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ロシアの超強力爆撃機がいよいよ中国の手に
自衛隊にとっての“古い友人”「バックファイアー」
2013.01.21(月)北村 淳:プロフィール 安倍政権の発足とともにアメリカ軍事関係コミュニティーでは尖閣問題をはじめ日本周辺を巡る安全保障問題に関する関心が高まっている。それらの中で、日本ではあまり取り沙汰されていない話題の1つが、中国人民解放軍がロシアから「ツポレフTu-22M3」超音速爆撃機を生産ラインごと輸入することでモスクワと北京が合意に達したらしい、という情報である。このような情報はこれまで幾度も取り沙汰されていたが、今回はいよいよTu-22M3の人民解放軍への配備が具体的秒読み段階に入っているとみなされている。
冷戦時代にソ連が開発した米海軍、自衛隊の“古き友人” Tu-22M3、NATOコードネーム「バックファイアーC」(本稿では単に「バックファイアー」と呼称する)、はソ連が1970年代中ごろから80年代前半にかけて開発した超音速爆撃機である。
冷戦中はソ連空軍が運用し、敵地(アメリカ、日本など)への戦略爆撃ならびにアメリカ海軍空母戦闘群に対する攻撃を主たる任務とした。そのため、自衛隊の警戒網を突破することが最重要課題であり、幾度となく警戒網突破の試みがなされた。いわば、バックファイアーは自衛隊にとって“古き友人”なのである。
この超音速爆撃機によって発射される超音速巡航ミサイルから、空母そして空母戦闘群を防御するために、アメリカ海軍はイージス戦闘システムを完成させた。そして、第7艦隊空母戦闘群の護衛に携わる海上自衛隊にもイージスシステム搭載駆逐艦を装備“させた”のが、現在海上自衛隊が運用するイージス駆逐艦の起源である。
もっとも、海上自衛隊が「こんごう型」イージス駆逐艦を就役させた1993年には、既にソ連は崩壊しており“主敵”であるソ連軍バックファイアーは海上自衛隊やアメリカ海軍の脅威の地位から退いてしまっていた。そのため、超高性能防空戦闘システムであるイージスシステム搭載艦は無用になってしまったかに見えたが、弾道ミサイル防衛システムとして転生し、北朝鮮や中国の弾道ミサイルに対処するという新しい役目を担うこととなった。
Tu-22M3の機体自体のデザインは冷戦期の設計であり、アメリカ空軍のスティルス爆撃機のような21世紀型爆撃機とは言えないものの、中国空軍ならびに海軍航空隊が運用中の「H-6」爆撃機はさらに古い冷戦期前半に設計された機体であり、航空機の性能自体も飛躍的に向上している。そして何よりも、バックファイアーに搭載される各種長距離巡航ミサイルは極めて強力であり、アメリカ海軍や日本にとっては“古き友人”の中国からの復活は、新たな脅威の誕生なのである。
バックファイアーに搭載されるミサイルは? アメリカの軍事専門家たちが、中国人民解放軍のバックファイアーに関心を示しているのは、バックファイアーはかつてソ連軍がアメリカ海軍航空母艦を撃破するために配備されていたため、人民解放軍も第2列島線内のアメリカ海軍航空母艦に脅威を与える可能性があると考えているからである。
(注)「第2列島線」とは、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム・サイパンなどのマリアナ諸島を経てパプアニューギニアに至る島嶼を結んだライン。九州から南西諸島、台湾、フィリピンを経てボルネオに至る第1列島線とともに、東アジア地域の海軍戦略に頻繁に利用される概念。かつて冷戦期には、西側勢力が中国をはじめとする東側勢力を封じ込めるための第1・第2の防御ラインとして用いられた概念であり、近年は中国がアメリカの軍事的圧迫からの“防衛ライン”として用いる概念となっている。中国海軍戦略によれば、2020年頃には第2列島線内部で人民解放軍がアメリカ軍に対する優勢的立場を確保することを目標としている。
実際、人民解放軍の対アメリカ軍戦略である接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略にとって、バックファイアーは強力な道具になり得ると考えられる。ただし現時点では、人民解放軍が爆撃機や攻撃機に配備している対艦攻撃用巡航ミサイル「Kh-22」の飛距離は400〜600キロメートル程度であるため、アメリカ海軍にとってはそれほど深刻な脅威とはなり得ない。なぜならば、空母部隊の周辺上空を警戒するために艦載されている「E-2C」早期警戒機の警戒範囲内(最大半径およそ560キロメートル)に人民解放軍バックファイアーが突入しないと、空母をはじめとするアメリカ海軍艦艇に対して巡航ミサイルを発射することができない。そのため、バックファイアーによる攻撃開始以前にアメリカ側は迎撃することが可能であるからだ(もちろん、それだからといってバックファイアーが脅威でないというわけではないのだが)。
ところが、人民解放軍がTu-22M3バックファイアーとパッケージで手にし、かつ中国国内での生産が近い将来に開始されるであろう「Kh-32」超音速巡航ミサイルは、最新情報によると最大射程距離が1000キロメートルにも達すると言われており、E-2Cの監視範囲の外側から発射可能なだけでなく巡航速度もマッハ5とも言われている。そのため、艦載早期警戒機の能力を飛躍的に向上させない限り、アメリカ海軍空母艦隊は極めて大きな脅威に直面せざるを得なくなる(ある程度確認されている情報によると、最大射程距離は最短でも600キロメートル、巡航速度は最低でもマッハ4.6とされている。いずれにせよE-2Cの探知範囲外からの攻撃は可能である)。
このような理由により、アメリカ軍事専門家たちの間では、いまだに北京もモスクワも公式には認めていないものの、ロシアから中国へのTu-22M3ならびにKh-32の移転に極めて大きな関心を示しているのである。
最近、中国人民解放軍軍事科学研究所の幹部将校が、人民解放軍がバックファイアーを手にしてもE-2Cで警戒に当たっているアメリカ艦隊に対して脅威を与えることにはならない、といった発言をしていることは、逆説的にTu-22M3とKh-32の中国配備が間近に迫っていることを物語っていると考えられている。
探知されずに日本各地の戦略目標を破壊可能 アメリカ軍にとってのバックファイアーの脅威は、上記のように、日本周辺海域を縄張りとするアメリカ海軍第7艦隊の艦艇とりわけ空母に対する巡航ミサイル攻撃である。
このような軍艦に対する攻撃という脅威は、そのまま海上自衛隊にも当てはまる。海上自衛隊の艦隊防衛はアメリカ海軍と同じイージス搭載駆逐艦を中心に実施している。また、航空自衛隊の「E-2C」早期警戒機はアメリカ海軍の艦載機と同等の性能を持っている。
ただし、航空自衛隊はE-2Cよりも警戒範囲が広大な「E-767」(高高度パトロールの場合、好条件に恵まれると最大半径800キロメートルの空域を監視できると言われている)も運用しているため、アメリカ艦隊よりはやや条件が良いとも見なし得る。しかしながら、遠からず誕生するKh-32巡航ミサイルの性能いかんでは、世界最高水準を誇る警戒機E-767の探知範囲周縁空域からKh-32による攻撃を敢行できることになる。
「Kh-22」巡航ミサイル(上:対艦攻撃用・下:対地攻撃用)
このようなTu-22M3による空からの長距離ミサイル攻撃の脅威に直面しなければならない状況が現実のものとなる場合には、拙論「マスコミが伝えない中国の対日攻撃ミサイル」(2012年12月25日)や「中国軍ミサイルの『第1波飽和攻撃』で日本は壊滅」(2013年1月8日)で繰り返し指摘したように、日本全土は中国人民解放軍の各種長射程ミサイル(弾道ミサイル・長距離巡航ミサイル)による攻撃の可能性という軍事的恫喝に曝されている状態に、既に立ち至っている。したがって、海上自衛隊や航空自衛隊の防衛資源の大半は、弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルから日本国民と日本全土の戦略目標を防衛するために展開されてしまっており、バックファイアーやそれから発射される巡航ミサイルに対する備えを増強する余裕はない(詳しくは拙著『尖閣を守れない自衛隊』<宝島社新書>を参照されたい)。
(注)ここで、海上自衛隊のイージス駆逐艦に対する過大な期待に対して注意を喚起しておきたい。確かに理論的には100以上の敵航空機やミサイルを同時に追尾し、10〜20の目標に対して攻撃を加えることができる強力な対空防衛システムである。しかし、イージス駆逐艦に搭載してある対空ミサイルの数には限りがあり(とりわけ自衛隊はアメリカ軍のように弾薬が豊富ではない)、対空ミサイルとても百発百中ではない。現に、アメリカ海軍の場合、空母を護衛するために少なくとも3隻のイージス艦が随伴する。しかしながら海上自衛隊の場合合計で6隻しかイージス艦を保有しておらず、弾道ミサイル防衛(BMD)にイージス艦を投入する場合、BMD対処イージス艦隊の防空のために別のイージス艦も随伴させねばならない。日本各地の戦略目標に対して数十発そして百発以上も飛来する各種ミサイルを片っ端から撃破することなどとてもできないというのが現状である。
このように、国防費の大幅増額や実質的な日米同盟の強化といった実効性のある防衛努力を日本が推進しないでいる間に、隣国中国は様々な分野において軍事力の実質的強化(中国にしてみれば防衛努力)に邁進しているのである。
JBpress.ismedia.jpより引用
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