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本日の Beethoven

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アルバム:Beethoven: great piano sonatas - Horowitz
演 奏 家:Vladmir Horowitz
録  音:1972年
レーベル:Sony Music Entertainment (France) Inc.

ある紳士の方から頂いたこの一枚。

今年の4月に私が演奏したワルトシュタインが収録されており、「かっこいいワルトシュタイン」ということでご推薦下さいました。ただ、私は自分が弾いているうちはその作品の録音を聴かないようにしているので、「演奏会などが一段落したら買おう」と思っていたところ、このCDを贈って下さったのです。

かっこいいワルトシュタイン!

ホロヴィッツの凄さについてこれまであまり気に留めたことがなく、或いはロシア音楽を、内臓をえぐるような激しさで演奏する人・・・という印象が強かったこともあり、どんなワルトシュタインなのかとドキドキしながら聴きました。

楽譜をちゃんと読む人ならば、この演奏が「違反だらけ」なのは明らかです。でも、ホロヴィッツだから許される・・・。そしてカッコイイ!!

久しぶりに今、約3ヶ月ぶりに改めてこのアルバムを聴いています。

まるで悪魔のような演奏です。

と言いたいのですが、悪魔と言うと鋭く激しい演奏を想像する人もいらっしゃると思います。そもそも、「悪魔」というものの存在が、「善」がなければあり得ないものですが、ホロヴィッツの演奏は全くそういう「善」という対極に位置するものを無視しているように思えます。

毎度のことながら上手く説明できませんが、ベートーヴェンの偉大さに畏れることなく、ベートーヴェンがもしその場にいて「そうじゃない、違う!!」と怒ったとしても、「あれ?あんた誰?」と言う具合。

こう書くと、ベートーヴェンの意図や精神性を無視しているのでは?と思われるかも知れませんが、全くそうではなく、かえってそれがベートーヴェンの精神性に迫っているように思うのです。

矛盾しているようですが。

ベートーヴェン、と言われておそらく多くの人は、交響曲なら第5番「運命」、ピアノ曲なら第23番「熱情」を連想すると思います。そして思い浮かべる顔は、あのしかめっ面でしょう。

そして、これまでに多くの人がベートーヴェンの作品を演奏してきています。熱く激しく、どこからそういう印象が伴うようになったのか。

ベートーヴェンの作品は、初演当時は殆どが「新しいタイプの音楽」として出ていたはずです。とすると、それまで貴族向け、宮廷向けに作られていた上品で大人しい、控えめな(と私は思っています)曲調からすると、ベートーヴェンの作品はどれも意表をつくものだったのかも知れません。そうすると、実は普通にしている行動でも、数倍に膨れ上がって見えたりもします。髪の毛を振り乱して指揮をしている?ように見えただけ??後世、人々はそういう記述を読んでそれが事実と思うようになった???

など、歴史に記された言葉には、真実と信じたいから成り立った真実、というものが非常に多い(特にベートーヴェンの場合は、シントラーの影響もいまだ色濃く残っていると思います)ので、それらに基づいて、つまり先入観のもとに演奏が仕上がっていくことは、当然の成り行きであり、決して間違っているわけではありません。

このアルバムで、私がホロヴィッツの「ベートーヴェン、無視?」を感じたのは、熱情の3楽章です。

無視・・・ベートーヴェンを、ではなくベートーヴェンに対するイメージを無視、と言うべきでしょうか。

非常にコントロールされたベートーヴェン。私はあまり「コントロール下にあるベートーヴェン」は好みではありません。このアルバムで一貫して言えるのは、非常にコントロールされた演奏。不必要に感情的にならず。

ですが、計算高い印象は全く受けません。コントロールされているはずなのに、です。それはつまり、ホロヴィッツのこの演奏はベートーヴェンの精神性にとても忠実だからかしら、とこの一週間、聴けば聴くほどに思うのです。

凄い。

ますます、良い意味でベートーヴェンのピアノ・ソナタを弾く勇気の失せるアルバムです。

《収録曲》
ベートーヴェン
1. Piano Sonata No. 14 in C sharp minor, Op. 27-2 "Moonlight"
2. Piano Sonata No. 21 in C major, Op. 53 "Waltdstein"
3. Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57 "Appassionata"
アルバム:Beethoven: Piano Concertos Nos. 1-5
演 奏 家:Daniel Barenboim
指 揮 者:Otto Klemperer
録  音:1967年、1968年
レーベル:EMI

バレンボイムの第4番を聴いて、それまでのお気に入りだった第5番に「さよーなら」しました。

と言いつつ、今その5番を聴いています。バレンボイム特有のちょっともたついた音は好きなのですが、オーケストラが重厚すぎて聴いているとおなかが一杯になります。

バレンボイムの演奏が好きな理由は、このもたつき感だけではなく、どんなに大曲になっても、決して響きが割れないこと−つまり、ピアノが持つ響きのマックスを超えて弾くことはしない、ということ。もちろん、プロの演奏家であれば、それは当然のテクニックなのかも知れませんが、バレンボイムの場合はまだ余裕があるように思います。

だから聴いていて安心する音なのかも知れません。

そして、だから第4番が好きになったのかも知れません。

決して煌びやかな音ではなく、むしろ控えめな響きなのですが、67年、68年と言えばバレンボイムも脂の乗っている頃の演奏のはず。ギラギラ感が無いのに少々驚きもしましたが(特に、南米出身のピアニストは(と一概に言ってはいけないのかも知れませんが)、明るくまぶしい響きを持っている演奏家が多いので、バレンボイムの「可愛らしい」音は、彼が南米出身と知った時、意外に思ったものです。

このCDで私が一番好きなのは、実は4番でもなく、Fantasia in C major for piano, chorus and orchestra (Op.80)(すみません、日本語のタイトル、わかりません)。ちょっと音が混雑している印象もありますが、単純なメロディをピアノが、オーケストラが、そして合唱が奏でるのが好きです。

先週は色々と嫌なことがたくさんありました。でも、このCDを聴くと心が洗われるような気持ちになります。ベートーヴェンの書いた分りやすい旋律に、でも奥深い音楽性に、バレンボイムの奏でる繊細な音色。森の中で深呼吸をしているような気分になります。

《収録曲》
ベートーヴェン
1. Piano Concerto No. 1 in C major, Op. 15
2. Piano Concerto No. 2 in B flat major, Op. 19
3. Piano Concerto No. 3 in C minor, Op. 37
4. Piano Concerto No. 4 in G major, Op. 58
5. Piano Concerto No. 5 in E flat major, Op. 73 "Emperor"
6. Fantasia in C major for piano, chorus and orchestra, Op. 80
アルバム:Beethoven: Piano Sonatas - Neuhaus
演 奏 家:Heinrich Neuhaus
録  音:1946〜1950年
レーベル:DENON

スタジオ録音された5曲のベートーヴェン。なのに、この曲集は、まるでコンサートに言ったような気分にさせてくれます。起承転結のある、まるで物語を読んでいるような。

妖しく響く、でも美しいかの有名な「月光」ソナタに始まり、時折激しさを見せるテンペストに移る。この3楽章では、休符は最後の最後までない、というくらい、16分音符が絶えずなり続けています。その後にくる「テレーゼ」。ほっと一息つける瞬間。

私ならここで休憩を入れます。

そして、休憩時間が終わり、後期三大ソナタのうちの2曲―Op. 109とOp. 110。Op. 111で終わらなかったのは、もちろん、収録時間の問題もあったのでしょうが、私はこの曲で終わったのは本当に素晴らしいと思いました。デノンさん、有難うございます。といいたくなります。

ネイガウスが常に自分のお弟子さんたちに言っていたのは「上品」な演奏を、とのことだったそうです。その言葉を聞くまでも無く、彼の演奏するベートーヴェンは、本当に上品で華美な部分もなく、激しさも見せつつもどことなく、まるで舞台俳優のようなコントロールされたものを感じます。

個人的には、コントロールされたベートーヴェンの演奏はあまり好きではなく、演奏家(またはその音楽)との隔たりを感じてしまうのですが、ネイガウスの演奏は、不思議とその隔たりを感じることはなく、むしろ語りかけてくる何かがあるような気がしてなりません。

31番のソナタ(Op.110)は、崇高な仕上がりで、どうしたら、このような純粋な音色が奏でられるのだろう、と思って聴き惚れているうちに、この作品が楽譜に書かれているものであることを忘れてしまいます。これらはどうやって譜面上表現されるのだろう?どうしたらこういう曲を再現することが出来るのだろう?

あぁやっぱりベートーヴェンは素晴らしい!そう思った時、ネイガウスの抑制された感情表現、つまり演奏家の曲に対するコントロールが逆になっており、いつの間にか曲が演奏家と一体化、つまり私の個人的な表現を用いると、曲が演奏家を支配している、そんな仕上がりになっています。

フーガを聴きながら、私は再び、コンサート会場へとトリップすることにします。


《収録曲》
ベートーヴェン
1. Piano Sonata No. 14 in C sharp minor, Op. 27-2 "Moonlight"
2. Piano Sonata No. 17 in D minor, Op. 31-2 "Tempest"
3. Piano Sonata No. 24 in F sharp major, Op. 78
4. Piano Sonata No. 30 in E major, Op. 109
5. Piano Sonata No. 31 in A flat major, Op. 110
アルバム:Beethoven: Complete Piano Sonatas
演 奏 家:ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)
録  音:1966〜1969年
レーベル:EMI

私が自分で買った初めてのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集。バレンボイムがどういう人なのかも知らずに買いました。高校生の頃のことでした。

高校に入ってようやくピアノのレッスンに通い始めたのですが(S先生)、先生が私に下さった初めてのベートーヴェンは「テンペスト」でした。母は、ギレリスのCDを買って来てくれましたが、あいにくS先生の

「CD禁止令」

が発令されたため、一度聴いただけで、次にそのCDを聴いたのは一年後・・・。その間にゲットしたのがバレンボイムの全集だったのです。

特段深い理由も無く、欲しいなぁと思っただけなのですが、この録音の中で、個人的に特筆すべきと思っている作品が二つあるので、今日はそれらを。

一つ目は、第28番(Op. 101)。

私の中では、バレンボイムのこの演奏に勝るものにはまだ出会えていません。彼のこの演奏を聴いて、32曲あるソナタのうちでこの作品が一番好きになりました。それは、彼の演奏する一楽章にあります。非常に自然体で、シンコペーションばかりで成り立っていることを忘れさせてくれますが、そんな中でもその微妙なリズム感を損なわず、繊細な音の響きを保ちながら、ゆるゆると進んでいく。

あまりにもこの作品が気に入ってしまい、S先生に頼み込んで練習させてもらいました。「・・・10年早い」と言われながらも、結局終楽章までさせてもらえて、マスタークラスにも出させてもらいました。

実際に弾いてみると、聴いている音からは想像も出来ないほどに奥深く、そして難しい―音自体はそんなに難しくないのに。先生が、「ベートーヴェンの哲学に触れる作品だから、今までのように譜面を見て弾く、というだけではこの曲は成立しないのよ」と、レッスンの都度仰っていたことを思い出します。

この時のことです。先生が憧れて、そして尊敬されていたシュナーベル直筆サインの書かれた楽譜を「特別に貸してあげる。これを読んでじっくり勉強しなさい。」と、門外不出のはずの楽譜を貸して下さいました。その時に、楽譜に書かれていないことを読み取る、ということを初めて知ったのを、今でも鮮明に思い出します。

しかし、この終楽章のフーガはカッコいいです。

もう一つは、第30番(Op. 109)

こちらも、さほど興味を持っていなかった作品だったのに、彼の演奏を聴いて以来すっかり虜。どうしてここまで自然体なんだろうか、と思うほどです。

解説を後々読んでみると、どうやらこの曲の録音の時、当初は全く予定されていなかったらしく、「ちょっと試しに弾いてみよう」と、ダメだったら取り直すつもりでサラサラ〜と弾いてしまったそうです。ワンテイクです、もちろん。

一楽章の演奏の素晴らしいこと!音を慈しむ・・・いや、違う。あれはもう、音ではない、そう思いました。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、私にはまるでエデンの中にいるような、不思議な優しさと光に包まれているような、ちょっと夢見心地というか、本当に美しくて温かな音色に感じました。

この作品も、本当ならS先生のもとで勉強するはずでした。学生の時に先生に薦められましたが、「私には無理です」とその時は挑戦しなかったのです(かわりにコンチェルトの4番をさせてもらいました。こっちの方が無謀かも知れませんね)。今から思うともったいないことをした、と公開しています(笑)。

バレンボイムは決してVirtuoso的な演奏はしません。むしろ、指が絡まってる?と思うような演奏もよく聴きます。でも、私はそういう部分も全てひっくるめて彼の演奏は好きです。余計な解釈を入れず、ベートーヴェンが譜面に残してくれた音を大切に扱って、今の時代に再現してくれているその事に、不思議な充実感を覚えます。

《収録曲》
ベートーヴェン
Piano Sonatas Nos. 1〜32
アルバム:Beethoven: Symphonies 1 & 4
指 揮 者:ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert Von Karajan)
管弦楽団:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)
録  音:1970 (Egmont), 1977 (Symphonies)
レーベル:Deutsche Grammophon

恐らく、高校生の頃に飼ったのだと思いますが、CDケースの白い部分が黄ばんでいます。

ベートーヴェンが大好きなのに、実は交響曲は持っている枚数はとても少ないのです。これでは、ベートーヴェン・ファン、失格になりそう!

さて、ベートーヴェンの交響曲を聴いていつも思うのは、「ティンパニが大事な役割を担っているな〜」ということでしょうか。今年の2月に聴きに行ったコンサートでの「運命」交響曲、感動したのはティンパニにでした。

ティンパニのロールではなく、リズム感豊かな演奏がたまりません。このリズム感がなければ、いくら弦楽器、管楽器類が頑張っても、腑抜けな印象を与えるのではないかしら、ふとそんなことを思ったりします。

ヴァイオリンやホルン等と比べると、あまり目立たない存在かも知れませんが、ベートーヴェンの作品ではけっこうティンパニが語ることが多いように思います。例えば、ヴァイオリン協奏曲の出だしなんかは素晴らしいと思うのです。

そういった意味では、このCDに限ったことではないのですが、なんとなく、今回はティンパニにばかり気が行ってしまいます。

では、カメラのズームアウトのように、少し曲の全体に耳を傾けてみますと、やっぱりベートーヴェンの作品はお茶目な一面がたくさんあるなぁ・・・ということでしょうか。そして、そのお茶目加減は、ゆっくりのテンポよりも、速いテンポの方が顕著。ただ、この作品のCDを色々持っているわけではないので、他の演奏と聴き比べていないため、速いのかどうか解りませんが。でも、弦楽器のパッセージを聴いているとやっぱり速いように感じます。

残響が程よいので、ステレオの音量を上げて聴きたくなる衝動に駆られて、近所迷惑だろうな、でも今日は許してね、と思いながら聴いています。弦楽器のリアルな音色(弓と弦の擦れる音)が、何故か好ましく思えます。低音もちゃんと「音」として響いていますし、録音状態が良いっていうのは、本当にありがたいことですね。

そういえば、カラヤンの指揮する演奏で私が好きな瞬間は、演奏が始まる前、壇上で一瞬の静寂を呼び込む時。比較的無表情の顔にも、無駄な緊張のない、彼の優しい頬の緩み具合がとても印象的で、その姿だけで彼らの世界に引き込まれていくような気がします。その姿を想像しながらこのCDを聴いていると、自室に居ることを忘れ、幸せな気分に浸ることが出来ます。

何気にカラヤンの指揮が好きなのかも知れません。

《収録曲》
ベートーヴェン
1. Symphony No. 1 in C major, Op. 21
2. Symphony No. 4 in B flat major, Op. 60
3. Overture: Egmont Op. 84

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