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非常に遅ればせながら、尖閣ビデオ流出事件を弊ブログでも取り上げたいと思います。
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2010年11月05日
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北朝鮮が仕かけるゲリラ・テロを撃破せよ
21世紀は特殊部隊の時代
2010.11.05(Fri) 我が国が行うゲリラおよび特殊部隊による攻撃への対処のあり方に関する提言
世界の数多くの国が特殊部隊を保有しているが、その実態は秘密のベールに包まれて詳らかではない。真偽のほどは定かではないが、別冊宝島が紹介している世界最強の10傑は次の通りである。
1 はじめに:21世紀は特殊部隊の時代!(1)SAS(英)
(2)グリーンベレー(米) (3)デルタフォース(米) (4)SEALs(米)
(5)フォース・リーコン(米) (6)COS(仏) (7)GIGN(仏)
(8)コブラ(墺) (9)GSG-9(独) (10)アルファ(露)である。 特殊部隊が一躍脚光を浴びたのは、アフガンにおける「不朽の自由作戦」と「イラク戦争」である。特殊部隊が発信した正確なターゲット情報に対して長距離巡航ミサイルのピンポイント爆撃が見事に成功したことを記憶しておられよう。
目次
今や、特殊部隊の存在抜きに現代の戦いを語ることはできない。特殊部隊には、軍隊系と国内における対テロ活動や人質救出作戦を任務とする警察系があると言われている。本稿では軍隊系を取り上げることとする。
なお参考までに、日本の特殊部隊として巷間言われるのは、次の部隊がある。
(1)SAT(警察庁・警視庁特殊急襲部隊)
(2)SIT(警察本部刑事部捜査1課特殊捜査班) (3)原子力関連施設警戒隊 (4)SST(海上保安庁特殊警備隊)
(5)SBU(海上自衛隊特別警備隊) (6)陸上自衛隊特殊作戦群
(7)航空自衛隊(基地警備隊、基地防衛教導隊) もっともこの中で、空自の基地警備隊を特殊部隊と称するかどうかには異論もあるのだろうが・・・。
世界各国が特殊部隊を保有し、脅威となりうる国はその増強に血道を上げている現実から、我が国は防衛作戦あるいはそれに至る以前の段階から、ゲリラや特殊部隊あるいは、それらを支援する(武装)工作員に、向き合い、彼らに勝利しなければならない。
以下本論において、ゲリラや特殊部隊による攻撃の実態と、我が国として対ゲリラ・対特殊部隊作戦のためにいかなる態勢を構築すべきかを明らかにしたい。
2我が国が直面する脅威(脅威3様と非対称戦戦力)(1)日本の地政学的地位と脅威3様
まずは、「逆さ地図」と言われる地図を見て頂きたい。日本列島は、ユーラシア大陸北東部から太平洋に進出する際の弧状の一大障壁であり、不沈空母でもある。
このような地政学的地位に加え、我が国周辺は、安定した安全保障システムが機能している欧州正面と異なり、様々な不安定要因が内在し、不透明・不確実である。
北日本においては伝統的に南下政策を取るロシアが、その好調な経済を背景に近年軍事改革を進め、訓練も活発化しており、今後とも注視することが必要である。
少なくとも、今日の脅威ではなくとも、中長期的には脅威となろう。その場合には、言わば、HIC(高強度紛争)と言われる状況となるのは必定であり、国家百年の大計から、それに対応する戦力の保持・整備は欠かせない。これを第1の脅威と呼ぼう。
一方、風雲急を告げる感のある朝鮮半島の状況の急変にいかに対応すべきか、まさに喫緊の課題である。今直ちに対応しなければ手遅れになる可能性が高い。
ミサイル防衛しかり、周辺事態対処しかり、法人の救出・国内への輸送しかり、また対米支援阻止などを狙った我が国への武力攻撃への対処、大量の避難民への対応等々、なすべき事項は枚挙に暇がない。可及的速やかな国家的施策が望まれる。
朝鮮半島の急変は我が国にとって第2の脅威であり、どちらかと言うと、LIC(低強度紛争)とも言われる類の脅威である。
さらに、南に目を転じれば、東シナ海波高しである。西太平洋の覇権と東シナ海の資源を虎視淡々と狙う中国の最近の活動は目に余るものがあり、それらを可能とする軍事力の増強には驚かざるを得ない。
これが第3の脅威である。LICからHICに近い強度の紛争までを含む幅広い脅威であり、明日の脅威であろう。否明日ではなく今日の脅威になりつつあり、早急な対応が望まれる。
これら3つの脅威は、時間軸において、脅威の質において異なっている。この3様の脅威に対していかに防衛力を整備し、態勢を整えるか、政治の決断が望まれる。日本の政治はあまりにも鈍感である。
内政面で少々右しようが、左しようが、大勢に影響はないが、外交や防衛においては、そういうわけにはいかない。
(2)関係国の特殊部隊の状況
ロシア、北朝鮮および中国の特殊部隊の実態は西側国家諸国以上にベールに包まれており、極めて不透明である。本項においては、防衛白書をはじめとする各種の公刊資料および各種のウェブサイトに依拠して概観することとする。
●ロシア
ロシア語で「スペツナズ」は、特殊部隊の意である。旧KGB系の特殊部隊は、同国内最強と言われるFSB(連邦保安局)隷下で主として国内の作戦を担当する「アルファ」であり、国外を受け持つとされるアフガニスタン侵攻で活躍した「ベータ」である。
ほかにも連邦軍や参謀本部情報総局の部隊などがあるが、前掲の両部隊が双璧であり、一般的にスペツナズと言う場合はこの両部隊を指すようだ。
アルファ部隊は、北オセチア学校占拠事件で、チェチェンゲリラ31人を射殺して強行制圧したことで勇名を馳せた。
海軍には、特殊戦旅団がある。空挺軍第45独立親衛特殊任務連隊は、軍参謀本部情報総局(GRU)隷下の特殊部隊である。
●中国
中国に関しては、極端に情報が少ない。不透明さは国防費以上だ。陸軍では、各軍区に特殊部隊を有しているようだ。
『実録!! 世界の特殊部隊』(双葉社)によれば、中国には大別して3つの特殊部隊が存在する。
まず、中国公安部人民警察の特殊部隊である「特警総隊」、人民武装警察の特殊部隊、そして人民解放軍の対テロ・治安維持特殊チーム「緊急展開部隊」であるという。
人民解放軍の緊急展開部隊は、人民解放軍7大軍区すべておよびウイグル、チベット軍区すべてに配備されており、総兵力は5万人以上であるという。存在が公表されている第15空挺軍団の例で明らかなように最新の装備が与えられている。
空挺軍団の各師団は3個連隊、1個砲兵連隊から編成され、24時間以内に中国国内あらゆる地域へ展開し得ると見積もられる。米のグリーンベレーにも匹敵する実力を有し、四川大地震、北京五輪、上海万博に出動している。
●北朝鮮
通常戦力においては圧倒的に米・韓軍に劣る北朝鮮は、活路を、核を含むNBCR(運搬手段としてのミサイル開発を含むが・・・)や特殊部隊等に求めているようだ。
2008年の韓国の国防白書によれば、「前方軍団に軽歩兵師団を追加で創設し、前方師団の軽歩兵大隊を連隊級に増強し、特殊戦兵力は、約18万人(2006年時より6万人増)に達するとされている。
夜間・山岳・市街地訓練を強化する等特殊作戦遂行能力を集中的に向上させているとされる。また小型潜水艦を建造して非対称戦力の強化も進めている。
本(2010)年5月5日の共同ニュースによれば、北朝鮮は軽歩兵7個師団からなる特殊部隊約5万人を非武装地帯に近い最前線基地に配置したとの韓国の聯合ニュースの記事を配信した。
(3)我が国のゲリラ戦などの形態
我が国において、反政府ゲリラとも言うべきゲリラは存在していないし、少なくとも近い将来においてその様な事態の発生は考えにくい。在り得るとすれば、合法・非合法に侵入した非正規の要員がゲリラ戦を展開する場合であろう。
この場合でも大規模なゲリラ戦は、日本の国土地形、風土、国民性などから起き難い。正規軍である特殊部隊が、工作員やゲリラと連携しつつ、我が国を攻撃する場合が一般的であろう。
一般的に、ゲリラ戦が成功するには、聖域の存在、継続的兵站支援の確保および住民の支援が必要であると言われており、そういう意味においては我が国の島嶼においては一般的な意味でのゲリラ戦は成立しないだろう。
無縁社会とも称すべき大都市においてはゲリラが潜行し活動できる余地が大きいように思える。潜伏しうる地域として山岳地帯を選定することも十分に考慮すべきだろう。
3 戦史に見るゲリラや特殊部隊の脅威(1)列国のゲリ・コマ攻撃対処と日本の防衛作戦に参考となる戦例
ゲリラや特殊部隊による攻撃対処には、2つのパターンがある。
1つは、旧日本軍が北支で行なった治安作戦、米国が結果的に敗退することとなったベトナム戦争、同じくソ連が撤退せざるを得なかったアフガニスタン戦争のような所謂外征軍が、侵攻国のゲリラにてこずった事例である。
もう1つは、外国から侵入した共産ゲリラや特殊部隊を掃討した朝鮮戦争時の北鮮軍第2軍団の掃討作戦、智異山の掃討など、ギリシャにおける共産ゲリラの掃討等特殊部隊等を国内作戦として掃討した事例である。
我が国は、当然ながら外征することは未来永劫あり得ず、そういう意味においては国家としていかにあるべきか、軍・官・民の連携や国民保護はどうあるべきかについての示唆に富む朝鮮戦争や江陵事案などの事例が特に参考になるだろう。
もちろん、前者のパターンであっても戦術や戦法の教訓を得るには有益であることは論を俟(ま)たない。
(2)江陵事案(韓国東海岸北朝鮮潜水艦浸透挑発事件)の概要
平成8(1996)年に起きた江陵事案の概要を説明する。
●概要(1996年9月18日〜)
北朝鮮の小型潜水艦が韓国東海岸(江陵)で座礁し、逃走した武装した乗員26人(推定)を、韓国軍(5個師団、最大出動兵力6万人、延べ約150万人)が約50日間にわたり捜索・撃滅した。
11人を死体で発見、13人を射殺、1人を逮捕、1人が逃走した。韓国軍・警察の被害、死亡8人(うち4人は誤射や誤発)、民間人は3人がゲリラに殺害された外誤射により1人死亡であった。
●作戦経過図
総務省消防庁「国民保護に関する懇談会」配布資料より
●国民保護のために講じられた措置
(1) 住民に対して、夜間通行を禁止(20時〜6時の間)
(2) 作戦地域への交通規制(市内バスとタクシーの全面的な運行の禁止) (3) 民間人誤射事件以後は、作戦地域の住民を避難 |
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中国の公害を米紙が大々的に報道する理由
ワシントンで激しい鞘当て〜中国株式会社の研究〜その84
2010.11.05(Fri)
1週間のワシントン出張を終えて、先週末ようやく帰国した。米国の対中政策が最近変化しつつあることは前回お話しした通りなのだが、帰国後、何とニューヨーク・タイムズに似たような記事が出ていたことを知り、愕然とした。
10月26日付のこの記事を当日ワシントンで読んでいれば、関係者にもっと突っ込んだ「取材」ができたのに、と内心ガッカリしたものだ。
しかし、今は気を取り直し、やはり先週聞き込んだことは決して間違いではなかったのだ、と自分に言い聞かせている。
それにしても、最近米マスコミでは中国に対する厳しい論調が多くなったような気がする。特に印象的だったのは、帰国の日に飛行機の中で読んだ10月29日付ワシントン・ポストの1面トップ記事だ。今回はワシントン・ポストという新聞の正しい「読み方」について書いてみたい。
美しい太湖の環境汚染 記事の概要は次の通りだ。
上海の西約100キロに「太湖」という湖がある。北岸の宜興市周鉄鎮に住む呉立紅(42)は1990年代から太湖の水質悪化を告発し環境保護活動を続けてきた。
2005年にはその業績が認められ、全人代(全国人民代表大会)から「中国十大民間環境保護傑出人物」の1人に選ばれた。
その呉立紅が2007年突然逮捕され、詐欺罪などで3年の実刑判決を受ける。同年、中央政府が決めた「国家環境保護モデル市」に内定した宜興市の幹部にとって、同市の環境行政と汚染企業に対する告発をやめようとしない呉が邪魔になったからだ。
太湖の水質汚染はますます深刻になった。北部沿岸では工場の未処理排水で青緑色のアオコが異常繁殖し、卵が腐ったような悪臭が漂う。
魚類は全滅し、水質は飲用どころか、灌漑用水にも適さないほど悪化した。国家環境保護総局を告発しようとした矢先に呉立紅は逮捕されたという。
今年4月、呉立紅は刑期満了となったが、湖水の汚染は一層悪化していた。出所後失職し、今も当局から迫害を受ける呉は「一体何のためにすべてを犠牲にしたのか」と自問する。
現在呉一家の生計を支えているのは、皮肉にも、太湖近くの羊毛工場と化学工場で働く呉立紅の奥さんだという。
典型的な「上有政策、下有対策」 太湖といえば古都蘇州の西方に広がる美しい(はずの)湖だと記憶する。要するに、発展著しい中国経済も、一皮剥けば、1960年代の公害大国・日本と何ら変わらないということだ。
何ともひどい話であるが、同記事はさらにこう報じている。
過去30年間の野放図な経済開発により、この種の環境汚染は中国全土に広がっている。
中でも太湖のケースは、「上層部の約束が下層部により破られる」、すなわち環境上の利益よりも経済的権益が優先される典型例である。
呉立紅は主として宜興市政府の環境行政を厳しく批判した。2005年に呉を称賛した中央政府も、2007年には市当局と呉立紅との争いに介入しなかった。
呉は拘禁中拷問され自白を強要されたと主張するが、市関係者は呉立紅の逮捕が報復であったことを否定する。
2005年までに呉立紅の告発によって閉鎖された多くの工場は、その後名前を変えて再び操業を始めた。新たに設置された汚水処理装置は「オン・オフ装置」と呼ばれ、工場関係者は当局が水質検査を行う時だけ装置を作動させている。
果たして湖水の窒素・リン濃度はやや改善したようだが、全般的な水質は以前より悪化している。本年7月の政府統計によれば、湖水の45%が、飲用はおろか、遊泳にも適さない最悪の水準にあるという。・・・もう不愉快になるのでこのくらいにしておこう。
ワシントン・ポストの1面記事 実はこの記事、ワシントン・ポストのすっぱ抜きではない。ネットで見る限り、呉立紅の逮捕については「大紀元」など中国に批判的な在米華僑系新聞がこれまで何度か報じている。
筆者にとって今回の記事で驚いたのは、深刻な環境汚染の実態よりも、従来一部反中メディアしか書かなかったような話を今回「天下のワシントン・ポスト」が大きく取り上げたことである。
ネット上では普通の記事にしか見えないが、金曜日のワシントン・ポストの1面トップ記事だけに、読者からの反響は決して小さくなかった。
既にネット上にはたくさんコメントが寄せられているが、その多くは中国政府の対応を厳しく批判するものである。
中国側も黙っていない。読者のコメント欄を丹念に読むと、流暢な英語で「地域経済発展のために太湖が毒性産業廃棄物の集積地となるのがなぜ悪い」と開き直る意見も散見される。
コメント主が親中米国人なのか、中国政府の工作員かは知らないが、こうして堂々と反論するところは「さすが中国(人)」だと思う。
ワシントンでの「米中」広報戦争 ワシントン・ポストは、米国の一地方の商業紙などではなく、ワシントンという「政治都市」の住民が共有する一種の「政治機関紙」である。このことを知らないと、ワシントン・ポストの記事の行間に隠された真の政治的メッセージを読み取ることはできない。
野党が大統領を攻撃する場合はもちろん、政権与党が新たな政策を決定する時、様々な政治的観測気球を上げる時、人事やスキャンダルのうわさを流したり、特定の政治家を追い落とそうとする時、この町の住人はワシントン・ポストの社説、記事、オピニオン欄を必ず活用する。
それがこの町のルールなのであり、外国政府も当然このルールに従う必要がある。ちなみに、ほかの米紙でこの種の機能を持つ日刊紙は、ニューヨーク・タイムズぐらいだろうと思う。
今回ご紹介した「太湖の環境汚染」が書かれた10月29日付ワシントン・ポストには「CHINA WATCH」と題され「米中環境協力」などの中国関連記事が並ぶカラー刷り6ページのセクションが入っていた。
これが実に良くできていて、「あれあれ、ワシントン・ポストにこんなセクションあったかな」と思うほどだ。
中国政府が6ページ買い切りの大キャンペーン広告 これが、その日、中国政府がワシントン・ポストから買い上げた6ページの「全面広告」だと気づくのに数分かかった。
最近、中国はワシントン市内に大劇場やイベントホールまで備えた巨大な大使館を建設し、対米広報活動を活発化させている。何のことはない、この「CHINA WATCH」も当地の政治機関紙「ワシントン・ポスト」を利用した中国政府の宣伝活動にほかならないのだ。
もちろん、ポスト側もしたたかである。頂くお金は頂いたうえで、「CHINA WATCH」に書かれた米中「クリーンエネルギー協力」のプロパガンダ記事に対し、ちゃんと1面トップで「中国の環境汚染の深刻さ」について報じているではないか。
このような目には見えない米メディア対中国の「鍔迫り合い」こそが、ワシントン・ポストの行間を読む真の醍醐味だと思うのだが・・・。
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欧州人が資本主義を手に入れた瞬間
キリスト教徒の繁栄はドイツの山奥から始まった
2010.11.05(Fri)
中世のドイツ中東部、ザクセンのエルツ山脈で偶然発見された銀山、精製の過程で「ひび割れ」を起こす「いたずら小僧」として分離された「不純物」妖精コーボルトこと「青さび」酸化コバルトは、先進イスラム地域ではステンドグラスの着色料などに使われたが、ドイツでは長らく利用されることがなく産業廃棄物として捨て置かれていた。
これに目をつけたオランダ人が廃物回収でコバルトをアムステルダムに持ち出し、精製して東洋向けの商品にしたところ、中国産天然コバルト「呉須」の市場を席捲、大きな売り上げを出した経緯まで前回お話しした。
一方でコロンブスの発見以降、開発が進んでいた新大陸ではメキシコ銀山が発見され、ドイツの銀価格は急速に下落していく。銀は安くなる一方だったがコバルトは値崩れしない。
ザクセンとしてはこれをただ指をくわえて見ている手はないだろう。そこで新たな経済政策の手が打たれることになった。
「金貸しユダヤ人」と「キリスト教徒」 話が飛ぶようだが、中世の長い期間、ヨーロッパが「暗黒時代」と言われ、経済成長などが阻害された大きな理由として「キリスト教」とりわけその「禁忌」タブーを挙げることができる。
このように書くと、何か魔女裁判などを想像されるかもしれない。しかし話はもっと直接的に経済にまつわるポイントだ。「利息」融資して利子を取るという行為が問題になるのである。
日本ではあまりこのポイントに正しく光が当たらないが、ユダヤ教とキリスト教、イスラム教を分け隔てる大きな違いとして「金融」と「利息」の問題がある。
やや簡略化して書いてしまうなら、旧約聖書は金貸し業が利息を取る事を禁止しない。しかし新約聖書はこれを禁止してしまう。新約聖書をも聖典とみなすイスラム教でもまた、利息を取ることは原則、禁じられている。
これは要するに、金貸しはユダヤ人の特権で、キリスト教徒もイスラム教徒も銀行は営めないということを意味する。
そして、キリスト教徒やイスラム教徒は、もともと原資を持ち、それを高利で貸し付けて「何もしないで利息を取る」ユダヤ人を、軽視し忌み嫌っていた。「キリストを殺した民族」という側面もユダヤ嫌悪感情の火に油を注いだ。
忌み嫌われたユダヤ人金融ネットワークが果たした役割 シェークスピアが戯曲「ヴェニスの商人」で描いたケチなユダヤ人の金貸しシャイロックは、そんな社会に寄生して何もせずに肥え太っていく存在としてのユダヤ人だった。
シェークスピアの戯曲からナチス・ドイツのホロコーストまで「ユダヤ人嫌い」アンティセミティスムの背景には、宗教的理由としての「キリスト殺し」・・・実はキリスト自身もユダヤ人であるはずなのだが、それはここではなぜか問われない・・・と「利息を取る金融」にまつわる様々な因果で、蛇蝎のごとく嫌われるようになったのである。
のちの産業革命以降、社会経済が大きく成長するに当たっては、故国を持たない代わりに国際的に広がったユダヤ人金融資本ネットワークの功績が大きい。
ロックフェラー、ロスチャイルドといったユダヤ人銀行家一族の令名は21世紀の現在もとどろいている。
ユダヤ教の伝統は一種の排他的な特徴を持っている。このため、西欧社会の中でユダヤ人コミュニティは、常に一種の少数派、財貨を持つものがいる一方で、常に数の上ではマイノリティとして存在し続けてきた。
国際化された少数派が担った「育てる金融」 逆に言えば、社会の大半が金融資本になってしまっては・・・現在のグローバル経済はその傾向を強く持っているのでもあるが・・・いったい誰が実体経済を成長させるのだろう?
現実のパイを育てる人々がいて、それを伸ばすため「育てる金融」の役割を、ユダヤ系の多国籍金融資本、つまり銀行ネットワークが果たしていたのである。
聖書の定めに従ってこのような金融資本の役割を果たすことができないキリスト教徒に代わって、産業を育てる重要な役割を担っていたわけだ。
フランス革命が貴族(第1身分)やキリスト教僧侶(第2身分)の支配を打破しなければならなかった1つの理由は、漬物石のようなキリスト教のタブーが上に乗っかっている以上、資本が成長できないからである。
これは実は日本の幕藩体制でも同じことだった。幕末の日本では大阪の両替屋や札差などが金融資本の役割を担っていた。彼らは当然金利も取った。しかし同様の「金貸し」の真似事を「いやしくも武士たるもの」がするわけにはいかなかった。
「武士は食わねど高楊枝」。やせ我慢こそが封建教学の真髄である。税率を上げて農民を苦しめることは考えても、彼らに金や米を貸し付けて、その利息で金融支配しようという発想を、サムライ時代の日本が持つことはついになかった。
新しい発明:印紙と証券さて、話を銀の価格が下落したザクセンに戻そう。 せっかく「青錆」酸化コバルトという原材料を持ちながら、それを商品にするための技術も、完成した商品を売りさばくマーケットも持っていなかったザクセン選帝侯国は、何か巧妙な方法を考え出す必要があった。
だがザクセンには知恵という伝統があったのだ。
かつてザクセンでは銀山が発見された当初、誰でも銀を採掘してかまわない、その代わり一定割合を税として納付するように、という「採掘権自由化」をいち早く導入して、繁栄した経緯があった。
自由の山、フライベルクは欧州最初の鉱山大学が作られ、詩人ノヴァーリスもそこで学んだことは既にご紹介した通りだ。
銀から取り出された不純物である「青錆」酸化コバルトには相応の原価がついた。オランダ商人たちは原材料を購入するために財貨をザクセンに持ち込んだ。
もちろんこれも、衰退しつつあったザクセンを支える力になった。だがそれだけでは、札束で横面をはたかれて、オランダ人に言われるがままに原料を売るだけの立場に甘んじざるを得ない。何とかこれをコントロールする方法はないものか・・・。
ここでザクセンは巧妙な方法を考えつく。「印紙の発行」である。
ザクセンから原料の形でよそに持ち出されるコバルトは、必ず所定の形の樽につめ、樽には選帝侯国発行の封印印紙が貼られていなければならないという制度をザクセンは設計し実施した。
この政策は当たった。国境の税関ではことのほか厳しくコバルトの樽は調べられた。そして確認を受けた樽は封印され、封の破れた樽は「違法品」として容赦なく没収された。
この封の印紙代として、ザクセン侯国は現金収入を得ることができた。さらに、この印紙の価格と発行部数を制限することで、1年当たりにザクセンが生産するコバルトの総量をコントロールして、品のだぶつきによる値崩れを未然に防ぐことすら可能になったのだ。
ザクセン選帝侯もまた、神聖ローマ皇帝を選ぶ選挙権を持つ貴族である以上、当然ながらキリスト教徒である。面と向かって金を貸し利息を取ることはできない。
しかしそれなら、どうやってカネがカネを生む仕かけを作ることができるのか?
ザクセンは、国内で原料は産出しても、生産手段(アムステルダムのザクセン工場のような)もなければ売りさばく市場(極東の中国や朝鮮、日本まで含め)も十分に持っていない。
そこで、印紙の発行と国境での税関管理という2本立てで、一種の信用創造を行い、このテコを使って富の蓄積、まさに原初的蓄積を進めていったのである。
中世キリスト教圏が資本主義的繁栄を見せなかった最大の理由はキリスト教のタブーにある。
しかし、逆にそのタブーを潜り抜ける実体経済の工夫、つまりイノベーションと、それをビジネスとして成立させる仕組み、つまり証券経済の萌芽が、オランダ東インド会社の力を確実に削ぎ、ドイツの底力へと転化していったのである。
資産経済から実体経済へ? マニュファクチュアの黎明 ザクセン銀山が生み出す「青錆」酸化コバルトの事例は、重商主義大国が繁栄する中、いまや後発国となってしまったドイツの山奥がどのように対抗していったかという、歴史上の1つのサンプルになっている。
割を食ったのはオランダだ。今までは廉価に材料を導入して、加工というテクノロジーによって圧倒的な差別化を図ってきたのに、あたかも1970年代のオイルショックのように原産国から売り惜しみされ、これでは利益率が落ちてしまう。
そこで考えたのが、ドイツから富を取り戻すことにほかならない。といっても暴力戦争を仕かけるとか、そういうことではない。
一種の平和裏での経済戦争と言えるかもしれないが、原料生産者である相手が値を吊り上げてくるのなら、オランダは利益率の高い製品をドイツに売りつけて、その分を回収すればいい。
ではドイツが逆立ちしても手に入れられない、オランダ東インド会社の製品とは何なのか?
オランダとのちの英国が採った手段とは? 東アジアの特産品、とりわけ陶器・磁器の名品は、ドイツが逆立ちしても他所で手に入れられない「オランダ商品」の代表格だ。また極東の特産農産物、とりわけ茶葉もまた、決してドイツで手に入るものではなかった。
果たして「白い黄金」などと呼ばれたチャイナ=陶磁器と、それを使って淹れられる「お茶」を売りさばくオランダ、ないしのちには英国の一大キャンペーンが、全欧州に繰り広げられるのである。
言うまでもないが、喫茶は元来は極東の風習である。茶の原産地は中国雲南地方と伝えられる。
ザクセン選帝侯は印紙で確保した財源を再びオランダに吸い上げられる形で、極東の名品焼き物を大量に買いあさっていく。そしてその名品中の名品として初代柿右衛門の一大コレクション、有田や伊万里の名品も、ザクセンの宝物庫に収められたのだった。
これから、タバコ、茶、コーヒーといった21世紀の今日、世界に普及した「嗜好品」を巡るビジネスウォーズを背景に、より大がかりな一大産業戦争が繰り広げられていくことになるのである。
「マニュファクチュアの成立」!
長らく利息を取ることを禁じられていたキリスト教世界が、金融資本の新たな形態を手にして、爆発的な成長の渦に巻き込まれていくのである。
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