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日本国防

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今度こそ、歪な防衛政策からの脱却を!
自民党の防衛大綱提言と新大綱への期待
 
(1)からの続き
 

4 新大綱のあるべき方向性

(1)従来の大綱の枠に捉われない斬新な大綱を
 
 防衛計画の大綱は、「安全保障の基本方針、防衛力の意義や役割、さらには、これらに基づく、自衛隊の具体的な体制、主要装備の整備目標といった今後の防衛力の基本的指針を示すものである」とされ、51大綱、07大綱、16大綱及び22大綱と4度に渡り改訂されてきた。
 
 すなわち、大綱は、概ね10年後までを念頭に、中長期的な視点で日本の安全保障政策や防衛力の規模を定めた指針である。
 
 これまでの大綱は、基盤的防衛力構想等のもと、抑制的な計画として作用してきた嫌いがある。大綱が規定した内容を最大限実現するのではなく、御幣を恐れずに言えば、つまみ食いして大綱の内容を具現したとお茶を濁してきた。
 
 財政的な制約や相も変らぬ一国平和主義的な国民感情に過度に配慮して、時には国際情勢の変化を過小評価し、現実に適合し得ない計画となり、その矛盾が随所に表れ始めているといっても過言ではない。自衛隊が張子の虎でないことを祈る日々である。
 
 自民党の提言は、我が国が直面する国内外情勢を至当に判断し、それに適合することを狙いとするものである。
 
 今までの大綱から思い切って脱却して、自衛隊が真に機能し、国民の生命・財産や我が国の主権を断固として守り得る体制を構築する必要がある。
 
 憲法改正や国防軍の設置、国防の基本方針や政治スローガンに過ぎない専守防衛、或いは非核3原則など、種々議論されてきたところであり、新たな情勢下において見直す必要性も増している。
 
 はたまた、たびたび指摘されてきた集団的自衛権の解釈変更や北朝鮮のミサイルの脅威への対応で論議される敵基地攻撃能力の保持など、従来の防衛大綱には馴染まないのかもしれないが、これらの問題や課題を抜きにした安全保障論議は意味がない。従って、これらにも敢えて踏み込んで大綱を策定して欲しいものである。
 
 今こそ、タブーなしに議論できる環境にあると言えるし、またそうすべきである。自民党の提言は、我が国の防衛に係る矛盾を遍く網羅しており、そしてそれらの矛盾解決は喫緊のものでもあるので、今回の大綱にはそれらを盛り込んで、政治の意思を明確にすべきだ。正々堂々と国民に対して提示すべきだ。政治の大英断を強く希求する。大綱に定型はないはずだ。
 
(2)適切な優先順位の設定と着実な施策化
 
 次の10年と言わず、喫緊に対処すべき政策は多岐にわたる。今までのつけがいかに多いかを嘆いても仕方ない。提言の内容をすべて直ちに施策化することは簡単ではなかろう。また、財政的な制約もあろう。もちろん、中には政治が決心さえすれば直ちに解決するものもあろう。
 
 我が国が直面している最大にして喫緊の課題は、南西諸島の防衛であり、北朝鮮のミサイルやゲリラへの対処であり、また近年顕在化しつつある新たな脅威(サイバーや宇宙)への対抗であり、これらの対処に共通する警戒監視能力の増強であり、陸・海・空部隊の戦略機動能力の増大である。
 
 適切な優先順位の決定と資源配分は政治の責任である。大幅な防衛費の増額を以てしても、これら提言の具体化は困難であろう。国内外情勢を至当に判断して、優先順位を設定し、それに従って、スピード感を持って実行して頂きたい。
 
 提言には、政治決断するだけで可能なものもあれば、新たな立法措置を要するようなものもある。更には今後さらに細部を詰めなければならないようなものもある。それらを今後いかにして具体化していくかが重要だ。
 
 それぞれの提言事項の具現化・具体化を早急に図ると共に、実行のタイムテーブルを作成して貰いたい。
 
(3)実現を切望する事項―自衛官に名誉を、相応の処遇を
 
 提言は是非とも実現して頂きたいものばかりであるが、永年自衛官として勤務してきた者として、特に実現して欲しいものがある。自衛隊が創隊されて間もなく60年、人間で言えば還暦に相当する。
 
 憲法違反。税金泥棒と揶揄・批判されてもなお、ただ愚直に、『事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること』を宣誓して、訓練に勤しんできた自衛官、いろいろな意味において決して恵まれることもなく、またそれをも声高に求めることもなく黙々と勤務している自衛官諸士に国はどのように報いてきたのだろうか?
 
 列国であれば当然与えられるであろう名誉もなく、処遇とて満足のいくものでは決してない。自衛官に対する地位と名誉の付与、自衛隊員の処遇改善を提言として取り上げているが、蓋し当然であり、政府において真摯に検討施策化されることを切望する次第である。
 
(4)欠落している緊急事態基本法と国家防衛
 
 本提言に欠落していると思われるものが、外国からの侵略やテロ、騒乱などの有事等、国家の独立と安全における危機や、国民の生命・財産が脅かされる重大で切迫した事態に対応するために、国として迅速かつ適切に対処するための基本的方策に対する道筋・基本的考え方であり、そのための体制構築の視点が欠落している。
 
 国家の緊急事態に国家としていかに対処するか、その際における国民等の協力などをいかに規定するかが重大事である。逃げずに真正面から議論してこそ政治ではないか。
 
(5)列国の軍事組織並みの態勢構築の視点からの更なる提言
 
 47の項目に若干は盛られているが、我が自衛隊を列国の軍事組織並みの組織にするには何が欠落し、何処が不足しているかを検討して、それらを新大綱に、少なくとこ検討課題として盛り込んで欲しいものだ。
 
 例えば、防衛法制全般にわたり、ポジリスト方式からネガリスト方式へ改めるとか、軍事組織独自の特別裁判やそれらに類するものの創設などである。
 
(6)ネーミングは?
 
 51&07大綱は基盤的防衛力構想と称され、22大綱では動的防衛力構想とネーミングされた(もっとも動的でない防衛力などあるはずがないとの違和感を禁じ得なかったのは小生のみではあるまいが・・・)。
 
 今回の自民党の提言では、「強靭な機動的防衛力」と命名しているが、前回の民主党時代の大綱よりはましな気がする。
 
 防衛力整備・運用の本質は、予期し得る脅威をいかにして抑止し、いったん緩急あらば迅速かつ柔軟に対処正面等に戦力を集中して、早期に事態を収拾することである。
 
 小生の語学力では、端的に言い表せないが、何方かぴったりのネーミングを考えてほしいものだ。言霊の国と言われる我が国であるので、言葉に捉われすぎて誤解を招く可能性もなきにしもあらずだが、適切な呼称は理解と周知を容易にするメリットがある。
 
(7)国民への説明責任
 
 アベノミクスの効果が表れ始めているとはいえ、景気の浮揚には時間もかかるだろうし、財政事情は相変わらず厳しい。このような状況下で、国民に対して、国家防衛のためになぜその施策が必要なのか、その効果はどうなのかを国民に説明、理解を得なければならない。
 

5 終りに

 画期的な自民党の提言を受けての政府の大英断が求められる。日本の防衛・安全保障のターニング・ポイントに差しかかっていると言っても過言ではない。安倍政権であればこそ、必ずや小生の期待以上の大綱を策定してくれるものと確信する。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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今度こそ、歪な防衛政策からの脱却を!
自民党の防衛大綱提言と新大綱への期待
 

1 はじめに

4度改訂された防衛計画の大綱の年内策定が見えてきた。今般、自民党は安倍晋三首相に、年末に閣議決定される防衛計画大綱に対する画期的な提言を取りまとめ、提出した。
 
 本提言は正に日本の安全保障・防衛に関するエポックメーキング的なものとなるであろう。防衛省・自衛隊創設以来の歪な防衛政策を改める大なる可能性を秘めている。本稿では、その提言内容を概観して、若干の私見を述べたい。政府においては本提言を最大限取り入れて、日本の安全保障・防衛を抜本的に正してほしいものである。
 

2 防衛計画の大綱を巡る最近の動向

 安倍政権は、2013年1月25日、民主党政権が2010年末に閣議決定した「防衛計画の大綱」(22大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)を2013年内に見直す方針を固め、現大綱は凍結され、中期防は廃止された。
 
 これに伴い、防衛大臣は新たな大綱の策定を指示し、6月末を目途に中間報告をまとめるべく、鋭意検討を重ねている。防衛省は、「防衛力のあり方検討委員会」(委員長:江副聡副大臣)を設けて具体的な検討に着手し、近々に発表されるであろう。
 
 一方、大綱などの見直しを公約として戦った自民党は、真剣な議論を重ね、国防部会・安全保障調査会の合同会議で防衛大綱に係る提言案を取りまとめ(6月4日)、6月11日岩屋安全保障調査会長等が総理大臣官邸を訪れ、提言を提出した。
 

3 自民党の提言の概要

 6月11日、自民党が安倍総理に提出した「新「防衛計画の大綱」策定に係る提言」(「防衛を取り戻す」)の概要は以下の通りである。安全保障環境の変化を述べ、7分野47項目の提言である。分量は、概要は4ページ、提言本文は13ページである。
 項目のみでも見て頂きたい(詳細はURL参照)。
 
一 はじめに 

我が国を取り巻く安全保障環境が次第に悪化、国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜くため、防衛力を今後想定される内外のあらゆる事態に迅速かつ機動的に対応できるものにする必要がある。
 
二 我が国を取り巻く安全保障環境
 
(1)わが国を取り巻く安全保障環境
 
1.国際情勢
 
●中国などの軍事力の増強により軍事バランスに大きな変化が生じ、潜在的な不安定要因を抱える多極化した安全保障環境が生じつつある
●「グレーゾーン」の紛争の増加、海洋・宇宙・サイバー空間などの新たな領域におけるリスクの顕在化
 
2.わが国周辺の情勢
 
●北朝鮮は地域における最大の不安定要因
●中国は急速な装備の近代化を図っており、わが国を含む周辺諸国にとって大きな懸念要因
●わが国を取り巻く安全保障環境は、以前に比べむしろ悪化
 
3.国内状況等
 
●国家財政は依然として厳しい状況にあるが、「国防」はわが国の独立と平和の基盤をなすものであり、防衛関係費については所要額を継続的に確保していく必要
4.安全保障政策の基盤となる重要課題
●「憲法改正」、「国家安全保障基本法の制定」、「国家安全保障会議」(日本版NSC)の設置、日米ガイドラインの見直しなどへの早急な取り組み
三 具体的な提言(筆者注:項目のみ列挙し、カッコ書きの部分は省略した)
 
(1)基本的安全保障政策
 
●憲法改正と「国防軍」の設置
●国家安全保障基本法の制定
●国家安全保障会議(日本版NSC)の設立
●政府としての情報機能の強化
●国防の基本方針の見直し
●国防の基本方針の見直し
●防衛省改革
 
(2)防衛大綱の基本的考え方
 
●新たな防衛力の構築 〜強靱な機動的防衛力〜
機動運用性、統合指揮運用能力、輸送力等の機能拡充を図りつつ、防衛力の強靱性・柔軟性・持続性や基地の抗堪性の確保、戦力の維持・回復力の強化などを重視
 
(3)国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜く態勢の強化
 
●隙間のない(シームレスな)事態対応
●統合運用の強化
●警戒監視・情報収集分析機能の強化
●島嶼防衛の強化
●輸送能力の強化
●核・弾道ミサイル攻撃への対応能力の強化
●テロ・ゲリコマへの実効的な対処
●邦人保護・在外邦人輸送能力の強化
●東日本大震災への対応を踏まえた災害対処能力の強化
●サイバー攻撃に係る国際協力の推進・対処能力の強化、法的基盤の整備
●安全保障分野での宇宙開発利用の推進
●無人機・ロボット等の研究開発の推進
●装備品の高可動率の確保
 
(4)日米安全保障体制
 
●日米安全保障体制の強化
●日米防衛協力強化のためのガイドラインの見直し
●日米の適切な役割分担の下での策源地攻撃能力の保有
●平素から緊急事態に至るまでの隙間のない協力の更なる強化
●在沖縄米軍基地に関する抑止力の維持と地元負担軽減
 
(5)国際及び日本周辺の環境安定化活動の強化
 
●豪、韓、印、ASEAN諸国等との戦略的安保協力、国際協力活動の推進等
●中国、ロシアとの安全保障関係の推進
●国際平和協力のための一般法の制定
●国際平和協力活動の取組の強化
●多様化する国際平和協力任務に対応できる人材育成、能力構築支援
●戦略的対応の強化
●国際平和協力活動の展開基盤の強化
 
(6)大幅な防衛力の拡充
 
●自衛隊の人員・装備・予算の大幅な拡充
●中長期的な財源確保
●統合運用ニーズを踏まえた中長期的視点にたった防衛力整備
 
(7)防衛力の充実のための基盤の強化
 
●多様な任務に対応できる人材の確保・育成
●人的資源の効果的な活用
●衛生機能の拡充
●自衛官に対する地位と名誉の付与
●自衛隊員の処遇改善(
●防衛生産・技術基盤の維持・強化
●国際平和とわが国の安全保障強化に資する輸出管理政策の構築
●効率的・効果的かつ、厳正な調達制度の確立
●中長期的な視点に立った最先端の防衛装備品の研究開発の推進
●地域の安全・安心の確保
●広報等の情報発信機能の充実強化等
 
四 おわりに
 
●政府は安全保障上の諸課題を決して先送りすることなく、防衛力整備の達成目標とそのスケジュールを明確にした上で、着実に実行に移していく必要
●政府に対し、本提言を参考にして、わが国国防の礎となる新たな「防衛大綱」ならびに「中期防」策定を要望 』
 
 本提言は、項目を見て頂いても解るとおり、我が国の防衛・安全保障が抱える問題点や課題を集大成し、あるべき方向性を網羅的に述べているものであり、素より付加すべきものはそれほど多くはないというのが実感だ。


(2)へ続く
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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画龍点睛を欠く「在り方検討中間報告」
現行法制の再検討なくしては有事に対応できない
 
(1)からの続き
 

国会の承認が必要な防衛出動下令

 中国海軍の攻撃に対しては、海保巡視船に対応能力はない。近辺にいる海自護衛艦が対応しなければならなくなる。今日、明日にでも起こり得る事案である。だが現行法制では事実上、海自護衛艦は海保巡視船を防護することはできない。
 
 海保巡視船への急迫不正の侵害に対応するために海自護衛艦が反撃することは、個別的自衛権の行使にあたる。だが、現在の解釈では、個別的自衛権は防衛出動が下令されていなければ行使できない。
 
 防衛出動下令には、武力攻撃事態認定と防衛出動下令に関する国会承認が必要である。これには手続きと時間を要す。仮に最高指揮官の総理大臣が決断したとしても、間髪を入れずに対応することは事実上困難なのである。
 
 隊法82条「海上における警備行動」で対応可能との見解もある。「海上警備行動」は過去2回発動された例がある。ただ、攻撃される前の絶好のタイミングで「海上警備行動」が発令されることを期待することは難しい。
 
 仮に、絶妙のタイミングで「海上警備行動」が発令されたとしても、海自に許容されるのは警察権の行使である。従って「正当防衛、緊急避難」以外は武器の使用はできない。またそれにも比例の原則が働く。
 
 このため、巡視船が攻撃される前に対応は取れないし、巡視船が沈められた後であれば、中国艦艇を撃退することは過剰防衛となる。
 
 では航空自衛隊は、空から海保巡視船を守れるのか。対領空侵犯措置ではないので、スクランブル発進さえできない。根拠法令がないからだ。自衛隊は、法律で定められた行動以外は禁止されている。いわゆるポジティブリスト方式を採用しているから根拠法令がなければ動けないのだ。
 
 急迫不正の侵害があり、ほかに手段がないという自衛権発動の要件を満たしていても、個別的自衛権の行使には「防衛出動」という高いハードルがある。ファジーでグレーな現下の環境であって、事態拡大を防止するために「シームレス」には行動できないのが現状なのだ。
 
 また「防衛出動」は、対外的には「宣戦布告」との誤ったメッセージと与える可能性が強いという別な問題点もある。事態の悪化、拡大を防止するための「防衛出動」が、逆に事態拡大に油を注ぐ結果にもなりかねない。
 
 実際問題として、海保巡視船1隻の被害では政府も「防衛出動」下令を躊躇するに違いない。結果として海保巡視船を見殺しにせざるを得なくなる。海自隊員達は護衛艦上で切歯扼腕しながら悔し涙を流すことだろう。
 

尖閣に中国の民兵が上陸しても軍事行動は不可

http://img.afpbb.com/jpegdata/thumb200/20120724/9288460.jpg南沙諸島に中国が建設したレーダー施設〔AFPBB News
 
 ほかにも蓋然性の高い事例が想定される。尖閣に中国の民兵が上陸したとしよう。陸上自衛隊は、海兵隊機能を保有したとしても、防衛出動か、治安出動が下令されなければ、身動きが取れない。
 
 上陸した民兵を取り締まるため、先ずは警察の機動隊が出動することになるだろう。だが、民兵が武装していた場合、機動隊は民兵を逮捕、拘束どころか、たちまち殲滅されるに違いない。
 
 作戦の合理性からは、いきなり警察や自衛隊を投入するより、先ずは海自艦艇によって海上補給路を断ち、民兵を無力化させるべきだろう。
 
 上陸民兵の「ガダルカナル化」を企図するわけだ。だが、海自が海上封鎖をすることは、個別的自衛権行使にあたると解釈されている。やはり防衛出動の下令がなければ実施できない。いずれにしろ、間髪を入れずに合理的な対応を取ることはできないのが現実なのだ。
 
 報告書では「短期間で事態が深刻化する可能性がある近年の安全保障環境においては、各種事態の兆候を早期に察知し、適切な政策の実施に迅速に役立てることがとりわけ重要」と指摘している。全くその通りだ。
 
 だが、現行法制では、最高指揮官である総理大臣が総合的に判断して、合理的に対応しようとしても、軍事オプションは政策の1つとして取れないのが実情なのである。
 
 為政者は常に幅広いオプションを手にしておくことが必要である。その中から、状況に応じて最適の行動を選択して、ようやく「シームレス」な対応ができ、「適切な政策の実施」が可能となる。
 
 冷戦時代には現行の防衛法制でも、問題は顕在化しなかった。「有事、平時」の区分が明確であり、平時から有事までの間のリードタイムが予期できた。
 
 つまり対日侵攻の兆候を察知してから、実際の侵攻まで約2〜3カ月程度のリードタイムが想定され、その期間に自衛権発動の法的根拠となる「防衛出動」の国会承認を取り付ければいいと考えられていたからだ。
 
 報告書では「様々な安全保障課題や不安定要因が顕在化・先鋭化しており、我が国の安全保障環境は一層深刻化」しているとの認識を示し、「我が国自身の努力」として「脅威の発生を予防するとともに、各種事態の抑止に努め、それが顕在化した場合には事態の変化・長期化に応じてシームレスかつ持続的に対応していく必要がある」と述べる。
 

リアリズムに徹して新防衛大綱を検討すべき

 だが、時代に追随できていない現行法制では、「シームレスかつ持続的」に適切な対応を取ることは難しく、事態の悪化や拡大を防止することはできない。この深刻な問題認識が報告書には欠けている。
 
 防衛大綱は政府全体で策定されるとはいえ、この問題認識を提示できるのは防衛省だけである。現下の安全保障環境において、「事態の変化・長期化に応じてシームレスかつ持続的に対応」するためには、例えば防衛出動なくとも、通称「マイナー自衛権」といわれる限定的な自衛権行使が可能となるような検討が不可欠なのである。
 
 民主党政権下で策定された現大綱では、「動的防衛力」をキャッチフレーズに、事態の抑止に重点が置かれていた。だが、事態が顕在化した後の対応については、思考を停止していた。この点が現大綱の最大の弱点でもあった。
 
 今回、安定した安倍政権下において、より現実的かつ実効的な防衛大綱を策定し、北東アジアの平和と安定に貢献すべきだと筆者は大いに期待している。だが、報告書を見る限り、現大綱と同様、「画龍点睛を欠く」と言わざるを得ない。
 
 今回の報告書は、いまだ防衛省内の自主検討の中間段階だと認識し、全体の評価は留保しておきたい。今後の政府全体での検討を大いに期待するところである。
 安倍内閣は、集団的自衛権容認に向け、第1次安倍内閣で設けられた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を再招集した。集団的自衛権行使の容認に向け検討が加速されていると聞く。
 

 今後、政府全体で新大綱を検討するに当たっては、徹底したリアリズムのもと、集団的自衛権の検討と会わせ、現下の安全保障環境に適合した実効性ある防衛大綱の策定が望まれる次第である。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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画龍点睛を欠く「在り方検討中間報告」
現行法制の再検討なくしては有事に対応できない
7月26日、防衛省は「防衛力の在り方検討に関する中間報告」を公表した。多くのメディアが「年末に策定する新防衛大綱の中間報告」と報道していたが、これは正確ではない。防衛計画の大綱は政府全体で策定するのであり、防衛省が単独で策定するものではない。
 
 安倍晋三政権は発足後、「現下の状況に即応して我が国の防衛態勢を強化していく観点から、現大綱を見直し、政府として本年中に結論を得る」こととした。
 

大切なのはハードよりソフト

東京・市ヶ谷の防衛省(北朝鮮のミサイル発射に備えたときのもの)〔AFPBB News
 
 これを受け、防衛省は政府全体の検討に資するよう、防衛副大臣を委員長とし、省内で「防衛力の在り方検討」を実施してきた。今回の報告は、これまでの省内検討の中間結果を防衛大臣に報告したものである。
 
 中間報告では、中国を念頭に離島防衛について、航空・海上優勢の維持や海兵隊的機能の整備が重要と指摘している。また警戒監視能力強化のため「高高度滞空型無人機の導入等」についても言及した。
 
 サイバー攻撃対策については、防衛省だけで対応できるものではなく、「米国等の友好国や民間企業との連携・協力の強化策を検討」すべきとし、専門家の育成についても述べている。
 
 そのほか、自衛隊と米軍との役割・任務分担の見直し議論を通じた日米同盟の強化、およびガイドラインの見直しまで踏み込んだ。またC4ISR(指揮・統制・通信、コンピューター・情報・警戒監視・偵察)能力向上のため、宇宙空間の利用を推進にも言及している。
 
 筆者は中間報告が指摘した内容に対しては、全く異論はない。ただ、内容が基本的にハードウエアの整備に限られており、防衛力を使ううえでのソフトウエアの検討、特に現行法制の再検討には全く触れられていないところに、いささか違和感を感じた次第である。
 
 省内検討という限界があるのかもしれない。だが、現大綱の「動的防衛力」についても、「シームレスな対応」を制約してきたのは、現行法制上の問題であることを最も認識しているのは防衛省であるはずだ。
 
 安全保障環境に適合した防衛法制再検討の必要性を痛感しているはずの防衛省が、「在り方検討」で全く触れていないはなぜだろう。もし、防衛法制検討のハードルが高すぎるとして、先送りしていたなら、所轄官庁として怠慢の謗りは免れ得ない。
 
 いかに優れた兵器体系を装備し、いかに優秀な人材を確保し、そしていかに合理的な部隊編成をしたとしても、国家としてこれを活用できる適切なソフトウエアがなければ、防衛力として機能しない。まさに宝の持ち腐れであり、防衛力は「張子の虎」と化す。
 
 報告書には「現有の防衛力が各種の事態に有効に対応できるか検証する作業を実施してきた」とある。その結果として「防衛力整備において重視されるべき機能・能力を導出」したとしているが、はなはだ疑問が残る。
 
 起こり得る事態に対し、徹底したリアリズムの下でシミュレーションすれば、現行法制の問題点が浮かび上がることは明らかである。検証作業で得られた成果が「重視されるべき機能・能力の導出」だけとは、具体的かつ幅広に検証したとはとても思えない。
 

不測の事態が起きたときの対応が欠落

 冷戦終焉を受け、特に9.11以降、安全保障環境は激変した。「今ある危機」に対応するうえで、最も現場部隊が苦慮するのが、時代の変化に取り残された現行防衛法制である。この深刻な問題認識が報告書からは全く感じられないのは、極めて残念である。
 
 「我が国をめぐる安全保障環境」については「領土や経済権益等をめぐるグレーゾーンの事態が顕在化・長期化し、より重大な事態へ先鋭化・深刻化する可能性が懸念される」とある。この認識については、筆者は全く同意である。
 
 こういった環境下での安全保障の要諦は、まずは危機を発生させないことであり、もし不幸にも危機が発生したら、それ以上悪化、拡大させないこと。そして短時間に既成事実を作らせないことである。
 
 報告書では危機を発生させないこと(抑止)に重点が置かれ、不幸にも危機が発生した場合に、事態を悪化、拡大させず、しかも早期に既成事実を作らせないという視点がスッポリ抜け落ちている。
 
 危機が発生したら、いきなり本格的な武力行使(例:海兵隊機能による島嶼奪還)と言わんばかりの内容であり、最悪の事態に至るのを防止する具体的な拡大抑止の観点はうかがえない。これでは民主党政権で策定された現大綱と何ら変わらない。
 
 現在の安全保障環境の最大の特徴は、冷戦時の様な「有事、平時」という明確な境界が消滅したことだ。それどころか、事態が「治安」なのか「防衛」なのか、あるいは「犯罪」なのか「侵略」なのかも明確でなくなった。従来の「前線」「後方」の区別もほとんど無意味になっている。
 
 いつ、どこで、誰が主体で、手段は何で、どういう事態が起こるかも予測困難である。まさにファジーでグレーな時代なのである。尖閣諸島周辺における現在の緊張状態も、そうである。平時とも有事とも言えない、いわば「有事に近い平時」といったファジーでグレーな事態である。
 
 こういった状況下にあって、仮に、不幸にも危機が発生した場合、間髪を入れず適切な対応を取り、事態の拡大を防止することが極めて重要となる。自衛隊はこの能力を有している。だが、冷戦以降、進化していない現行法制が拡大抑止の対応を困難にしているのが現状である。
 
 考えたくない想定だが、仮に尖閣諸島周辺で海上保安庁の巡視船が中国海軍艦艇から攻撃を受けたとしよう。間髪を入れず対処しなければ、「力の信奉者」中国は日本の弱みを見透かし、さらなる巡視船への攻撃を招く可能性がある。
 

 1988年、中国海軍がベトナム海軍を攻撃してスプラトリー諸島(南沙諸島)の領有権を奪った事例がそうだ。そうなれば尖閣諸島の日本の実効支配は消滅する。


(2)へ続く
 
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日米合同訓練で浮き彫りに、
日本の防衛体制の弱点と課題
コラムでも何度か紹介してきた「ドーンブリッツ(夜明けの電撃戦)2013」が、6月28日に終了した。ドーンブリッツはアメリカ海軍・海兵隊が主催し、自衛隊・カナダ軍・ニュージーランド軍も参加してカリフォルニア州サンディエゴ周辺で実施された水陸両用作戦合同訓練である。
 
キャンプ・ペンドルトン沖合のサンクレメンテ島への上陸訓練に
参加した陸上自衛隊輸送ヘリコプター、手前はアメリカ海兵隊員たち
(写真:米海兵隊)
イメージ 1 海上自衛隊部隊と陸上自衛隊部隊(それに5名の航空自衛隊将校)が参加した初の水陸両用作戦訓練を終えて、海兵隊側は「現代の水陸両用作戦がどのようなものなのか、もちろん全てではないが、それらの実態を直接経験し、また直接観察したことにより関心が高まり、理解も深まったのではなかろうか。これこそ、ドーンブリッツに自衛隊が参加したことの最大の意義である」と考えている。
 
 これまでも陸上自衛隊部隊がアメリカ海兵隊と共同で水陸両用作戦の(ごく限定された)訓練を実施したり、海上自衛隊艦艇がアメリカ海軍水陸両用戦隊と共同で訓練を実施した経験はある。しかし、海上自衛隊と陸上自衛隊それにアメリカ海兵隊とアメリカ海軍が本格的な水陸両用作戦の訓練を実施したのは今回が初めてであり、まさにそのような稀な機会に参加し見聞を広めただけでも、自衛隊にとっては極めて大きな収穫があったと考えるのが当然と言えよう。
 

海自・陸自・空自の緊密なコミュニケーション体制を

 もちろん海兵隊側も手放しで「良かった、良かった」と言っているだけではない。実戦はもとよりどんなに小さな訓練からでも教訓を引き出し学び取ることこそ軍隊の務めである。そうであるならば、ドーンブリッツのようにアメリカ海軍・海兵隊にとっても貴重な訓練からは数多くの問題点を教訓化する作業がなされる必要がある。
 
サンクレメンテ島上陸訓練での陸上自衛隊砲撃訓練、
沖合海上からは海上自衛隊「ひゅうが」が着弾観測を
している(写真:米海兵隊)
イメージ 2 水陸両用作戦の“基本の基本”は「海上戦力」「陸上戦力」「航空戦力」の統合運用である。
 
 アメリカ海兵隊の場合は陸上戦力と航空戦力は「MAGTF(マグタフ)」(海兵空陸任務部隊)という構造で海兵隊自身が保持しており一体化されている(このため、日本でよく言われているオスプレイの訓練を地上部隊と切り離して実施することにはあまり価値がないのである)。
 
 また海軍にも、水陸両用作戦に特化した水陸両用戦隊や水陸両用作戦のロジスティックスと常に連携している事前集積部隊といったエキスパート部門が組織化されている。そして、それらの水陸両用作戦担当組織が従うべき統合運用の指針は確立されている。
 
 一方、自衛隊は水陸両用作戦という部門に関して全くの初心者であり、海・空・陸の軍事力を併用する現代の水陸両用作戦に対応した組織をそれぞれが構築し、それらの水陸両用部局を統合運用する組織も構築していかねばならない段階にある。したがって、ドーンブリッツの経験からも、海上自衛隊と陸上自衛隊の間のコミュニケーションがスムーズにいくような努力が必要であることはアメリカ海軍・海兵隊側も指摘している。
 
キャンプペンドルトンのレッドビーチに上陸した
海兵隊水陸両用強襲車(AAV7)
イメージ 3 さらに、例えば自民党の提言のように日本にアメリカ海兵隊的な能力を導入する場合には、MAGTFに準じた組織構造の移入が必須である。そのため、“空”の要素に航空自衛隊(戦闘攻撃機、空中給油機、電子戦機)が組み込まれる必要がある。今回の訓練では、アメリカ海兵隊のMAGTFにおける“空”の要素として陸上自衛隊の手持ちの攻撃ヘリコプターや輸送ヘリコプターが参加している。
 
 したがって、日本独自の水陸両用作戦能力構築の第一歩は、海自・陸自・空自の間の緊密でスムーズなコミュニケーションの確立ということになる。
 

ドーンブリッツの本質が見えなかった日本のマスコミ

 海兵隊側は今回の訓練は日本のメディアにとっても意義のあるものであった(に違いない)と考えている。その見解は次のようなものである。
 
キャンプ・ペンドルトンのレッドビーチに上陸した海上自衛隊の
エアクッション揚陸艇(LCAC)と米海軍のLCAC(写真:米海兵隊)
イメージ 4 「たくさんの日本メディアが取材に来て直接水陸両用作戦の現場に身をおいて観察することにより、訓練に参加した自衛隊だけではなくメディアにとっても現代の水陸両用作戦がいかなるものなのかに関するアイデアの一端が明らかになったのではないかと思う。なにしろ海兵隊将校も、初めて揚陸艦に乗って水陸両用訓練を自ら体験する前と後では水陸両用作戦に対する理解が大きく変化するものなのです」
 
 実際、自衛隊はともかく日本のメディアや政治家の言動などから察するに、日本社会ではいまだに「水陸両用作戦」というと、硫黄島上陸戦、それにノルマンディー上陸戦のように敵が待ち受ける海岸線に敵の集中砲火をかいくぐりながら決死の覚悟で上陸する強襲上陸戦と混同されている傾向が強い(強襲上陸戦は水陸両用作戦の一部門であり、現時点においては実施される可能性が最も低い作戦形態である)。
 
 このようなイメージが強いと、水陸両用作戦能力は日本の防衛に必要不可欠であるだけでなく人道支援・災害救援活動に極めて有用である、と説明したところでなかなか理解されにくい。
 
 ところが、今回の合同訓練で現代の水陸両用作戦というものの一端を日本のメディアに直接見てもらったことにより「既成の(すなわち時代遅れの)水陸両用作戦に対するイメージがほんの少しでも“近代化”されてくれたに違いない」と海兵隊側は期待しているのである。
 
海兵隊AAV7から躍り出るカナダ軍兵士たち(写真:米海兵隊)
イメージ 5 残念ながら、このような期待は現場で取材した記者たち自身はともかく、日本での報道を見る限り期待外れに終わっているようである。サンディエゴにおける水陸両用作戦の訓練に自衛隊が参加したということは、アメリカ海兵隊にとっては「歴史的」であったかもしれないが、日本のマスコミにとってはそれほどニュースバリューのある出来事ではなかったようである。実際に、海兵隊側が期待するほど水陸両用作戦に対する洞察に富んだ報道がなされた形跡はない。
 
 各メディアともに若干“視聴率が望めそう”な「オスプレイ」ならびに「尖閣奪還」という語とドーンブリッツを結びつけて報道した結果、あたかもオスプレイがなければ水陸両用作戦能力を手にすることができないような印象を与え、自衛隊が水陸両用作戦能力を手にすることにより尖閣諸島を中国から守れるような印象をまき散らしてしまったようである。
 
 水陸両用作戦能力は日本の防衛に必要不可欠であるだけではなく、大規模自然災害にも有用であり、国内での救援活動だけでなく海外での人道支援・災害救援活動でも大活躍するため、国際協力といった側面からの日本の安全保障に対する強力なツールとなり得る。日本のメディアがそうした水陸両用作戦能力の本質を理解し、幅広く国民に対して伝えることを期待する方が無理なのかもしれない。なんと言っても水陸両用作戦は海と空と陸の様々な軍事力を併用する極めて間口の広い軍事行動なのである。
 

今こそ問われる陸上自衛隊の防衛哲学

 さて、メディアはともかく日本国防当局は、アメリカ軍としても稀な機会である本格的水陸両用作戦訓練に1000名程度の人員と軍艦3隻にヘリコプター数機を参加させた以上、訓練から引き出した教訓をもとにして、水陸両用作戦能力構築へ本格的に踏み出すのか、または断念するのか、明確な方針を打ち出さねばならない。
 
近接射撃訓練をするニュージーランド軍兵士たち(写真:米海兵隊)
イメージ 6 その際、決め手となるのはなんといっても国防費がどの程度増額されるのかであることは言うまでもない。現状レベルでは、海・陸・空ともに「金がかかるビジネス」である水陸両用作戦能力構築は、不可能である。
 

 そしてもう1つ、日本独自の水陸両用作戦能力を手にするカギを握るのは、陸上自衛隊の防衛哲学のビジョンである。いつまでも、第2次世界大戦終末期に打ち立てられた本土決戦的思考回路から完全に解き放たれないでいる限り、とても水陸両用作戦能力を日本の防衛のために身につける組織革新に取り組むことは無理な相談と言わざるを得ない。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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