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陸上自衛隊

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大学の秋入学は日本再生のチャンス
「登録予備自衛官制度(仮称)」の提言
はじめに
成24(2012)年1月、東京大学が秋入学の方針を打ち出した。4〜5年をかけて移行する計画のようである。この狙いは、海外留学生と日本人留学生の交換の円滑化を図り大学の国際化・グローバル化を加速させることにより、日本人学生の学力不足の是正や大学自身の国際競争力の強化にあるという。
 
 入学時期については、先の大学教育の規制緩和により各学長の判断で可能であり、我が国でも秋田にある国際教養大学など一部の大学では、すでに秋入学を取り入れている。
 
 世界的には、欧米諸国、中国等約7割の国が秋入学である。このため、春入学を基本としている我が国は、秋入学国からの受け入れ時期のズレから、良質の留学生獲得に支障を来している。
 
 さらに、日本からの海外留学についても、履修時期のズレから履修科目の選択が困難になることや留学期間が長期化し留年につながるなど、留学によるデメリットが大きく、年々海外留学生の数が減少傾向にある。
 
 このことが、日本の大学のグローバル化を遅らせ、ひいては大学の国際的評価を低下させている大きな要因となっている。これらのことを是正するために提唱されたのが秋入学への移行である。
 
 秋入学の長所としては、(1)主要各国と入学時期が合致するため、優秀な留学生獲得に有利、(2)高校の学習の補強、(3)入学者に社会経験を付与することによる学業に対する取り組み姿勢の向上、などが挙げられる。
 
 一方、欠点としては、(1)会計年度との不整合による各種社会制度・慣行とのズレ、(2)ギャップターム(イヤー)(高校卒業から大学入学の間、大学卒業から就職までの期間)の存在による就職活動の遅れや家計の負担増などが挙げられている。
 
 筆者は、秋入学を推奨する立場から、ギャップタームを活用した現代青年の学力及び社会人基礎力の向上施策とともに、さらなる積極的施策の1つとして、「登録予備自衛官制度(仮称)」の創設について論じてみたい。
 
現代青年の特性
 
 人生80年の現代においては、かつての人生50年時代と比較して、大人への到達度が3分の2ほど低下していると言われる。すなわち、現代の20歳が昔の15歳程度に相当する。これは、大学生のみならず社会人においても似たり寄ったりの傾向がある。
 
イメージ 1 最近の社会現象として、入社した新卒者が会社に適応できず、入社3年後には高卒で5割、大卒でも3割の者が転職を経験するという。また、企業側からは、新卒新入社員が特に不足している能力として、「コミュニケーション能力」「実行力」が挙げられている。
 
 このため、経済産業省が「社会人基礎力の養成」というプログラムを2006年度から各大学に提唱している。大学教育に関する事項を経産省が主導するということに何となく違和感を覚えるが・・・。
 
 ともあれ、その中では、「社会人基礎力とは、『前に踏み出す力』『考え抜く力』『チームで働く力』の3つの能力であり、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力である。企業や若者を取り巻く環境の変化により、『基礎学力』『専門知識』に加え、それらをうまく活用していくための『社会人基礎力』を意識的に育成していくことが今まで以上に重要となってきている」と謳われている。
 
 現在、十数校の大学がモデル校として選ばれているが、他の多くの大学においても「キャリアセンター」などと称して、社会人としてのマナーなどを教えているようだ。
 
 これを見て、「おや?」と思うのは著者だけではないだろう。その理由の1つは、このような能力は、従来大人になる過程において自然と身について然るべきものではないだろうか。
 
 しかし、価値観の多様性、誤った個人主義の蔓延、そして通過儀式(イニシエーション)の少ない現代社会においては、一般的な社会人としての価値尺度が曖昧になっており、あえて「社会人基礎力」と称して、学校などの教育に意識的に取り込み、育成されなければならないと認識されたのであろう。
 
 もう1つは、学校教育とは何か、ということである。
 
 筑波大学の山田信博学長は、大学の役割を「質の高い教育・研究を通じて、時代の要請に応じた人材の育成と、知的生産力の向上により社会に貢献する」と説く。また、国際教養大学の中嶋嶺雄学長は「リベラルアーツ(教養)教育を徹底し、個性ある人材を育てて社会に送り出すこと」と説く。
 
 いずれも、大学における教養教育の重要性とともに、国家に貢献すべき社会人の育成が大学の役割と説いている。
 
 もちろん、職業人として即通用する実学は大事であるが、それは専門学校でも付与できるであろう。大学における実学教育は、教養に裏打ちされた教育であるべきと考える(たとえ、それが防衛大学校のような純粋な職域学校においても当て嵌まる)。
 
 十数年前に著された、新堀通也著『志の教育』においては、学校と職場の関係を次のように論じている。「子供がますます長期間在籍する学校と、彼らが入っていく職場の差が大きくなったため、いろいろな課題が出ている。送り出す学校のあり方の検討はもちろん必要だが、その改革は困難であり、受け入れる職場の取り組みを改善することは急務である」と。
 
 すなわち、十数年ほど前までの教育界においては、学校教育はいまさら直しようがない、あるいは直すべきでないので、職場側で入社してくる人間を何とかしてくれ、というスタンスだったのだろう。
 
 経産省が提唱する「社会人基礎力」の養成は、これに抗して、その実現は学校教育でこそ行うべきものだということであろうか。産業界の要請が教育界の理想に勝ったような形であるが、この是非についてはここで論じるテーマではない。
 
ソフト・テイク・オフ方式(緩かな離陸)の勧め
 
 筆者は、自衛官最後の職として、陸上自衛隊少年工科学校(現高等工科学校)に勤務した。この学校は、15歳から18歳までの少年自衛官(現在は自衛官候補生徒)を教育する場であるが、着任して最初に感じたことの1つが、現代少年の心の弱さである。
 
 入校した生徒には、短期間で自衛隊の諸制式に習熟させようと自衛隊の新隊員教育式に鍛える。指導する側も、日夜親身に、いわば「箸の上げ下ろし」まで教育する。生徒は素直で柔軟なため、この種教育の効果はてきめんである。生徒は一様に現今の高校生に比し立派な生徒に見える。
 
 しかし、その本質は極めて脆いものがある。すなわち、人間としての中身が伴わないうちに、形だけを追求するようになる。また、形式的に物事を実行する能力は身についても、自ら考え、自ら解決する能力に乏しくなる危険性がある。
 
 なぜそうなるのか。
 
 それは、入校前までの生活と自衛隊での生活の段差が大きいために、相当に急激な離陸をしなければならない。しかし、この急離陸は生徒の心の歪を招く恐れがある。
 
 正しく、現今の新卒者が、学生時代には経験したことがない厳しい労働環境や職場の空気に直面し、その段差を乗り越えられずに脱落していく様に似ている。
 
 教育現場においても、かねてから「小1ギャップ」「中1ショック」「スチューデントアパシー(無気力感)」など、環境の変化に馴染めないことによる諸問題が存在する。これを防止するためには、徐々に環境に慣れさせ、次の段階に進む時間ときっかけを与える、いわゆる「ソフト・テイク・オフ」方式が必要である。
 
イメージ 2 読者の中には、それは生ぬるいと言われる方が相当数いると思うが、これが我が国(いや、先進国一般かもしれない)の若者の現実でもある。生まれてからの成長過程が一昔前とは異なっているのである。
 
 蛇足ではあるが、昨今問題になっている鉄拳をもって指導する「体罰」は、大多数の現代青少年には百害あって一利なしである。
 
 加えて、上図のようにソフト・テイク・オフ方式の方が最終的な到達度が高くなる可能性がある。なぜならば、現代は各教育段階の結節における連続性、整合性が必ずしも整っていないため、総じて各階段への飛びつきが急角度であり、乗り越えるのは相当量のストレスがかかる。その最たるものが受験制度である。そこで脱落した者に対するフォローは十分とは言えない。
 
 辛うじて通過できた者であっても、次の段階で同じような急階段が待ち受けている。最終的に全力疾走により自己を振り返ることなく大学の受験を迎える。
 
 そして、大学に入った途端にそこは癒やしと就職活動の場となり、各人の伸び率は著しく低下する。その伸び率の低さのまま社会人となるので、将来の伸び率もさほど上がらないという構図になりかねない。
 
 その意味では、戦前の教育における予科制度は、なかなか理にかなったものであるし、現代における中高一貫校など、同じ環境で連続的に教育を受けることが一般的に有利であるのは、教育進度の柔軟性のみならず、ソフト・テイク・オフ効果の表れでもあると考える。
 

 そのような現実の中で、秋入学におけるギャップタームは、ソフト・テイク・オフ方式を最終的に行える場として注目できる。平たく言えば、日本の大学生は、高校卒業後5年間で社会人になるための基礎的資質と必要な学力を蓄えるという発想の転換である。


(2)へ続く
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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小窪兼新
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