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中東における戦争に国連安保理決議は必要か
対イラン核施設攻撃〜一神教世界の研究(その1)
2012.02.15(水)宮家 邦彦:プロフィール 今回から中東情勢についてもコラムを書かせて頂くことになった。書くことは山ほどあるのだが、肝心の題名が決まらない。中東といっても言語、文化、宗教など千差万別だからだ。
2月6日、イランは国産の観測衛星「ナヴィード」の打ち上げに成功したと報じた〔AFPBB News〕
すったもんだの末「一神教世界の研究」という題名に辿り着いた。「中国株式会社の研究」同様、末永くご愛読願いたい。
さて記念すべき初回は現代中東における戦争の戦い方を考える。
過去六十余年中東で行われた武力行使を、武力行使容認決議がある場合、自衛のための武力行使の場合、それ以外のカテゴリーの3つに大別した上で、噂される対イラン核関連施設攻撃の可能性について分析したい。
国連憲章の規定 ちょっと難しい言葉が並ぶが、戦争に関する国際法にしばしお付き合い願いたい。まずはあまり馴染みのない国連憲章の関連条文から始めよう。
●すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。(国連憲章第二条4項)
伝統国際法の世界で「戦争」は国家の権利だった。権利であるからこそ日本国憲法はこれを「放棄」できた。ところが1928年のパリ不戦条約と1945年の国連憲章により、国家による武力行使は原則として違法となった。簡単に言えば、今や戦争行為は国際法違反なのである。
それではなぜ国家は今も軍隊を持つのかと問われそうだ。実はこの武力行使、原則は違法なのだが、それには例外がある。その例外を定めたのが次の規定だ。
●この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。(国連憲章第五十一条)
要するに、相手側が違法な武力攻撃を行ってきた場合、自衛権を発動すればこちらの武力行使は合法化されるという仕組みだ。
なお、自衛権の行使は直ちに国連安保理に報告するのだが、その後どうなるかについて詳しい規定は存在しない。理事国が何も言わなければ了承されたということなのだろうか。
武力行使容認決議1991年の湾岸戦争でバクダッドを空爆したF117ステルス戦闘機〔AFPBB News〕
1991年の湾岸戦争をご存知の方は、1990年11月29日に採択された国連安保理決議を覚えておられるだろう。
米軍を中心とする多国籍軍は同決議を根拠に翌年1月17日イラク空爆を開始した。当時この決議を巡っては侃々諤々の議論の末に次の文言が確定している。
●イラク政府が1991年1月15日までに・・・上述の全ての決議を履行しない限り、クウェートと協力するすべての加盟国に対し、・・・すべての関連決議を執行し、かつ地域内の国際平和と安定を回復するため、必要とされるあらゆる措置をとることを認める。(国連安保理決議678)
「必要とされるあらゆる措置」の中には「武力行使」も含まれる、というのが大方の解釈だ。この1行で多国籍軍は数十万人の戦闘部隊を動かしクウェートを解放した。
12年後のイラク戦争の場合も基本的には同様で、決議678を含む一連の安保理決議違反により武力行使が容認されている。
直近では2011年3月17日の安保理決議1973で対リビア武力行使が認められた例がある。これが第1のカテゴリーだ。なるほど、それでは中東における戦争には常に「武力行使容認決議」が必要なのかというと、とんでもない。武力行使容認決議は実に稀なケースなのである。
自衛のための戦争 参考までに過去六十余年間の中東における武力行使のうち主要なものを思いつくまま挙げてみた。
1949年 イスラエル独立戦争(第1次中東紛争)
1956年 スエズ動乱(第2次中東紛争) 1967年 6日戦争(第3次中東紛争) 1973年 10月戦争(ヨム・キプール戦争、第4次中東紛争) 1980年 イラン・イラク紛争 1982年 イスラエルのレバノン侵攻(ガラリアの平和作戦) 1991年 湾岸戦争(武力行使容認決議あり) 2001年 アフガン戦争 2003年 イラク戦争(武力行使容認決議あり) 2006年 イスラエルのレバノン侵攻 2011年 リビア戦争(武力行使容認決議あり) 以上のうち、既にご紹介した湾岸戦争、イラク戦争、リビア戦争以外で、事前に武力行使容認安保理決議を採択した戦争はなかったと記憶する。
だとすれば、これらはすべて国連憲章第51条の自衛権を根拠に合法化されているはずだ。これが第2のカテゴリーである。
もちろん、すべての戦争には仕掛ける側と仕掛けられる側がある。厳密にはどちらか一方が国際法上違法な武力行使を行い、もう一方が自衛権を発動したはずなのだが・・・。
結局ある国の自衛権行使が安保理に報告され、うやむやのうちに議論が終わるのではなかろうか。
特殊戦という第3のカテゴリー いずれにせよ、21世紀に入ると、誰が自衛権を発動したかの議論はあまり重要ではなくなってきたように思える。最大の理由は、最近の中東における本当に重要な「戦争」は、黙って唐突かつ短時間で終了する特殊部隊などの特殊作戦が主流になってきているらしいからだ。
http://img3.afpbb.com/jpegdata/thumb200/20080425/2864437.jpg北朝鮮の協力で建設された核施設とされるシリアの建物の写真(2008年4月24日米政府提供)〔AFPBB News〕
その典型例が2007年9月6日のイスラエルによるシリアの秘密原子炉爆撃事件だ。
イスラエルは周到な準備の後、シリア領内奥深くの北朝鮮の支援で造られた原子炉を、静かに、しかし突然、かつ完璧に破壊し、その後も一切沈黙を守った。正当化もへったくれもない。実行して沈黙するのが特殊戦である。
米国も事実関係は承知していたようだが、公式にはほとんど論評しなかった。驚くべきことに原子炉を破壊されたシリア自身も、対イスラエル非難どころか、攻撃自体を認めず完全に沈黙を守った。
ご丁寧にも、シリアは攻撃後短時間で原子炉の残骸をすべて地中に埋め、その上に新しい建物を建設したという。
シリア原子炉爆撃は隠密の特殊作戦としては派手な方だ。そもそも大半の特殊作戦はその存在すら秘匿される。
報道されたイランにおける核関連研究者の暗殺やコンピューターウイルスを使った核施設破壊工作など氷山の一角だ。今や中東ではこの種の戦争が主流と考えていいだろう。
イラン核施設に対する攻撃イランの首都テヘランでコーランとイスラエル・米国の国旗を打ち破る絵を掲げたデモ(2010年)〔AFPBB News〕
以上を前提に対イラン核施設攻撃の可能性について考えよう。
仮にある国が現時点でイランの核関連施設を攻撃すると決めても、イラクの場合のように「武力行使容認決議」を採択することは事実上不可能だろう。
また、イランからあからさまな挑発でもない限り、自衛権を行使して核施設を攻撃することも非常に難しい。リスクがあまりに大きいからである。
従って、現時点で最も考えられるのはやはり特殊作戦ではないか。そうだとすれば、「数カ月中にもイスラエルの対イラン攻撃がある」とか、「攻撃準備は完了した」などといった報道が真実である可能性は極めて低い。
本当にやる気なら静かに黙って、かつ突然実行する。騒いだら特殊作戦の妙味がないからだ。
やはり、この種の報道はスピン(情報操作)であり、対イラン制裁強化のための外交謀略戦の一環と考えた方がいいだろう。この種の情報戦に一喜一憂するのは精神衛生上あまりお勧めしない。
ただし、万一イランのウラン濃縮度が90%に近づいたなどという報道が出始めたら、これは話が別である。
その時イスラエルは躊躇なく「自衛のための武力行使」を実行するに違いない。そうなれば安保理決議も、自衛権も、特殊作戦もない。必ずイスラエルは「民族の生存」のために何らかの行動を起こすだろう。
恐らくこの場合の戦争はこれまでに例のない「第4カテゴリー」の戦争形態となるかもしれない。 ↓記事を読み終わりましたら、こちらにもクリックをお願いします。m(_ _)m
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イスラエル
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