|
日本は軍事力では守ることができない?
地形から考える島嶼国家の国防論 2013.08.22(木)北村 淳
8月15日にNHKが放映した「戦後68年 いま“ニッポンの平和”を考える」という番組が、北米の日本語放送でも放映されていた。
全体としては中途半端なとりとめのない“討論”内容であったが、筆者が看過できなかったのは、歴史家の半藤一利氏による国防に関する発言である。司会者が半藤氏に発言時間を多く割り振ったためか、半藤氏による「近現代史を学べ! きちんと日本の近現代史を学べば、日本の地形は軍事力によっては守れないことが明らかになる。日本の防衛のために軍事力を強化する必要などない」という主張が目立った形となった。
半藤氏が唱える日本の国防の特殊性 半藤氏は以下のような趣旨の主張を述べていた。
・日本の近現代史を学べば、周囲を全て海に囲まれて海岸線が長く、中央部に山脈が走る細長い島国である日本はどこにも逃げ場がなく、軍事力によっては防衛できないことが明らかである。
・軍事力では守れない地形の日本をいかにして防衛するのか知恵を絞った政治家や軍人たちは、明治・大正・昭和と外へ出て防衛しようとしたのである。
・きちんと歴史を勉強すれば、日本は軍事力ではなく外交力で守るしかないということが明らかである。それにもかかわらず、日本は軍事力で守れる、軍事力を強化しようなどという議論が巻き起こっている。
・軍事力では守れない日本は外交力で守らなければならない。(軍事力強化ではなく)平和主義というものを世界に広げていくのだという気持ちになった方が、日本の平和を守れるようになる。
それに対して「戦後60年間、日本が平和だったのは、平和憲法があったからではなく自衛隊が一生懸命努力してきたことと、強固な日米同盟が存在したこと、すなわち軍事力があったからである。・・・軍事力だけで守れるとは思わないが、軍事力も有効な手段の1つである」との反論がなされた(岩田氏)。
だが、半藤氏は「軍事力では守れない。・・・軍事力によって国を守ろうと考えている人が多くなっているのは、(日本が軍事力では守れない地形であるという事実を)知らないからである。・・・歴史を一生懸命勉強しなければならない」といったことを繰り返して取り合わなかった。
元外交官の岡本行夫氏は「日本に限らずいかなる国も単独で防衛できる国など存在せず、同盟が必要である。・・・日本は日米同盟により平和を保ってきた」と述べ、日米同盟、とりわけ第7艦隊の威力という軍事力が日本の平和維持に貢献してきたと、間接的に反論していた。しかし、“日本の地形的特質は軍事力では守れない”という論点に関しては、番組内では直接論駁されることはなかった。
地形的特性からの国防議論は必要不可欠 半藤氏は「日本の地形は軍事力によっては守れない」と力説しているが、強力な軍事力が必要と主張する人々の中に「軍事力だけ」で守ろうと考えている者が存在しないのはもちろん常識である。よって半藤氏が「軍事力だけでは守れない」と主張するならば何も議論していないのに等しい。半藤氏はおそらく「軍事力で守れない日本には軍事力は必要ない」という主張なのであろう。
確かに半藤氏が指摘するように、国防方針を模索する前提として、現在の日本は極めて長大な海岸線を擁し、縦深の短い山地の多い列島で、海岸沿いに人口の多くが生活しており、54基の原子炉も全て海岸にある、といった地理的特性は明確に認識しておかねばならない。
そして、そのような認識とともに、古今東西の歴史の教訓を十二分に吟味することにより、「日本の国防の基本方針はいかにあるべきなのか?」という国防の基本中の基本に関する真摯な議論を戦わせ、最も妥当と思われる国防基本原則を確立することは必要不可欠である。
完全なる島嶼国家という現在の日本の地理的特性は明治期の日本においても同様であったが、強国清国にも強大な軍事力を誇ったロシア帝国にも侵略されることはなかった。悲惨な敗北を喫した第2次世界大戦期の日本の地理的特性は現在とは全く違い、朝鮮半島ならびに樺太島に陸上国境を有し、軍事的に保護していた満州国周辺には長大な陸上国境が存在していた。
いかなる日本の近現代史を学べば、半藤氏の歴史分析のように「完全なる島嶼国家日本は軍事力では守れない」との結論が導き出せるのであろうか?
海軍戦略家・佐藤鉄太郎の主張 陸上国境がないという地理的条件が現在と同一である明治日本の政治・軍事指導者たちは、半藤氏の言うように、地理的特性を考慮しつつ真剣に国防方策を検討した。
日露戦争前の日本の指導者たちは、すでにシベリアから満州に進出していた強大なロシア軍が朝鮮半島を占領し日本を直接脅かす前に、満州の地に日本陸軍を送り込んでロシア軍を撃破することによって日本を防衛する“大陸出撃戦略”を採用した。
満州ではロシア陸軍伝統の退却戦術により戦線がどんどん満州北部へと引き込まれ、日本国内をほぼ空にして全軍が満州に渡った日本陸軍の攻撃能力は奉天周辺で限界に達してしまい、それ以上の陸上戦闘継続は不可能な状況に近づいた。幸い、日本海軍がロシア海軍の太平洋派遣艦隊を撃滅したため、それを好機に講和条約をなんとか締結し日本は辛勝した。
日露戦争後、海軍戦略理論家・佐藤鉄太郎(当時海軍大佐)は、「もし、日本海軍がロシア海軍に敗北していたならばどうなったであろうか? 日本国内をもぬけの殻にしてまでも満州で戦っていた50万の日本陸軍に対する補給は全く絶たれてしまう。そして、満州・朝鮮から海を渡って日本に帰還することもできなくなった日本陸軍将兵は全滅を免れないことになる。日露戦争では、海軍そして陸軍の奮戦によりこのような事態を招くことはなかったが、やはり島嶼国家日本の軍備は“海主陸従”の原則に則って準備されなければならないのではなかろうか?」という命題を提示した。
海軍大臣・山本権兵衛の強力な支持を受けていた佐藤鉄太郎は、この命題を証明するために大著『帝国国防史論』を著した。その中で、「四囲を海に囲まれている島嶼国家の国防は、第一義的には強力な海軍力により維持することになり、強力な陸軍力と海軍力の双方によって国防を維持しなければならない海岸線も陸上国境も共に有するロシアのような大陸国家に比べると、軍事経済的に極めて有利である」という主張を古今東西の戦史を例示して説明し、日本の国防は“海主陸従”の原則によらなければならないと主張した。
実現できなかった“海主陸従” 佐藤たち海軍至上主義者は、「朝鮮半島が日本領になると、せっかく『強力な海軍+限定的な陸軍』で防衛できる島嶼国家日本に陸上国境という条件が加わってしまい、『強力な海軍+強力な陸軍』を維持しなければならなくなる」といった軍事的理由から韓国併合には反対した。
しかしながら、海軍至上主義に関する国防論議は、海軍(=薩摩閥)の陸軍(=長州閥)に対する優越を図ろうとする“海軍のプロパガンダ”というように海陸派閥対立軸に矮小化されてしまう。山本権兵衛が総理大臣まで上り詰めたものの、国防方針を“海主陸従”主義的に転換することは、陸軍や大陸進出論者たちの強力な反撃によって実現できなかった。
その後も、海軍至上主義は日本の国防方針として採択されることなく、陸・海折衷主義的に国防予算を陸軍の拡大にも海軍の拡大にも振り分けた。
日本の地理的特徴も、南樺太の獲得や韓国併合により陸上国境を有するようになり、その後も満州国を軍事的に保護することにしたため、極めて長大な陸上国境線を有する「島嶼+大陸」国家となってしまった。そのため第2次世界大戦では“大陸出撃戦略”と“海洋出撃戦略”を併用して戦い、結局はどちらの戦略も維持できなくなり“本土決戦戦略”という島嶼国家にとっては最悪の方針を取らざるをえない状況に追い込まれてしまい、国土全てを占領されてしまったのである。
国防基本方針に関する議論の活性化を望む 現在、アメリカ海軍内部の幹部教育などでは、「佐藤鉄太郎などが唱えた海軍至上主義的国防戦略に則って強力な日本海軍が建設されていれば、アメリカ海軍は日米開戦には踏み切れなかった。もっとも、その場合には、満州や中国に大規模に展開する日本陸軍は存在しなかったであろうから、日米間に干戈を交えるほどの対立は生じなかったであろう」といった具合に、佐藤鉄太郎をはじめとする“海主陸従”構想を評価している。
残念ながら、日本では海軍至上主義的な議論は、再び海上自衛隊・陸上自衛隊・航空自衛隊の間の党派的対立軸に矮小化されかねず、真摯な議論がなされているとは言えない状況である。その結果、日本の基本的国防方針に関しても、“海洋出撃戦略”によるべきであるという“海主陸従”的主張には感情的に反駁し、第2次世界大戦終期のごとき“本土決戦戦略”的方針に拘泥している勢力が少なくない。
例えば、いくら国防予算が増額されても、海自・陸自・空自で当分割しているような現状では、相変わらず日本の国防基本方針は第2次世界大戦以前の折衷的方針から脱却していない状況であると判断せざるを得ない。
半藤氏の主張である「島嶼国家日本の防衛に軍事力は必要ない」には与することはできないが、日本の地形的特徴を出発点にした国防基本方針に関する議論こそが国防の第一歩であることには疑問の余地はない。この種の議論が盛り上がることを大いに期待する。 JBpress.ismedia.jpより引用
|
日本国防
[ リスト | 詳細 ]
|
↓記事を読む前にクリックでの応援をお願いします。m(_ _)m
間違いだらけの集団的自衛権解釈
ネガティブリスト方式でなければ意味がない
2013.08.14(水)冨澤 暉
1.集団的自衛権に関する誤解
日本では今、集団的自衛権の解釈が、安全保障上の大問題となっている。
しかし、世界では、この問題を全く騒いでいない。彼らにとって、各国が集団的自衛権を保有し行使できることは当然のことだが、これは権利だから、その権利行使を日本が自粛しようとしまいと、関係のないことなのである。
空母への着艦に初めて成功した米国が開発中の無人機「X47B」〔AFPBB News〕
だから、米国でも一部の者を除きほとんどの人は「日本も集団的自衛権を行使せよ」などとは言っていないし、言うはずもない。現在の日米安保条約は既にそれを織り込みずみなのである。
「第1次アーミテージ報告では日本の集団的自衛権行使を求めていたではないか」と言う人はあの原文をよく読んでいない人である。
あの部分は「日本が集団的自衛権行使を禁止していることは日米の協力を制限している。これを取り除くことにより一層緊密かつ効果的な安全保障協力が可能となる。これは日本国民だけが決断できることである」というもので、極めて遠慮がちな表現である。
「日本国民だけが決断できる」ということは「我々外国人は余計なことを言う立場にはないが」という言い訳である。
これに反し別項に「米国は日本の常任理事国入りの要求を引き続き支持すべきである。しかしながら、そこには集団安全保障の明白な義務(オブリゲーション)があることを日本は理解しなければならない」と集団安全保障上の義務についてはかなり率直に厳しく要求している。
2000年のこの時点で、この後段の集団安全保障を集団的自衛権と誤訳した人がマスコミには多く「日本が集団的自衛権行使を認めないならば日本の安保理常任理事国入りにも米国は同意しない」という報道がなされた。
これらの人々には、権利と義務の違いが全く分かっていなかったようだ。今から13年も前から日本は「集団的自衛権病」にかかっていたのではないだろうか。
日本人の集団的自衛権に関する誤解を解くための説明は、それだけで数十頁もの紙幅を要するものだが、ここでは次の4項目のみを強調しておきたい。
(1)集団的自衛権は集団安全保障を規定した国連憲章の第51条に、「集団安全保障が機能しない場合の特例」として認められ、「それを行使しても赦される」という形で挿入されている。
そして「国連安保理事会が必要な措置を取るまでの間に限り赦される」「その行使にあたって取った措置は直ちに国連安保理事会に報告しなければならない」との条件付きのものである。
(2)集団的自衛権の行使は、同盟を結んだ米国に対してのみ行使できる、というものではない。同盟を結んでいない例えばフィリピンから日本に支援要請があれば日本はフィリピンに対し軍事支援ができる、というものである。
(3)米国という国は元々(少なくとも2001年9月11日までは)自衛を必要とする国ではなく、ましてや、その米国の自衛を他国に手伝ってもらおうなどとは考えてもいなかった、そして今も考えていない国である。
(4)米国が他国に期待していることは、(形はできるだけ国連を利用しつつも)米国中心の集団安全保障を手伝ってほしいということである。
2.集団安全保障についての説明
集団安全保障の一部として諸外国とともに集団的措置を取ることは集団安保に加わる国家の義務(オブリゲーション)であり、ここに義務違反に対する罰則はないが、このオブリゲーションは奉仕(有難う)という意味で、「これを果たさないことは恥ずかしいことだ」と日本人はよく承知する必要がある。
また、「この集団的措置は国連安保理の決議による」とされているが、安保理決議に基づくPKO(国連平和維持活動)・多国籍軍はもちろんのこと、安保理決議のない有志連合軍(この指止まれ方式)も集団的自衛権行使ではなく集団安全保障の措置と考えられる時代なのである。
すなわち、自衛権行使というのは自国とか他国という特定の国を侵害から守るためのものだが、集団安全保障の集団的措置というのはその地域または世界の秩序(平和)を守るためのものであり、地域・世界が平和であれば自国・他国も当然平和になる、という、より幅の広いものであることを理解する必要がある。
JBpress.ismedia.jpより引用
|
|
尖閣、南西諸島を中国は間違いなく攻めてくる
中国による「覇権の決意」と尖閣諸島戦闘シミュレーション
2013.08.12(月)用田 和仁
(2)からの続き
(2)得られる教訓
1 中国の非対称の戦いとは、人命の損失を省みることなく、旧式の装備も駆使しながら飽和(人海)攻撃する事を特色としている。また、法律戦を駆使することにより、自らの正当性だけを声高に世界に訴え強引に力を行使することに長けていることを忘れてはいけない。
高麗・元の連合軍に対する鎌倉武士のように常に正々堂々と正面から戦うとは限らない。だから単に制空権を取れば中国の戦いは終わるというシナリオは短絡的で誤りだ。漁船や民船はたとえ損害が出ようとも海上輸送を続けることができる。
2 平時から有事に至るグレーゾーンでの戦いが勝敗を決するといっても過言ではない。あまりにも自衛隊の権限は警察権限に縛られており、これではシナリオのように戦いに負けるだろう。法整備の不備は可及的速やかに改善しなければならない。国民も政治家も本気になってもらいたい。
3 南西諸島の戦いでは海・空決戦が勝敗を決めるということはその通りだ。制海権のためには制空権が欠かせない。では、制空権はどうやって確保するのか。航空機は常時空を飛んでいるわけではない。制空権確保のためには、優秀なパイロットと優秀な航空機そして磐石の作戦支援基盤がなければならない。
南西諸島において制空権を獲得するためには、空港のある島嶼の確保が大前提である。
そこで地図をよく見てもらいたい。南西諸島は中国から見て約800キロから1000キロの円弧状にあってミサイルで制圧するのも航空機で制圧するのも力を集中しやすくなっているのに対して、日本側は薄皮一枚の列島線上の空港を守り通さなければ制空権を獲得することはできない。
その上、根拠地たる九州からはどんどん遠くなっていく。すなわち、島嶼部に陸空海の対艦、防空ミサイル網を確立して作戦支援基盤を作った後に戦わねば、海空の戦いはできない。
尖閣を守るためには、先島諸島がその直接的な作戦基盤となろうが、そこで長期間戦うための兵站などの基盤を維持するために、さらに薩南諸島から南西諸島全体に陸海空の統合作戦でがっちり守ることが要求される。
米空母の来援を願うなら、南西諸島はおろか、対馬、津軽海峡もしっかり中国の艦船、航空機をブロックできなければならない。
また、シナリオであったように、政治的な駆け引きの中で長期間の対峙と対応、そして最後には戦いに勝たねばならないため、作戦の変化にも対応でき、かつ長期にわたって休息を取りながらも戦える磐石の防衛の態勢を敷くことが必要である。
尖閣諸島という小さな局面で見ていたのでは、後手後手となって結局相手に振り回されることになろう。尖閣対処においても自衛隊は結局、全力で南西諸島で戦う態勢を構築しなければならないのだ。
何もこれは筆者だけが言っているのではない。昨年、中国のCCTVでは、日本が尖閣を攻める時には、対艦ミサイルを配置し、防空ミサイルを配置し、後方に(南西諸島に)支援基盤を作ってから尖閣に攻めてくると報道している。中国に指摘されるまでもなくその通りだ。
たかが尖閣と高をくくってはいけない。戦とはそういうものだ。
(3)海兵隊機能とは何か
米軍は、一般的に海兵隊が敵の側背や弱点に海上から戦力を揚げ、その後は陸軍が引き継ぎ奥地へと侵攻していく役割になっている。そして、海兵隊は自衛隊ほどの陸海空の統合軍として、絶大な力をもって世界中の危機に「即動」できる態勢を維持している。
そのような力を持っているので強襲攻撃という最も力が必要な仕事もできるのだ。
一方、今の日本の論議は、確かに海上(航空も含む)から戦闘しながら上陸できる機能は限られているので、これを埋めることは必要だが、尖閣事態に特化して極めて短絡的にマスコミなどが語っていることに危惧を抱いている。
日本の防衛の柱は、島嶼などを取られることを前提とするのではなく、いかに取らせないで、磐石の陸海空および米軍と一体となった抑止態勢を築くことができるかどうかである。
南西諸島の作戦で求められているものは、陸海空の統合戦力を十分に発揮できる「即動」または「即応」機能である。海空は比較的動きが早いから、特に陸の装備が即動に耐えられるようにすることが必要である。また、空も基地機能の移転や防空組織の移転が必要なため、陸と同じような即動が求められる。
この点、大きな観点から言うと、海兵隊のコンセプトと装備は一体性を欠いている。
すなわち、海岸にとどまることなく奥深くの目標まで進出して、すみやかに海岸からの重戦力と合体するとしているが、縦深の目標に向かうものはオスプレイであり、歩兵を下ろしたら、その歩兵は衝撃力も機動力もなく敵中に孤立するだけである。
これに対し米陸軍はしっかりしたコンセプトと装備を持っており、縦深深く航空機で装甲部隊たる最新のストライカー部隊を投入し、その機動力と情報力で後方の敵を撹乱し、特殊部隊が誘導する海空のミサイルと、正面からの重戦力で敵を撃破しようとするもので極めて理にかなっている。少なくともイラク、アフガン戦争前まではしっかりしていた。
陸上自衛隊もC2輸送機に乗るタイヤを履いた戦車のようなもの(MCV)を近々装備化し、力のある装甲部隊で空中輸送により即応できる部隊の創設を目指している。もちろん、オスプレイが導入されれば、屈強の空挺部隊も即動できるだろう。これらの部隊こそ「即動、即応」の本体である。
強襲機能、すなわち、奪回機能も必要だが、一般的に攻撃は待ち構えている部隊の3〜5倍の戦力が必要である。日本が持てる力は1個中隊から1個連隊の敵を打ち負かす程度であることを自覚しておく必要があろう。あくまでも小競り合いを払いのけて先取する能力だ。強襲を頼むならやはり米海兵隊の力が必要であり、期待は依然として大きい。
我々の国土防衛はあくまでも先制機動による島嶼の先取であり、17の空港がある島を守り抜くことが鍵である。海空のミサイルなどを誘導する部隊を海兵隊は「アングリコ」と称しているが、この少数の統制・調整機能こそ大事で、陸上自衛隊の部隊には必須の機能である。
結論を言えば、このような海兵隊機能、すなわち統合の即動機能は必要であり積極的に部隊を作り変えていくべきであるが、水陸両用車(AAV7)などの装備も、南西諸島の荒い気象や地形に合うかどうか慎重に見極め、日本に合った装備を取得する必要がある。
一方で尖閣においても、南西諸島の作戦においても「海兵隊」というのは一部機能であり、ダイナミックな構想を実現できるようマスコミも政治家ももっと本質を勉強すべきだ。必要な装備はまだある。
繰り返しになるが、南西諸島防衛の全体像はダイナミックな先制的な戦略機動により、磐石の防衛態勢を早く作り上げ、中国の野望を打ち砕くことであることを忘れてはいけない。目先の尖閣事態だけの防衛力では中国の勢いは止まらない。 JBpress.ismedia.jpより引用
|
|
尖閣、南西諸島を中国は間違いなく攻めてくる
中国による「覇権の決意」と尖閣諸島戦闘シミュレーション
2013.08.12(月)用田 和仁
(1)からの続き
3 なぜ南西諸島を巡って地上戦は起こるのか
中国は、第1列島線内では、中国本土から大量の航空機を有利な条件で運用できるため航空優勢を獲得することは容易である。しかしながら、米軍の接近阻止のために先に述べたように、500キロから800キロ程度第1列島線から西太平洋に艦船、潜水艦、長距離爆撃機等を進出させるための航空優勢を獲得する足場が中国にはない。
当然のことながら2000メートルから3000メートル級の飛行場を有する「不沈空母」である南西諸島を、海空優勢を獲得するために戦闘に先立って確保するか、最低でも無力化しなければ作戦は成り立たない。
中国のインターネットでは、もし台湾が祖国に復帰したならば戦闘機群を配置すると言っているが、考えていることは同じである。西太平洋で作戦するために第1列島線の空港のある島嶼の獲得は必須の要件である。制空権の獲得のための空港の確保はA2/AD作戦における大前提である。
ちなみに南西諸島においては空港のある島は17あり、住民の94%がこれらの島に住んでいる。すなわち日本にとってはこの17の島を必ず守り切ることが必須である。こうして対艦弾道ミサイル(DF21D)と長距離攻撃が可能なバックファイアを南西諸島の空港と組み合わせると米空母に対して磐石の「接近阻止」が完成する。
4 それでは中国は島嶼を獲得できるのか
中国は局地戦において戦勝を獲得することを目指し、さらに敵の武力攻撃の兆候を認識したら第1撃とみなし機先を制して攻撃することを原則としている。中国の強みは古い装備も新しい装備も使い飽和攻撃とピンポイントの攻撃もできることだ。
その上、日米よりも損害を顧みない人海戦術の伝統がある。まして日本が相手なら戦闘意欲は旺盛だろう。そして、実際に戦闘になる前に国防動員法によって軍人に準じた行動を取ることが可能な日本への留学生や旅行者を使い日本国内を混乱に陥れることができる。
また、自国民保護は軍隊を投入する大義名分となる。さらに漁船に乗った「正規軍を先導する任務」を与えられた海上民兵により島嶼の港、空港を確保することは容易である。その漁船群は、「北斗」のGPSを装備し、丸一日で中国本土から南西諸島へ到達することができるのである。
当然これと連携してサイバー攻撃、日米の通信網の破壊、ミサイルによる重要施設への攻撃、DF21Dやバックファイアによる米空母の威嚇等の手段により島嶼の戦闘を有利に進めることができよう。
港、空港を取れば容易に戦闘車両を島に上げることができ、戦闘は有利となる。中国の快速反応部隊は特殊部隊、空挺も含んで戦いを先導する。海軍歩兵がいつも海岸に上がってくるとは限らない。
結論ははっきりしている。中国は当初の航空・海上優勢のいかんにかかわらず先制奇襲により南西諸島の島嶼を奪取し、中国の海空優勢を獲得するために占領あるいは無力化することができる。必ず中国が成功するとは言わないが、そのチャンスはある。
5 尖閣の戦い
(1)尖閣における1つのシュミレーション
尖閣事態は日中にとって高度な政治的判断を要する事態であるので、政治的正当性の確立、相手側の孤立化、特に日本側の法律的な不備等がからみ、1つの単純なシナリオですべてを表すことはできないし、危険でもある。
また、尖閣については中国も自国の領土であることを主張しているため、日本が事前展開して先取すれば、中国側に日本の方が先に平和を破り侵略したとの口実を与えかねないので、作戦は簡単ではない。
その中でも、一般的に速戦即決で短期間のうちに海上民兵、特殊部隊、ミサイル、サイバー攻撃と連動して精鋭部隊で尖閣プラスαを奪取するシナリオと、時間をかけて日本の弱点を突くものの2つが代表的であるが、日本の問題点を明確にするために後者のシナリオを提示する。
X日、多数の漁船が尖閣を取り囲む中、魚釣島と北・南小島の数箇所に20〜30隻の漁船が達着して、中国国旗とともに上陸を開始した。(海上民兵と特殊部隊の混成、戦闘服は着用せず)日本の警察と激しく衝突し、相互に負傷者が出て相互に人質が出たのを機に一時的に休戦し、日中相互の艦船、ヘリコプターなどを使用し負傷者の救出に当たった。
やがて、島の海岸の何箇所かに中国は拠点を築き、船から食料、燃料を持ち出し、また、船を壊してバリケードや燃料としているようだ。日中双方とも無人機を繰り出して常時監視を継続している。日本側の判断は混乱し、防衛出動の発令は見送られた。
中国は、上陸した漁民を国家的英雄として連日その行動を称えるとともに、各国に対して介入しないよう宣伝工作を激化していった。米国はこれに対し話し合い解決を勧めるだけである。
日本は、海保を集結させ中国の兵站を絶つ作戦に出たが、日本の糧道を断つ孤立化作戦を待っていたかのごとく、中国は非人道的だと日本を激しく非難するとともに、国防動員法を発動して、中国内の日本企業を接収するとともに、日本の留学生、旅行者等も動員して南西諸島の主要な島や日本の本土で抗議活動やデモを繰り返した。一部はゲリラ化しているようだ。
米国は、日中間の軍事紛争を回避するため、空母を2隻南西諸島海域に派遣することを決定し、数日のうちに奄美大島の沖合いと石垣島の沖合いに空母を進出させた。
この機を待っていたかのごとく中国は、薩南海峡、宮古〜沖縄海峡、バシー海峡から公然と潜水艦多数を西太平洋と南シナ海、東シナ海に進出させるとともに、ソブレメンヌイ級の艦艇を薩南海峡、津軽海峡から西太平洋に進出させ、米空母を大きく取り囲むように行動している。
やがて中国のH6爆撃機(状況によってはバックファイア爆撃機)が昼夜の別なく米空母に対して遠方から威嚇行動を開始した。この中には、悠然と宮古島や沖永良部島などを高空で通過していく編隊もあったが、自衛隊は監視するだけで手出しをすることは禁じられていた。米国はこれに対し日本を激しく非難した。
このような状況が3週間も過ぎた頃、魚釣島などへ上陸した中国漁民の中から疲労と栄養不良、病気により死亡者が出たのを機に、中国は一層日本の非人道性を世界に訴え、この状況が続けば、中国は「人道的見地からの国民保護」と「国土防衛のための自衛権の行使」を宣言し、直ちに実行するとのキャンペーンへと変質させていった。
米空母への威嚇を慎重に繰り返していた中国であるが、そんな折、突然DF21と思われる多弾頭のミサイルが数発沖ノ鳥島へ発射され、その内数発が沖ノ鳥島の至近距離へ着弾した。
同時に米空母の周辺にいた中国艦艇から夜間機雷のようなものが散布されたとの情報が流れた後、中国からの強烈で大規模なサイバー攻撃と電子戦が実施された。この状況を踏まえ、米空母はグアムへ一時避難することになった。沖縄の米空軍も一時退避を決断した。
この機に乗じ、中国は魚釣島と北・南小島に海上民兵と特殊部隊を上陸させ、全島の制圧を狙ったが、自衛隊も戦闘機に支援されたヘリやオスプレイなどの空中機動、強襲ボートなどによる海上からの襲撃により反撃を実施した。
自衛隊は短期間で開発した新兵器も使用したが期待以上の成果を得ることがでた。一方、中国は虚を突き久場島に対艦・対空ミサイルを設置している状況が確認できる。
同時に中国は、尖閣のみならず「南西諸島の中国人の保護」と作戦における「自衛権の行使」を名目として、奇襲的に奄美の空港・港湾を海上民兵で襲撃し、ミサイルで空港を破壊した。
また、久米島、下地島に海上民兵と一般地上軍を主として港から上陸させ、空港を一時的に制圧するとともに、対艦ミサイル、防空ミサイルを配置して、海上、航空優勢の獲得に努めようとしている。この際、多数の親中国派の群集がこれを支援した。
併せて日本政府に対して南西諸島における中国人の安全を保障するとともに、軍事的敵対行動を即時止めるように勧告した。そうでなければ、さらに戦線を拡大して南西諸島から九州まで軍事的行動をすると警告を発した。
日本側の反撃も功を奏し、陸海空の統合による対艦攻撃により中国の中枢艦の多数に損害を与えることができた。空港のある島嶼を中心として自衛隊は戦火をものともせず戦力を集中する一方で、多数の住民の避難を、統合輸送コマンドを核心として国を挙げて実施中である。さらに・・・。
(3)へ続く
JBpress.ismedia.jpより引用
|
|
尖閣、南西諸島を中国は間違いなく攻めてくる
中国による「覇権の決意」と尖閣諸島戦闘シミュレーション
2013.08.12(月)用田 和仁
1 欠落する脅威認識が日本を危うくする
日本は、中国とのよりが昔のように戻るだろうという幻想を、もはや捨て去ったほうがよい。中国は本気だ。尖閣も必ず取りに来るし、南西諸島も支配下に置くよう必ず行動する。すでに沖縄では下工作が始まっていよう。
2020年までにアジアでの軍事的優位を確立して、2050年頃には米国に対する覇権を確立する「中国の夢」は着々と現実になりつつある。
少なくとも中国流のやり方で間違いなく着実に軍事の実力を向上させている。中国の力を過小評価したり、まだ軍事力は不十分だといっている人たちは非対称戦力(対称戦力の増強も含む)の意味とやり方が分かっていない。
日本は尖閣に関心のほとんどが釘付けだが、日米、日韓の離反と、歴史問題のように中国は戦後の戦勝国の感情を持ち出し、日本の孤立化を図り、大層な宣伝戦とともに有利な情勢を作り出そうとしている。起死回生の一発がない限り中国の時間の長い、我慢強いアプローチに対して勝ち目はないだろう。
頼みの米国も国際紛争に介入することには後ろ向きで、いまさらながら「話し合い」を強調する姿に、もはや覇権国としての気概は感じられない。かろうじて、自衛隊と米軍の良好な信頼関係によって日米関係は維持されているといっても過言ではない。
その米国の核抑止力は低下しつつあり、軍事費も大幅に削減されていくことから、日本全般の防衛力は相対的に低下し、中国が日本に対して奇襲的な局地戦を仕かける敷居は低くなりつつある。そして、米国の「日本は自ら守れ」と「日本に米国装備品を買わせよう」とする圧力は確実に高まってくるだろう。
日本人は、自ら脅威を認定し、自らの国防を自ら考えて準備する立場に一挙に追い込まれた自覚があるだろうか。
中国や北朝鮮は、特に日本に対して武力行使することには何の躊躇もないだろう。ただ勝てる状況を作り、時を待っているだけだ。時間は何も解決してくれない。何も中国と一戦を交えなければならないと言っているのではない。
しかし、「力」を信奉する中国の軍事的勢いや無謀な冒険を止め、冷静に考えさせるためには、やはり「力」では日本を押し込めないという「実力」と「決意・覚悟」を見せなければならない。
それは端的に自民党の新防衛大綱の提言にあるような、大幅な防衛予算と人員、装備の増大である。たとえ国家財政が破綻しようと国があれば再興できるが、国なくして国家の繁栄はない。
今年、完成させる新防衛大綱はまさに日本の運命を決める重要な局面であり、従来の延長であったりしてはならないし、尖閣だけに小さく特化して予算を始めから削ろうとするものであってはならない。
前大綱を作ってからそんなに時間がたっていないので大きな変更は必要がないのではないかとの意見も散見されるが、それは戦略環境の激変を感じられない防衛音痴の意見である。
その根本は、わが国の脅威認識であるが、残念ながら6月に出された与党たる自民党の提言にはいまひとつ芯がない。少なくともわが国周辺の安全保障環境は悪化しているとの認識は示したが、それがどうしたと言う結論が必要である。
すなわち「日本に対する武力攻撃事態や偶発的な紛争の可能性は高まっている、または、否定できない」などの認識が示されるべきである。
これが欠如していると国民の説得はおろか、財務省にも何も変わっていないのだから、財政再建を受け防衛費は従来どおり削減ということになりかねないだろう。自民党の従来の防衛費を削減してきたのは誤りだったという反省を踏まえ、さらに踏み込んでもらわなければならない。
さらに悪いことに、島嶼防衛の範囲を先島諸島(宮古、石垣島から与那国島)に限ったことは、軍事的にも政治的なメッセージからも大きな誤りである。中国は海洋に進出する「9つの出口」として、南西諸島はおろか、日本海を通って北太平洋へ進出する事を明確にしており、実際に演習なども頻繁に行われている。
今年に入って奄美大島や大東島付近まで潜水艦が出没し、五島列島には昨年100隻近い漁船が長期滞在した。五島は佐世保の出入り口を制しており、ここに中国の対艦ミサイルが配置されれば、日米の艦船はもはや佐世保を母港とすることはできなくなる。
さらに、今年7月初旬には中ロ合同演習が日本海で行われ、7隻の中国北海艦隊の艦艇が夜間対馬海峡を通過して行った。中国の関心は、尖閣を落とし東シナ海を聖域化することと同時に、はるか西太平洋へと向かっていることを実感すべきである。中国には国境の概念はなく、力の及ぶ範囲がいわゆる国境である。
以下中国の脅威とは何かを、2012.12に掲載された「中国軍人が明かした近海防御戦略」も踏まえ順を追って明確にしておきたい。さらに最後にこれまで控えてきた尖閣の作戦についても、尖閣だけに特化する皮相な防衛議論や浅薄な陸軽視論等を看過できず、一石を投じたい。
2 南西諸島の中国の脅威とは何か
中国の大戦略を実現するためには、核戦力で米国に対抗し、そして、中国本土をあらゆる反撃から守りきることが必要である。
そのために、第1列島線内(九州から南西諸島、台湾、フリッピン、ボルネオに至る線)の「聖域化」と第2列島線内(伊豆、小笠原諸島からグアム、サイパンを経てパプアニューギニアに至る線)での「敵の侵入阻止」が必須となる。それが日本の領土である南西諸島と、伊豆七島を含めて自らの軍事戦略に入れ込んでいる理由である。
これをもう少し詳しく見ると、核戦力については、動き回って撃破されにくい地上発射型の核ミサイルを完成させ、将来はもっと残存性の高い潜水艦発射型の核ミサイルを、最終的に南シナ海に沈めて潜水艦の発射海域とするだろう。
南シナ海が中国の核心的利益だと言う意味はここにある。
さらに、中国の「核心的な地域」すなわち、中国経済のエンジンは「北京、天津、河北の地域、さらに上海を含む長江デルタ、そして広州、香港を含む珠江デルタであり、この近海の沿岸地域は中国の経済の核心的地域であり防御しなければならない」と明言している。これらの地域は中国の北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊とほぼ同地域である。
すなわち、中国の死活的重要な政治・経済地域の中核を守り、海洋に押し出す海軍戦力の根拠地を守るためには、中国にとって第1列島線を含む黄海、東シナ海、南シナ海は絶対国防圏であり聖域でなければならない。その中に尖閣はある。
南西諸島は、中国の核心的な地域および艦隊のちょうど3分の2を塞いでいる。また、中国本土から約800キロの距離にあり、航続距離の観点から航空戦力にとって戦力発揮上大きな結節と言える。また、バシー海峡から西太平洋、南シナ海へ抜ける艦船の側背に南西諸島は位置しており、軍事上は極めて大きな影響力を持っている。
総括すると、南西諸島は中国にとって核心的な地域や艦隊の根拠地を守る防壁であると同時に、西太平洋に自由に進出し、また、南シナ海に向かう「敵」艦隊の側背を突くための出城だと言えよう。この意義は大きい。
さて、この中国の絶対国防圏を確実にするためには、どうしてもこのエリアの外側、すなわち第2列島線まで軍事的影響力を行使して少なくとも「敵」の侵入を阻止することが必要となる。
中国の絶対国防圏と侵入を阻止することを合わせて、米国は中国のA2(接近阻止)/AD(領域拒否)戦略と称している。この2つが一体となって中国の磐石の戦略態勢が完成する。中国の近海防御戦略の本質がここにある。
中国は、A2(接近阻止)については自ら明確にしたことはなかったが、昨年それは「台湾作戦において、台湾海峡の西側は狭くて浅瀬であり大規模な作戦は難しいので、台湾の東側500キロから800キロ(沖縄南端から奄美大島南端)の範囲まで出て作戦する」と複数回明言した。これは米空母の活動範囲を大きく制限することを狙っているものであり、軍事的に合理的である。
このように中国にとって潜在的に勢力圏の拡大の「意思」があり、また、南西諸島に「軍事的意義」がある以上、軍事戦略的には対馬を含む南西諸島全域が戦場になる可能性を否定することはできない。
(2)へ続く
JBpress.ismedia.jpより引用
|



