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サイバー空間で激突する国家の利害
21世紀型「覇権主義」がネット上で台頭
2010.06.30(Wed)
国際政治の中心地、米国ワシントンDC。アメリカ歴史博物館、自然史博物館をはじめ多くの博物館が並び立ち、世界中から観光客が押し寄せている。その1つが、ニュースとジャーナリズムをテーマとする博物館「ニュージアム」(Newseum)である。
2010年1月、この博物館を舞台に選んだクリントン国務長官は「インターネットの自由」と題する重要な講演を行った。
「昨年1年間にも、情報の自由な流通に対する脅威があった」と前置きした上で、インターネットに対する検閲や規制強化を行っている国として中国、チュニジア、ウズベキスタンを名指しで批判したのだ。
そして、1941年にルーズベルト大統領が提唱した4つの自由、すなわち「表現の自由」「信教の自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」はインターネット上でも基本的人権として確保されるべきだ。――こう高らかにうたい上げた。
さらにこの4つの自由を実現するには、「接続する自由」が不可欠と指摘。その上で、公権力によるインターネットへの介入を防ぎ、世界の誰もがインターネットを民主的社会の構築に役立て、個人の生活を豊かなものにする権利を持てるようにすべきだと訴えた。
グーグル中国本土撤退の衝撃、米中関係が一気に緊迫化 時計の針を少し戻してみよう。
4年前、グーグルは中国本土で検索サービスを本格的に開始した。その際に当局の要請を受けて、部分的に情報を非開示にする措置を受け入れた。
具体的には、中国の法令に従い「天安門事件」など一部のキーワードで検索結果を表示しない「自主検閲」を実施した。こうしたグーグルの態度は当時、米国内でも連邦議会などから厳しい批判を浴びていた。しかしながら、グーグルは「(中国)市民の情報アクセスを高めることが必要」と判断し、中国本土での事業開始に踏み切った。
その後、事態は急展開する。2009年12月にグーグルは中国を発信元とする高度なサイバー攻撃の標的とされ、2010年1月には知的財産を盗まれたと公表した。しかもその後の調査によると、この攻撃にはセキュリティーを破る以上の意図、具体的には中国人権活動家のメール情報の取得が目的だったことが判明した。
冒頭で紹介した「クリントン演説」はまさにこのグーグルの発表を受け、米政府はネット検閲などインターネットの自由を脅かす行為は看過できないと警告を発するもの。同時に、インターネットの自由と民主化を米政府が強力に推進する意思を明確にしたのだ。
これに対し、中国政府も素早い反応を示した。3月中旬に開催された全国人民代表大会(全人代)で中国最高人民検察院(最高検)の曹建明検察長は、インターネットを使って国家の安全を脅かす「犯罪」を厳しく取り締まる方針を表明した。
結局、グーグルは3月下旬、検索サービスの拠点を中国本土から香港に移行。「一国二制度」を取る中国でグーグルは本土での検索サービスから撤退し、「Google.cn」にアクセスしようとすると香港版の「Google.hk」に転送される仕組みに変更した。中国からの「完全撤退」を回避するための苦渋の決断と言えるだろう。
こうしたグーグルの措置に対し、中国国務院新聞弁公室は「グーグルの道理のない非難とやり方に不満と怒りを表明する」との声明を発表し、グーグルを厳しく批判。サイバー空間をめぐる米中緊張が一気に高まった。米政府は中国におけるネット検閲をWTO(世界貿易機関)へ提訴する可能性も含めて対抗策を検討し始めた。
各国で活躍する「法輪功」ソフト、イランの民主化運動を支えるツイッター 「言論の自由」の擁護を目的とするジャーナリストの組織がパリにある。
この1985年に設立された「国境なき記者団」が2010年3月に発表した「世界報道自由度ランキング」によると、175の国・地域のうち12カ国でネット上の検閲や言論統制が深刻な問題となっている。
それは、ミャンマー、中国、キューバ、エジプト、イラン、北朝鮮、サウジアラビア、シリア、チュニジア、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム――の各国である。また、世界約60カ国で何らかのネット検閲が行われているという。
先のクリントン演説では「インターネットの自由」を確立するため、米政府が必要なツールや資金を各国の民主化活動家団体などに提供する方針も表明されている。そして既にオバマ政権は動き始めているもようだ。
朝日新聞の「メディア激変」(2010年6月17日付)など複数のメディアが伝えるところによると、在米の中国人科学者によって創設された「グローバル・インターネット・フリーダム・コンソーシアム(GIFC)」に対して、米政府は5月に150万ドルの資金提供を決定した。
ところで、中国政府による非合法気功集団「法輪功」への圧力に対抗するため、GIFCは政府のネット閉鎖を突破するソフトウエア「フリーゲート」や「ウルトラサーフ」を配布しながら、中国の国外に活動の範囲を広げている。
例えば、2007年のミャンマーの僧侶らによる抗議デモや2008年のチベット暴動では、GICFのソフトが大いに活躍している。2009年のイラン大統領選の際には、フリーゲートを使ってイラン国内から海外のインターネットにアクセスした上で、ツイッターを通じて国内の動静を国際社会に伝える動きが活発化した。
以来、ツイッターはイラン国内の民主化運動を支える強力な武器となる。2009年6月、ツイッター社は「現在政治的混乱にあるイランの利用者にとって重要なコミュニケーションツールになっている」として、予定していたメンテナンスのためのサービス休止時間をイラン国内で利用が少ない時間帯に変更し、民主化運動を支援する姿勢を示した。
サイバー攻撃で国家活動の停止も、「情報安全保障」が緊急課題に 21世紀型の安全保障は、「陸、海、空」といった物理的な領土をいかに守り、国家主権を維持するかという従来のアプローチを大きく超えつつある。
サイバー攻撃などがグローバルな規模で発生すれば、インターネットに依存する社会経済システムは麻痺し、その国の活動が停止する事態さえ決して非現実的な話ではない。サイバー空間の安全保障、つまり「情報安全保障」は各国が直面する緊急課題であり、国際協調によって取り組んでいく必要がある。
他方、インターネットの普及で国際分業が一段と加速している。公権力による介入のない「接続する自由」を通じてインターネット接続さえ確保できていれば、経営資源をグローバルに分散させて多様な製品やサービス群を生み出すことができる。
このため、米政府が標榜する「インターネットの自由」とは、米国企業の生産資源グローバルポートフォリオの分散を実現し、国としてより大きな付加価値を創造するための戦略だという穿った見方もある。
また、米国には「愛国者法」という名の法律がある。2001年9月11日の同時テロを教訓に、テロリズムと戦うことを目的として事件からわずか45日で成立した。
その中には、テロ対策のためなら連邦捜査局(FBI)が令状なしで電話や電子メールの記録を捜査に利用することも認められている。このため、「米国もネット検閲を行っているではないか」という批判は国内外で少なくない。
インターネット管理の主導権を手放さない米国 「インターネット発祥の地」という歴史的な経緯から、世界中のインターネットの運用(インターネットガバナンス)は米国政府が主導してきた。
しかし2009年9月、インターネットの運用を担う民間の国際組織であるICANNは、従来の米国政府との契約に基づくインターネット管理を緩め、各国政府などによる「国際的な集団管理体制」に移行した。これは、国際電気通信連合(ITU)などの国際機関で途上国を中心に「米国主導」を是正するよう求める声が高まってきたからだ。
とはいえ、米政府は既に次の一手を打っている。
インターネット上で通信を実現するためには、電話における電話番号のような仕組み、つまりIPアドレスを管理する「ルートサーバー」が必要になる。
そして、インターネットガバナンスが「国際的な集団管理体制」に移行しても、このルートサーバーの情報を変更、つまり通信コントロールの核となる部分の変更には引き続き米商務省の承認が必要なのだ。
民主主義の貫徹という高邁な理想を掲げる米国。「インターネットの自由」という目標を世界に打ち出し、ネット検閲などを行う国々での民主主義の確立も目指している。
他方、こうした取り組みの裏側には「サイバー空間こそが新たな覇権主義の場になる」という冷徹な判断も働いている。換言すれば、国家安全保障の観点から「インターネットの自由」を積極的に確立していこうと米国は決意しているのだ。
サイバー空間が国家対立の主戦場にグーグルのシュミットCEOも世界経済フォーラム(WEF)に出席〔AFPBB News〕
近刊『グーグル秘録』(ケン・オーレッタ著、文藝春秋)では、著者が経験した興味深いエピソードが紹介されている。
スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の場で、欧米の論客がインターネットの自由がもたらす民主的価値観を称賛し、個人に多くの自由をもたらすと主張した。これに対し、シンガポールやイランの出席者が「個人よりコミュニティーを尊重するのが価値観だ」と反論したというのだ。両者の間に存在する溝は想像以上に深い。
サイバー空間における21世紀型の覇権主義――。政治体制や価値観の異なる国家対国家の利害衝突が、国境の存在しないインターネット上で増殖し始めている。
今や中国のインターネット人口は3億8400万人に達し、米国の2億3400万人を大きく上回る(2009年時点、ITU統計)。「自律・分散・協調」を基本精神として米国主導で運営されてきたインターネットは、今や大きな曲がり角を迎えた。
中国をはじめ新興国が飛躍的な発展を遂げ、世界経済の成長を牽引する「機関車」として役割が増大している。国際的な経済システムが一体化・共通化する裏側で、政治システムや価値観の違いは鮮明になり、サイバー空間がその主戦場になり始めている。
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国際情勢
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本日は、軍事事故ネタ3連発をお送りします。
第1弾は、MiG-21墜落事件。 まずは、怪しいオープニングテーマをご覧下さい!↓
中国政府、ミグ−21墜落原因を公式発表…「北が謝罪」
中国遼寧省撫順県で墜落した北朝鮮ミグ21戦闘機は、機体が解体され、19日、付近の瀋陽軍区所属の空軍基地に移されたことが伝えられた。 疑惑強まるミグ機墜落原因
北朝鮮と中国が北朝鮮の戦闘機が中国で墜落した原因を急いで調査・発表したが、疑問が増幅している。脱北を図った北朝鮮操縦士が防空網を突き抜けて中国領空を200キロも進入した衝撃的な事件の真相を隠すため、急いで事態を処理しようとしたのではなかという疑惑も出ている。 中○日報より引用
※注意 韓国の報道は、内容的に多数の副作用が認められますので、使用上の用法要領を十分に注意の上、計画的にお使い下さい。
最後にMig-21って、何ですか?と言う方の為に下の動画をどうぞ!↓
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本日の デイリー「天安」は、別冊「後の祭り」シリーズをお送りします。
韓国の聯合ニュースは17日、北朝鮮が旧ソ連製のT62戦車を改良してつくった新型戦車「爆風号」の映像が初めて確認されたと報じた。今年3月に朝鮮中央テレビで流されていたことが分析で分かった。韓国の情報当局関係者の話として伝えた。 産経新聞ニュースより引用。
新型の主砲・機関銃を搭載、以前に比べ大幅に向上した命中率
北朝鮮は最近、これまでその存在がはっきり確認されていなかった最新型戦車「暴風号」を初めてメディアに公開し、韓国の情報当局が細かい分析作業を進めていることが分かった。 朝○日報より引用
北朝鮮が最近、旧ソ連製T−62戦車を改良して生産した「暴風号」戦車を初めて公開した。 中○日報より引用
≪旧ソ連製を改良≫
北朝鮮が先ごろ、旧ソ連製戦車「T−62」を改良して生産した新型戦車「暴風号」を初めて公開した。
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金正日の死去間近? 大混乱必至の朝鮮半島
長男・金正男を立て改革開放路線へ舵切らせたい中国
2010.07.26(Mon)
(2)からの続き
7. 金正日が統治能力を喪失し、内部崩壊した場合の米・中・韓の対応(1)韓国
韓国にとっては千載一遇の統一のチャンスではあるが、統一を実行する決意・力量があるのかどうか疑わしい。統一は「北と心中」しかねないほどの経済的負荷・リスク(数百兆円規模)を背負い込むことになる。
もし、韓国があえて南北統一を決意した場合は、南北の「親分筋」に当たる米・中・ロの説得が不可欠だ。米国を説得するとともに、裏チャネルで中国・ロシアとも外交取引をせざるを得ないだろう。
外交取引の焦点は、韓国主導で統一した場合に失われる中国・ロシアの権益をいかに保証するか、であろう。
韓国の譲歩策の一例としては、「統一朝鮮(仮称)」から米軍の駐留を排除することなどが考えられる。また、中ロを刺激しないためには、米国と一定の「間合」を保つことも重要だ。
米韓連合作戦計画「OPLAN:5028作戦計画(偶発自体計画)」や「5029計画(内部崩壊対応計画)」を発動し「北進」することを、中国は決して容認しないだろう。
(写真は爆弾テロが相次ぐバクダッド)〔AFPBB News〕
(2)米国
当面、イラク、イラン、アフガンや対テロ戦争で手一杯で、朝鮮半島での動乱は極力回避し受動的対応をするだろう。北が内部崩壊した場合、米国は「現状維持」「現在の権益確保」を目標とするだろう。
この際、最も重視するのは、台頭する中国との間の北東アジアにおける戦略態勢である。日本、台湾も含み北東アジアにおける米中の戦略態勢を変えないこと――これが基本目標になるだろう。
従って、米国は非武装地帯(DMZ)以北に進出しない代わりに、中国も中朝国境を越えないという合意を追求するものと思われる。
北が内部崩壊した場合は、以上のような立場で、直ちに北京とワシントン(G2)で韓国の頭越しに事態収拾の枠組みの確立を急ぐだろう。
最悪のシナリオとして、中国の介入があれば米国もやむを得ず北進し、米中対決――第2次朝鮮戦争――に発展するリスクもゼロとは言えない。
動乱の中での「核拡散」防止(北の核が国際テロ組織のみならず韓国の手に渡ることも絶対阻止)の目的で、沖縄の海兵隊などを空中機動(ヘリ、落下傘)により寧辺(ヨンビョン)などの核関連施設に投入し、所要の作戦を実施するはずである。
(3)中国
現下の経済発展を損なう朝鮮半島有事は絶対に許容できないというのが、基本スタンスだろう。北が内部崩壊した場合、米国と同様中国も一応「現状維持」「現在の権益確保」を目標とするだろう。
ただ、冷戦時代と違い経済・軍事力の発展著しい中国は、米国よりも野心的で、「現状維持」「現在の権益確保」は最下限の目標であり、努めて有利な朝鮮半島支配体制構築を目論むものと思われる。
北が内部崩壊した場合、中国も米国との「阿吽(あうん)の呼吸」では、直ちに北京とワシントン(G2)間で韓国及び内部崩壊した北の頭越しに、事態収拾の枠組みの確立を急ぐはずである。
中国はこれまでの経済発展・軍拡により、米国に比べ過去の朝鮮戦争当時よりは相対的にはるかに優位な立場にあり、事態収拾に当たっては中国が主導権を握る可能性が大きいものと思われる。
中国は韓国による吸収統一は許さず、中国が後ろ盾となる新たな北朝鮮政権の樹立を目指すだろう。その際の眼目は、中国と同様に改革解放路線を実行する政権・体制の樹立である。
改革開放政策を実行するための北の新政権は、中国同様に集団指導体制が望ましいが、既に述べた理由で中国が庇護してきた金正日の長男・正男が選択肢の1つになると思われる。
8. 6者協議を利用したソフトランディングの模索韓国メディアが報じた北朝鮮の新たな地下核実験場(2009年)〔AFPBB News〕
「ポスト金正日」への平和的・円滑な移行は、米中ロや日韓はもとより、世界規模で見ても重要な課題である。
その実行に向けては米中が中心的役割を果たすだろうが、米中2カ国だけではバランス不足である。
そこで、北朝鮮の核開発問題解決のための協議機関である6者協議を、国際的な「ポスト金正日」への平和的・円滑な移行に向けた調整の枠組みとして活用する方策が考えられる。
この際、北の面子を潰さないように本来の核開発問題解決の姿勢を装いながら、北を除外し隠密に準備し、「カウントダウン」以降本格的に取り組むものとする。もちろん、米・中・ロ・韓・日の5者に加え国連が関与するのは当然のことである。
9. 結び 朝鮮半島で「今、そこにある危機」は北朝鮮の核問題だけではない。それどころか、金正日の健康の急速な衰えを勘案すれば、核問題の解決よりも金正日の健康悪化に伴う混乱への対応こそが焦眉の急ではあるまいか。
金正日の天命は神のみぞ知るところだが、米国や韓国などの情報によれば、余命はそれほど長くはないというのが一般的見方だ。
金正日のように唯一人の命が、北朝鮮のみならず米・中・ロ・韓・日を巻き込むカタストロフィの引き金になる例は希だ。だが「その時」は刻々と迫っている。
政局が混迷する日本では、ともすれば内政のみに目を奪われがちだが、一衣帯水の朝鮮半島におけるカタストロフィは我が国にとって耐え難いインパクトをもたらすことを肝に銘じなければならない。
そのうえで、日本のみで成し得る安全保障上の措置と日米、6カ国、国連などを通じた国際協力により、朝鮮半島のカタストロフィを最小限に押さえ込む努力が肝要だ。
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金正日の死去間近? 大混乱必至の朝鮮半島
長男・金正男を立て改革開放路線へ舵切らせたい中国
2010.07.26(Mon)
(1)からの続き
4. 冷戦後の北東アジアの戦略環境の変化と朝鮮半島の意義・価値(1)太平洋・アジアが米中の覇権争いの唯一の戦域――冷戦時代の2正面から1正面に
冷戦時代、米ソ両国の戦いの場(戦域)は「大西洋・ヨーロッパ」と、「太平洋・アジア」の2正面が存在し、「メーン」は明らかに「大西洋・ヨーロッパ」で、「太平洋・アジア」はあくまでも「サブ」だった。
ところが今日、米中対立の構図において2つの戦域は存在せず、唯一「太平洋・アジア」戦域だけになった。
ちなみに、米中にとって唯一の戦域「太平洋・アジア」の中でも、その勝敗の帰趨を分ける「要石(KEY STONE)」が日本である。
また冷戦時代、米国は「大西洋・ヨーロッパ」戦域において15カ国からなる北大西洋条約機構(NATO)の支援を受けたが、今日「太平洋・アジア」戦域で戦略的な支援を期待できる国は日本をおいてほかにない。
(2)米国の凋落と中国の台頭
米国は今後「ジリ貧」になり、もはや世界の警察官の任を負えなくなる時代が来るのではないかという懸念がある。この懸念は歴史的な前例に基づくものだ。
ベトナム戦争では時価換算で65兆円の金を使い、これにより米主導のブレトンウッズ体制が壊れ、金本位制と固定相場制を放棄した。さらには、ニクソン・ドクトリンが打ち出され、「自分の国は自分で守れ」――と、同盟国を突き放すことになった。
この事例を下敷きにして米国の将来を考えてみよう。アフガン・イラクでは既に95兆円の戦費を使い、年内にも100兆円に迫るだろう。アフガン・イラク戦費に加え、リーマン・ショックという経済的ダメージを受けた米国がジリ貧状態から抜け出せる確証はない。
米国防省も経済の先行きを悲観しているようだ。今年2月に公表された米国のQDR(4年に1度の米国の戦略報告書)を丹念に読めば、同報告書は「衰退戦略」を描いているとしか思えない。
米国経済が衰退の道を辿れば、現状のように九十数兆円以上もの軍事費を投入することはあり得ず、いずれ国防予算に大鉈を振るわなければ立ち行かなくなるものと思う。米国が今後国防費を大幅削減する場合、同盟国の日本に過剰な期待をするのは自明の理と言うべきだろう。
いずれにせよ日本・朝鮮半島を含む北東アジアは、「昇る中国」と「沈む米国」の狭間にあることは間違いない事実である。定かでないのは、その速度だけではないだろうか。下図のように、今後米中のパワーの均衡点は東進することになるだろう。
(3)朝鮮半島は今や最も敏感な「世界の火薬庫」
冷戦時代は、米ソにとっては2つの戦域「大西洋・ヨーロッパ」と「太平洋・アジア」が存在し、米ソの「発火点」になる可能性がある地域は東西ドイツ、中東、朝鮮半島、台湾であった。
冷戦以降は東西ドイツと中東が「世界の火薬庫」になるリスクは大幅に低下した。今日、米中対決の引き金になる可能性がある地域は朝鮮半島と台湾である。
金正日の健康・世襲問題、核ミサイル開発問題及び経済破綻などを考えれば、朝鮮半島は台湾に比べはるかに不安定で、米中対決の引き金――「世界の火薬庫」――になる可能性が高い地域になった。
5. 天安撃沈事件に対する米・中・韓の対応を検証する(現在の司令官はロバート・F・ウィラード海軍大将)〔AFPBB News〕
(1)地政学の証明
事件発生後、米中がいち早く事件に介入したことは、朝鮮半島の地政学を如実に裏づけるものだと思う。朝鮮半島の地政学の通り、米国は韓国の、中国は北朝鮮の後ろ盾となり、事件の解決・沈静化に積極的に動いた。
(2)米中(G2)による北東アジア地域のコントロール
2007年8月17日付ワシントン・タイムズ紙が、中国海軍高官が米太平洋軍のティモシー・キーティング総司令官に対して「太平洋を東西に分割して管理しないか」と持ちかけたというニュースが話題になった。
天安撃沈事件の処理においては、上記の記事で話題になった米中(G2)による「仕切り」が顕著だった。今後朝鮮半島で生起する事件は、米国と中国が主導権を握り解決していくという「道筋」がつけられたのではないだろうか。
今後は、「北朝鮮は中国がコントロールし、日本・韓国・台湾は米国が押さえる」という枠組みが一層鮮明になるかもしれない。まるで山口組と稲川会が縄張りを仕切るように。
(3)中国の影響力の拡大
急速な経済成長を背景に、中国の軍事力の台頭は著しい。一方、米国はイラクとアフガニスタンにおける戦いで手一杯の状態だ。このような背景から、国連の安保理を舞台とした天安撃沈事件の処理においては、中国がイニシアチブを取った感がある。
安保理における攻防の結果は、政治的意味合いが劣る「議長声明」にトーンダウンしたのみならず、北朝鮮を名指しで批判しない内容に留まった。中国が力量を見せつけた格好だ。
6. 金正日後継問題の行方〜正男かジョンウンか メディアなどは三男のジョンウンが後継者に決定したかのように報じている。一方、長男の金正男は既に後継レースから外れていると言われ、金正日の異母弟・平一同様“国際的放浪者”になるとの見方もある。果たしてそうだろうか。
私は、金正男の後継の可能性に注目している。正男を担ぐのは中国だ。中国は、金正日には手を焼いた。金正日は改革開放路線の受け入れを拒み、核ミサイル開発を促進し、瀬戸際外交に走った。
中国にしてみれば許し難い専横であり、我慢の限界ではなかろうか。中国の経済発展をぶち壊しかねない金正日には懲りたはずだ。
このような理由で、中国は北の政権の「端境期」を絶好のチャンスと捉え、改革解放路線受け入れに誘導することを最大の目標にするものと思われる。
北朝鮮に路線変更を迫るためには、金正日の後継問題に関与(内政干渉)し、改革解放を実行できる人物・体制に替える必要がある。世襲にこだわる金正日に対して中国は、長男の金正男の後継を強く主張するものと見ている。
正男は中国の庇護の下、長期間滞在し改革解放の現場で学び、中国要路との太いパイプを構築した。正男こそが、北朝鮮に路線変更させ得る唯一の後継者に違いない。
金正男を後継者に据えることができれば、中国は金日成・正日父子時代に比べ、はるかに北朝鮮をコントロールできる立場に立つことができる。
今回の天安撃沈事件で、中国が国際世論に逆らってまで北朝鮮を庇護したのは、後に後継人事に介入するために“貸しをつくった”可能性がある。
ただ、変幻自在な中国は、三男・ジョンウンの世襲を条件付きで認めることも可能だ。その条件とは、金正日が「北朝鮮は後継者・ジョンウンの下で改革解放路線を実行する」との誓約をすること。もしも違約する場合はあらゆる支援を遮断するというペナルティ条項も加わるだろう。
北朝鮮は国際約束を平気で破る。「改革解放路線を実行する」との誓約も、むなしく反古になる可能性がないとは言えない。その時は中国が許さないだろう。経済支援の完全遮断というペナルティのほかに軍事的圧力さえも加えるはずである。
北朝鮮は「逃げ道」として、ロシアの援助や米国との国交樹立を模索する可能性がある。中国は北朝鮮の「退路を断つ」ために、米国やロシアはもとより、韓国、日本にも北朝鮮の逃げ道を塞ぐための外交工作を行うだろう。
いずれにせよ、中国は今度の北朝鮮の世代交代・後継の機会を利用して何が何でも「北朝鮮を改革開放路線に追い込む」という強い決意をしているに違いない。
金正日が後継者の後見を託すうえで一番頼りになる人物は、血を分けた妹の金敬姫(キム・キョンヒ)とその夫の張成沢(チャン・ソンテク、国防委員会副委員長)である。
金正日は“内妻”の成恵琳(ソン・ヘリム)亡き後、その遺児の正男を金敬姫(子供がいない)に預けたことがある。張夫妻は正男に今も我が子のような情を持っているに違いない。そこに中国がつけ入る隙があるのではないかと思う。
東洋の諺に「雌鳥(めんどり)が鳴けば家が滅ぶ」という諺がある。今権勢を誇る雌鳥の金敬姫も、兄の金正日亡き後は後ろ盾がなくなる。しかし金敬姫はそのことに気づかず、「兄」が生きていた時と同じように虚勢を張って自己主張する。
それが北朝鮮動乱の大きな「変数」になる可能性がある。
後継問題をトリガーとして北朝鮮の内乱に発展するシナリオとしては、以下のようなものがあろう。
シナリオ1:金敬姫・張成沢と軍部の対立
シナリオ2:軍部内の対立 シナリオ3:金敬姫と張成沢の夫婦喧嘩
シナリオ4:中国の介入による金正男の擁立 |



