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旱魃が恒常化する中国、穀物倉庫は大丈夫か
農政に失敗した王朝は滅亡へ〜中国株式会社の研究(154)
最近トウモロコシと大豆のシカゴ先物価格が急騰している。「風吹けば桶屋が儲かる」とは因果関係を無理やりこじつける空虚な理論の例えだが、今回の価格上昇には中国も関係があるらしい。「中国で旱魃あればCBT(シカゴ商品取引所)が儲かる」という話は本当なのか。今回は中国農業を取り上げたい。
穀物先物価格の高騰
3月13日、トウモロコシのシカゴ先物はブッシェル当り6.58ドルとなり6カ月ぶりの高値をつけたそうだ。大豆も過去3カ月上昇を続け、ブッシェル当たり13.44ドルの最高値となった。
中国がトウモロコシと大豆の輸入を増やす理由は豚の増産である。今年の中国の豚肉生産は前年度比4.2%増の5160万トンとなる見込みだ。
過去数週間、豚の飼料となるトウモロコシと大豆の中国での在庫が減少していることを受け、市場は再び中国の輸入増を予測したのだそうだ。
筆者は先物市場の専門家ではない。そもそも、この博打のようなマーケットが「読める」なら、外交評論などやっていない。しかし、中国が豚肉増産を急ぐ理由が国内の物価対策であることぐらいは想像がつく。
豚肉の最大生産国・中国の穀物輸入急増による価格の急騰は、インフレ懸念が高まった昨年夏から続いている現象なのだ。
中国の穀倉地帯
チョッと待った。トウモロコシや大豆と言えば、中国も世界有数の生産国ではないか。中国政府は穀物自給率100%を誇っていたはずだ。どうして輸入が急増するのか。
筆者はその理由の1つが、中国東北三省(旧満州地域)で最近頻発する旱魃とそれに伴う水資源の減少・劣化ではないかと考えている。
早速「中国 旱魃」「China drought」でネット検索してみた。中国語や英語のメディアでは中国の東北三省、特に黒龍江省で過去数カ月間旱魃が続いており、このままでは農業生産に悪影響が出る可能性があるとの報道が2月頃から目立ち始めた。
もちろん、旱魃は黒龍江省だけの専売特許ではない。今年に入ってから日本では東北地域よりも雲南省や重慶市など南部の旱魃の方が大きく報じられている。
しかし、筆者が黒龍江省など東北三省に注目する理由は、同地域が中国では珍しい大規模農業を取り入れた中国最大の穀倉地帯だからだ。
黒龍江省の旱魃
さらに詳しく調べてみると、こうした旱魃が今年だけの現象ではないことが分かる。以下は過去数年間の関連報道をとりあえず纏めたものだ。
すべて中国からの報道である。これだけでも、近年黒龍江省で旱魃や水不足が慢性化していることが十分ご理解いただけるだろう。
●2007年、黒竜江省は相継ぐ天災により収穫量が大幅に減少した。夏の大旱魃など各種天災により3万3000平方キロメートルの耕地が被害を受け、5800平方キロメートルで完全に収穫が失われた。黒竜江省の2007年の穀物収穫量は3966万トンで、前年比約560万トンの減少となった。
●2008年2月の国家洪水・干害防止総指揮部統計によれば、中国国内では北部の降水量の記録的減少、河川、ダム、地下水の渇水と気温上昇により華北、東北、西北地区の小麦の栽培地あわせて11万3000平方キロメートル、東北地区の稲作地4700平方キロメートルが農業用水不足に陥っている。
●2009年5月中旬以来の異常気象で黒龍江省の農地が急激な旱魃に見舞われている。同省の旱魃被害面積は617万ヘクタールで、耕地面積の53%に達した。うち被害が深刻なのは249万ヘクタール、水が不足している水田の面積は40万ヘクタールで、この時期としては最も深刻な旱魃に見舞われている。
●黒龍江省気象局が2010年2月28日に実施した土壌湿度調査によれば、同省の37の県・市にわたり乾燥が見られた(全農地の51%に相当)。乾燥区域は昨年の凍結期より4県・市に拡がっており、今春は昨年同期に比べ7県・市に旱魃が拡大する見込みである。
●2011年12月以来、吉林省、内モンゴル自治区、黒龍江省では降水量が激減し、過去62年間で最も少ない降水量となっており、平年の30%に満たない状況が続いている・・・。
黒龍江省は7年連続豊作?
これらを読む限りは、少なくとも2007年以降、黒龍江省では旱魃がほぼ慢性的に起きており、毎年のように大きな被害が出ているはずだ。ところが、黒龍江省政府ホームページによれば、2010年同省の穀物生産は5013万トンに達し、前年比15.2%の増加、7年連続の豊作なのだという。
具体的には、トウモロコシの生産が2324.5万トンで21.1%増産、小麦が92.5万トンで20.5%減産、大豆が585万トンで1.2%減産、米は1844万トンで17.1%の増産となっている。
これらの4大主要作物の生産は「両増両減」だから、まあまあ、ということらしい。本当にそうなのだろうか。
黒龍江省では毎年今頃から雪解けが始まり、種蒔きまでには一定の水量が確保される見込みだという。また、同省では河川の水よりも地下水を利用しており、それほど農業生産に影響はないとの見方もある。
農業は筆者の専門ではないので真偽は不明だが、「どうも信用できない」というのが素人の直感だ。
2011年、国家発展改革委員会の東北振興司が発表した「東北三省2010年経済形勢分析報告」では「経済に存在する問題」6点を指摘し、その中で農業につき次のように述べている。
●農業発展基礎が依然不安定であり、農業インフラ、特に農業用灌漑施設の整備が遅れている。
●水害、旱魃の主要原因は、気象異常以外にも、灌漑用施設、洪水防止システムの不整備などがある。
●2010年の食糧価格の高値推移の影響を受け農民収入は増加したが、主に栽培業に依存しており、農業の安定的発展及び農民の持続的増収には至っていない。
黒龍江省よりも中央政府の問題意識の方がはるかに真面目で信用できそうだ。
中国農業の将来
中国農民1人当たりの耕地面積は日本の3分の1という統計を読んだことがある。かくも生産性の低い中国農業の中で大規模耕作が可能な黒龍江省の重要性は圧倒的に高い。
同省には中国の小麦生産の26.5%、大豆の3割以上、トウモロコシの12%を占める実に頼もしい余剰生産能力があるからだ。
その黒龍江省が過去少なくとも6年間、毎年のように旱魃に見舞われている。限られた地下水を汲み上げるから水位は益々下がるはずだ。
農薬や人工降雨剤の多用で水質や土壌は一層汚染されるだろう。不十分な灌漑・治水のツケはいずれ黒龍江省農業の生産性を一層低下させるのではなかろうか。
黒龍江省には北大荒农垦集団(Heilongjiang Beidahuang Nongken Group )という中国最大の農業開発国有企業がある。
2008年あたりから豪州、ロシア、フィリピン、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラ、ジンバブエなどで広大な農地を購入・開墾し出来上がった作物を中国に輸出するなど、中国の将来の食糧不足を補うための計画を着々と進めているらしい。
一方、中国海外進出ではよく聞く話だが、この国営企業も現地事情には無頓着のようで、中国式の農薬多用により土壌汚染を引き起こすなど、現地の環境団体やNGOから強い反発を招いているケースが少なくないそうだ。
これが事実であれば、中国の農業に堅実な未来があるようには思えない。
しかし、今後もこの中国の穀倉地帯で旱魃が続く中で、地道な治水・灌漑を怠り、地下水と人工降雨剤や農薬など化学物質に頼る「自転車操業の農業」が中長期的に持続可能だとは思えない。
歴史を振り返れば、歴代の英明な中国皇帝はいずれも大規模治水・灌漑事業を統括する優れたリーダーだった。逆に言えば、治水・灌漑を怠る王朝は滅亡するのだ。
15年後も黒龍江省で今と同じような旱魃のニュースが流れているとしたら、その時までに共産党政府はもはや存在していないかもしれない。
JBpress.ismedia.jpより引用
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