ミッドウェー海戦研究所

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日本国防

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戦場に出向く女性兵士たち
こんなに遅れている日本の「軍隊と女性」議論
「軍隊と女性」というと、日本では橋下徹大阪市長による海兵隊と“フーゾク”に関する暴言に見られるように、軍隊すなわち男の兵士と軍隊外の女性の話題のように受け取られる向きもあると思う。だが、アメリカ軍のように軍隊内での女性の数が増加しポストも多様化してくると、軍隊内での「セクシャルアサルト」が大きな課題の1つとなってきている。
 
 5月25日にアメリカ海軍兵学校の卒業式でのオバマ大統領のスピーチでもセクシャルアサルトの根絶が取り上げられた。もっとも、ここで言うセクシャルアサルトには、強姦やわいせつ行為といった犯罪はもちろん、幅広い概念であるセクシャルハラスメントも含まれている。
 
 例えば、“不適切な接触”はもちろんのこと、異性に性的な冗談を言ったり、しつこくデートに誘ったり、身体的特徴をコメントしたり、風俗営業のような場所に勧誘したり、異性に対して口笛を吹いたり、といった具合に多種多様なセクシャルハラスメントになり得る。このため、軍隊内でのセクシャルアサルトは昨年1年間で2万6000件にも達しており、オバマ大統領が若い士官候補生に対してあえてこの問題に触れたのであろう。
 

女性に開かれた戦闘任務

 当然ながら、性別だけを理由にした人事異動はアメリカ軍においては立派なセクシャルアサルトの一類型となる。ただしこれまでは、他の要件と組み合わせることによって女性の配置を認めてこなかった職種も少なくない。例えば女性将兵にとって戦闘任務は実質的に閉ざされた門であった。
 
 しかし2013年1月24日、ペネッタ国防長官がヘーゲル長官と交代する直前に、国防総省は、基本的には戦闘任務であろうがなかろうが、性別による区別は数年中に可及的速やかに廃止するという方針を打ち出した。これまで女性には禁止されていた戦闘任務についても、多くの規制を解除した。
 
アフガニスタンでパトロール中の海兵隊員_
手前は女性隊員(写真:USMC)
イメージ 1 「戦闘任務」といっても曖昧な概念であるが、もっとも厳しく女性進出を阻んでいたのが陸上における戦闘、中でも歩兵が、小銃をはじめとする小火器や、場合によっては戦闘ナイフで敵と直接命の遣り取りをする近接戦闘任務であった。
 
 ただし、以前より直接的な戦闘任務に就くことは規制されていたものの、幅広い任務への女性の進出は常態化していた。実際に、2001年以降2013年2月末までの期間に、アフガニスタンやイラクの戦闘地域でのアメリカ各軍の軍務に就いた女性は29万9548名であり、そのうち130名以上が戦死し800名以上が負傷した。それらの女性将兵のうち、2名がシルバースター勲章を授与されている(シルバースター勲章は、それぞれの軍種で2番目に高位の勲章で、「敵との交戦中に著しく勇敢に戦った戦闘員」に授与される)。2013年2月末日現在、1万6407名の女性将兵が、戦闘地域に展開中である。
 

「海兵隊の“基準”を緩めることはあり得ない」

 戦闘任務が女性に開かれたといっても、具体的な運用に関しては各軍ともこれから調整することになり、単純にすべての戦闘任務に女性将兵が振り向けられることにはなっていない。
 
 とりわけ、最も危険で過酷な戦闘に先鋒部隊として投入される海兵隊では、実質的に女性がすべての分野に進出できるかどうかは、規制を排除しても実現するかどうかは疑問視されている。
 
 性別による区別を廃止するということは、ある職種に就くために必要な技能や知識それに体力的要求も性別による差異を基本的には認めないことを意味する。例えば、海兵隊歩兵将校養成コース(IOC)は過酷な海兵隊の歩兵戦闘現場を基準に、その指揮官を養成するために念入りに組み立てられた精神的にも肉体的にも極めて峻厳な13週間のプログラムである。
 
 このIOCに、1月24日の国防総省の方針転換を受けて海兵隊自身の試みとして2名の女性を編入し、これまで同様の内容で評価したところ、2名ともコースを卒業することができなかった。もちろん、2名で試みが終わるわけではなく、その後も女性をIOCに受け入れて女性が海兵隊の近接戦闘指揮官として耐え得るかの検証が継続されることになっている。
 
 海兵隊総司令官エイモス大将は、「海兵隊のような精鋭部隊はアメリカの国防を左右する。もちろん女性に対する機会は全く平等にオープンにする。しかし、我々が戦闘に耐え得るように策定した“基準”を緩めたり変更したりすることはあり得ない」と語っている。
 
アフガニスタン出動前の訓練中の女性海兵隊員(写真:USMC)
イメージ 2 ただし、海兵隊と違って女性に門戸を開放するために、何らかの基準を変更する軍種や職種も現れるかもしれない。また、近接陸上戦闘と同じく最後まで女性に固く門を閉ざしてきた潜水艦にも、近々24名の女性サブマリナーが乗り組むことになっている。
 
 いずれにせよ、数年以内にアメリカ軍が展開する戦闘地域では、現在以上の数の女性将兵が戦闘に従事することになることは確実である。
 
 このような情勢に対して「果たして女性を戦闘(とりわけ近接歩兵戦闘)任務に従事させるべきなのか?」「やはり規制すべきではないのか?」「規制を主張するのはいかなる理由なのか?」といった議論が、現在アメリカで「軍隊と女性」といった場合の主たるテーマなのである。
 

女性が陸上戦闘任務に就いている軍隊

 ちなみに、女性将兵に対して直接的な戦闘任務がオープンになっているのはアメリカ軍だけではない。
 
 アメリカの隣国カナダでは、1989年に近接歩兵戦闘をも含むすべての軍隊内での職務に女性が就くことを法律で認めた。ただし、潜水艦だけは唯一の例外とされた。そして、2000年には潜水艦も女性にオープンとなった。現在、カナダ軍将兵の15%が女性であるが、女性は戦闘部隊要員の2%に留まっている。ただし、2006年にはアフガニスタンにおいて前進砲兵部隊の女性兵士がタリバンとの戦闘で、女性初の戦死者となってしまった。
 
 世界で唯一、女性にも徴兵制が施行されているイスラエル国防軍では、兵士の33%が女性であり、将校の過半数の51%が女性である。そして2000年に制定された軍務法の修正条項によって「イスラエル国防軍におけるいかなる任務に就くことに対する女性の権利は、男性の権利と同等である」と規定され、基本的には直接的な戦闘任務も含んだ全ての任務に就くことが保証されている。
 
Caracal大隊の女性兵士(写真:イスラエル国防軍)
イメージ 3 ただし、具体的運用として「身体的ないしは個人的に適格と認められること」という条件が付せられており、若干曖昧さが残ってはいる。この修正条項が制定されて以降、2001年からは女性戦闘機パイロットが誕生し、陸軍でも多数の女性が砲兵部隊、歩兵部隊、機械化部隊といった戦闘部隊に入隊している。そして、“Caracal Battalion”と呼ばれる男女混成の戦闘歩兵大隊も編成されている。
 
 ヨーロッパ諸国で最初に女性に戦闘任務を解禁したのはノルウェイである。1985年に潜水艦乗り組みも含めすべての戦闘任務に就くことが認められた。それと同時に、ノルウェイ有事の際には女性に対しても徴兵が施行されることとなった。アメリカ海兵隊のエイモス司令官が語ったように、ノルウェイ軍でも職務任用自体は男女で区別しない以上、男女同等の任務要件をクリアーすることが条件となっている。このノルウェイで、世界で初の女性潜水艦艦長(コッベン級潜水艦、乗員24名)が誕生した。
 
 ノルウェイに引き続きデンマークでは1988年以降女性に適する前線での戦闘任務に関する研究が行われてきた。現在デンマーク軍では特殊作戦部隊のみが体力的要件のため女性に門を閉ざしているものの、その他のすべての戦闘任務に女性将兵が就くことが可能である。
 
 これらの国々以外にもドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも女性が直接的な戦闘任務に就くことが認められている。
 

文化的差異が強いため一概に評価はできない

 「女性を戦闘任務に就かせるべきなのか?」「どのような戦闘任務は制限すべきなのか?」といった議論がアメリカのみならず上記のような国々やNATO加盟諸国などでは盛んに交わされている。ただし、このような側面での「軍隊と女性」の問題も、文化的背景や民族的特質に大きく左右されるため、一概に比較するわけにはいかない。
 

 いずれにせよ、「軍隊と女性」というと“フーゾク”を連想するような国情では、とても国際水準に照らして褒められる道理はない。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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非常態勢時に「一斉休刊日」を設ける見識を問う
国家の存亡報道よりも社員の休養が大切か
 
(1)からの続き
 
 ほとんどの国民は1紙の購読だろうし、ある日の新聞がなくても痛痒を感じないかもしれない。しかし、図書館などの公共施設や数紙を購読している企業などにとっては、一斉休刊では困る場合も多いのではないだろうか。
 
 一斉休刊日がバラバラであれば、どこかの新聞は必ず閲覧できるわけで、普段の購読紙との比較もできるチャンスを得ることができる。仄聞したところでは、読者離れを避けるための一斉休刊とも聞いたが、そんな幼稚かつ的外れな理由からではないと思う。
 

新聞には真実を告げる義務が

 「諸国民の公正と信義」を前提にした憲法前文が災いして、日本では自分の国は自分で守るという国民の意識も国家の体制も育っていない。従って、いまだに憲法9条で戦争を禁止している日本を攻めてくる国などあるはずがないと主張する公党の党首さえいる。
 
 平和ボケした環境に育った国民に、安全保障や防衛について理解してもらうには、今のような緊張状態の下においてしかできそうもない。
 
 そうした認識に立つならば、防衛大臣の破壊措置命令が出て、自衛隊はその態勢を取っているという実情は、新聞にとって日本の安全保障体制や防衛問題などを検証して、国民に少しでも理解してもらうように努力する絶好の機会ではないだろうか。普段防衛問題などに関心を持たない国民も、否応なく関心を寄せざるを得ないからである。
 
 国民に提示する内容には、法体系をはじめとしたソフト面や兵器・装備などのハード面を含め、今の体・態制で十分なのか、不足しているとすればそれは何か、どうすればよいかなど、普段はなかなか国民に理解されがたいし、距離感がどうしても縮められない問題を分かりやすく解説するなどの工夫がほしいものである。しかるに、そんなことを放擲して一斉休刊日としたのである。
 
 一昨年の東日本大震災は原発事故も重なった複合災害であったが、広域とはいえ太平洋側の東北に集中していた。しかし、首都直下型から東海・南海地震などのすべてを想定外としない震災が連接して起きた場合、32万人が死亡するという驚くべき被害が明らかにされた。被害の数字だけを見るならば、東日本大震災(1.6万人死亡)の実に20倍である。
 
 自衛隊や警察・消防などもかなりの被害を受けるだろう。各人の普段からの備えなどでカバーする以外にないかもしれない。こうした実態を、もっともっと真剣かつ頻繁に周知し、可能ならばどんな形や単位でも組織化して訓練するなどの必要性を説き、また政治に働きかけるなどが必要であろう。
 
 4月中旬には、淡路島をはじめ、三宅島、さらには宮城県沖などで地震が頻発した。こうした事態が複合して起こったならばどうなるか。先の東日本大震災でも、友好的でない周辺国のおかしな動きがあったが、そうした国々は一段とエスカレートした動きを見せるに違いない。
 
 警察は国民の眼前で行動し、十分な対応ができなければ警察官が足りないからだと衆目が一致し増員に結びつく。他方で、自衛隊の任務対象は外国であり、戦争や紛争に発展しないように抑止に努める。
 
 抑止の効果があって「大山鳴動して鼠一匹」の結果に終われば上々である。しかし、国民にも見えないために、結局は何事も起きなかったではないかということになる。
 
 予算が厳しい折、もっと減らしていいという感じで受け取られ、総合的に検証して問題を探求する以前に減員に結び付けられてしまう。北朝鮮の挑発的言動で自衛隊には外見に表れない大きな矛盾が内在しているはずである。
 
 一斉休刊日にする余裕があるならば、こうした問題をぜひとも掘り下げ、国民に提示してほしい。実際、平成8(1996)年から20(2008)年までの13年間を見ると、警察官は2万7000人余増えて、現在約29万3500人(『警察白書』)となっている。
 
 一方の自衛官は同期間に1万4000人余減らされ、現在の隊員は約22万8500人(『23年度防衛ハンドブック』)である。
 

拉致被害者放置は国家の恥

 このような実情がなんら理解されないために、安全保障を統括する法律の制定も、不具合が見えみえで十分に対処できない自衛隊法の改正も一向に進展しない。自民党支持が回復してきた、あるいは自衛隊の理解者・支持者が増えたと言いながらも、状況に即応して自衛隊が持てる能力を存分に発揮できるような法体制の整備にはなかなか進んでいかない。
 
 拉致に関して見るならば、国家の領土主権を侵害されただけでも許されない行為であり、これだけでも国際法的には強硬な手段に訴えてでも対処すべきものである。
 
 そのうえに、無辜の日本人が数百人も拉致され、人権が蹂躙されているわけである。被害家族に走り回らせる以前に、本来であるならば、国家主権の問題として政治家と国民が一致して立ち上がらなければならないだろう。
 
 日本の腰砕けを十分に承知している北朝鮮は、日本を愚弄し、被害家族に辛酸をなめさせ、「解決した」の一言で、知らぬ存ぜぬの頬かむりである。拉致問題が発覚した当初は北朝鮮の核もミサイルもまだ初歩的な段階で、脅威になるほどのものではなかった。
 
 その時点で、「北朝鮮の対応次第では攻め入ってでも取り戻すぞ」という意思を示し、そのための準備を整斉と進めたならば、今日見るように、あべこべに脅されるような事態は断じて起きなかったであろう。
 
 日本は、何重にも機会を逸してきた。考えようによっては今でも大いなる機会があるかもしれない。こうしたことを、被害者家族にだけ押し付けないで、政治は国民を動かし、救出に向かって事態の改善を進めなければならない。国家と国民あっての新聞であろうから、新聞はこうしたことをもっともっと啓蒙するべきではないだろうか。
 
 自衛隊はいま、防衛大臣の命令を受けて、状況によっては迎撃も厭わない態勢を取っている。北朝鮮は日本の首都を含む数カ所を攻撃の目標に列挙している。
 
 しかし、裏をかくのを得意とする北朝鮮の言動も考慮に入れ、休刊などしないで、配備についている部隊と隊員を激励し、また問題点を探求し、国民に真実を伝え続けることではないだろうか。
 

おわりに

 かつて米国にいた30年以上も前のことであるが、一斉休刊日が設定されていたようには記憶していない。ましてや、有力紙が同日一斉に休刊するなど、それこそ言論・出版の自由という基本に関わることでもあり、言論紙の自殺にも等しいことで、ありそうもない。
 
 そうした提案をする人や新聞社は言論統制あるいは抑圧の元凶ともみられ、大変な批判を受けるのではないだろうか。
 
 皆で渡れば怖くないという例え話に似て、あえて競争を避けて並んでゴールをさせた小学校の運動会と何ら変わらない。いや、言論を生業とし、他人の過ちはさんざん攻撃する所業からすると、許しがたい統一休刊日ではないだろうか。
 
 こうした非常時にこそ、自衛隊が抱えている問題点が表れる。記者の鋭い耳目で問いながら、国民に実態を知らせ、日本の安全を確たるものにすることこそ、喫緊の重要事であろう。
 

 北朝鮮が日本の一斉休刊日を察知して、諸条件を考慮してこの日に大きな行動に出たならば、日本の新聞界は総崩れになったかと思うと背筋が寒々としてくる。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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非常態勢時に「一斉休刊日」を設ける見識を問う
国家の存亡報道よりも社員の休養が大切か
朝鮮の挑発的な言動やミサイル発射とも思われる動きが続いている。期日の経過とともに、「宣伝戦」の様相を強くしてきたが、昨年末のミサイル発射や今年2月の核実験では、世界中が裏をかかれる状況であった。だからこそ、自衛隊は防衛大臣の破壊措置命令を受けて、PAC-3を首都圏中心に配備して緊張感をもって対応している。
 
 そうした中で、全国紙は4月14日、続いて5月9日、「明日の朝刊は休みます」の知らせを掲載し、一斉休刊した。本来ならば、「明日は休刊日の予定でしたが、非常時のため変更します」というのが、取るべき姿勢ではなかったのだろうか。
 
 日本を含めた周辺諸国の現状に鑑みるとき、この時期に一斉休刊日を設定することは、「非常時」を非常時と思わない異常神経がもたらした結果ではないだろうか。
 

チラシや景品で購読を増やす邪道

 俗に、景品とチラシが購読者を惹きつけるとも言われる時代であるが、言論を商売とする新聞にあっては恥ずべきことに違いない。ここはやはり、中身で読者を惹きつけてもらいたい。
 
 国内外の近間の情報は言うに及ばず、国家・国民のあるべき姿、向かうべき方向などにも歴史を参考に触れつつ、英知を傾けた新聞にしてほしいものである。そうすることによって、言論の力も見直されるだろうし、新聞が社会の木鐸と言われる本来の意義もあろう。
 
 今回のような状況下で、既定の一斉休刊日を墨守するという頑なな姿勢は情報を主体に扱う新聞社にふさわしいのであろうか。非常時には、たとえ「休刊日」と決まっていても、変更して「こと」が収まった後に改めて休刊日を設定するという自由度は持ち合わせていないのだろうか。変更できなかった理由が、確(しか)とあるに違いない。
 
 統一一斉休刊日でなく、各社ばらばらの休刊日設定であるならば、「こと」が起きた時の休刊新聞社は、情報の読みに疑問を呈されることもあろう。それこそが新聞社の能力でもあるのだろうから致し方がないが、こうした試練を通して、情報感覚が研ぎ澄まされ、国民の期待に沿う、また理に叶う正当な競争が行われるわけで、大いに推奨されることではないだろうか。
 
 自衛隊に破壊措置命令が出され、一部とはいえ部隊が実戦態勢で展開する非常事態とも称すべき状況下にある今、既定通りの一斉休刊日に固執する新聞社とは一体、どんな社是を掲げているのだろうか。国民の常識と著しく乖離していると言っても過言ではない。
 
 私は、某紙編集長に大要下記のようなメールを送信せずにおれなかった。
 14日の貴紙で「明日は休刊日」と平然と書かれているのを見て、開いた口が塞がらないと言うか、愕然としました。配達員や記者の安息日が必要なことは分かります。
 
 しかし、今回は北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候を見せており、しかも、以前のような事前通告もないため、自衛隊としては対処能力を有する数少ないイージス艦やPAC-3をどこに配備したらいいか苦慮していると聞きます。
 
 もちろん、自衛隊全体が緊張感をもって業務につき、また諸外国に派遣されている防衛駐在官は情報収集で駆け回っているはずです。場合によっては日本の某所で存亡にかかわる事態が起こるかも知れないときです。
 
 こういう時期に一斉休刊日を設けること自体を異常と貴紙は思われなかったのでしょうか。発射などが予測される期間(米韓演習が続く間とみられる)は一斉休刊日を設定しないという決心は御社でできなかったのでしょうか。
 
 また、(全国版)各社はなぜ同日に一斉休刊日を設けるのかという基本的な疑問がいつも付きまとっています。社会の木鐸と権威づけられる新聞であるからこそ、必要な時に必要な情報を流すことが大切です。
 
 御社はかつて中国に嫌がられようとも勇気をもって行動された実績をお持ちです。また安全保障に関する記事も豊富で、紙面を有効に使って読者が真に必要とする情報を提供される唯一の新聞社でもあります。だからこそ、掛け替えのない新聞であり、読者の1人、いや国民の1人として一斉休刊について再考をお願いしたいのです。
 

他業界は「カルテル」で吊るし上げ

 ゼネコンや鉄鋼会社などで少しでも疑わしい動きがあると、天が落ちて来るかのように「カルテル」だと言い募り、しばしば攻撃のキャンペーンを張る新聞である。ところが、自分たちの同日一斉休刊には一言たりとも言及しない。
 
 休刊は怪しからんと言っているのではなく、同じ日の休刊をやめて頂き、全国紙の少なくも1〜2紙くらいはいつでも読める方が情報提供企業として相応しいのではないかと思うからである。言論で言挙げする割には、同業者には甘い「同じ穴のムジナ」であるようだ。
 
 社会の木鐸を自認する新聞は、危機に際しては国民に示唆を与えることを使命とするはずである。産経新聞は、北朝鮮問題で万一の場合には「号外」を発行する態勢であったことを、「いつもと違う休刊日」(4月16日付)というタイトルの編集長記事を掲載した。良心が咎められた、苦悶の休刊日であったことが分かる。
 
 今回の一斉休刊日に「こと」は起きなかったが、万一起きておれば「号外」などで済むはずもなかったであろう。情報を生命とする新聞であり、普段は他人の過失を激しく責めたてる新聞であるがゆえに、危機が「そこ」にあるという今回のような場合、譴責されても仕方ないのではないだろうか。「こと」が起きなかったのは幸いであり、奇禍でしかなかったであろう。
 
 他社がどうであったか知る由もないが、普段から安全保障や自衛隊に関する記事を敬遠するような紙面編集をする社が多いことから、「いま」がどんな時かなど改めて考えることもなく、予定通りの一斉休刊日にしたのであろう。
 
 ましてや号外など考えてもみなかったのではないだろうか。あえてこのような言辞で挑発して、今回の一斉休刊日について真剣に考えてもらいたい。
 
 配達員や東奔西走する記者たちの休養を年間10日(あるいはもっと増やしてもいいだろう)にするくらいのことは、新聞各社が横並びで設定してもいいだろうが、一斉休刊日を一斉にする必要は毛頭ないと思うがいかがであろうか。
 
 夜討ち朝駆けでトピックスを追い求める競争社会であることからも、各社の情報力とそれに基づく国内外を見透かす判断力で、それぞれに休刊日を設定したらよいのではないか。


(2)へ続く
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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ボストンのテロから学ぶ自分と家族を守る方法
日常生活の中での一人ひとりの危機管理を
 
(1)からの続き
 

4 災害以外のリスク

 以下では、自然災害以外のさまざまの危機に直面したときに、現場の企業管理者などの立場で、自社と従業員の身を守るための一般的な心構えや対応について、箇条書きで述べる。
 
 あくまでも一般的な対応策であり、実際の行動は、そのときの状況に応じて、自ら判断しなければならない。
 
 またこれらの条項はチェックリストとして活用されるべきものである。ただし、単なる指針にすぎず、自分で追加し修正しなければならない。
 
 緊急用のチェックリストとして、索引をつけてマニュアル化し個々人に携帯させるか、ウェブサイトなどでいつでも見られるように家族や社内で公開しておくのが望ましい。
 
 また各組織の危機対応チームには、このようなチェックリストを絶えず更新し、実用的なものにしておく責任がある。
 
 日本国内でしばしば起こる地震、洪水などのチェックリストについては一般に広く公開されている。以下のチェックリストは主に、日本国内ではあまり見られない危機に関するものである。
 
 日本の企業の海外進出や日本人の海外旅行などの機会が増え、日本人もこのような海外ではよくある危機に巻き込まれる恐れが高まっている。このためここでは、海外で直面する恐れのあるさまざまの危機から、とっさのときに身を守るための具体的なチェックリストを示している。
 
 また、国内の危機対応にも適用できることは言うまでもない。
 
ア 突然の人身事故との遭遇
●一般の通りがかりの人の場合は、すぐに現場から遠ざかること
●ほかに死傷者がいないか確認すること
●すべての血や体液は感染の原因となることに注意すること
●被害者の体やその一部は、どうしても必要のある時以外、動かしてはならない
●遺体は覆い、見物人から見えないようにすること
 
●危険と思われる場所からすべての見物人を遠ざけること
●目撃者の名前、住所、電話番号を確認すること
●現場検証が終わるまで、いかなる証拠品も取り除いたり動かさないこと
●従業員などにぞっとする現場の清掃や後片づけをさせないこと、このような気のめいる作業は専門家に任せる
●血や体液のついた物はすべて漂白剤を10倍の水で薄めた溶液で洗うこと
 
●職場を閉鎖するかどうかを決定すること
●事故現場を目撃したかその跡を見た従業員に、心理的なケアを行うこと
●従業員に警察の取り調べに協力させること
●犯罪が予想される場合、警察の取り調べが終わるまで、事件について口外させないこと
●責められたり犯罪が疑われている人がいる場合、その人の心情に配慮すること
 
●安全性や事故の再発防止策について質問されることを予期すること
●葬儀、慰霊祭の出席者名簿、式の手順などの調整をすること
 
イ 航空機事故(自社のビジネスジェットなどが起こした場合も含む)
 
●どこの会社の機体か事故機の形状などから確認すること
●乗客名簿を入手すること
●死亡者と負傷者を確認すること
●死傷者の家族に関係者がいないか確認すること
●犠牲者が運び込まれた病院を確認すること
 
●入院治療患者の状況を把握すること
●関係者の家族がいれば、集まれる場所を確保すること
●家族を被害者や遺体に引き合わせること
●自社の機体の場合、犯罪やサボタージュの可能性を考えること
●自社の機体の場合、事故調査を受けることを予期すること
 
●自社の機体の場合、燃料漏れによる汚染問題が出ることを予期すること
●自社の要人が事故で死亡した場合、投資への影響を考慮すること
●自社の関係者遺族の事故現場などへの移動のための手配をすること
 
ウ 国外での暴動
 
●自国の大使館、危機管理アドバイザー、治安機関、政府機関などと、会社としての対応について調整すること
●すべての従業員とその家族に対して必要なことを説明すること
●たいていの場合は、扉を閉ざしてその陰に隠れているのがよい
●退避が決定された場合、建物から逃げるのか、国外に出るのか、その場合の退避先を確認する
●従業員とその家族と常に交信できるような連絡組織を作り機能させること
 
●通信手段が途絶する場合に備え、予備の手段を確保しておくこと
●緊急に避難する場合に備え、従業員やその家族のニーズを調整しておくこと
●大使館や治安機関と緊密に連絡を保ち、一般人向けの警告などを、漏れなく速やかに入手すること
●建物を退避するときには、建物の中に侵入されないように、扉を板で打ち付け、各部屋の入り口や窓を閉鎖すること
●従業員と家族の必要な常備薬を確認しておくこと
 
●いちど無人になった所に、一般の人や職場に戻った従業員が被る危険性について見積もること
●日本国内で犯罪を犯し国外に逃亡している者が紛れ込んだりしないよう注意すること
 
エ 爆発物(火災を含む)
 
●2度目の爆発の恐れのある建物や区域から人々を緊急避難させること
●爆発物が仕掛けられた疑いがある場合は、従業員を車やごみ箱その他の仕掛けられた恐れのあるものから遠ざけること
●遠隔センサーを使った爆発物が、間違って起爆しないように、トランシーバー、携帯電話、双方向ラジオ、その他の無線通信機などの、電子製品の電源を切るように全員に指示すること
●非常用出入り口と通路の障害物を除去すること
●爆発した建物のすべての扉を閉鎖し、燃え上がった建物に誰も入れないこと
 
●消防士に建物の内部配置図を渡すこと
●火災がテロ、放火その他の犯罪の疑いがある場合は、物を動かさず事故現場を保存すること
●事故が隣接居住地に及ぶ場合、所管の警察や消防署などに届けること
●消防が駆けつける前に、誰かに消火栓の位置を確認させること
●従業員全員の状況を確認するための連絡網を確保すること。また経営会議のために、翌日指定されたところにそれを報告させること
 
●火事が鎮火したら、電気、水、構造物の被害を確認するとともに、床の水による被害から守るために、価値のあるものは高いところに移すこと
●火災と有毒物質の影響について、専門家と話せるように準備すること
 
オ 誘拐
 
●誘拐保険と交渉専門家との契約の有無を確認し、あれば連絡を取る
●誘拐対処のための指揮センターを開き、その安全を確保すること
●電話記録装置を設置すること
●誘拐された人の家族に連絡すること、ただし間違って連絡しないこと
●誘拐された人の、常備薬とその投与の日付を含めた現在の病歴を確認すること
 
●起こったことはすべて記録すること、また記録をただちに始めること
●治安機関と連携しながら、誘拐の場所、使われた車、武器、犯人の特徴、犯人からの身代金の要求やコンタクトの有無などについての、目撃者の証言を確認すること
●他に誘拐の目標になる恐れのある者はいないかを確認すること
●他の会社の関係者も誘拐されていれば、その会社の対応チームと連絡を取ること
●被害者の写真を当局に届けること
 
●DNA鑑定のための頭髪を汚れないように容器に入れて準備すること
●被害者の血液型を確認すること
●治安当局と双方向の連絡手段を常に確保すること
●被害者の姓名、年齢、身体面と医療面の特徴、精神状態について当局や交渉人に情報提供すること
 
カ 銃撃
 
●事件が持続的な危険を及ぼすものかどうかを見極めること
●銃撃犯人の身体その他すべての目立った特徴を把握すること
●事件が起こっている間、緊急用電話をいつでもかけられるように、誰かにさせておくこと
●会社の要人を、死傷者の特定について支援するため、治安機関にすぐに派遣すること
●まだ隠れている従業員がいないか、建物や周辺地域を徹底的に探すこと
 
●治安機関当局がメディアにコメントを出す場合は、こちらの発するメッセージについて当局と調整すること
●治安機関の聞き取りのために目撃者を見つけ出すこと
●犯罪現場や武器を汚染から守ること
●必要に応じて、外部の清掃や修理を依頼すること、従業員に血の跡を清掃させたりしないこと
●また犯罪が起こる可能性のある時などは、入院中の犠牲者の身辺を警護するための警備員を手配すること
 
●入院中の犠牲者の居所を確認しておくこと、場合によって犠牲者は偽名を使うことを許されているかもしれない
●致命傷を負った従業員の仕事場の机などをどうするか決めること
 
キ 有害物質が空中に放出された場合
 
●空中に飛散した有害物質の安全性が確認されるまで、屋内で待機すること
●すべての窓や外部に通じる扉を閉じ、爆発の危険がある場合はブラインド、カーテンなども閉じること。開口部のまわりの隙間をテープで塞ぐこと
●建物内部の窓のない部屋に移動すること。化学物質が飛散した場合は地面より高い所が望ましい
●ラジオの機能を点検し非常用品を手元に置くこと。安全性が確認されるまで、ラジオとテレビの情報に注意すること。携帯電話は役立たない恐れがある
●避難が当局により命じられることがある
 
●仕事場の場合は仕事を止めて全員を屋内に入れ、部外向けの自動応対電話は業務が停止中とのメッセージに切り替える。外で仕事中の人に連絡を取り安否と所在を確認すること。上司は部下とお客の安全を守る責任がある。訪問中の部外者も含め、そのまま部屋に留まるように指示すること。すべての人の名前を書き出し、誰がいるかを必要なところに通報すること
●学校でも同様の屋内退避の措置を取るが、生徒には両親に携帯電話で連絡を取るのを許可し、先生がどこに退避しているかを校内放送で知らせること。扉や窓の閉鎖は校内放送などで徹底すること。水、食料などの非常用品の安全性に配慮すること。退避する屋内の部屋は収容スペースを確保すること。有線の電話が使用できれば望ましい
●車内にいた場合は、家庭や職場に近ければ急いでそこに退避すること。それができなければ道路の脇に車を寄せ、できるだけ安全なところに停車し窓を閉じること。エアコンの通気口も塞ぐ。熱を避けるため橋の下や影に車を止めるのが望ましい。ラジオの情報に注意すること
●一般に屋内退避は数時間で終わることが多く、酸欠などを心配する必要は少ない
 
 以上が主なチェックリストであるが、最終的にはそのときの危機の状況に応じて、個人個人で判断し行動しなければならない。ただし、ラジオなどで情報が得られる場合は、危機時の対応については各地域を管轄する自治体、消防署、警察などから指示が出されるので、その指示に従い行動するのが原則である。
 
 特に、管理職や危機管理に責任を持つ立場にある者は、従業員とその家族を危害から守り、無事に安全な環境にまで導く責任を負っている。また治安当局に協力し、地域や社会を2次被害から防ぐ責任もあることを忘れてはならない。
 
 本来、危機管理は個人の責任であるとともに、社会全体の責任でもある。しかし、日本では、これまで歴史的に平穏で安全な環境が保たれてきたこともあり、一般に危機意識が希薄で、国や企業の危機管理体制も不十分である。
 

 しかし、国際化時代にはいつでもどこでも危機が突発して、それに巻き込まれる恐れが高まっている。日本でも危機管理術を一人ひとりが身につけ、社会全体の危機管理能力を高める必要に迫られている。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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ボストンのテロから学ぶ自分と家族を守る方法
日常生活の中での一人ひとりの危機管理を
ストンでの爆破テロが発生し世界を驚かせた。幸い日本人の被害はなかったが、今年1月にはアルジェリアで人質拘束事件が起こり、日本人10人を含む多数の死者が出た。
 
 最近は世界的にテロ事件や銃撃事件が多発し、日本人が巻き込まれることも多い。また、PM2.5の飛散、化学工場の爆発、放射能漏れ、鳥インフルエンザウイルスなど、有害物質などの拡散が深刻な汚染を巻き起こすケースも増えている。
 
 これらの危機から、いざという時に自らと家族や従業員の安全をどのようにして守るかについて、一人ひとりが危機管理の具体的方法を知っておく必要がある。
 

1 どう自分の身を守るか

ア 無差別銃撃に巻き込まれた場合にどう身を守るか
 
 銃が厳しく規制されている日本では、銃犯罪は少ない。しかしそれでも、近年は国内に銃が密輸入され、ときどき銃撃が発生するなど、増加傾向にある。また国外で銃犯罪や銃を使ったテロ、暴動などに巻き込まれる危険性も増えている。ここでは、万一銃撃に巻き込まれ、狙われそうになった場合に身を守る方法について紹介する。
 
 人間は、平常の心理状態から、緊急時には別の心理状態になることが、心理学や生理学の研究により明らかになっている。
 
 一般に緊急時にはアドレナリンの分泌が高まり、脈拍が上がり汗をかき、瞳孔も拡張し、視野は狭く音は聞こえなくなり、時間経過が長く感じられるようになる。これらはすべて危機への対応力を向上させるための、人体の本能的な生理的変化である。
 
 しかしこのような状態でも、鼻から深く呼吸をして一度息を止め、静かに口から細く長く息を吐くという動作を数回繰り返すことにより、神経の興奮を鎮めて冷静さを取り戻すことができる。特に、吸った後一度息を止めることが大事である。
 
 そのようにして平静状態を取り戻せれば、通常の判断力も回復する。危機に直面したら、まず平常の心理状態を取り戻し、冷静に状況を判断することが、身を守るための第一条件である。
 
 平静さを回復したら、次には自らの身を守るための行動を取らねばならない。護身のために取るべき行動は、「避ける」「拒む」「防ぐ」という3段階である。
 
 最初に取るべき行動は、まず「避ける」ことである。いきなり銃撃などの緊急事態に巻き込まれたら、冷静さを保ち、逃げ口がないかをまず探して、そこから屋外などの安全な所に逃避せよということである。
 
 火災などでも同じだが、人々は近くの出口のみに殺到して、別の出口があることを忘れ、また探そうともしない。その出口をふさがれるとパニックに陥り、その場に凍りついてしまう。
 
 そうなると行動の自由を失い、銃撃、焼死などに追い込まれてしまう。パニックに巻き込まれず冷静に広くあたりを見回し、窓その他の逃げ口を探せ。そうして、安全な所に逃げることをまず試み、危険からすみやかに遠ざかれということである。
 
 次は「拒む」ことである。もし逃げられなければ、銃を持った犯人が自分に接近する経路は何かを予想し、その経路上に、何でもいいから障害物を置き、犯人の接近を拒否せよということである。
 
 自分がある部屋に逃げ込んだとしても、単に戸を閉めるだけではなく、鍵をかけ、内側から家具などで侵入を阻止するように何重にも防がねばならない。こうしておくと犯人は簡単には侵入できないことを知り、あきらめて他のより侵入容易な場所にいる目標を狙うことになる。
 
 それでもどうしても犯人に襲われた場合には、自から「防ぐ」ことが必要になる。どうしても犯人と直接対決することになった場合には、敢然と戦い自らを防衛しなければならない。
 
 その場合に最も大事なことは、銃を何らかの方法で奪うか無力化することである。銃を持つ手を押さえるか持ち上げて、銃口を逸らすか、銃を振り落とすことが最も効果的である。
 
 その場合には、手元のゴルフクラブ、バット、はさみ、その他何でも武器として利用できるものは利用すること。以上が護身のための3段階の行動である。
 
 最後に、仮に銃で撃たれたとしても瞬時に命を失うことは稀である。たとえ撃たれても、諦めずに最大限に「避ける」「拒む」「防ぐ」の実行に努めれば、生存できる確率は高くなる。
 
 実際の統計データーでも、そのことが立証されている。最後まで諦めずに対応行動を取ることが、生き延びるために最も大事な点である。
 
イ 近年の脅威度の高いテロの特色
 
 最近の諸外国でのテロはたいへん高度化している。その実態について、2008年にインドのムンバイで起こった同時多発テロなどから、次のような特色が挙げられる。
 
 脅威度の高いテロには、
 
(1)いくつかの小グループによる分散同時多発テロであること
(2)大量の弾薬、火器、爆薬、ロケット弾などを保有し重武装であること
(3)綿密な計画に基づき実行され、事前に訓練を行っていること
(4)統制指揮・通信組織が確立され、
(5)コンピューター、GPS、暗視装置などのハイテク装備を持っていること
 
 などの特色がある。
 
 今は世界的にどの国の軍も特殊部隊の強化に努めている。ウサマ・ビンラディン殺害でも米海軍特殊部隊が使われた。テロに対する戦いなどで、特殊部隊は柔軟に運用できるため、重要性が増している。
 
 日本周辺国も特殊部隊の増強に努めている。日本の場合は、脅威度の高い過激派のテロよりも、テロや犯罪を装った特殊部隊の破壊工作の方が起こる可能性が高い。一般国民も日本がそのような脅威にさらされていることを自覚しておくべきだろう。
 
 特に国外では日本人や日本企業も、このような脅威度の高いテロに巻き込まれる可能性がないとは言えない。最近の特色を踏まえて、海外での警護や企業の警備態勢を見直すことも必要だろう。
 
ウ 日本の国家としての在外邦人保護態勢の不備
 
 外国の場合は一般に、ある国が内乱、騒擾状態になり自国の民間人がその国にとどまるのが危険になれば、緊急時には軍が危険を犯して救出し、自国まで警護しながら連れ帰ってくれるようになっている。
 
 1985年のイラン・イラク戦争時に、イラクのフセイン大統領がテヘランの空爆に先立ち、イラン上空を飛ぶ航空機はすべて撃ち落とすとの警告を発した。そこで各国は軍用機や民間航空機を使い脱出し始めた。
 
 しかし日本人の脱出支援は、当時の自衛隊には権限がなく、日航のチャーター機派遣も組合の反対と準備不足で利用できず、やむを得ずトルコ航空に依頼したということがある。
 
 今では自衛隊には「在外邦人等の輸送」の権限は与えられている。ただし、戦闘下や戦闘状態になるおそれのある危険地域の日本国民を救出したり警護する権限は今でもない。また自衛隊は、隊員と邦人などの生命と身体を防護するため必要最小限の武器の使用が認められているだけである。今でも、脅威を排除して救出するために必要な武力の行使はできない。
 
 在外邦人はまず自力で、安全が確保された後方の地域まで逃げてきて、指定の空港などにたどり着かなければならない。無事到着できれば、待ち受けた自衛隊が輸送機などで運んでくれる可能性が出てくる。
 
 このように、日本は国として危機管理態勢が不備である。このため、国外で万一のことがあれば、在留邦人は国の保護は受けられない場合が多いことを覚悟して行動する必要があるだろう。
 
 そのように自衛隊の権限を縛り、同胞を危険にさらしているのは、日本人自身の政治的選択の結果である。日本人自身がその理不尽さに気づき、自力で法令を改めない限り、危機になればいずれ犠牲者が出ることになるだろう。
 

2 組織の危機管理の共通原則に基づく行動計画

 個人の危機管理の考え方も組織と基本は同じである。
 
 東日本大震災では、帰宅困難者が東京都下だけでも約10万人に上った。その一人ひとりは、まず家までの距離や時間、人や交通の流れ、宿泊施設の状況などを確認しなければならない。
 
 次に、今日は歩いてでも家まで帰るのか、帰るとすればどのような手段でどのルートを使い帰るのか、帰らずに泊まるとすれば、どこでどのようにして泊まるのかといった、自分の行動方針を列挙し、それぞれの利害得失を分析比較して、どの方針を取るか判断したことだろう。
 
 このように、状況を確認したうえで、自分の行動方針を挙げて、その利害を分析比較して、行動方針を決定するという、一連の流れが個人レベルでも求められる。
 
 判断を間違うと、歩いて帰る途中で疲れてしまい、泊まることもできず立ち往生することになるが、日ごろからそのようなことを予想して、帰宅経路を確認したり、宿泊の準備をしていれば、立ち往生しなくても済むことになる。
 
 さらに行動方針が決まれば、靴を履き替えたり水を買うなどして準備し、決めた経路を歩き出すという行動に移る。個人では計画まで細部を詰めることは稀だが、山登りをする人は、綿密な計画を立てるはずだ。
 
 危険を伴う場合には、予備計画を含めた綿密な計画を立ててから、しっかり準備して行動に移らなければならない。
 
 家族の避難についても、何を持って出て、どのようなルートでどこに逃げるかは、最低限全員に徹底しておくべきだろう。
 
 また両親が不在の時に子供たちにどのような行動をすればよいかを、教えておかねばならない。特に緊急時の連絡の確保と安否確認はどのような場合にもまず必要になる。
 
 携帯電話は使えなくなることが多いので、公衆電話の使い方などほかの連絡手段の取り方を教えておいた方がよいだろう。
 
 一般的なさまざまの危機に直面した時の身の守り方は、特に自然災害に襲われたときの対応のしかたは、自治体や消防関係のパンフレットなどでよく紹介されているので、ここでは触れない。
 

 せっかくのこれらの貴重な情報に日ごろから目を通し、必要な対応行動を知っておくことが、いざというときに自分自身を守ることにつながる。「備えあれば憂いなし」は一人ひとりの身の安全についても言えることである。

 

3 訓練の実施

 個人でも家庭でも、いざという時にどのようにして指定されたところに早く集まるかが、訓練の中でも一番基本になる。
 
 津波の場合は、津波に飲み込まれる前に、一目散で避難場所に逃げのびなければ、生き延びることもできない。
 
 家族や職場の仲間がいるところ、避難所などにたどり着けば、安否も確認でき、最小限の生存のため必要な水、食料、寝る場所なども確保されていることが多い。万一危機に直面しても、お互いに助け合うことができる。
 
 1人では人間は弱い。発災直後の救命、救出活動でも、3日を過ぎると生存者が助け出される確率は急速に低下していく。
 
 救命、救出は3日間が勝負である。その間に、被災者は何とかして家族の元か避難所にたどり着くことを行動の目標にしなければならない。
 
 不幸にして身動きが取れない状態にある場合は、逆に体力を温存し、生き延びることを第一に行動する必要がある。特に寒さと渇きは生命の危機を招く。
 
 そのような場合は、体力を無駄に消耗しないことが大切だ。水を確保し、保温することができれば、1週間程度は食料がなくても生き延びることも不可能ではない。
 
 訓練でも、そのようなさまざまの危機に直面した場合に、生き延びるためのノウハウを教えておくことが大切である。

(2)へ続く
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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