ミッドウェー海戦研究所

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日露の戦略的和解の必要性と
北方領土返還への道筋
 
(1)からの続き
 
3 北方領土問題解決と日露の戦略的和解の可能性
 
 北方領土問題解決の糸口を見出すためには、日本としてはまず、関係国相互間の国益の一致点と対立点に注目し、関係諸国間及びそれら諸国と日本の相対的なバランス・オブ・パワーの推移を慎重に見極めなければならない。
 
 しかし日本の交渉力に限界があることは、ソ連崩壊後のロシアの経済が疲弊し政治的にも弱体であり、日本の経済力も充実し、もっとも日本が優位に立てたはずのボリス・エリツィン政権期ですら、ロシア側から実質的譲歩は勝ち取れず、「東京宣言」のレベルにとどまったことでも明らかである。
 
択捉島を訪問して日本人の墓碑に手を合わせる女子高校生〔AFPBB News
 
 最近もドミトリー・メドベージェフは大統領および首相として国後島訪問を重ねている。このメドベージェフの国後訪問の背後にはプーチン政権としての一貫した戦略があるはずである。
 
 その第1の狙いは、力による占拠という現実を日本側に見せつけることにより、日本側にロシアとの交渉への意欲を高めさせることではないかと推測される。
 
 その際に、メドベージェフの強硬姿勢と対照的なウラジーミル・プーチンのソフトイメージを浮き上がらせ、日本側にプーチンとの交渉へのインセンティブを高めさせるとの心理的追い込み効果も狙っているのであろう。
 
 仮に日本側が交渉に応じないとしても、国内外に北方領土支配の意志と能力を見せ付けることはでき、支配の既成事実化を強固にするとともに、地元サハリン州の領土返還への不安を払拭し国内的な指導部への支持を高めるという狙いは達成できる。
 
 どちらにしてもロシアの利益にとり損失はないとの判断に基づいてとられた行動であろう。近年のプーチン政権の動きには、対日関係打開の可能性を探ろうとする意図がうかがわれる。
 
 今年2月、安倍総理の特使としてモスクワに派遣された森喜朗元総理はプーチン大統領と会談した。席上、プーチン大統領は、「引き分け」とは、「勝ち負けなしの、双方にとり受け入れ可能な解決を意味する」と語った。また同大統領は日本とのエネルギー分野や農業分野での協力について、自ら言及している。
 
 このようなロシア側の戦略的な動きに対し、日本が主導性を発揮するには、長期的な一貫した戦略と政策が不可欠である。日本としては、歴史的経緯とこれまでの交渉内容及び国際法的な準拠に照らして、四島一括返還の方針を基本的には崩すべきではない。
 
 特に、「日ソ共同宣言」と「東京宣言」の合意を前提として交渉を進めるべきである。前述した将来の日露間のバランス・オブ・パワーの推移に基づけば、日本側として、これらの合意内容を交渉の前提として利用できる機会が訪れるかもしれない。
 
 ただし、ロシア側との力関係を冷静に評価せず、まだロシアが優位にある時に、例えば二島返還継続交渉案で妥結すれば、ロシア側が二島返還後に実質的な逃げ切り、問題解決済みとの姿勢を強行する恐れがある。
 
 日本側の国力とソフトパワー、とりわけ交渉力が高まり、国後、択捉の返還についても交渉を継続するとの確実な保障措置がとれるような力関係になれば、そのような案も現実的な解決策になるであろう。
 
 北方領土をめぐるロシアとの交渉における最大の課題は、日本側が北方四島に対して主権を持っていることをロシア側にどのようにして認めさせるかということである。この点を解決できれば、その後の返還の方法と手順についても合意できるであろう。
 
 北方領土が日本に帰属することを認めさせるための1つの方法として、北方領土帰属問題についての国際会議を開催し、法と正義に基づき判断すれば、北方四島は日本に帰属するとの結論を引き出し、それをロシア側に認めさせるというアプローチが考えられる。
 
 国際法上、過去の交渉経緯から明らかなように、北方領土のうち、歯舞・色丹は千島列島ではなく北海道の一部であり、直ちに返還されるべきことは言うまでもない。
 
 さらに、国後・択捉については、日本がサンフランシスコ平和条約締結に伴い放棄した千島列島の一部に含まれるが、ソ連に領有権が渡されたわけではなく、領有権は帰属未定のままであり、ソ連が事実上の不法占領を継続しているに過ぎない。
 
 この事実を、国際会議の場でロシア側に認めさせる可能性を追求すべきであろう。もともと日本は、ヤルタ会談での密約に拘束される立場ではない。したがって、千島列島の帰属問題を議題とし、日本以外に、密約に関わった米英露の3国からなる国際会議を開催し、国後、択捉も含めた千島全島の帰属先について協議するべきであろう。
 
 米英を日本の呼びかける国際会議にいかに参加させるかも問題である。しかし、もともと北方領土問題の淵源はヤルタ会談にあり、日本は北方領土問題の解決について、米英に対し歴史的な責任を果たすため、その解決に協力するよう要求し得る立場にある。
 
 日本としては、米国の財政赤字改善に伴う対日防衛負担の肩代わり、ユーロ危機に対する金融支援など、欧米の財政危機に対する支援を交換条件として提示し、会議への参加を要求することもできるであろう。
 
 北方領土の帰属をめぐる国際会議の場に米英を取り込むことにより、日本側の交渉の立場は強化される。日本が国際会議を主導して、法と正義と歴史的事実を訴えれば、米英を説得し日本の立場への賛同を得て、帰属権を取り戻せる可能性が生まれるであろう。
 
 特に日本としては同国際会議の場において、サンフランシスコ平和会議における吉田茂全権の発言でも明らかにされたように、「千島南部の国後、択捉両島が日本領であることについては、帝政ロシアもなんら異論を挿まなかった」のであり、もともと日本固有の領土であること、および北千島諸島は1875年の千島・樺太交換条約に基づき樺太南部を露領とする代償として平和裏に取得したものであり、カイロ宣言に言う、武力により「奪取しまたは占領した」領土ではないことを再度強く主張すべきである。
 
 この主張が認められれば、帰属不明とされたままの国後、択捉両島の日本帰属は認められ、場合により得撫島以北の千島諸島も帰属が日本にあることの正当性も認められるかもしれない。
 
 国際会議の結果、帰属先は日本にあるとの結論が出されれば、ロシアがたとえ結論を受け入れなくても、日本の主張に対する国際的な支持が高まり、日本の対露交渉力も強化されるであろう。
 
 もしロシアが結論に同意すれば、日露領土交渉は一気に進展することになる。いずれの場合も、日本にとり損失はない。またロシア指導部にとっては、たとえ結論を受け入れても、国際的な協定に基づく義務という説明ができることになり、彼らの国内での指導力に致命的な打撃を与えないような口実にもなり得る。
 
 ただし、国際会議の結論がこのような方向になる可能性が高ければ高いほど、ロシア側が、このような国際会議への参加に応じる可能性は少なくなる。ロシア側を会議参加に応じさせるには、単なる外交上の呼びかけだけでは不十分である。
 
 力を信奉するロシアを交渉に応じさせるためには、外交交渉と併行して、北海道の道北、道東への自衛隊の配備を増強して対露防衛警備態勢を強化し、会議の成否に関わらず日本は領土を守り抜く意志と能力を持っていることをロシア側に印象付け、交渉に応じるよう圧力を加えることが必要である。
 
 このような圧力を加えなければ、ロシア側は日本が本気で交渉に取り組むとは解釈せず、従来通りの問題先送り、既成事実の強化という高圧的な姿勢をとり続けるであろう。
 

 いずれにしても、ロシア側が長期一貫した戦略で交渉に臨むのであれば、日本側としても、このような具体的な戦略をもって臨み、相手をこちらの作った場に引き込むよう主導性を発揮しなければならない。


(3)へ続く
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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2013/5/19(日) 午前 10:06 [ ユニコーン ]


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