ミッドウェー海戦研究所

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軍事介入に消極的になった米国、
そして中国がほくそ笑む
2013.09.19(木)北村 淳
リアのアサド政権による化学兵器使用に対する懲罰的ミサイル攻撃を実施しようとしていたオバマ大統領は、国際社会からの支持を思ったように得ることができず、国内世論も反対が賛成を大きく上回っていたため、連邦議会による軍事攻撃賛成決議を得て、地中海で待機中の米海軍部隊にゴーサインを出そうと考えた。
 
 ところが、上院外交委員会が決議案を採択したものの、上院や下院での決議案採決以前にロシア政府による「シリア化学兵器廃棄案」が提示されたために、連邦議会での決議も軍事攻撃も延期されてしまった。
 
 こうした「大統領が軍事力行使発令に先立って連邦議会に事前承認を求める」という前例は、アメリカの敵勢力あるいは敵性国家にとっては歓迎すべき出来事であると言える。
 
 とりわけ、これまでアメリカが“仕切って”きた海洋への侵攻戦略を実施中の中国にとっては、まさに大歓迎の出来事である。
 

アメリカ連邦議会の承認は法的には必要なかった

 そもそもオバマ大統領は、アサド政権に対する懲罰的軍事行動を実施するのに先立って、アメリカ連邦議会の承認を法的に必要としていたわけではなかった。
 
 1973年に連邦議会によって採択された「大統領の戦争権限に関する決議」によると、アメリカ大統領は、アメリカの国益に関わる緊急事態に対処するために必要な60日以内の軍事行動を、連邦議会による宣戦布告や事前の承認なしに命じることができる。ただし、軍事行動発令後48時間以内に連邦議会に報告する義務がある。そして、60日以内に連邦議会の承認が得られなかった場合は軍事行動の延長はできない。ただし、撤収のために30日以内の追加期間を設けることはできる。
 
 要するに「60日以内の軍事作戦」ならば、アメリカ大統領は連邦議会の承認なしにアメリカ軍を動かすことができるのである。これに対応して、アメリカの先鋒部隊として常に緊急出動に備えている海兵隊は、60日間までの作戦行動ならば陸軍などの増援なしに行動できるような態勢を維持している。
 
 したがって、今回のアサド政権に対する懲罰的長距離巡航ミサイル攻撃も、連邦議会の決議を事前に求める必要は法的には存在しなかった。しかし、国内世論での反対意見が大きく賛成を上回っていたために、あえて連邦議会の事前承認を得ようとしたのであった。
 
 今回のオバマ大統領の判断によって、今後、アメリカ自身に対する直接的軍事攻撃への反撃以外の軍事行動(第三国での内戦への介入や、第三国間の紛争に対する軍事介入)をアメリカ大統領が発動するにあたって、国内世論の賛同が低調な場合には、連邦議会の事前承認を求めて武力発動に対する“お墨付き”を得ようとする可能性が極めて大きくなった。
 

強い世論の反対

 米国メディアによる世論調査によると、2001年9月11日にアメリカ本土内で発生した同時多発テロの直後(10月7日)に開始されたアフガニスタンでのアルカイダ・タリバン攻撃の際は、アメリカ国内世論の80%以上が攻撃に賛成した。
 
 また、イラクのサダム・フセイン政権の大量破壊兵器保有と国内での圧政を口実にして2003年3月20日に開始されたサダム・フセイン政権打倒のためのイラク攻撃に際しても、アメリカ国内世論の60%以上が攻撃に賛成した。
 
 しかし今回のシリアに対する軍事介入に関しては、ウォールストリート・ジャーナルとNBCの世論調査によると「賛成33%・反対58%」、CBSの世論調査によると「賛成30%・反対61%」、そしてCNNの世論調査によると「賛成39%・反対59%」、そしてFOXの世論調査では「賛成36%・反対61%」という数字が示された。
 
 軍事介入賛成は30〜39%と若干の幅が生じているが、アフガニスタン戦以前の80%、イラク戦以前の60%からは激減してしまった。そして、シリアへの軍事介入に反対の世論は58〜61%とほぼ6割の世論が反対の立場を示していることになった。
 
 このような数字の背景には、2001年10月7日に開始されていまだに継続しているアフガニスタン戦争や、 2003年3月20日から2011年12月15日まで続いたイラク戦争などの体験がある。「そのような第三国での軍事紛争に介入して、アメリカの国益が増進したのであろうか?」という多くのアメリカ国民の心に宿っている強い疑問からもたらされたものと言えよう。
 

他国の面倒まで見る余裕がなくなってきた

いまだに続くアフガニスタン戦争。爆発物処理中の海兵隊
(2013年、写真:USMC)
イメージ 1
 
 ちなみに、現在も継続中のアフガニスタン戦争におけるアメリカ軍将兵の戦死者数は、2013年末までの公式統計によると2271名に上っている。またイラク戦争でのアメリカ軍将兵の戦死者数は4409名、戦闘中の負傷者数は31928名とされている。
 
 
 イラク戦争終決までのイラク戦争とアフガニスタン戦争での直接戦費は、ブラウン大学の推計によると、少なくとも3兆2000億ドル(およそ320兆円)であり、この他にも同時期における占領統治や再建に投入した費用は少なくとも1兆ドル(およそ100兆円)と言われている。
 
 そして、2013年5月に発表されたハーバード大学の試算によると、イラク戦争とアフガニスタン戦争における戦争関連諸費用は、およそ6兆ドル(およそ600兆円)であり、今後も負傷した将兵や退役軍人に対する治療費などの莫大な費用を支出し続けることになるという。
 
 このように7000名近いアメリカ人の生命を犠牲にし、数万名の負傷兵を生み出し、6兆ドル(およそ600兆円というと単純計算で毎年50兆円ということになり、日本の年間国家予算総額の半分以上も、毎年毎年、戦争関連費用として支出してきたことになる)にも上るアメリカ国民の税金を投入した結果、アフガニスタンやイラクが見違えるような平和で民主的な国家に生まれ変わったならば、多くのアメリカ国民のプライドが強化されたであろう。
 
 あるいは、それらの戦争によりアメリカの国益、それも国民が身近に感ずる国益が増進したのならば、多額の血税を投入した甲斐があったと考えるかもしれない。
 
イラク戦争最大の激戦地ファルージャで戦闘中の海兵隊
(2004年、写真:USMC)
イメージ 2 しかし、イラクやアフガニスタンの現状は誰の目にも改善されているとは映らない。また、アメリカ国民にとって生活必需品であるガソリン価格もそれらの戦争とともに数倍にも跳ね上がってしまい、下落する見込みはない。このような状況では、戦争に費やした莫大な税金を国内問題解決に投入すべきではなかったのか? といった疑問が多くのアメリカ国民に共有されてしまったのは当然かもしれない。
 
 今回のオバマ政権による対シリア軍事攻撃に対して6割前後の世論が反対したということは、「もういい加減に第三国に対する軍事介入は差し控えるべきだ」という感情が多くのアメリカ国民の間に浸透しつつあることを示す何よりの証拠と言えよう。
 

米軍による日本救援のタイミングは確実に遅くなる

 シリアに対する軍事介入は第三国の内戦への介入であり、日中軍事衝突が発生した場合にアメリカが軍事介入するのは条約に基づく同盟国救援であるため、両者を同段に論ずることはできない。しかし、第三国の内戦への介入以上に第三国間の領土紛争には介入を躊躇するのがアメリカ外交政策の伝統的基本原則である。そのため、尖閣諸島や先島諸島の領有権や東シナ海日中中間線確定などを口実にして日中軍事衝突が勃発した場合、そう簡単に本格的軍事介入が実施されることはあり得ない。
 
 上記のようにアメリカ国民の多くが第三国に対する軍事介入に積極的でなくなったというよりは反対するようになってきている風潮では、民主党政権であろうが共和党政権であろうが日中軍事衝突に対して日米安全保障条約を口実に本格的軍事介入を実施するにあたって連邦議会の事前承認を求めざるを得なくなる可能性は極めて高いと言わざるを得ない。
 
 そのような場合、1500名もの無力なシリア市民が化学兵器で虐殺されたらしいという状況下(以前のアメリカの国民性では、この種の“弱者を助け、悪者を懲らしめる”軍事行動に対する反対は極めて少なかった)ですら、6割のアメリカ国民が軍事力行使に反対している事実から類推すると、アメリカ国民の目から見ると立派な軍隊である自衛隊を擁するだけでなく、世界第3位の経済力を持つ日本を「なぜ多くのアメリカ人の血を流し多額の血税を投入して救援しなければならないのか?」という素朴な疑問が湧き上がるのは避けられない。
 
 まして中国共産党は、日本政府や日本メディアと違い、常日頃、米国内で連邦議会や政府諸機関、大手メディアから地方新聞社に至るまで幅広く強力なロビイ活動やメディア対策といった情報戦・特殊作戦を実施している。そして最近では多くの大学や研究機関それにシンクタンクなどに対しても極めて大きな影響力を確立している。したがって中国ロビイや中国共産党の息がかかったメディアや研究機関の宣伝工作などによって、尖閣問題に関するアメリカ国内での世論も中国寄りに誘導されつつある。
 
 いよいよ日中軍事衝突という事態が迫った際には、「世界有数の経済大国である日本は、自分たち自身の血を流すのが嫌だからアメリカ軍を引き込んでアメリカの若者の血を流させて日本の国土を守らせようとしている」といった類のデマ宣伝を各方面に垂れ流すのは必至である。
 
 実際、筆者周辺の軍情報関係者や研究者たちの間でも、「中国側のアメリカ政界・財界・メディア・学界に対する食い込みには目を見張るものがあり、第2次世界大戦以前に日本が中華民国ロビイに敗北した状況など比較にならないほど中国共産党は情報戦・特殊作戦で対日勝利を収めている」という事実は常識になっている。
 
 このような状況下で、日中軍事衝突が勃発した場合には軍事介入に反対が7割・賛成が2割といった状況が現出しても全く不思議とは言えない。もちろん、中国ロビイの術中に取り込まれている多数の連邦議会関係者たちは、「第三国間の領域紛争への不関与」という伝統的原則を盾にして局外中立を主張することは間違いない。すると、たとえ大統領はじめ政権首脳が極めて親日的であったとしても、世論の強い反対にさらされ、連邦議会の事前承認を得るのにも手こずる結果となってしまう。
 
 したがって、もし日米安保条約に基づいて米軍による本格的軍事介入が実現したとしても、介入のタイミングは決して早くはなく、(現状の防衛体制が続く限り)日本側が相当甚大な被害を被ってからになってしまうであろう。
 

ますます急務な自主防衛力確立

 本コラムのような予測に対して、「強固な同盟関係がある以上、悲観的すぎる」と考える向きも少なくないであろう。だが、そのような考え方は日本側の希望的期待に過ぎない。
 
 日本にとってはアメリカが“全て”であり“頼みの綱”であるが、アメリカにとっては日本は“多数の中の1つ”にすぎない。そして、アメリカ軍事戦略にとって日本に確保している基地は極めて有用であるが、もしそれらを失陥しても代替戦略はいくつか用意しているのである。
 
 「余裕がなくなってしまったアメリカ社会」が、少なくとも外見上は強力な軍隊を保有している日本を救援するために、多くの人命と多大の戦費を躊躇せずに提供する、と期待するのは、あまりにもアメリカ社会の現実から乖離した虚しい期待と言わざるを得ない。
 
 オバマ大統領が発動しようとした対アサド政権軍事攻撃が、ある意味ではアメリカの国内世論に阻まれたと言える状況は、日本の国防にとっても暗雲を投げかけたのである。
 

 日本が軍事衝突に直面した際に、たとえ米軍の救援を得られたとしても、日本単独で相当の期間にわたる防衛戦を戦い抜かねばならなくなりつつある厳しい現状に対応して、真に効果的な自主防衛能力の強化を(理念だけでなく)実質的に推進しなければならない。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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ですよね 空から爆弾落とさない米国って反米国からはなめられ 同盟国からも頼りなく感じます
○ランクリ

2013/11/26(火) 午前 11:34 あまのじゃく


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小窪兼新
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