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アメリカの中国「封じ込め」政策を
日本は全力で支援せよ 2013.07.25(木)北村 淳:プロフィール 前回の本コラム「『中国封じ込め』にブレーキをかけるアメリカ海軍」では、増強著しい中国人民解放軍海軍に対してアメリカ軍指導層内部にも「関与政策派」的立場を打ち出している勢力が存在していることを指摘した。それとともに、だからといって何も米軍が「関与政策派」になってしまったわけではなく、依然として「封じ込め政策」的な諸施策も実施されているといった状況も説明した。そのような動きの具体例が、先週発表された台湾軍への「P-3C」哨戒機配備日程の正式決定である。
7月15日、台湾が4機のP-3C哨戒機を2013年中に手にすることが正式に決定したと、台湾軍当局が発表した。
台湾に引き渡されるP-3C(写真:Lockheed Martin)
現在、台湾軍は、旧式の「S-2T」対潜哨戒機を運用しているが、P-3Cの導入により、台湾軍による中国潜水艦に対する探知発見能力は大いに強化されることになる。
台湾、ベトナムに哨戒機P-3Cを配備してほしい米国 日本の防衛だけでなく、アメリカの極東戦略とりわけアメリカ海軍戦略にとって、中国海軍潜水艦戦力は極めて深刻な障害になりつつある。
中国海軍攻撃原潜は西太平洋・南シナ海で行動するアメリカ海軍攻撃原潜にとり厄介な存在である。また、海中で待ち構える中国海軍新鋭通常動力潜水艦は、アメリカ海軍空母任務部隊や水陸両用戦隊にとり深刻な脅威である。
アメリカ海軍自身も攻撃原潜によるこれらの海域での哨戒活動に加えて、偵察衛星や偵察機により潜水艦基地周辺を厳重に監視したり、九州から台湾そしてフィリピンにかけて設置されていると考えられている「SOSUS」(海底設置音響探査網)の情報を分析したりすることにより、中国海軍潜水艦の動向には最大限の警戒をしている。
もちろん、日本周辺海域でのアメリカ空母任務部隊の護衛に抜群の威力を発揮させるよう“育成”してきた海上自衛隊の対潜水艦戦能力を活用しない手はない。すなわち、海自潜水艦による中国潜水艦基地周辺海域の監視・情報収集、それに海上自衛隊哨戒機によるパトロールである。
なんと言っても海上自衛隊は、アメリカ海軍に次いで多数の(それも世界水準から見るとずば抜けて多数の)P-3C海洋哨戒機を運用している。それだけではなく、アメリカ海軍の「P-3」よりも高性能な対潜装置が海自P-3Cには搭載されており、対潜能力だけを比較すれば海上自衛隊の方がアメリカ海軍に優っていることはアメリカ海軍自身も認めるところである。さらに海自P-3Cは国産の新鋭「P-1」哨戒機との交代が進められ、日本の対潜哨戒能力はより一層強化されていく。
ただし、いくら日本が優れた対潜哨戒能力を保持しているといっても、憲法や法令の縛りによって海上自衛隊哨戒機がバシー海峡(台湾とフィリピンの間の海域)、それに南シナ海までカバーできない状況である。したがってアメリカ海軍は、台湾軍それにベトナム軍がP-3哨戒機を手にすることに大いなる期待を抱いているのである。
もちろん、台湾にとってもベトナムにとっても、P-3Cを配備することにより厄介な隣国中国の潜水艦や水上艦艇への強力な対抗手段を手にすることができるわけであるから、アメリカ海軍にとってもベトナムにとっても台湾にとっても、それにアメリカ軍需産業にとっても、P-3Cにより「中国潜水艦封じ込め網」を構築することは願ったりかなったりの話なのである。
アメリカ海軍の目論見通り中国周辺諸国ならびに利害関係国にP-3Cが行きわたると、強力な海上自衛隊哨戒機を中心に、韓国・台湾・ベトナム・タイ・オーストラリア・ニュージーランドそれにアメリカ海軍と二重三重の哨戒機による中国潜水艦封じ込め網が完成することになる。
アメリカ海兵隊の“弟子”たちと中国封じ込め アメリカ軍の「封じ込め政策派」による具体的な努力は、哨戒機による監視網構築だけではない。
中国周辺諸国は島嶼国家(日本、台湾、フィリピン、インドネシア)あるいは比較的長い海岸線を有する国家(韓国、ベトナム、マレーシア、タイ)が多いため、中国海洋戦力の脅威に備えるための陸上軍事力には、水陸両用作戦能力が不可欠である。日本以外のこれらの諸国は、中国海洋戦力が強大化する以前より、国防に必要な水陸両用作戦能力を保持してきたし、韓国などは東アジア最強と言われる海兵隊を保有している。
しかし、その韓国といえども海軍側の水陸両用戦能力は低調であり、いくら強力な海兵隊を擁していても必要な両輪の片方が欠けていたのでは水陸両用作戦は実施できない。その他の諸国(台湾、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ)も、現代軍事力の中でも最も複雑なものの1つとされている水陸両用能力を満足な状態で保有しているとは言いがたい。
そこで、最近アメリカ海兵隊は、これら中国周辺諸国の海兵隊・海軍陸戦隊との結びつきを強化し、自らの有する経験とノウハウの伝授に力を注いでいる。
さらに、それら東アジア・東南アジア諸国に対して軍事的支援が可能なアメリカの同盟国であるオーストラリアやニュージーランドに対しても、アメリカ海兵隊によるテコ入れが強化された。とりわけ、オーストラリア陸軍はアメリカ海兵隊の海兵遠征隊(MEU)に相当する水陸両用作戦能力を身につけた部隊を構築中であり、間もなくオーストラリア版MEUが誕生する。オーストラリア海軍はそのオーストラリア版MEUを素早く展開させるための強襲揚陸艦をはじめとする軍艦を建造中であり、近々オーストラリア海軍水陸両用戦隊もまた誕生する。
そして、最近になり海兵隊の働きかけが功を奏したためか、ようやく日本も重い腰を上げて水陸両用能力の本格的構築に舵を切ったように見受けられる。少なくとも海兵隊はこのように理解しており、そのために日米合同訓練「ドーンブリッツ2013」をはじめとして、自衛隊による水陸両用能力構築に対する協力を惜しまない態勢を取っている。
海兵大将が強制財政削減の影響を警告 このように、「関与政策派」的動きが米軍内にも出てきているとはいうものの、依然として米軍による「封じ込め派」的な動きは継続している。ただし、それらはオバマ政権による強制財政削減の影響に直撃されつつある。
海兵隊総司令官エイモス大将と海軍作戦部長グリーナート提督は次のようなことを述べている。「このまま強制財政削減が続くと、オバマ政権が打ち出した『リバランス』はとても推進することができない。なぜならば、リバランスにはアジア太平洋地域に展開配備される艦艇と兵員の増強が不可欠なのに、強制財政削減下では艦艇・装備・兵員の量的あるいは質的削減が必要になるからである」。
この文脈での海兵隊総司令官と海軍作戦部長が指摘している「リバランス」は、先週の本コラムで紹介したアメリカ海軍内の「関与政策派」的なものではなく、上記のP-3C包囲網や水陸両用能力の伝授といった具体的動きに示されている「封じ込め政策派」的な動きを指している。
そしてエイモス海兵大将は、アジア太平洋「リバランス」のためにアフガニスタンから撤退する戦闘部隊をアジア太平洋地域に再配置するといっても「海兵隊がアフガニスタンで使用してきた装備・資機材の7割以上がイラクで使用したものであり、そのような装備をさらに繰り返し使用することはもはやできない相談である」と述べ、強制財政削減により予算が大幅にかつ一律にカットされてしまっている状況では「アジア太平洋地域に展開する海兵隊の戦力を強化するどころか維持することすら極めて疑わしい状況である」との見解を示した。
海兵隊総司令官エイモス大将(中央)
エイモス大将は、海兵隊が海外に展開して戦闘することができなくなることは、平和が維持できなくなることを意味する、といった趣旨の警告も発している。要するに、海兵隊による「封じ込め」的効果を撤回してしまうと、これまで維持されてきた日本周辺の軍事的安定も保証の限りではないということである。
米国の「関与政策」への傾斜を阻止せよ 日本をはじめとする中国周辺諸国の軍隊がP-3CやP-1といった高性能哨戒機を運用することや、海兵隊・海軍陸戦隊を保有するとともに、揚陸艦をはじめとする海軍の水陸両用戦隊を整備して水陸両用能力を強化することは、アメリカ軍事戦略にとっては中国海軍に対する「封じ込め政策」推進に欠かせない。だが、それら周辺諸国の哨戒機や海兵隊それに揚陸艦は、なにもアメリカのために存在するのではない。第一義的にはそれぞれの周辺諸国自身が「牙を剥き出しにしつつある」中国海洋戦力から自国を防衛するために欠かせないツールであることは言うまでもない。
つまり、日本が対潜哨戒能力をさらに向上させ、水陸両用作戦能力を構築することは、第一義的には日本の防衛に資するとともに、アメリカの対中「封じ込め政策」の一部を成すことにもなるわけである。
もちろん戦時ではない現在、ガス抜きとしての「関与政策」的施策は必要である。つまり、徹底的な「封じ込め政策」を実施して中国政治軍事指導層中の強硬派を憤激させ事態を悪化させることを避ける、ということである。
しかし、アメリカによる「封じ込め政策」的施策のほとんどが日本の国防に直接有用である以上、日本が歓迎すべきアメリカの対中基本姿勢は一目瞭然である。
中国共産党政府は、あらゆる手段を使ってホワイトハウス、アメリカ連邦議会、それにペンタゴンによる「リバランス」政策を「関与政策」的性格に向かわせようとしている。そして、上記のように強制財政削減措置に陥っているアメリカ政府が、「封じ込め政策」の実施を実質的に諦めざるを得ない状況に陥ってしまうのは必至である。
日本政府は、「日本を取り戻す」ためにも、アメリカの対中戦略の根本原則が「関与政策」に傾斜することを阻止する努力を本気で開始しなければならない。 JBpress.ismedia.jpより引用
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米海軍
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2013/9/9(月) 午後 4:01 [ 通りがけ ]