるようにも思えます。 この録音のテンポは遅くも速くもなく、全部で45分くらいなので、まぁどちらかと言うと若干遅いのかも知れませんが、三楽章は貫禄があって地に足がついている、そういう演奏で安心して聴けます。私は、個人的にはもう若干速い方がすきなのですが、この録音は妙な引っ掛かりがないので、お部屋でかけていても、非常に心地よく聴けてしまうのが有りがたいです。 《収録曲》
ラフマニノフ 1. Piano Concerto No. 3 in D minor, Op. 30 |
アルバム:Rachmaninoff Plays Rachmaninoff 演 奏 家:セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff) 指 揮 者:ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy); レオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski) 管弦楽団:フィラデルフィア管弦楽団(THe Philadelphia Orchestra) 録 音:1929年、1934年、1939年、1941年 レーベル:BMG Classics 満遍なく色々な作品を聴き、さらにはブログに記事を書こう、と思うとけっこう一生懸命になって聴くものだな、と思いました。今のところ、それは楽しい作業であり、また音楽を堪能するという意味では私には良いようです。 さて、今日はラフマニノフ自身が演奏したラフマニノフのコンチェルト4曲とパガニーニの主題による変奏曲です。 初めてこのCDを聴いた時は、ちょっとヒステリックな演奏だなぁ、と思ってなんとなく敬遠していたのですが、今回改めて聴いてみたところ、確かにちょっと感情的なのですが、やはりラフマニノフは素晴らしい演奏家だと言うことがよく分かります。 年代を考えると録音の質は決して良いわけではありませんが(でも、悪くもない)、その中で和音の全ての音が聴こえてくるのは、相当のテクニックがなければ(それと手の大きさ)出来ないことだと思います。その中の音が全部聴こえてくると、こういう音楽になるのか・・・とちょっといつもと違うラフマニノフのピアノ協奏曲を聴いたような気分になりました。 上手くいえませんが、本来なら和音が全部聴こえてきたら重さを感じそうなものなのに、ラフマニノフのこの演奏ではその逆で、かえって軽く聴こえます。全て聴こえることに透明感があるからかも知れません。この音、作曲者本人が理想とした音なのかはわかりませんが、以前、学生時代にJohn Perry氏のマスタークラスでテンペスト(ベートーヴェン)を弾いた際に、「ラフマニノフのようなクリスピーな音を出して」とアドバイスを受けたことがありました。 クリスピー、と言うのは日本語に直すのは難しいのですが、比較的乾いていて軽く透明感の高い音質を想像頂ければ良いと思います。Perry氏のそのアドバイスを思い出しながらこのCDを聴いてみると、なるほど、クリスピーな音と言うのはラフマニノフを弾くには必要不可欠な要素なのかも知れない、と思いました。 さて、ラフマニノフのピアノ協奏曲は、全部で4曲ありますが、私たちが普段よく演奏会等でプログラムに見かけるのは2番と3番です。でも、私は4番がけっこう好きで、もっと演奏されても良いと思うのですが。もちろん、1番も良いのですが。。。2番、3番も素晴らしい作品ですけれど、4曲を比較すると、とてもシリアスな印象を受けます。逆に、1番も4番も遊び心があり、聴いていてもなかなか楽しいです。 ラフマニノフの作品は、私にはどことなく重苦しい印象があり、全体的に分厚くてマット感があるため、あまり好んで聴かないのですが(そういった意味で、アシュケナージの協奏曲2番は非常に良い)、「パガニーニの主題によるラプソディー」は大好きです。この作品も作曲家自身の演奏で収録されています。 ただ、私にとってこの作品は、2年ほど前に聴いたある演奏家の演奏に勝るものはない、と思っているので、この録音も『いいんだけど、何か物足りない』と思ってしまいます。まぁ生演奏に勝るものはない、と言われればそれまでなのですが、本当に素晴らしい演奏だったのです。もともと、この作品はあまり好きではなくて、ちょっと寄せ集めっぽく聴こえていたのが苦手だったのですが(無礼な発言にお許しを!)、素晴らしい指揮者と素晴らしい演奏家の共演だと、こうも魅力的な作品になるのか、と思うのと同時に、この作品の良さを改めて知ることになり、CDを聴く都度、「あの演奏は本当の素晴らしかったな〜」って思い出します。 やはり曲の最大限に魅力を聴き手に伝えるのには演奏家の普段からの努力と作品に対する謙虚な気持ちはもちろんのこと、その作品に対する理解力と表現力、それを聴き手に伝えるためのテクニック、と全て揃っていないと難しいのだと思いました。どんなに良い作品でも、演奏がイマイチだと、曲の魅力も完全には伝わりません・・・。好みの問題もあるかも知れませんが、『この解釈は賛同できないけれど、伝えたいことは分る』という演奏は数多くあります。私にとってはこのCDは本当に良い例です。 《収録曲》
ラフマニノフ =CD1= 1. Piano Concerto No. 1 in F sharp minor, Op. 1 December 4, 1939 2. Piano Concerto No. 4 in G minor, Op. 40 December 20, 1941 3. Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43 December 24, 1934 =CD2= 1. Piano Concerto No. 2 in C minor, Op. 18 April 10 & 13, 1929 2. Piano Concerto No. 3 in D minor, Op. 30 December 4, 1939 |
アルバム:RACHMANINOV: PIANO CONCERTO NO. 2 & PIANO SONATA NO. 2 演 奏 家:アレクセイ・スルタノフ(Alexei Sultanov) 管弦楽団:ロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra) 指 揮 者:マキシム・ショスタコーヴィチ(Maxim Shostakovich) 録 音:1989年&1992年@オールドバー&ベルリン レーベル:TELDEC やはり私が最も好きなCDの中の一枚です。 このアルバムは、数年前、とある地元の小さなCDショップのワゴン・セールで入手した、私にとっては掘り出し物の一枚です。聴くと一気に体力を消耗する、そんな一枚です。 スルタノフは若干35歳という若さでこの世を去りました。私が彼の演奏に出会ったのは高校2年の頃。アメリカの大規模コンクールであるVan Cliburn International Piano Competitionの優勝者(1989年)でした。この大会のドキュメンタリー番組を見て、それまでラフマニノフにあまり興味がなかったのにスルタノフの演奏した協奏曲第2番に一瞬で惹きこまれてしまったのです。ビデオテープが擦り切れるまで何度も繰り返し見聴きしました。 スルタノフは当時旧ソ連ウズベキスタン出身の演奏家。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝を果たした輝かしい経歴を持ちながらも、その4年前に行われたチャイコフスキー国際コンクールでは手の負傷により途中辞退。また、後のショパン国際ピアノコンクールでは、優勝候補とささやかれる中、人種差別がもととなった評価により彼は一位なしの二位をフランス人と分かつことに。その評価の不公平さに抗議する意味で、スルタノフは授賞式を欠席したか受賞そのものを拒否したかのいずれかだったと記憶しています。 演奏のスタイルは、ロシア系そのもので激しく熱いものです。ピアノが壊れそう!と思うほどに。フランス系を「さらり」とした感じ、ドイツ系を「どっしり」とした感じ、そしてイタリア系を「溌剌」とした感じ、とするならロシア系は「ギャン!」という感じでしょうか。言葉にするのは非常に難しいのですが。 このCDに収録されている二曲はスケールも大きく、重くなっても全く不思議ではないのですが、若干20歳だったスルタノフは、一見力任せに弾いている印象を与えながらも、凄まじいテクニックの持ち主で、例えば「革命」エチュード(ショパン)をほとんどペダルを使用せずに弾いてしまうツワモノです(しかも異様に速い)。また、ホロヴィッツに傾倒していた彼は、ヴァン・クライバーンのコンクール優勝後、ホロヴィッツのニューヨークの自宅に招かれ、互いに弾き合いをしたという話もあります。ラフマニノフのソナタについては、ホロヴィッツ自身による改訂版を使用するほどの傾倒ぶり。 そう思ってスルタノフとホロヴィッツ二人のラフマニノフピアノ協奏曲第2番を聴き比べると、なるほど「部類」が似ていると思わず頷いてしまいます。 さて、このCDはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール受賞直後の録音です。若さ溢れる元気一杯の演奏ですが、彼のもつテクニックはあまりにも高度なために却ってその凄さをあまり感じさせません。熱く激しく演奏する、という印象の方が勝っており、「難しい曲だねぇ」と思う前にその曲と演奏家の一体感に圧倒されてしまうのです。ドキュメンタリーでもそうでしたが、人を寄せ付けない一種独特の冷たさがあります。ところが、人間にあるちょっとした「弱さ」(言葉のアヤです。気の緩み又は優しさ、もしくは一瞬の微笑み、の方がいいかも知れません)を垣間見せ、それがその曲の美しさや繊細さを一層際立たせています。 解りやすく言うと、プレトニョフのような熱さ・激しさはあっても煩さ・賑やかさはスルタノフにはありません。ラン・ランのような派手なパフォーマンスもありません。小柄で無口だったスルタノフらしく「比較的」淡々と弾いていくのですが、言葉で表現できない自分の内面を演奏で表現している、そういう感じです。きっとそれが、人を寄せ付けない冷たさを生んでいるのではないかと思いますが。 ラフマニノフの作品は、今でもあまり聴きません。嫌いではありませんが、あまり好きでもなく特段興味がそそられないだけのことなのですが、またこの作曲家の作品も、演奏家を選ばないで聴きにいくと悲惨な目に遭います。でも、スルタノフの演奏なら聴きたい、そう思いました。そして、若いが故の荒っぽさが今後どのように変わっていくかがとても楽しみでした。 その矢先の不幸。病に倒れ、リハビリの甲斐も無く再びステージに戻ることはありませんでした。 《収録曲》
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op. 18 (1989年11月@オールドバー、スネイプ・マルティングス・コンサート・ホール) ラフマニノフ ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op. 36 (1992年2月@ベルリン、テルデック・スタジオ) |
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