<書評>
本書は、第二次世界大戦当時に活躍した英国3大名機の一つであるアブロ・ランカスター爆撃機の活躍を中心に描いた「
アブロ「ランカスター」―ナチを崩壊させた英空軍爆撃機 (1979年) (第二次世界大戦ブックス〈76〉)」を復刻再販した戦史小説です。
本書の詳細を見てみると、冒頭でドイツのメーメルダム爆撃を行った「チャスタイズ」作戦を取り上げ後、目次の内容からも判るように本書の約半分の第2章から第4章までの内容は、イギリス航空機の黎明期から、アブロ社がランカスター爆撃機開発に至るまでの発展の歴史を取り上げており、本書の副題を「ランカスター爆撃機開発までのアブロ社発展史」としても、差し支えない紙幅となっています。
第5章では、イギリス空軍の"双発"爆撃機P・13/36の開発要求からマンチェスター"双発"爆撃機を経てにランカスター"四発"爆撃機開発、そしてその詳細を他国の爆撃機と比較して、ランカスター爆撃機の特徴を説明しています。イギリス贔屓の記述からかランカスター爆撃機の欠点、つまり対空火器が弱火力である点や副操縦士がいない点には、触れられていません。
次に、第6章でランカスター爆撃機が行った夜間無差別爆撃を取り上げられているものの作戦の概略を述べた通史であって、ランカスター爆撃機に関して突出して解説している訳ではありません。また、イギリス空軍が夜間無差別を行うまでの戦間期から開戦時以降の航空戦略の経緯や昼間精密爆撃を主張し実践したアメリカ陸軍航空軍との戦略上の論争、イギリス空軍が主張したアメリカでのランカスター爆撃機のライセンス生産計画による連合軍の生産爆撃機の一本化(つまりB−17とB−24の生産停止要求)、夜間無差別爆撃と昼間精密爆撃の軍事的効果の是非、つまりランカスター爆撃機が行った夜間無差別爆撃がドイツの継戦能力に影響を与えず、大きな戦果が無かった点に関しては、一切言及していません。
本書の著者である鈴木五郎氏は、日本の航空機の黎明期に関わった経歴上のその経歴が本書の内容に反映されているようで、前半でのイギリス航空機開発史に軸足を置いた記述と軍事戦略的な側面の紙幅の少なさに反映されているように見受けます。そのため、第5章から第6章の内容的には質量共に不足気味で機体の詳細を知りたい方は、他の書籍「
夜間戦闘機―ドイツの暗闇のハンティング (光人社NF文庫)」や「チャスタイズ」作戦に参加した第617中隊の詳細を語った「
暁の出撃 (新戦史シリーズ)」そしてイギリス空軍とアメリカ陸軍航空軍との関わりを述べた「
戦略空軍 (文庫版航空戦史シリーズ (26))」の併読をお勧めします。
原著の出版の1979年からかなりの年月が経過しており、その間の戦史研究の進展により、本書の内容が相対的に現在の戦史研究水準から見て低い水準の点がありますが、ランカスター爆撃機を語った日本語で唯一の戦史小説である過去の著作を後世に残す意義と本書の約半分を占めるイギリス航空機開発史は評者としては興味深く、また1970年代の戦史研究水準を知る上で一定の価値が本書にはあると思われます。
しかし、本書は冒頭で述べたように内容の経年劣化と本書のカバーが環境保護を目的とした光沢印刷を使用することで非常に脆弱で角が擦り切れたり、印刷が落ち易く、その点も本書の評価を下げざるを得ない部分がありますので、星4つとさせていただきます。
ランカスター萌え・・・
2012/5/17(木) 午後 11:36 [ - ]
結局連合軍最良の爆撃機はB-17とB-29なんでしょうね。いつものごとくアマゾンにも出張してきます(笑)。
傑作&ランクリ
2012/5/18(金) 午前 0:06 [ 鳳山 ]