ミッドウェー海戦研究所

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日本との緊密な関係構築を望んでいるロシア
ウラジオストックのアジア太平洋安全保障会議に出席して
 
(1)からの続き
 
 今回は、CMCとロシア科学アカデミーが中心的役割を果たした。開催に当たってロシア科学アカデミーのビクター・ラーリン所長が挨拶を述べた。
 
 その趣旨は、アジア・太平洋は今センターステージに立っており、もはや第二線ではないこと、時代が変わりアジア・太平洋の協調が重要になってきたこと、しかしながら先般のウラジオストックAPECにより何が残ったのか分からないこと、アジア・太平洋において今後ロシアの果たすべき役目は何かなどについてであった。
 
 会議は、4つの連続したパネルから成り、「パネル1」の議題は「アジア・太平洋地域における21世紀の安全保障についての見方」であり、その討議項目は次の通りである。
 
(1)アジア・太平洋地域の国々の安全保障に対するチャレンジは何か?
(2)これらのチャレンジの方向性についてどのような変化が起きつつあるか?
(3)これらのチャレンジにどのような優先順序をつけるか?
(4)アジア・太平洋地域の安全保障の見方と世界の安全保障の見方をどのように関連づけるか?
(5)アジア・太平洋の安全保障は国際関係の何処に位置づけられるか?
 
「パネル2」は「アジア・太平洋の安全保障に関して、各国は如何なる安全保障政策を取っているか?」であり、その討議項目は次の通りである。
 
(1)アジア・太平洋各国は国家安全保障のチャレンジに如何に対応しているか?
(2)国家間の考えにどのような相違があるか?
(3)アジア・太平洋各国間の緊張と紛争の理由は何か?
(4)このような緊張はどのようにして除去できるか?
(5)緊張を和らげられなかった時、紛争の結果はどうなるか?
 
 このパネルにおいて、私が「日本の海洋戦略」についてパワーポイントを使用して発表した。重点事項は、1998年以来、ロシア海軍と海上自衛隊は友好関係を維持し、共同訓練も実施していること。
 
 リンパック12に初参加したロシア艦隊が、8月から9月にかけて舞鶴を訪問したこと、動的防衛力等防衛大綱の考え方と内容、日本の海洋権益、兵力整備の考え方、海上自衛隊の国際的活動等とした。ここで、海洋権益に関連して領土問題に対する我が国の主張についても発言した。
 
 「パネル3」は「北東アジアにおける安全保障要因としてのロシアのエネルギー資源」であり、その討議項目は、アジア・太平洋における価値ある安全保障部分となるエネルギー分野で次のようなテーマで討議した。
 
(1)いかにして協調を成し遂げるか?
(2)エネルギーの供給者と消費者の利益をいかにして調和させるか?
(3)これに関して、ロシアの役割と責任はどのようなものか?
 
 最後の「パネル4」は、翌17日に場所を変えてホテル・ベルサイユにおいて開催された。ヒュンダイと違い歴史を感じさせる重厚なホテルであった。会場は、少し狭くなったがホテル・ヒュンダイと同様のセッティングであった。
 
 「パネル4」の議題は、今回の会議の最終目的とも言うべきもので「アジア・太平洋の地域安全保障フレームワークに向けて」であった。
 
 討議項目は次の通り。
 
(1)アジア・太平洋地域のために包括的な地域安全保障フレームワークが必要か?
(2)このようなフレームワークを作ることが現実的か?
(3)これはどのようなものでどのような機能を持つものか?
(4)EASI(Euro-Atlantic Security Initiative)の経験がよい事例になるか?
(5)アジア・太平洋地域において如何にしてスタートできるか?
 
 会議は、1日半をかけて順調かつ活発に経過した。この間、昼食会と夕食会が開催され、昼食会においては在ウラジオストック米国総領事のスピーチがあった。夕食会は金角湾内を一望できる見晴らしの良いレストランにおいて開かれたが、ロシアではつきもののウオッカによる乾杯合戦はなく、ワインとロシア料理を中心にした極めて和やかな懇親会であった。
 
 会議後、17日午後には市内のバスツアーがあったが、私はこれには参加せず、10年来の友人であるポルートフ博士夫妻、ソツコフ元海軍少将と市内見物、会食をエンジョイした。
 
 ここでは、昼間からウオッカの一気飲みをやって思い出話に花を咲かせた。ソツコフ少将がアイフォーンでモスクワに在住しているザハレンコ大将を呼び出してくれ、久しぶりに彼の豪快な笑い声を聞くこともできた。
 
 会議における各国の発言は、それぞれの国の立場がうかがえる大変興味深いものであった。ここで個々の発表・発言を挙げることはできないが、今回の会議のまとめは、次のようになる。
 
●2012年のロシアAPECは、単なる政治的アピールの場であり、中身はなかった。
●中国とロシアの同盟については、レシピがない。
 
●中国とロシアは戦略的パートナーであるが、それがどのようなものかは依然として模索中のままである。
●中国の極東ロシアへの経済的進出、人口流入、軍事的増強等に対して、ロシアの警戒心が強い。
 
●中国は軍事力を増強し、拒否的なアクション・リアクションを繰り返しつつあるが、これは危険なサイクルである。「近接阻止・領域拒否(A2/AD)」は軍事衝突の危険性を増している。
●米国と中国の間の軍事チャンネルは後退しており、冷戦時と同じ接触である。現実には戦争に向かっている。
 
●米国、中国共に「米中軍事関係の構築」が安全保障上の鍵であり、アジアの安全保障の将来を決めるという認識である。
●中国は、米国に対しては軍事的協調、ロシアに対しては平和的協調を唱えており、ロシアと同様に国境での脅威の存在を感じている。
 
●北朝鮮の新戦略、外交上のアプローチの変化について、各国が注目している。
●中国は、6カ国協議を開催し、北朝鮮を招くのがよいと考えている。
 
●ロシアは、債務問題によりEUでのエネルギー資源の輸入が減少したことにより、アジアへエネルギー市場を転換した。
●ロシアは、日本に対するエネルギー資源の輸出拡大に期待している。
 
●日本の石油・ガスの国内消費量の約10%はロシアから輸入するに至っている。
●今回、ロシアが開催国であるにもかかわらず、ロシアの安全保障についての発表がなかったことは残念であった。
 
●ただし、ロシアはアジア・太平洋の安全保障について、もっとアクティブになり、何らかの役割を果たし存在感を強めることを望んでいる。
●今回のような安全保障に関するオープンな国際会議をロシア主催で開催したことは、それ自身大きな価値があったものと考える。
 

あとがき

 会議がつつがなく終了し、10月18日朝帰国の途に就いた。帰りも幸い河東元大使と一緒の便であった。CMCが準備した車で再びアムール湾大橋を渡ってウラジオストック空港に着いた。準備された航空券は、帰りは来た時と違って成田直行便ではなく、ハバロフスク経由の便であった。
 
 車中で、河東元大使はハバロフスク経由と知ったときはやや不安を覚えたと言われた。氏は過去にロシア国内便で何度も散々な目に遭ったと言うのだ。6〜7時間の遅れは日常茶飯事であり、その説明のアナウンスもなくただじっと我慢して待つしかないということだ。
 
 我々の便はハバロフスク空港で4時間待ちとなっていた。ウラジオストックからは定刻に到着し、いざ乗り換えの段になるとどこへ行けばよいのか表示がない。もちろん英語の表示も全くない。
 
 私はロシア語が読めないから元々何も分からないわけであるが、河東元大使が女性の係員に流暢なロシア語で聞いても要領を得ず、ただ遠くを指差して「あっち」と言うだけである。
 
 ソ連時代の面影を残して、しゃべるのも超過勤務という感じである。河東元大使の長年のロシア勘で、恐らくあの建物だろうということで、教会のような形をした水色の特徴ある建物に向かって2人でスーツケースを引っ張りながら凸凹道を歩くこと数分、その建物には人の気配がなかったがガラスドアを思い切って開けてみると確かに成田行きの受付があってホッとした。
 
 荷物のチェックをする武装した女性係員たちは意外とにこやかで愛想が良かった。若干の椅子があったのでチェックイン開始まで小一時間暇をつぶし、チェックイン後は待合室で待機した。簡単な売店もあった。
 

 3時間ほど待つ間に、青空がにわかに暗くなり吹雪が吹きだした。さすがにハバロフスクはもう寒かった。この間、また大使との会話が弾んで時間を持て余すことはなかった。天候も回復して、成田行きA300は定刻に離陸した。4日間のロシアでの出来事を思い返しているうちに疲れが出たのか深い眠りに落ちていた。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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小窪兼新
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