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「F-35」導入で岐路に立つ日本の防衛産業
求められる独立国としての技術開発力
2012.11.01(木)桜林 美佐:プロフィール 2012年、4月〜9月にかけての航空自衛隊のスクランブルは209回と、上半期としてはこの10年間で最多だったという。
空自では24時間365日、パイロットをはじめ整備にあたる隊員さんや後方支援の方々などが一丸となって国土防衛のために睨みを利かせてくれているが、こうした厳しい情勢に鑑みても、航空優勢を保つための他国に秀でた戦闘機保有は欠かせない。
しかし、繰り返し述べているが、どんなに優秀な人材がいても、どんなに優れた戦闘機を持っていても、たった1つの部品がないだけで、この防衛体制は瞬時に崩れる。
ほんの小さな不足が致命傷となる。これは先の大戦で、飛び立てない飛行機が駐機場に並び、そこを爆撃されたという苦い経過からよく学んだはずであり、そうならないためにも国内生産・技術基盤維持の重要性を再認識する必要があると訴えてきた。
そんな中、空自の次期戦闘機は「F-35」に決まった。
国産戦闘機というわけにはいかないまでも、同機の最終組み立ては三菱重工業が担えることになり(どの程度、分担させてもらえるかという問題はあるが)、さらに在日米軍機についても同社が修理や整備を請け負う可能性があると日本経済新聞により報じられ、そうなれば三菱重工業のみならず関係する1000社以上のベンダー企業の活性化にも繋がるであろうから、国内産業維持のためにも朗報だと言える。
部品や整備の状況がリアルタイムで米ロッキード・マーティンに 一方で世界に目を向けてみると、すでに装備品に対する考え方が新たなタームに入りつつあり、もはや「国内基盤」という概念だけでは通用しない現実を見せつけられるのである。
F-35は米国やイギリス、オランダ、カナダ、イタリア、デンマーク、トルコ、オーストラリア、ノルウェーによる共同開発であり、そもそも日本はそこに加わっておらず、立ち位置からして後れを取っている。
2011年末に武器輸出三原則が緩和され、共同開発・生産にやっと門戸が開かれたところであるが、開いた扉の向こうに広がっていたのはこれまで経験したことのない世界、まさに「未知との遭遇」であった。
まずF-35は、これまでのような各国それぞれでの維持体制ではなく、「ALGS」(オートノミック・ロジスティックス・グローバル・サステインメント)という仕組みが採用される方針だ。
これは、部品や整備の状況がリアルタイムで米ロッキード・マーティンに一括管理される方式で、その飛行機は動いているのか、調子が悪いのか、同社がそうした健康管理の全てを行い、スピーディな部品供給を可能とするものだ。
そういえば、日本のある焼肉チェーン店だったか、在庫を極力減らし利益をあげている理由は、各店舗のテーブルの鉄板が熱くなっているかどうかを本社で把握できるシステムを構築し、どれくらい使われているかを知ることで無駄を省いているからだと聞いたことがある。
これは画期的かつ効率的なロジスティックスを実現させるものだが、果たして国防の世界において許容されることなのだろうかとも思ってしまう。
いずれにしても、これからは、こうした情報も共有して運用にかかる経費を削減しようという考え方が主流になるのだろう。
韓国企業が米軍戦闘機の補給・整備などをサポート 是非はともかくとして、この考え方からするとF-35の維持整備基盤を日本が獲得するためには、日本国内だけでなくアジア地域など広範囲の拠点となるというスタンスが求められそうだ。
そのためには、武器輸出三原則のさらなる見直しも含めた法解釈の検討、また、その前にわが国がいかなるビジョンをもって今後、独立国として振る舞うのかの方向性を明らかにしなくてはならないだろう。
今、米国の旗振りによって進められているのは、NATOの枠組内でのグローバルな兵站システムである。この流れに乗るのか、あるいは日本だけが独立した(このままでは独立というよりも「孤立」という表現が当てはまってしまうが)体制を築いてやっていくのか、姿勢が問われていると言える(まだそれに気づいていないのが問題であるが)。
誤解をされてはいけないので申し上げておくが、可能であるならば純国産の戦闘機を開発・製造することが理想だと思う。しかし、現時点の財政状況ではとても現実的ではないため、F-35の導入と共同開発・生産への参加を前提として述べていることをご承知おきいただきたい。
最近、防衛産業関係者の間では韓国企業が米国の戦闘機の補給・整備などサポート分野に積極的に乗り出し、すでに在日米軍のF-15についても同国企業がこの分野を落札したことが話題になっている。
わが国はこの事実をどう捉えればいいのか? 真剣に考えなければなるまい。
とにかく、日本人の知らないところで様々なことが動いているのが現状だ。
わが国が、これまでの技術・ノウハウを活かし、地域における戦闘機維持の拠点を確立するのか、あるいは部品供給を受ける側になるのか、今、岐路に立たされていると言えるだろう。 |
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2013年01月28日
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