ミッドウェー海戦研究所

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陸上自衛隊

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今なお「駆けつけ警護」が認められない自衛隊PKO
憲法9条に縛られた独自の行動基準
2012年は自衛隊がPKOで初めてカンボジアに派遣されてから20年という節目の年にあたるため、本連載においても国際平和協力活動のこれまでを振り返る機会を作りたいと思っていた。
 
 そしてそれは、PKO協力法改正案が国会で審議されるタイミングで・・・と考えていたが、結局、同法案の今国会での提出は消費税増税法案の国会審議の障害となりかねないということで見送られてしまった。
 

他国の部隊を助けることができない自衛隊PKO

 今回の改正案のポイントはいわゆる「駆けつけ警護」を認めるかどうかであった。私は常々、不思議に思うのだが、この「駆けつけ警護」なる言葉の意味するところは、国民に正確に理解されているのだろうか。
 
 テレビディレクターをしている私の友人は、取材でハイチに行った際、「危なくなったら自衛隊が助けに来てくれるんだよね?」と気にしていたので、それはできないと教えてあげたら「自衛隊はひどい!」と怒っていた。
 
 「駆けつけ警護」とは、国連平和維持活動(PKO)活動中に国連職員やNGOなど非政府組織の民間人が宿営地外で襲われた場合も、自衛官が助けに行くことができるというものだ。
 
 もし、日本人の全てがこの中身を分かっていれば、到底、反対はできないのではないだろうか。自衛隊派遣は国連の定める枠組みとかけ離れているのだ。
 
 国連は、「要員を防護するための武器使用」(Aタイプ)や、「国連PKOの任務遂行に対する妨害を排除するための武器使用」(Bタイプ)を認めているものの、日本の「国際平和協力法」では、Aタイプの武器使用、しかも「自己や現場に所在する他の自衛隊員等」と、「自己の管理下にある者の防護のため」にしか武器の使用を認めていない。
 
 同じ国連PKOに参加している他国の部隊や隊員が攻撃された場合でも、駆けつけて必要に応じ武器を使用することは許されていないのだ。Bタイプに至っては、全く認められていない。
 
 つまり、派遣された隊員は、共に行動する他国の部隊とは別の基準で行動することになる。他国の部隊や要員が危険にさらされ、自衛隊に救援を求めたとしても助けることはできない。
 
 「最近は、他国軍も日本の特殊な事情を理解してくれるようになってきています」とは、PKOを経験した隊員から聞いた話であるが、これをありがたいと受け止めるのか、残念だと感じるべきなのか、もはや感覚が麻痺してきているような気がする。
 
 しかし、もし「その時」がきて、自衛隊がそのような非常識的行動を取ったなら他部隊との信頼は崩れ、国際社会の非難を浴びることは必至であろう。何より、そんな行動を取らねばならない現場自衛官の心中は察するに余りある。
 

自衛隊PKOの手足を縛る憲法9条

 対象が民間人の場合も同様に制約がある。現行法では自己の管理下にある者に限定されているため、少しでも離れた場所にいる人はその範疇ではない。
 
 東ティモールPKO(2001〜2004年)において起きた事案は象徴的である。首都ディリでデモが発生し、600〜800人に及ぶデモ隊が政府庁舎前に集結。さらに、この騒ぎに乗じた別の群集が各地で放火や略奪を始めるなど、急激に事態が悪化した、その時のことだった。邦人レストラン経営者から「車が焼かれて店が襲撃されている。助けてくれ」という電話が入ったのだ。
 
 時の指揮官は直ちに6名の隊員に緊急出動を命じたという。たまたま、休暇中の隊員3名が市内に滞在していることが判明したため、その隊員の安全を確保の目的で現場に入り、助けを求めていた邦人とスリランカ人店員の計5人を救出することができたが、こうしたケースでは現場指揮官の肩に多大な責任を背負わせることになる。
 
 その現場に赴くことが法的に可能なのかどうか、武器を使わざるを得なかったら? と苦悩しなければならなかった。
 
 もし自分がその場にいる日本人だったら、どう思うだろうか? 「法的根拠がないから仕方ないですね」などと言う日本人はいるだろうか。大半が「自衛隊は同胞を見捨てるのか!」と感じることだろう。
 
 なぜ、自己や自己の管理下にある者には武器の使用が認められているのに、「駆けつけ警護」や妨害排除のための武器の使用はできないのか、その理由は憲法9条に行き着く。
 
 現憲法下では、個別的自衛権は行使できるが、それ以外は「武力の行使」にあたるとして認められていないのだ。
 
 ちなみに、世界を見渡しても、国連PKOの国際基準で認められた武器使用が、国連憲章で禁止された「武力の行使」に当たると解釈している国はどこにもないという。
 

「困っている国を助けに行く」次元のものではない

 こうした国際的活動においてわが国だけが自国の独自基準で行動することは、紛争が複雑化している昨今、かなり無理が出てきている。
 
 日本はPKO派遣要員数が主要国の中でも少ないということで、もっと出すべきだという声もあるが、このような実情からすれば、そう簡単には決められないのは当然だろう。
 
 そもそもPKOは何のため出るのか。これは「困っている国のために行く」などという次元のものではない。どの国でも、国益の観点から派遣を決めているはずだ。
 
 今のところわが国のPKOは主に後方支援分野での参加で、メインプレーヤーになることが多い施設部隊はハイチと南スーダンの2正面で活動し、災害派遣でも所要が大きい。
 
 しかし、この施設部隊も人員の削減により縮小されていることは見過ごせない。PKOはニーズがあるからといって簡単に行くものではない。まずは、こうした国内事情と照らし合わせて、いかにして国益に資する結果に繋げるのか国のビジョンが不可欠だろう。
 
JBpress.ismedia.jpより引用
 
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自衛隊が広報活動で国民に伝えるべきこと
予算・人員の削減でどんな「リスク」が生じるのか
年も夏祭りや花火のシーズンが到来した。といっても私などが出かけるものは、その100%が自衛隊主催である。
 
 ごく最近も、千葉県の習志野駐屯地で開催されたお祭りに足を運んだ。2日間にわたり午後から駐屯地を開放し、隊員たちによるカキ氷や焼き鳥といった出店は大賑わい、夜は花火や盆踊りということで、何万人もの老若男女が楽しんでいた。
 
 こうしたことは、全国の陸海空自衛隊の基地や駐屯地で行われており、日頃、自衛隊とはまるで縁のない人々にとって数少ない触れ合いの時となる。
 
 言い換えれば、その時の姿が、唯一知っている「自衛官の姿」となる可能性もあるのだ。これらのイベントに行ったことのある多くの人から「キビキビして礼儀正しかった」などといった感想を聞いたことがあり、また、人によっては「ちょっと誇張しすぎ!?」と思うほど、イメージ先行の自衛官の姿が目に焼き付いているようだ。
 

格好の広報の場となる夏祭りや地元の催し

 そういう意味で、私はこうした地域の人々と接触する時こそが「広報」という面でも最も重要ではないかと思っている。
 
 私自身も、駐車場の誘導や受付で言葉を交わした隊員さんのことが妙に印象に残っている場合が多い。
 
 「機械仕掛けか?」と疑うようなぶっきらぼうなタイプもいれば、気さくにお喋りする方もいて、様々で面白いが、ここで何か気に入らないことがあったりすれば、それが一番記憶に残ってしまうお客さんもいるであろうことを考えれば、部隊トップの挨拶の文言もさることながら、こうした場所にも細心の注意を払っているのだろう。
 
 他に、自衛隊の広報手段として代表的なものは、最近、出された防衛白書や各種パンフレット、ホームページ、フェイスブック、セミナーなどが挙げられる。
 
 しかし、これらは自らアクセスしなければならないため、見る人はそもそも関心を抱いている層がほとんどだ。やはり、興味があるないにかかわらず自衛隊に親しむことができる夏祭りなど、地元に根付いた催しの意義深さを感じてしまう。
 
 地方の部隊などで講演をさせていただくと、よく「自衛隊の広報はどのようにすべきか」という質問を受け、私はいつも「日々日常の姿を」と、申し上げている。「それは、いつのことだろう」と思われているかもしれないが、私としては、こうした時々の、さりげない所作のことをイメージしているのだ。
 

相手に認識されなければ何もしていないのと同じ

 さて、一方で防衛省としての広報となると、その役割は国内向けの発信だけではなくなり、国の「抑止力」となり得る広報戦略も求められてくるだろう。
 
 抑止が機能するためには、「抑止する側に、軍事的対応を行う意図と能力があり、かつ、それが相手に正しく認識されること」が必要であるという(『平成22年版防衛白書』より)。
 
 つまり、相手側に正しく認識されて初めて「抑止」が機能するのであり、そのためには相手に認識させるための対外発信が極めて重要なのだ。
 
 言い方を変えれば、抑止という観点からすれば、相手に認識されなければ何もしていないのと同じだと言ってもいい。
 
 これまでの対外発信は、防衛省・自衛隊に対するアジア諸国などの警戒心に配慮したものが多かった。しかし、これからは「わが国の防衛に対する確固たる意思」と「自衛隊の強さ」をキーメッセージにしていくべきではないだろうか。
 
 そのためには、大規模な訓練や演習などの様子がメディアを通じて報じられることは意味が大きい。海外メディアを活用できればなお良い。
 
 そして、諸外国との共同演習や、強固な同盟関係をアピールすることは極めて重要だ。孫子の兵法では、敵の軍隊を撃破する前に、敵の同盟を(外交的に)分裂させることを推奨している。つまり、その逆を実行することが相手の嫌がること(抑止)になるのだ。ただし、「相手の嫌がることをしない」というようなスタンスで、政治サイドが「抑止」についての認識が希薄であれば難しいが・・・。
 
 現状のオスプレイ騒動を見るに、どう考えてもわざわざ日米同盟の不安定さを露呈しているとしか思えず、その点で日本のメディア戦略は機能しているとは言えなそうだ。まだまだ課題は多い。
 

国としての戦略的発信を期待

 一方で、自衛隊を巡る環境がいかに厳しいかという現実について、国内向けに発信することもある程度必要ではないかと私は思う。
 
 震災後も止まらない予算・人員の削減により「どんなリスクが生じるのか」、そのメッセージは本当に出さなくていいのだろうか。
 
 必要量というのは示し難いものであるが、私たちが無意識にも容認している政策により、自衛隊にどれくらい不足が生じているのかを全く知らないでいいのだろうか。
 
 国民との意識格差をなくすためにも、国の防衛をおざなりにすることによる代償について理解してもらう必要はあるだろう。
 
 そのことは、強い防衛意思をアピールする対外的な広報戦略と相反することにもなりかねず注意も必要だが、それでも、やはり納税者たる国民が現実を認識していないことは問題が大きいだろう。
 

 お祭りや体験航海、航空祭などで見られる自衛官以上の真実はない。そういう意味で災害派遣同様、隊員一人ひとりが懸命に重大な責任を果たしている。次は、国としての戦略的発信を期待したい。


JBpress.ismedia.jpより引用
 
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陸上自衛官の帽子を作ると
他の帽子を作れなくなってしまう理由
葉県内の住宅街を入っていくと、その会社「日本官帽制帽」はある。民家と見紛うような佇まいの建物の中に入ると、十数人の女性たちが陸上自衛官の帽子を作っていた。
 
 日本官帽制帽の帽子作りは、元々、農閑期の仕事として始まった。昨今は中国製品などの登場によって国内の帽子産業は衰退の一途を辿っている。制服を着る職業でも国産帽を採用する所は少なくなる一方なのだ。
 
 「元々は教員をしていたんですが・・・」。そういう同社社長は3代目。父親が急死し、後を継いだ。
 
 かつては山形で帝國海軍の帽子を作っていたが、軍に協力していたということで故郷にいられなくなり、こちらに移ってきたのだという。
 
 この緑色の帽子、昔から外見は変わっていないが、内側は時代とともに進化をしている。あらゆる状況下でいかに心地よくかぶれるか、今なお研究を続けているという。
 
 糸の1本1本に至るまで微に細にわたってなされている気遣い、そんな帽子作りを先導してきた工場長は近年リタイアした。
 
 「休んでくださいと言っても日曜に来て作業をしていたんですよ」
 
 中学卒業から55年間の人生を帽子作りに投じた、その技術と熱意を残った職人たちが受け継いでいる。
 

大量発注の帽子を作ると職人の「手が荒れる」

 帽子作りは20〜30年経験してやっといい物ができるようになるという。
 
 いずれの装備品もそうだが、自衛隊のものは仕様が細かく厳しい。この壁をクリアするだけでも至難の業だと言われるが、仕様書には記されていなくても欠かせない重大なポイントがあるという。それは「威厳」だ。
 
「この帽子は、国民に尊敬される立場の人がかぶるのですから」
 
 同社は以前、ある有名企業から大量の発注があったが断ったのだという。理由は「仕様書が大雑把だったから」。
 
 自衛隊のものが細か過ぎるとも言えるのだが、曰く「職人の手が荒れてしまう」とのことだった。
 
 つまり技術力が落ちることを嫌ったのだ。一度、雑になってしまうと、その後、自衛隊向けの細かい作業に対応できないかもしれない。そのため、量産して一時的に利益を得ることよりも、技術を失うリスクを避けたのだ。
 
 「テレビなどで外国の軍人が出てくると、内容よりも帽子ばかり見てしまうんですよ」
 社長の見たところでは、やたらと大きくてパンパンに張っている帽子はだいたい縫製のまずいもので、陸自のように張っている部分と緩やかなカーブがあるものは珍しく、他国にはなかなか真似できないのだという。
 
 その点、評価が高いのは米軍の帽子だ。社長は米軍関係者に「どうしてそんなに良くできているのか」聞いてみたことがある。
 
 すると返ってきたのは「兵士には一番いいものを身に着けさせるのだ」という答えだった。さらに「われわれは戦う軍隊なのだ」とも付け加えられたという。
 
 余談だが、米軍では金モールにもこだわっていて、99.9%の純金だ。現在は作る職人がいなくなり、パキスタンに技術移転して製造しているという。苦肉の策でも、何とかしてその身分に相応しい金モールを調達すべく努力している様がうかがえる。
 

中国製ブラックベレーを回収、廃棄した米陸軍

 日本でも自衛官の帽子作りの職人は高齢化が進み、数人しか残っていない。完成直前に風邪をひいてしまい、納期を延期せざるを得なかったこともあったのだとか。
 
 他の職人技術と同じように高齢化や担い手不足の問題があり、せっかく築いた日本の誇るべき技術をどう継承していくのかが関係者の悩みの種となっている。
 
 国内の帽子業界全体を見ると、製造拠点を中国に移したメーカーもあれば、廃業に追い込まれた所もある。中国と提携して生き残ろうとしても、うまくいかないケースが後を絶たないという。
 
 中国の製造拠点に1万個オーダーしたら10万個届いてしまい、「違う」と言っても「うちは従業員が1万人だから10万個からしか受け付けないんだ」と受けつけられず、結局、発注側が倒産してしまったなどというケースも聞く。
 
 「うちは帽子屋なので帽子を作り続けます」
 
 そうした中でも、日本官帽制帽では卸売業のようなことはせず、日本人の手によって作る帽子にこだわり続けている。それも、単にかぶるだけのものではない、特に「威厳」と「品格」が必要な帽子に。
 
 「カッコイイ!」と子供たちに憧れられ、部下に尊敬される自衛官の帽子をとことん追求する。そうでなければ彼らがかぶる意味がないとも社長は断言する。
 
 そう言えば、かつて米陸軍のブラックベレーが競争入札で中国製になった時、兵士から不満が噴出した。それを知った参謀総長が、知らぬ間に中国製が採用されていたことに憤慨し、その全てのベレーを回収して在庫も破棄したという逸話を思い出した。
 
 「われわれは戦う軍隊なのだ」
 

 その言葉に、誰も「もったいない」などということは口にできなかっただろう。軍人の誇りとはそういうものではないだろうか。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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まるで一般人、民間フェリーの予約をする自衛隊
「やることが多すぎて仕事が進まない」と言ったら、能力がないからだと怒られそうだが、東日本大震災以降の日本はまさにそういう状況と言ってよさそうだ。
 
 本来ならば、震災の教訓を生かして、被災地および日本の復興・再生に向けたプロセスの大詰め段階に差しかかっていていい頃だろうが、あらゆるペースが遅いことは皆さんもご存じの通りである。
 

「民間と米軍の輸送力活用」が中長期的課題

 しかし、防衛省・自衛隊だけを見ても、その後、南スーダンPKOや北朝鮮のミサイル事案など、ひっきりなしに大きな出来事があり、それらに対処するだけで目が回るような日々だった。
 
 とりわけ、どんな時も真正面の仕事として取り組むことになるのが「輸送」、つまり人員や装備の移動手段である。
 
 新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の実施に向けて、2011年に防衛省がまとめた「防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップ」では、輸送力について「民間と米軍の輸送力活用」を中長期的課題としている。
 
 これは、「統合運用」と言われながらも、現状の予算縮小傾向では陸海空自衛隊の輸送力の大幅な増強は望めないことからの発想だ。
 
 事実、東日本大震災において陸上自衛隊の隊員は被災地まで九州から陸路で向かい、北海道からは民間フェリーや米軍艦艇などにより赴いた。
 
 こうした経験から、今後、いざという時にスムーズに連携がとれる体制の構築を急がなければならないのだが、取り組みはまだ手探りだ。
 

厳しい経営状況に置かれている民間フェリー会社

 4月27日に、長距離フェリー協会主催の「大規模災害時の交通手段の役割分担を考える。東日本大震災救援輸送を経験して」と題するシンポジウムが行われ、私もパネラーとして出席した。
 
 私は自衛隊を知る立場として出席し、海運や危機管理の専門家などの方々と討議させていただいたが、大変意義深い試みだったと思う。
 
 なぜならば、お互いにできること、できないことが、まだまだ多いからだ。
 
 俯瞰すると、陸自が民間フェリーの活用に乗り出そうとしているのは、予算縮小により自衛隊だけで自己完結できないためである。一方、フェリー業界が自衛隊への協力に大きな力を注ごうとしているのは、高速料金の値下げなどの影響で厳しい経営状況に置かれているということも1つの要因とも言える。
 
 そう考えると、フェリー会社に自助努力で設備投資を求めることも、フェリー活用にかかる経費を防衛省・自衛隊が捻出することも、そもそも困難だ。
 
 その大前提を念頭に、いくつかの問題点について考えていかねばならないだろう。
 第1に、「民間フェリーを活用」と言っても、その隻数は年々先細り傾向にある。業界自体の経営が安定することがまず必要だ。
 
 次に、そもそも地震などが発生した後は、津波の危険性があるために制限がかかり、フェリーを動かせなくなってしまう。平素から国土交通省との意思疎通を図り、災害時には柔軟に対応してもらわなくてはならない。
 
 そして、ランプ(岸壁に渡す通路)を備えていない船も多いなど、設備の不足もある。また、港にはどこでも入っていいわけではないので、有事に際しては許可申請などを包括的に行うことも求められる。
 

国の主導で柔軟な輸送体制を

 今のところ、自衛隊が民間フェリーを利用する際は、防衛省・自衛隊とフェリー会社が個別に調整することになっている。だが、本来は政府によりなすべきことは多い。
 
 先般の北朝鮮ミサイル事案において、陸上自衛隊員は沖縄の石垣・宮古・与那国島に民間フェリーで移動した。この時、「営業の邪魔をしない」ことが条件とされ、自衛隊は民間人と同じように必要な日に「予約」をした。強制力はないので、もし先に他のお客さんが入っていたら運航できなかったわけだ。
 
 ちなみに、北朝鮮がミサイルを打ち上げたのは4月13日だったが、陸自隊員がフェリーで帰路に就いたのは4日後の17日であった。これは発射予告が12〜15日の間であったことを踏まえ、それより後の17日にチャーターしてあったからである。
 
 いつでも帰れるようにフェリーを何日も押さえたりすれば、キャンセル料が発生してしまう。そんなお金はとても払えないというわけだ。
 
 現状では、フェリー各社の厚意により大きな問題もなく利用できているが、今後起こり得る様々な状況に鑑み、国が主導してもっと柔軟に自衛隊が使用できるようにしなければならないだろう。
 
 そのためには、「官と民の協力のもとで・・・」などという決まり切った文言だけにとどまらない踏み込んだ施策を期待したい。
 
 端的に言えば、国としてフェリー業界への補助を促進することではないだろうか。有事対応のためのコスト負担など、現在はフェリー会社がそれぞれの判断で行っている。
 

 政府は、フェリー政策も含めた全体的な輸送対策を構築すべきである。これは大規模災害のみならず、想定される有事に備えるための喫緊の課題ではないだろうか。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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「任官辞退の防大卒業生に250万円」の功罪
95%が自衛隊員になる事実を前向きにとらえよ
 
(1)からの続き
 
 しかし、4年間頑張ってみて、卒業時にどうしても永年続く自衛隊での組織の生活に不安を覚えるとか、自衛隊以外の途を選びたいという学生が5%ほど出てくるのはある意味当然であろう。
 
 入ってきたときに最初から自衛隊の幹部を志すなどというのは少数派だった学生の95%が任官する。学生舎での生活指導に当たる自衛官としての先輩である指導官が、熱心かつ真剣に学生の相談に乗り、アドバイスし、説得した結果の任官辞退者5%である。
 
 ところが今回の法律改正をして、そういった学生から償還金を取るという。250万円払えば公明正大に「任官しません」と言える制度になった。
 
 大学生を持つ親にとって250万円は、安い金額ではないにしても普通の大学へ4年間払う金額を思えば必ずしも払えない額ではないだろう。
 
 防衛大学校が幹部自衛官の養成のための学校であり、主要供給源であることは将来も変わらない。そうであれば学生隊の指導教官は今まで以上の熱意と時間を卒業予定者の指導にそそぐ必要が出るだろう。
 
 「私は250万円払います」という学生をどう説得するのだろうか。おそらく任官辞退者は増え、したがって入校時の採用学生の数を増やすことになる。償還金どころではない予算増加が必要となるであろうが仕方がない。しょせんは事業仕分け程度の中から出た決定である。
 
 任官辞退に対する償還金の考えは昔からあった。しかし高名な文学者が防衛大学校学生を世代の恥辱といい、自衛官が税金泥棒と侮辱される時代に、償還金なんか課したら誰も防衛大学校に入学するものがいなくなるのではないかという危惧からその話はいつも立ち消えとなった。
 
 しかし今般250万円の償還金を取ると決めた以上、受験生の数、すなわち質を確保できるという見積もり、もしくは確保する方策は政府・防衛省として当然あるのだろう。
 
 つまらないことを決めたものだ、という慨嘆が筆者の最初の反応だが、決めた以上、前向きに考えてもいいかもしれないと思い直した。
 
 今までの任官辞退者は心のどこかに複雑な思いを持って自衛隊以外の途へ進んでいったものが多いのではないかと思う。しかしと言うべきか、だからと言うべきか、彼らのほとんどは防衛大学校の教育とそこでの経験に深い愛着と郷愁を持ってその後の人生を歩んでいった。また心のどこかに国防の一端をなにがしか担うべきだと思いつつ人生を歩んでいったのではないか。
 
 防大創設50年を過ぎ、卒業生の3分の1は、すでに自衛隊をも退職し民間社会に帰っている。自衛隊を退職して一民間の人間になってもやはり国防のことに思いを致す今、改めて任官辞退をして企業人として生きてきた彼らの話を聞けば、やはり彼らも社会の中でなにがしか国防について考えて生きてきたものが多いことを知る。
 
 筆者自身は自衛隊に奉職して直接的に国防に身を挺してきたことを誇りに思っているが、任官辞退した卒業生が一社会人として国防に意を用いて生きてきたとすれば、またそれも防衛大学校の教育の国家への還元ではないか。
 
 防衛大学校では、「卒業して小隊長になれば、自分の親くらいの年の部下もできる。それが幹部である。人の上に立つにふさわしい人間になれ」「君たちは自衛隊の将来を担っていくのだ」ということを常に言われ、教室での勉強も学生舎生活も、そしてクラブ活動も、すべてそこに収斂するのが防衛大学校の教育である。
 
 いい意味でのエリート教育をし、世のため、人のため、国のために尽くせということを真正面から教える大学が防衛大学校以外にあるのだろうか。
 
 学費がタダだからという理由で入ってきた1年生が、卒業するときは人の上に立つにふさわしい人物になりたい、社会の役に立つ人物になりたいと思う人材に育っていく。これこそ今の日本に必要な人材ではないか。
 
 であるならば、250万円払うことで公明正大に他の途を選べるのであるから、防衛大学校の募集人員を1.5倍くらいに増やし、積極的に卒業生の3分の1くらい民間企業など一般社会に還元するのも大いに日本のためになるだろう。いや、必然的にそうならざるを得ない。
 
 優秀な人間が数多くやめてしまったら自衛隊が困るという意見もあろうが心配することはない。外へ出た優秀な人材が活躍すれば、受験生も増えレベルの底上げができる。
 
 あまりショートレンジで考えないことである。さらには、優秀な人こそ自衛隊に入りたいと思わせるくらい、自衛隊の幹部としての人生をより魅力的にすることは今回の決定をした政治の課題でもある。
 
 また6年間の義務年限も必ずしもマイナスだけに捉えることはない。筆者が米陸軍歩兵学校へ留学した際の同級生はほとんどが陸軍中尉の階級だったが、大尉になって中隊長を経験すれば、社会で高く評価されるという。
 
 ある同級生は陸軍士官学校卒だったが、5年の義務年限まで務めたのでご奉公はそろそろ終わって民間会社へ行くんだと屈託なく話すのを聞いて、なるほどそういう考えもあるのかと驚いた記憶がある。
 
 防衛大学校卒業生にとっては自衛隊における6年の義務年限が終わった時は、そこで退職するかどうかを考える1つの結節であろう。自衛隊としてなるべくそこでの退職者を少なくしようとするのか、ある程度の退職者を社会への還元として積極的にとらえるかは議論のあるところだろう。
 
 筆者としてはある程度の数の幹部自衛官を積極的に社会に出ていかせていいと思っている。防衛大学校や幹部候補生学校などの教育や、部隊における経験を経た若い幹部は文字通り貴重な人材であるがゆえに、社会での活躍も大いに期待できる。自衛隊以外でも日本に貢献できる人材である。
 
 偕行社の山本卓眞会長が亡くなられた時の新聞報道に、陸軍軍人であったことを戦後の企業人としての資質において好意的に捉えた記事があった。
 
 陸士・海兵出身で、経済界で活躍した人材が第一線を退いた時期と日本経済の衰退が始まった時期が一致するのは偶然だけだろうか。安全保障に関する洞察、戦術的判断能力、人としての倫理観、国家観を確立して企業人として活躍してきた人たちを継いで、防衛大学校卒業生が力を発揮できるのではないか。
 
 もちろん就職援護など、今まで以上に親身にすることは当然であり、援護教育なども行い資格を持って退職できるような配慮もあっていい。
 
 また、女性自衛官に対する配慮も必要であろう。防衛大学校卒業生で6年勤務すれば30歳くらいになるが、今までは結婚出産で退職するのに義務的な制約はなかった。
 
 しかし今後は義務年限として勤務を要求するのであるから、義務年限の間は少なくとも出産しても託児所で困ることなどないよう、主要駐屯地には託児所の設置も急がねばなるまい。
 
 そうなれば、当然250万円懐に入れて最初から民間へ行くことを前提として入学してくる学生もいるだろう。学生指導の難しさは倍増する。
 
 ここで最も重要なことは、卒業時に任官しないことは認めても、防衛大学校が幹部自衛官養成のいわゆる軍学校であることに、いささかの変化もあってはならないということである。
 
 今までは原則的に全員が幹部自衛官になることが前提であったから、軍学校的色彩をある意味で薄めて学業、知的水準の向上を重視する方向性を打ち出しても、基本的価値観は軍事的合理性を大前提にしていた。
 
 しかしこれからは全員が幹部自衛官になることを前提にしないわけだから、極めて明示的に防衛大学校は軍学校の性質を強くしていく必要がある。
 
 幹部自衛官、国軍の将校が、高い知的水準を求められることは言うまでもなく、だからこそ医師、弁護士と並ぶ高い専門性を持つ職業とされているのである。
 
 しかし、幹部自衛官にとって知的水準の高さが十分条件ではない。血と泥にまみれ、時として合理、不合理を超越する任務達成、勝利追求へのあくなき執念、部下への濃やかな愛情、武力という圧倒的な力を扱うものとしての高い倫理感、これらを支え、維持する気力・体力、そして社会人としての常識、すべてをバランスよく持つことを要求される職業である。
 
 それが防衛大学校の伝統である「立派な紳士、淑女でなければ立派な幹部自衛官になれない」という考えにつながるのである。
 
 このような教育は決して知識教育だけでは成立せず、したがって各国とも国軍将校育成の士官学校などを設置しているのである。
 
 我が国は防衛大学校を陸・海・空幹部自衛官育成のために創設した。すなわち新たな時代の国防組織のリーダーを育成することであり、学生に国家防衛の志、廉恥、真勇、礼節といった精神徳目、軍事組織たる自衛隊に必要な価値観を身につけさせることに大きな意義がある。
 
 これらが身について初めて、防衛大学校卒業生として民間でも活躍できるのである。自分は卒業後民間に行くからという理由により、軍事的必要性で行う教育、訓練、そして幹部自衛官としての倫理などに抵抗感を示す学生は、在学中に確実に排除しなければならない。
 
 もしこれができなければ防衛大学校は、入学金・学費合計250万円で卒業できるただの一国立大学になってしまい、その存在意義を失う。
 

 そうならないためには、防衛大学校関係者一丸となってよりきめ細かい学生教育と指導を継続し、伝統維持のため防衛大学校卒業生を学校長に任命することを含めた継続的改革が必要になるだろう。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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