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覚悟せよ日本、次の中国トップは手強いぞ
米国が伝える習近平の素顔〜中国株式会社の研究〜その90
2010.12.24(Fri)  宮家 邦彦
分ウィキリークス関連の話題は「封印」しようと思ったのだが、またまた面白い記事を見つけてしまった。今回は胡錦濤総書記の後継者に事実上決まった習近平国家副主席の素顔に関する在北京・米国大使館発電報についてご紹介したい。
 
 この電報、元々はドイツの週刊誌「シュピーゲル」が報じたものだが、なぜかウィキリークスのサイトに原文はない。
 
 探し方が悪いのかもしれないが、もしかしたら情報源の特定を恐れていまだ掲載していない可能性もある。(文中敬称略)
 

習近平のイメージ

 既にいくつか日本語の書籍も出版されているが、習近平について日本では様々な評価があるようだ。
 
 一般には「幹部の子弟ながら庶民派」「おおらかな性格」「リベラル」「苦労人」「寡黙で慎重」「政治感覚は鋭い」「官僚の腐敗に厳しい」「政治的にも経済的にも開放的」といった好意的な分析が多いようだ。
 
 これに対し、一部には「凡庸」「小心者」「頭が悪い」「曾慶紅の傀儡」「保守派で対外強硬派」「ウルムチ騒乱事件では武力鎮圧を主張」などといった否定的評価も少なくない。
 
 一体どちらが本当の習近平なのだろうか。
 

学生時代から野心家?

 冒頭ご紹介したシュピーゲル記事のヘッドラインは「紅より赤い(Redder than Red)」である。意訳すれば「共産党より共産党的」といった意味だろうか。まずは同記事が引用する在北京米国大使館情報提供者の発言をご紹介しよう。
 
 ちなみに、この情報提供者は「習近平に近い」共産党関係者とされているが、以下の発言内容から見ても、かなり若い頃から習近平と身近に接してきた「太子党」仲間の1人ではないかと推測される。
 
 彼によれば習近平は、
 
●極めて野心的であるが、良い人間である。
●幼少の頃から「いつか中国の指導部で然るべき地位を得る」と考えていた。
下放から戻ると、生き残るために「共産党以上に共産党的」になると決めた。
 
●共産党入党は太子党の仲間たちから裏切り行為と受け取られた。
●マルクス主義に関する学位が本物でないことは公然の秘密である。
 
父親の習仲勲・元国務院副総理(ウィキペディア
イメージ 1 どうやら習近平は昔から野心家であったらしく、出世のためなら犠牲を厭わなかったようだ。下放から北京に戻り、太子党の仲間たちが自由な生活を謳歌し始めた頃、習近平はあえて共産党官僚の本流を目指す道を選択する。
 
 習近平は「共産党八大元老」の1人である習仲勲・元国務院副総理の息子であり、幼年時代から生活は比較的裕福だったはずだ。
 
 しかし、文化大革命で父親が批判され、1969年、16歳で陝西省に「下放」されてからは人生観が変わったらしい。
 
 父親が投獄中の1974年に共産党に入党したことや、勉強したくもないマルクス主義で「学位」を取ったことを周囲は冷ややかに見ていたようだ。
 
 すべてが共産党員として出世するための手段でしかないことを友人たちは見抜いていたのかもしれない。
 

結婚と離婚

 情報提供者の発言を続けよう。習近平は、
 
●外交官の娘との結婚後、2人の間では毎日のように喧嘩が絶えなかった。
●離婚後、北京で敵をつくることのリスクが非常に大きく、(出世するためには)父親のコネだけでは不十分であることに気づいた。
 
●北京の派閥政治を離れて地方で経験を積まない限り、職業政治家にはなれないと考えた。
●地方勤務時代、仏教、気功、武術に関心を示し、超自然的パワーを信じていた。
 
●姉はカナダに、弟は香港に住んでおり、外国の事情は承知している。
●1987年にワシントンを訪問したが、米国に対し特に強い印象は持たなかった。
●中国国内の事情に精通し、自分は国内でしか活躍できないと考えている。
 
 習近平にとって結婚は出世の手段でしかなかったのか。外交官の娘と離婚してからの習近平は、「国際派では出世が見込めず、政治力をつけるなら国内を押さえる必要がある」という共産党党内政治の本質を理解していったのかもしれない。
 
 1986年、アモイ市長・習近平は軍の歌手・彭麗媛を見初めて結婚する。
 
 彼女は現在解放軍歌舞団団長(少将)、春節前夜の有名な歌番組「中央電視台春節聯歓晩会」のレギュラーで、国民的人気を誇る。政治的に見れば、これ以上の良縁はないだろう。
 

腐敗とは無縁

 情報提供者はさらに続けてこう語っている。習近平は、
 
●腐敗しておらず、既に十分金持ちである彼にとって金銭は重要ではない。
●ほかの共産党幹部とは異なり、酒や不倫のような遊びにも関心はない。
汚職と無縁であったため、江沢民派により上海市党書記に抜擢された。
 
●最初から党中央での出世を望んでおり、習の戦略は最終的に実を結んだ。
●隠し持つ切り札を最後に冷徹に切るような現実主義者、実用主義者である。
●胡錦濤総書記と同様、女性からは「退屈な男」と見られている。
 
 「金持ちになったら、もっと稼ぎたい」と思うのが中国では普通だと思うが、この点、習近平は極めて真面目なようだ。
 
 それとも、政治家として出世するためなら物欲も性欲も犠牲にできる強い「自制力」を持っているのだろうか。
 
 電報からだけでは真相は分からない。しかし、似たような境遇にある太子党の連中が金儲けや愛人づくりに勤しんでいる時に、習近平が全く違う道を歩いてきたことだけは間違いなさそうだ。
 

中国版「ノブレス・オブリージュ」?

上海万博ではロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領の案内役を務めた〔AFPBB News
 
 情報提供者はこうも語っている。習近平は、
 
●党幹部の腐敗をよく承知しており、金銭欲と中国の新興富裕層を嫌悪している。
●新たな自由市場時代によって中国人が尊厳と尊敬心を失うことを恐れている。
●他方、党内で出世するために、こうした個人的な考えを表に出そうとはしない。
 
●党内権力闘争には勝利したものの、中国のゴルバチョフになる気はない。
●民主改革にはほとんど関心がなく、太子党こそが革命の正統な後継者だと考えている。
●少数エリートだけが中国の社会的安定と将来の発展を実現できると確信している。
 
 以上から推測できることは、「太子党」は「太子党」なりに一種のプライドと責任感を持っているということではないか。習近平を単なる「冷徹な野心家」と評価することは簡単だが、どうもそれだけではないような気がしてきた。
 
 習近平の生き方は、共産党幹部子弟の中国版「ノブレス・オブリージュ(身分の高い者はそれに応じて果たさねばならない社会的責任と義務があるという道徳観)」の結果なのかもしれない。
 

 そうだとすれば、習近平は、これまでの「リベラル」「開放的」「凡庸」「小心」といった評価とは異なる、腹の据わった筋金入りの政治家である可能性もある。どうやら習近平時代の中国は諸外国にとって相当手強い相手になりそうだ。


jbpress.ismedia.jpより引用。
 
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