ミッドウェー海戦研究所

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ロシア

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アラブの民衆革命でロシアも揺れる
成長戦略を打ち出すも日増しに高まる政権への不満
2011.02.09(Wed) コンスタンチン・サルキソフ
ュニジアの独裁政権を倒した「ジャスミン革命」は、ヨルダンとエジプトに飛び火した。今後、アラブ世界はどうなるのか、また、アラブ世界の動揺によって原油価格が1バレル当たり200ドルまで高騰し、産油国ロシアにとって「黄金のシャワー」になるのではないか──。様々な憶測がロシアで飛び交っている。
 
 革命色の強い市民運動が、ロシア国民にどのような影響を与えるのか、という点も大きな注目を集めている。
 
 ロシアでは国民の政権に対する不満が高まりつつある。2010年12月11日に、モスクワ中心の広場で民族主義の若者が暴動を起こした。民族間の対立がきっかけと報じられたが、実際は現政権に対する不満が主な原因だった。
 

一連の悲劇でますます高まる政権への批判

 2010年11月25日、ロシア南部クラスノダール地方の農村で、1歳の子供を含む家族やその友人ら12人が相次ぎ刺殺されるという集団殺人事件が発生した。マスコミでは「農地の売買を巡る殺人事件であり、背景には、警察や農業関係の企業と、犯行グループの癒着があった」と報じられている。
 
 また、2011年1月24日にはモスクワ・ドモジェドヴォ空港で自爆テロ事件が発生し、35人が死亡した。こうした悲劇が起きるたびに、現政権に対する批判はますます強まっている。
 
 2000年に権力を握ったプーチン政権は、民主主義を目指して社会を混乱させたエリツィン政権を反面教師とし、秩序と法治制の回復を目標に掲げた。
 
 だが、ロシア社会はそれを実現できていない。そのことに対する不満と怒りがロシア国民の間に広がっている。2011年、内務省の予算は4000億ルーブル(前年度予算比率4%増)が見込まれているが、治安の回復はほど遠い状態にある。」
 
 何よりも、ロシアはテロを押さえ込めていない。その理由をマスコミは次のように見ている。「ロシアでは民主的に権力者が交代する仕組みがない。まるでアラブ世界のようである。そのため汚職や癒着が蔓延し、国内の安全・治安体制が確保されない」
 

石油と天然ガス頼みの経済構造

 1月26日に発表された世論調査の結果によると、メドベージェフとプーチンの支持率は下降気味だが、それでも2人とも支持率はまだ60%を上回っている。次期大統領には2人のうちのどちらかがなることが、ほぼ確実視されている。
 
 しかし、政権の将来は明るいとは言えない。プーチンが政権を獲得してから国民の生活水準は上がったが、石油・天然ガスの輸出に大きく依存する経済構造になっており、長期的な成長は望めない。
 
 2月1日にロシア財務大臣は演説を行い、次のように、ロシアの経済成長ぶりを強調した。「2000年に約4500ドルだった1人当たりのGDP(1人当たりの購買力平価ベース)は、現在、約1万5000ドルまで上昇した。2000年に100ドルだった平均月給(賃金)は、2008年に700ドルまで上がった」
 
 一方で、「この画期的な成長は、これからは不可能である。今までの成長は石油と天然ガスの採掘に頼っていた。過去10年間、石油採掘量は毎年10%増えていたが、今後、それは見込めない」と率直に打ち明けていた。
 

メドベージェフが打ち出した10項目の成長戦略

 ロシアは新しいマクロ経済戦略を考えなければならない。ロシアでは一般に、次の3つの要因が、ロシアの成長を推進する「魔法の杖」だと考えられている。(1)国家支出削減、(2)外国投資増大、(3)生産性向上、である。
 
 1月26日、メドベージェフ大統領は世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席し、その3つの課題を念頭に置いた10項目の成長戦略を公開した(ドモジェドヴォ空港の自爆テロ事件が発生してからわずか2日後だったので、ダボスには数時間滞在しただけだった)。
 
 主な成長戦略とは、次のようなものである。
 
●国営企業の大部分を民営化し、生産性を上昇させる。
 
●外資からの投資を増やすために特別基金を設置し、外国投資家のリスクを分担する。
 
●モスクワで国際金融センターを設立する。金融関連の税金を減らして、旧ソ連共和国のみならず世界各国の金融資本をロシアに誘致する。
 
●知的資産を持っている大学に起業権を与え、イノベーションとベンチャー企業の設立を促進する。
 
●厳密な基準を導入し、ロシア全体の大規模な省エネルギーを実現する。
 
●ブロードバンドインターネットをロシア全土に普及させ、電子マネー、各行政区での共通支払いカードなどの大規模な導入を行う。
 
●ロシアの若者を外国のトップ大学に留学させる。世界の優秀なブレーンがロシアにやってくるように、受け入れ態勢と魅力的な条件を整える。
 
●2012年の冬季五輪と2018年のFIFAワールドカップの開催に向けて、大規模なインフラ整備プロジェクトを推進する。
 
 以上の課題を実現する際にカギとなるのは、ロシアの国際市場への参加である。メドベージェフ大統領は、欧州と「共通経済空間」をつくることも、成長戦略の1つとして掲げている。ロシアの世界貿易機関(WTO)と経済協力開発機構(OECD)への加盟はほぼ決定的だ。その路線を堅持するためにも、政治と社会の安定は不可欠なのである。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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若年層の失業がロシアでテロを頻発させる
失業率の異常な地域間格差、最悪の北カフカス
2011.02.03(Thu) 日台 健雄

モスクワ・ドモジェドヴォ空港爆発事件

1月24日、ロシアの空の玄関口であるモスクワ・ドモジェドヴォ空港において、死者35人、負傷者170人を出す爆発事件が起きた。ロシア捜査委員会によれば、この犯行を実行したのは北カフカス出身の20歳男性とのことである。
 

不安定要因としての北カフカス武装勢力

 北カフカスの武装勢力はこれまでにも、2010年3月に起きたモスクワ地下鉄での自爆テロ事件(約40人死亡)など、一般人を対象としたテロを多数にわたり起こしてきたと言われており、ロシアの不安定要因となり続けてきている。
 
 では、なぜ北カフカスの武装勢力は、一般人を対象とした大規模なテロを実行するのであろうか?
 

「黒い未亡人」

 相次ぐテロの要因としては、これまで様々な点が指摘されている。例えば、夫をロシア軍に殺害された女性(「黒い未亡人」と呼ばれる)が復讐心から自爆テロを敢行するケースもある(2010年3月のモスクワ地下鉄での自爆テロの実行犯は「黒い未亡人」と言われている)。
 
 また、カフカス出身者がロシア人によって長年にわたり差別の対象となってきたことに対する根強い反発も指摘されている。
 
 ちなみに、カフカス出身者はロシア人と外見で容易に区別することができ、ロシア民族至上主義を掲げるスキンヘッド集団による暴行の対象になることも多い。
 

空港テロの背景にあるもの

 このように、北カフカス住民が武装勢力に加わってモスクワなどでテロを敢行する要因は多いのだが、その社会・経済的要因のうち最も重要と考えられるのが、北カフカスに蔓延する「失業」「貧困」によって若年層が将来に絶望し、武装勢力に加わって自爆テロ等に走るというものである。
 
 そこで本稿では、北カフカスを巡る失業や貧困について、経済統計データや世論調査の結果によって描写してみたい。
 

ロシア全体の失業率

 ロシア統計庁のデータによれば、ロシア連邦全体の失業率(ILO方式)は2010年12月時点で7.2%であり、前年同月(2009年12月)の8.2%より下落している。
 
 失業率の内訳を都市・農村別で見ると、都市部が6.0%であるのに対し、農村部では10.8%となっており、農村部における失業率の高さを見て取ることができる。
 
イメージ 1 また、失業率を年齢層別にみると(図1参照)、15〜24歳では都市部13.3%・農村部20.2%であり、25〜29歳では都市部6.7%・農村部13.1%、30〜39歳では都市部4.3%・農村部8.9%と、失業率の高い農村部において、とりわけ若年層の失業が深刻な情況にあることが分かる。
 

カフカス失業率

 次に、連邦管区別のデータを用いて北カフカス失業率を見てみよう(図2参照)。失業率の低い管区を見ると、モスクワ市を含む中央連邦管区が、2009年12月5.2%・2010年12月4.4%である。
 
 一方で、失業率の高い管区を見ると、ワースト1の北カフカス連邦管区が2009年12月17.5%・2010年12月15.8%、ワースト2の極東連邦管区が2009年12月10.0%・2010年12月8.9%となっている。
 
 なお、北カフカス連邦管区にはチェチェン、イングーシ、ダゲスタン、北オセチア、カバルディノ=バルカル、カラチャエヴォ=チェルケスの各共和国とスタヴロポリ地方が含まれる。
 
 このように、北カフカスは中央連邦管区と比べて失業率のパーセントポイントが3倍以上、ワースト2の極東連邦管区と比べても1.5倍以上になっており、北カフカスが全ロシアの中で圧倒的に失業率の高い地域であることが、データによって鮮明に示されている。
 
イメージ 2
 

チェチェンやイングーシでは2人に1人が失業状態

 北カフカス連邦管区の失業率の内訳を見ると、2010年12月時点でイングーシ共和国は48.8%、チェチェン共和国は43.3%に達している。
 
 北カフカス連邦管区内の他の連邦構成主体と比べても、これら2共和国の失業率は圧倒的に高くなっており、住民のほぼ2人に1人が失業状態に置かれていることになる。
 
 このような北カフカス失業率の高さと、ロシア全体で農村部の若年層の失業率が高い傾向にあることを併せて考えると、北カフカスの若者が、職を得る可能性が低いことを背景に、将来に絶望してテロリズムに走るという構図が見えてくる。
 

カフカス情勢に関する世論調査

 続いて、ロシア人や北カフカス現地の住民が、北カフカスの現在置かれている状況をどのように考えているのかについて、世論調査の結果を用いつつ見ていこう。
 
 ロシア3大世論調査機関の1つである「レヴァダセンター」が実施した世論調査によれば、北カフカス情勢について、2010年11月時点で「順調」「平穏」とする回答は合わせて15%なのに対し、「緊迫」「危機的」とする回答は合わせて77%と、圧倒的多数が否定的な現状認識をしている(表1参照)。
 
 ちなみに、2010年5月に否定的見解が上昇しているのは、3月末に発生したモスクワ地下鉄自爆テロを受けた変化と考えられる。
 
イメージ 3
 

カフカス情勢の現状に対する評価

 次に、北カフカス情勢がどのように変化しているかという問いへの回答を見てみよう(表2参照)。それによれば、2010年11月時点では、「良くなっている」と「悪くなっている」がほぼ同率であり、情勢変化に対する見解が分かれていることが示されている。
 
イメージ 4
 また、ロシア3大世論調査機関の1つである「世論基金」が2010年1月に実施した、北カフカス情勢の変化に対する現地住民の見解とロシア全体の見解とを比較検討する調査結果は、次のようになっている。
 
 「良くなっている」と考える比率は、ロシア全体30%、現地住民24%と、現地の方が低く、「悪くなっている」と考える比率は、ロシア全体9%、現地住民12%と、現地の方が若干高い(表3参照)。
 
 この結果は、2008年秋以降のリーマン・ショックによる影響が、現地において深刻に捉えられていることを示唆している。
 
 一方、「変化なし」との回答が、ロシア全体で41%であるのに対して、現地では51%と10%も上回っている。
 
 これは、北カフカス失業率が高止まり傾向にあり、あまり変化がないことと併せて考えると、現地住民の現場感覚、つまり「もともと悪い状態から何も変化していない」という感覚が反映されているものと考えられる。
 
イメージ 5

カフカス情勢の見通し

 また、「北カフカス情勢は今後1年でどうなっているか」という問いへの回答を見てみると、「良くなっている」はロシア全体では28%、現地住民では31%と、現地住民の方が若干ではあるが楽観的な見方が上回っている。
 
 しかし、「悪くなっている」は、ロシア全体では5%にすぎないのに対し、現地住民では10%となっており、悲観的な見解も多い。
 
 その背景には、「回答困難」がロシア全体では41%とかなり高い比率を占めている一方で、現地住民では33%と相対的に低いことが指摘できる。
 
 つまり、現地住民の間では「回答困難」よりも楽観的見解か悲観的見解のどちらかを回答する傾向にあると言える。
 

おわりに

 以上述べてきたことをまとめると、以下のようになろう。
 
(1)ロシアでは、「農村部」「若年層」の失業率が高い
(2)カフカス連邦管区の失業率は、他地域と比較してかなり高い
 
(3)つまり、「北カフカス」の「農村部」に居住する「若年層」は、ロシアの中でも最も失業率の高い層と考えられる
 
(4)高失業を背景に、将来に絶望した若者が武装組織に加入する動きがとどまらない
(5)一方で、世論調査結果を見ると、北カフカスの現地住民は北カフカス情勢を現状では否定的に見ているが、今後の見通しにおいては否定一辺倒ではない
 
 ここで浮かび上がるのは、若者を武装勢力に走らせる「失業」「貧困」を除去し、若者が将来への希望を抱くことができるような環境を整える必要性である。
 

 北カフカス地域の振興策には連邦政府から多額の資金が投じられているが、今後は、資金投下の金額の多寡ではなく、その内容が問われてくると言えよう。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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ロシアで「なりふり構わず中国に学べ」の声
これ以上、経済力の差が開くと深刻な事態に
2011.01.26(Wed) コンスタンチン・サルキソフ
シア経済は2011年に入っても、相変わらず不安で不透明な要素が山積している。
 
 ロシアのマスコミは、今年も10%台の成長が見込まれている中国経済と、3%台の成長しか見込めないロシア経済を比較して、ロシアがどうしてこうも遅れているのかと原因を追及している。
 
 マスコミは、ロシアの「近代化」は口先だけだが 中国の近代化は実際に成果を上げていると評価する。
 
 たった二十数年前の1980年代半ばに、中国は輸出高で当時の東ドイツに後れを取り、GDPではオランダにかなわなかった。それが、今や輸出額で世界一となり、GDPでは世界2位の経済大国になった。また、この1月に中国の外貨準備高は2兆8500億ドルとなって史上最高額を更新、6月には3兆ドルを超えると予測されている。
 
 こうした材料があればあるほど、「どうしてロシアは遅れているか」という議論が沸き起こってしまうのだ。
 

ロシア人の中国の見方は「遅れている」?

 議論の特徴は、今までと違って中国の成果を褒め讃えるだけではなく、「中国モデルに学ぼう」という機運が高まっていることだ。
 
 すでに具体的な活動も始まっている。ロシア科学アカデミー社会学研究所に付属している脱工業化研究センターの中に、中国の「近代化」の過程をロシアの経営者に紹介しようというプロジェクトが立ち上がった。
 
 プロジェクトの立案者は、「ロシア人の中国に対する見方が正しくない」「ロシア首脳の中国への理解が足りない」と訴える。
 
 2010年9月にヤロスラブリで開催された国際政治会議に出席したメドベージェフ大統領は、次のように述べている。
 
 「ロシアが中国モデルにならって発展できるかというと、難しいのではないかと思う。歴史や国民のメンタリティー、産業構造などが大きく違いすぎる」
 
 だが、プロジェクトを立ち上げた研究センターは、ロシア人の中国に対する見方は凝り固まった古いものだと考えている。多くのロシア人は心の底で、19世紀後半の帝国主義の時代のように、いまだに中国を蔑視し、その知性や能力を十分に評価していないということだ。
 
 だから中国の経済成長に驚きながらも、それをモデルにしようとは思わない。ロシアの経営者はずっと欧米の発展をモデルとしてきた。中国の経済学者の著作などは読まないし、中国語を勉強しようという人も少ない。
 
 しかし、その態度は改めなければならない、中国の改革のスピードと実際の成果を考えれば、ロシアは中国モデルを真剣に学び取るべきだと、プロジェクト立案者は力説する。
 
 プロジェクトでは、中国から政治・経済の専門家を呼んで、中国における「市場経済成立の過程」「高効率な国家経済の運営方法」「刑法・裁判法の改革」「産業インフラの整備」「外国資本の誘致」「国産製品の海外市場への展開」「基本・応用科学の発展」「汚職対策」などについて、解説してもらう予定だ。
 
 こうした中国の経験を学ぶことで、「ロシアの経済成長モデル」が効率的につくれるのではないかという狙いがある。
 

経済力を武器に外交を展開する中国

 ロシアのマスコミは、経済だけでなく、経済を武器にした中国の外交にも学ぶべき点が多いと訴える。
 
 以前から米国は、人権問題に関して中国に強い圧力をかけていたが、中国と喧嘩するつもりはない。両国の経済的な相互依存関係はますます強まっている。
 
 今回、胡錦濤主席が訪米した際も、米中間でボーイングの飛行機200機の購入を含む450億ドルの商談がまとまったという発表があった。これによって米国には25万人の雇用が生み出されると、オバマ大統領は喜んでいる。
 
 欧米諸国や日本では、中国の強大化を牽制するためにインドとの関係を強化すべきだという意見がある。しかし、2010年12月に温家宝首相が400人の財界人を引き連れてインドを訪問したのは、予想外の展開だった。
 
 中国・インド間の貿易額は2010年に600億ドルに達し、2015年には1000億ドルになると言われている。温家宝首相のその訪問だけで160億ドルの商談・投資計画が調印された。投資計画の中では、インドのインフラ整備に関するものが多かった。
 
 2010年10月、インドのマンモハン・シン首相が日本を訪問した際、インドのインフラ整備には、あと1兆ドル程度必要だと語っていた。今までは日本の貢献が大きかったが、これからは中国の出番であるに違いない。
 
 昨年、インドを訪問したロシアのメドベージェフ大統領は、ロシア・インド間の貿易は増えていると発言していたが、中国・インド間の貿易額の10分の1程度しかない。
 
 ロシアとインドは歴史的に盟友である。一方、中国とインドは政治的には敵対関係にある。中国はパキスタンへの支援も強化している。それにもかかわらず中国とインドの経済協力関係は強まっている。まさに「経済が政治を上回る」時代となっているのだ。
 
 今のところ、ロシアと中国は政治的に友好な関係を保っている。ロシア政界では中国の勢力拡大に対する脅威感はあまり強くない。だが、中国との経済力のギャップが大きくなればなるほど、対等な関係を維持することは難しくなっていくだろう。
 

 だからこそロシアは経済大国になるために、中国モデルを分析し、見習うべきところは見習わなければならない。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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ロシアからテロはなくならない
ロシア人の意識に見るテロの日常化
2011.02.01(Tue) 菅原 信夫
1月24日(月)のドモジェドヴォ空港爆弾事件は肝を冷やしました。我々がよく通る場所で、この日もJAL便の到着客が遭遇してもおかしくない時間でした。チェチェン問題があるうちはテロはなくならないでしょう」
 
 「そして、チェチェン問題が解決することは当分ないでしょうから、ロシアは常にテロの危険にさらされているということです。憎しみの連鎖は途切れることがありません」
 

あと15分、日本からの到着が遅れていたらテロの被害に

http://img3.afpbb.com/jpegdata/thumb200/20110125/6723948.jpgテロの被害に遭い空港から搬出される乗客〔AFPBB News
 
 上記はロシアNIS貿易会(RONIS)モスクワ事務所の池田正弘所長が同会の月報モスクワビジネスニュースに書かれた今回のテロの感想です。
 
 実際、あと15分もJALのモスクワ到着が遅延していたり、あるいは受託手荷物の返却が遅れたりしていたら、間違いなくJALで到着された乗客の中から、被害者が出ていたはずです。
 
 ロシア在住の日本人、そしてロシア人一般の気持ちを極めてよく表していると思うので、池田さんの文章をそのまま引用させていただきました。
 
 ある日本企業のモスクワ支店長は、ロシア出張延期を打診してきた出張者に対して、「来るなら早い方がいい、なぜなら社会全体にまだ緊張感があるから」と答えたそうです。
 
 それくらい、ロシアにおけるテロ行為は日常茶飯事となっていて、これを防止することは不可能であることを大衆は本能的に知っています。
 
 警備当局にしても、事件後の一定期間は空港や地下鉄、鉄道駅の入り口検査を強化しますが、そのうちに元のルーズな状態に戻ってしまいます。だから、また、必ず起こる。
 
 その結果として、ロシアにおけるテロ行為は、民衆にとって避けられないもの、という人災の自然災害化が見られます。まるで、日本人が地震に対して感じる無力感のようです。
 
 日本に住み始めたロシア人が、こんなことを言っていました。
 
 「これだけ頻繁に地震の起こる日本で、よく日本人が平気で暮らしていられるものだと思っていた。でも、日本に住み始めて分かったことは日本人が地震をうまく生活に取り入れて、ある意味で地震を潤滑油として使っていることだ」
 
 その心は、「どんな侃々諤々の議論の最中でも、誰かが地震を感じると、“今、揺れたの感じた?”という問いかけに全員が同じ方向を向いて、瞬間的にその場全体を一体感が満たす」のだそうです。だから、地震=潤滑油だと言うのです。
 
 ロシアにおけるテロと似ています。ロシアではどんなに現政権を批判する人でも、どんなに日々の生活に苦しんでいる人でも、一度テロが起きると、まず自分がその場に居合わせなかった幸せを喜び、次に全員がテロ行為を非難する。
 
 その瞬間、すべての人々は同じ方向を向いて、社会全体を一体感が満たすのです。だから、こういう社会的効用が続く限り、テロはなくならないというのです。 乱暴な議論ですが、雰囲気として当たっています。
 

天災と人災が重なって被害を拡大させる

 周囲を見回すと、人災と自然災害が一体化して、とんでもない被害を出す、というのは極めてロシアではよく見られる現象だ、ということです。
 
 筆者も被害者となったモスクワでの12月26日から29日にかけての氷雨と、アエロフロート機の発着遅延事件。
 
 氷雨は自然現象ですが、フライトが遅延したために引き起こされたシェレメチエボ空港での混乱は、人災以外の何物でもありません。
 
 12月26日は、未明から雪の代わりに氷雨が降るという、モスクワでは珍しい天候でした。実際、道路は厚い氷で覆われてしまい、車も危なくて動かせないという大変な朝でした。
 
 幸い、白ロシア駅から空港まではエアポートエクスプレスという電車が出ているので、何とかシェレメチエボ空港まではたどり着けました。
 
 アエロフロート航空が専用ターミナルとして使用しているターミナルDは、すでに人であふれていました。表示板を見ると、すべての出発便が遅延ないしはキャンセルとなっています。
 
 受付カウンターに行き、搭乗手続きを終えたところから悲劇が始まりました。それから、29日早朝3時まで、東京行きのフライトは遅延に遅延を重ね、結局58時間も空港内に閉じ込められました。
 

来る日も来る日も「今日は飛ぶ」と言われて・・・

 この間、全く遅延理由の説明もなければ、いつ東京行きが出発するかという情報もなし。
 
 空港自体は閉鎖していないため、27日の便、28日の便で東京に向かう乗客はどんどん増えてきて、29日の搭乗直前には100人を超えていました。
 
 年末の私的一時帰国で同じ便を予約されていた在モスクワ大使館の今村朗公使と2人の大使館員の方々が、状況を見るに見かねて、大使館経由でアエロフロート航空と接触を始めてくださったのが27日夕刻でした。
 
 そこから29日の搭乗手続きまで、大使館の方々と我々は現地対策本部を立ち上げ、空港内のレストランの一角に陣取りアエロフロートと数々の交渉を行いました。
 その効果があったのか、アエロフロートの副社長情報として、東京行きは夜10時発、という情報が27日も28日ももたらされました。
 
 しかし、結局は東京行きが出発することはありませんでした。現地対策本部の効果は残念な結果に終わってしまったと言わざるを得ませんでした。
 
 ただ、この遅延の中で、異常な状況におけるロシア人の行動をしっかり観察することができたのは、ある意味で大変勉強になりました。その結果をいくつか披露しましょう。
 
(1)ロシア人の時間に対する感覚は、どうやら日本人とは違うようで、彼らは待つこと、それも当てもなく待つ、ということがそれほど苦痛を伴わずにできる。
 
(2)アエロフロートは、食券バウチャーというのを1人当たり何回か発給してくれたのですが、それを持ってターミナル内のレストランに行ってもすでに食材は底を突き、飲みもの以外ありません。
 
 しかし、ロシア人は文句を言うこともなく、仲間でビールやウオッカを飲みながら楽しそうに語らっています。 空腹に強い人種です。
 
(3)アエロフロート職員は、警備員を伴いゲートに現れて客を威嚇する。いくらフレンドリーなメッセージを流していても、ロシア企業のサービスに対する根本の姿は変わっていないことを知らされました。
 
 さて、テロの話に戻りますと、1月30日の情報では、ロシア政府はテロ対策の強化に乗り出し、公共交通機関の安全確保を一元的に担当する政府機関を創設するとのこと。
 
 では、昨年の地下鉄駅同時テロから今回の空港爆破テロまで何をしていたのか、と聞きたくなるような政府の対策です。
 
 2009年12月の本欄に、筆者は次のコメントで鉄道爆破事件のリポートを終えました。
 
 「今日のみを生きる、というロシア人たち。しかし、明日のロシアを築くには昨日から学ぶべきことがたくさんあるのではないだろうか。 冒頭の事件比較に戻るが、2007年とほぼ同じタイプの事件が繰り返されたことは、やはりそれなりに重く受け止めるべきだと思う」
 
 一方、アエロフロート便遅延の真の理由はなんだったのでしょうか。1月24日のロシアビジネスニュース(RBCDaily)紙とのインタビューで、アエロフロートのサベリエフ社長はこんな話をしています。
 

ダボス会議はそんなに重要な会議なのか?

●12月末のモスクワ地方の天候は、20年に1度というような予想もしない悪条件だった。
 
 このために、25日から26日にかけて帰還した当社機は、厚さ5〜6センチにも達する氷に覆われ、26日のフライトに際して、従来であれば一機あたり10分程度で終了する氷着防止作業に、解氷作業が加わり、平均2時間という時間がかかってしまった。
 
●この過程で、通常1カ月分の氷結防止剤を26日、27日、28日の3日間で使い果たすという異常事態が発生した。この化学剤はドイツの企業から購入しているが、その企業にもヨーロッパ各地から緊急注文が入り、当社の要請に対応できなかったと聞いている。
 
 その後、アエロフロートは、このドイツ企業(Clariant社)に対して損害賠償の訴訟を起こすのですが、民間航空の歴史の古いこの国で、氷結防止剤をドイツから購入している、という事実がすでに人災の始まりです。
 
 ロシアビジネスに近い方には、ロシア製を使用せずにわざわざドイツから輸入する理由というのは、なんとなく分かると思いますが、こういう異常行為が、少なくとも上場企業からなくならない限り、ロシアは「普通の国」とは世界で認識されないのではないでしょうか。
 
 1月24日の空港テロ事件のあと、現地を視察したドミトリー・メドベージェフ大統領はその足でスイス・ダボスに向かい、1月26日のフォーラムでテロとの戦いへの世界の連携、ロシアへの投資、という2点を訴え、そそくさとモスクワに戻ってゆきました。
 私には36人もの犠牲者を出した国の大統領が、数時間の滞在のためにダボスに出かけることが、すでに「普通の国」には見えないのです。
 

  問題山積の日本国の首相がそのダボスに行くことは、もう論外ではありますが・・・。こうして、ロシアの天災は人災要素を巻き込み、とてつもない規模で繰り返されていくのです。


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ロシアの財政状態は崩壊直前のソ連並み?
選挙に突入し、ますます悪化の不安
2011.01.12(Wed) コンスタンチン・サルキソフ
シアにとって、2011年は節目の年である。
 
 ソ連邦を解体させ、民主主義の旗を掲げたロシアは20歳になった。日本で言えば「大人」の仲間入りをしたのである。しかし、中身はまだまだ大人とは言えないようだ。
 
 2011年の議員選挙と2012年の大統領選挙を控え、「二頭政権」の二頭の足並みがまた乱れ始めている。
 
 争点は、ロシアの近代化の範囲である。メドベージェフ大統領は、近代化の範囲は経済だけではなく、政治の民主化も必要だと考えている。それに対してプーチン首相とその側近は、政治改革を行うタイミングではないので、経済改革を重点的に行うべきだと主張している。過激派が台頭している今、リベラル的な改革は時期尚早だという。
 
 プーチンの宿敵、ミハイル・ホドルコフスキーを巡る発言にも2人の対立が見て取れる。
 
 ホドルコフスキーは反プーチンの立ち場を明確にしている実業家である。石油会社の社長を務めていたが、脱税などの容疑で逮捕され、2005年に懲役8年の実刑を言い渡された。
 
 2010年12月30日、モスクワ裁判所は服役中のホドルコフスキーに対して、2017年までの刑期延長を言い渡した。
 
 判決が言い渡される2週間前、プーチン首相はテレビ番組に出演してホドルコフスキーを「泥棒」と呼び、「ずっと刑務所にいるべき人物だ」と憤った。
 
 それを受けて、メドベージェフ大統領は、「国家官僚は、受刑者が誰であっても裁判の手続きに干渉すべきではない」と述べ、間接的にプーチンの暴言をたしなめた。
 
 その後、2人は2010年の政府の政策が高い成果を挙げたことを一緒にアピールし、二頭政権は仲たがいしていないという印象を与えるのに懸命だった。
 

選挙に突入で国家予算がますます赤字に

 2012年の大統領選挙に誰が出馬するかは、2011年のうちに明らかになるはずである。メドベージェフとプーチンの2人が出馬してぶつからないように、前もって話し合いが行われるだろうと言われている。だが、実際にどうなるのかは、まだ分からない。
 
 問題は経済と社会の動きである。うまくいけば、2人の方向性の違いは解消されるだろう。しかしロシアの経済と社会には不安要因がたくさんある。
 
 大きくまとめると、経済、社会の安定を脅かしているのは、(1)国家支出の増大、(2)資本の外国への流出、(3)税金の上昇である。
 
 3つの問題を解決するカギは1つしかない。石油の価格である。1バレル当たり100ドル以上であれば、産出国のロシアはやっていける。
 
 逆に言うと、経済成長は相変わらず石油・天然ガス頼みであり、輸出価格に左右されるということだ。メドベージェフ大統領がスタートさせた経済の「近代化」はまだ実りを生んでいない。
 
 2010年のロシア経済は3.8%の成長率だった。2011年の成長率は、一番楽観的な予測でも、せいぜい4%強にとどまる。上記の(1)〜(3)の問題が経済成長に歯止めをかける可能性があるのだ。
 
 国家支出が増大する問題は、議会選挙と大統領選挙を控えていることに関係している。
 
 プーチン首相は国民の顔色をうかがっているのか、「社会保障関係の支出の削減は経済危機の時でさえもしなかった。今年もするつもりはない」と断言する。
 
 それに対して、ロシア財界のある大物は、「そうはいっても国家支出がGDPの38%にもなっているのは、ソ連が崩壊する直前の様子にそっくりだ」と懸念している。
 2011年、財務省は、ルーブル建てで1.7兆円分と、ドル建てで7兆円分の国債を発行する予定だ。また、石油、鉄道、金融関連など政府保有株の放出で、売却益も見込まれる。
 
 しかし、それでも赤字予算を完全に埋めることができない。政府は、2011年の赤字は1兆5000億ルーブル(GDPの3.6%)に達すると見ている。
 

ワールドカップ開催で株価上昇が期待されるが・・・

 ロシア資本の国外流出は、止まる気配がない。2010年、ロシア資本の国外流出は250億〜300億ドルで、流入はわずか100億ドル程度だった。
 
 流出した資本の中には、モスクワの行政関係の闇資本もあると見られている。また、2010年にロシアで統一社会税が廃止され、企業の保険料負担が26%から34%まで引き上げられたという背景もある。
 
 2010年にはロシアとベラルーシやカザフスタンの間で関税条約が締結されたが、例えばカザフスタンにおいては、ロシアよりも税金が平均して40%も低い。ロシア資本の国外流出はますます加速されるかもしれない。
 
 一方で明るい材料と言えるのは、株価の上昇である。モスクワの証券取引所(RTS)と銀行間通貨取引所(MISEX)の株価指数は、2010年にそれぞれ23%と22%の上昇を示した。
 
 2018年のサッカー・ワールドカップはロシアで開催される。その経済効果への期待もあり、外資の金融機関は、今年はさらに株価が上昇するだろうと楽観視している。
 

 とはいえ、国内の金融関係者は楽観的ではない。選挙の季節を迎えると何が起きるか分からないし、不安材料があまりにも多すぎるからである。


JBpress.ismedia.jpより引用

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