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米海兵隊と陸自が大規模共同訓練を実施
日本自前の「水陸両用戦」能力獲得に向けて
2013.02.01(金)北村 淳:プロフィール カリフォルニア州海岸線最南端の風光明媚な都市サンディエゴ市には、アメリカ海軍太平洋艦隊の第3艦隊司令部をはじめとして大規模な海軍関連施設と、映画「トップガン」の舞台となったアメリカ海兵隊ミラマー航空基地がある。そのミラマー航空基地から車で北に30分ほどフリーウェイを走るとアメリカ海兵隊のキャンプ・ペンドルトン基地に到着する。
「基地」と言っても、第1海兵遠征軍司令部をはじめ様々な部隊の司令部や兵舎、航空基地、レーダーサイト、海軍エアクッション艇基地、各種学校、数多くの訓練施設、長大な訓練用海岸、広大な訓練用丘陵地、それに軍人・軍属の住宅や学校や商業施設などを含む面積およそ500平方キロメートル(大阪市の2倍以上)の広大な土地である。
8回目となる日米共同訓練「アイアンフィスト」 このキャンプ・ペンドルトンを本拠地にして、アメリカ海兵隊第13海兵遠征隊(クリストファー・テイラー大佐が指揮を執るおよそ1000名の部隊)と、日本の陸上自衛隊西部方面普通科連隊(國井松司一佐が指揮を執るおよそ250名の部隊)の共同訓練「アイアンフィスト 2013(IRON FIST 2013)」が1月22日から開催されている。
アイアンフィスト 2013の開会式(写真:USMC)
「第1海兵遠征軍は、毎年およそ20の共同訓練や合同行事を各国の軍隊と実施しているが、アイアンフィストはそれらの中で最も規模が大きく重要性が高い訓練である。このことは、日本との軍事関係をアメリカ合衆国が極めて重視しており、日本が太平洋諸国の中でも非常に重要なパートナーかつ友人であることを反映しているのである」という第1海兵遠征軍副司令官メルビン・スピース少将の言葉で、今年の訓練は開幕した。
陸自が水陸両用戦を体感し、米海兵隊との相互信頼も確立 実際の共同訓練はキャンプ・ペンドルトンだけでなく周囲の訓練地も使って大規模に実施される。
キャンプ・ペンドルトンから100キロメートルほど内陸に入ったトウェンティナイン・パームスの海兵隊空陸戦闘センターという総面積2413.2平方キロメートル(神奈川県程度の広さ)の訓練場では、各種実弾砲撃訓練、近接航空支援訓練、長射程砲撃訓練などが第13海兵遠征隊とともに行われている。
さらに、サンディエゴから東方およそ100キロメートルの太平洋上に横たわるサンクレメンテ島にアメリカ海軍強襲揚陸艦「ボクスター(Boxter)」を中心とする水陸両用戦隊に第13海兵遠征隊と西部方面普通科連隊部隊が乗り込んで接近し上陸する本格的な水陸両用戦訓練も実施される(サンクレメンテ島には、アメリカ海軍航空施設と、海軍特殊部隊「シールズ(SEALs)」の訓練施設がある)。今回は、MV-22Bオスプレイによる兵員搬送も実施される予定である。
アイアンフィスト 2013の開会式で歓談する(左から)
國井一佐、テイラー大佐、スピース少将(写真:USMC)
このように極めて充実した共同訓練は3週間ほど実施され、2月15日にキャンプ・ペンドルトンで閉会セレモニーが行われる運びとなっている。
「アイアンフィストでの自衛隊部隊との共同訓練そして自衛隊員との交流は、戦士としての絆を確立し、個人的な親交を深め、お互いの文化を理解するとともに、個人的な戦術的技量を高め、そしてわれわれの(海兵隊と自衛隊の)水陸両用戦能力を向上させる」と第13海兵遠征隊司令官のテイラー大佐は語った。つまり、アイアンフィストでは陸上自衛隊に水陸両用戦というものを体感してもらうという側面とともに、アメリカ海兵隊と陸上自衛隊の相互信頼を確立しようという側面も大きな目的の1つとなっている。
現代の水陸両用戦能力の形とは 実際に、四囲を海に囲まれ多数の島嶼と長大な海岸線を有する島嶼国家であるにもかかわらず、そのような島嶼国家防衛に必要不可欠な水陸両用戦能力を保持していない陸上自衛隊にとってアイアンフィストは極めて貴重な機会と言える。
水陸両用戦能力(“Amphibious Warfare Capability”、あるいは単に“Amphibious Capability”)の“amphibious”という語はカエルやサンショウウオなどの両棲類を意味する“Amphibia”から取り入れられた言葉であり、陸上戦闘部隊が軍艦に乗って敵地に接近・上陸して実施される海岸線から沿岸域での戦闘能力を意味する軍事用語として用いられ始めた。
第1次世界大戦のガリポリ上陸作戦や、第2次世界大戦におけるサイパン島や硫黄島そして沖縄をはじめとする太平洋の多数の島嶼で繰り広げられた日米の死闘、それに連合軍がドイツ軍にとどめを刺すためにフランスに侵攻したノルマンディー上陸作戦などが水陸両用戦のイメージとして定着している。つまり、防御側が海岸線や島嶼に立てこもって待ち受けている前面に侵攻側が上陸を敢行する強襲上陸作戦が水陸両用戦と考えられている。
しかし、現代の水陸両用戦はこのような強襲上陸作戦だけでなく、様々なヘリコプターや攻撃機といった航空機を活用して「海から陸上戦闘部隊が海と空を経由して陸に到達し、陸では航空部隊と共同で陸上戦闘部隊が作戦を実施する」という、海と空と陸を全て活用した戦闘形態を意味するようになっている。したがって“amphibious”の意味合いが「水陸両用」から「水陸空併用」へと進化しているわけである。
陸自と海自の共同作業のシミュレーションにも アイアンフィストでは、まさに水陸空併用戦能力としての“Amphibious Capability”に関する各種訓練が凝縮されて実施されている。
アメリカ海軍揚陸艦に第13海兵遠征隊と西部方面普通科連隊部隊の隊員たちが乗り込んで、サンクレメンテ島やキャンプ・ペンドルトンのレッドビーチなどに接近上陸する訓練は、伝統的な海(揚陸艦)から海を経由(汎用上陸用舟艇「LCU」、エアクッション揚陸艇「LCAC」、水陸両用強襲車輌「AAV7」を使用)して陸に到達する訓練と、海から空を経由(ヘリコプター、オスプレイを使用)して陸に到達する訓練がミックスされたものである。
これらの「海から海と空を経由して陸に到達する」訓練では、とりわけ海兵隊と海軍水陸両用戦隊の密接な連携が必要不可欠であり、陸上自衛隊にとっては、将来の日本自前の水陸両用戦能力を構築するために避けて通れない(というより、中心的課題となる)海上自衛隊との密接な共同作業のあるべき姿を観察し習得するまたとない機会と言えよう。
また、広大なトウェンティナイン・パームス空陸戦闘センターで実施される近接航空支援訓練は、現代の水陸両用戦(すなわち水陸空併用戦)にとって不可欠な陸上戦闘部隊と航空部隊の連携行動の訓練である。
アメリカ海兵隊は、海兵隊自身が陸上戦闘部隊だけでなく航空戦闘部隊や輸送航空部隊を保有しており、「空陸戦闘センター」の名称が示しているように海兵隊内での陸上部隊と航空部隊は切っても切れない関係になっている。
実際に、「海から陸上戦闘部隊が海と空を経由して陸に到達し、陸では航空部隊と共同で陸上戦闘部隊が作戦を実施する」という特徴を持ったアメリカ海兵隊が独自に生み出した戦闘組織構造は、「海兵空陸任務部隊」(MAGTF:マグタフ)というシステムであり、その名称が示すように海兵隊の陸上部隊は航空部隊と一体になっている(この構造を理解しなければ、普天間基地移設問題を軍事的に議論することはできない)。
(注:MAGTFに関しては拙著『アメリカ海兵隊のドクトリン』<芙蓉書房出版>、あるいは『海兵隊とオスプレイ』<並木書房>を参照されたい。)
このように、アイアンフィストに陸上自衛隊の部隊が参加することによって、アメリカ海兵隊における「陸」と「空」と「海」の密接な関係が現代の水陸両用戦の根幹をなしていることの片鱗を身をもって認識することが可能である。
また、海兵隊側の意図も、海兵隊から水陸両用戦の何たるかを学び取って日本が独自の水陸両用戦能力を構築する一助になることこそ、真の軍事同盟としての日米同盟が強化される推進力になる、というところにある。
待ったなしの水陸両用戦能力構築 島嶼国家日本にとって水陸両用戦能力は国防のために必要不可欠なだけでなく、東日本大震災のような大規模自然災害に際しても獅子奮迅の働きをする、まさに国民と国家にとって極めて有用な公共財たり得る軍事力ということができる。
皮肉なことに、過去半世紀以上にもわたってアメリカ海兵隊が沖縄を中心として日本に駐留を続けてきているおかげで、自衛隊が自前の水陸両用戦能力を構築してこなくとも日本が他国の侵攻を受けるような事態に直面することはなかった。
しかし、アメリカの軍事力の相対的低下や中国人民解放軍の台頭、それにロシア極東軍復活の兆し等々、日本を取り巻く軍事環境は、日本がいつまでも独自の水陸両用戦能力を構築しないでアメリカ海兵隊・海軍に頼り切っているという他力本願の構図を許さない状況に突入している。
現在ゼロに近い日本独自の水陸両用戦能力を短時日のうちに構築するには、広範囲にわたる分野(海と空と陸にまたがる水陸両用戦能力は、極めて複雑で多数の専門分野から構成されている)での努力が必要となる。それらの一環として、水陸両用戦の実態を直接海兵隊から習得する機会を与えられた陸上自衛隊は、貴重な経験を参加した部隊だけにとどめるのではなく、また陸上自衛隊だけに囲い込むのではなく、防衛省・自衛隊全体で共有し、日本自前の水陸両用戦能力構築に活用する必要がある。
もちろんそのためには、政治家やマスコミなどによる適正な理解と具体的行動(当然のことながら国防費の増額や、各種法令の見直し)が必要なことは言うまでもない。 JBpress.ismedia.jpより引用
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陸上自衛隊
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