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軍事介入に消極的になった米国、
そして中国がほくそ笑む 2013.09.19(木)北村 淳
シリアのアサド政権による化学兵器使用に対する懲罰的ミサイル攻撃を実施しようとしていたオバマ大統領は、国際社会からの支持を思ったように得ることができず、国内世論も反対が賛成を大きく上回っていたため、連邦議会による軍事攻撃賛成決議を得て、地中海で待機中の米海軍部隊にゴーサインを出そうと考えた。
ところが、上院外交委員会が決議案を採択したものの、上院や下院での決議案採決以前にロシア政府による「シリア化学兵器廃棄案」が提示されたために、連邦議会での決議も軍事攻撃も延期されてしまった。
こうした「大統領が軍事力行使発令に先立って連邦議会に事前承認を求める」という前例は、アメリカの敵勢力あるいは敵性国家にとっては歓迎すべき出来事であると言える。
とりわけ、これまでアメリカが“仕切って”きた海洋への侵攻戦略を実施中の中国にとっては、まさに大歓迎の出来事である。
アメリカ連邦議会の承認は法的には必要なかった そもそもオバマ大統領は、アサド政権に対する懲罰的軍事行動を実施するのに先立って、アメリカ連邦議会の承認を法的に必要としていたわけではなかった。
1973年に連邦議会によって採択された「大統領の戦争権限に関する決議」によると、アメリカ大統領は、アメリカの国益に関わる緊急事態に対処するために必要な60日以内の軍事行動を、連邦議会による宣戦布告や事前の承認なしに命じることができる。ただし、軍事行動発令後48時間以内に連邦議会に報告する義務がある。そして、60日以内に連邦議会の承認が得られなかった場合は軍事行動の延長はできない。ただし、撤収のために30日以内の追加期間を設けることはできる。
要するに「60日以内の軍事作戦」ならば、アメリカ大統領は連邦議会の承認なしにアメリカ軍を動かすことができるのである。これに対応して、アメリカの先鋒部隊として常に緊急出動に備えている海兵隊は、60日間までの作戦行動ならば陸軍などの増援なしに行動できるような態勢を維持している。
したがって、今回のアサド政権に対する懲罰的長距離巡航ミサイル攻撃も、連邦議会の決議を事前に求める必要は法的には存在しなかった。しかし、国内世論での反対意見が大きく賛成を上回っていたために、あえて連邦議会の事前承認を得ようとしたのであった。
今回のオバマ大統領の判断によって、今後、アメリカ自身に対する直接的軍事攻撃への反撃以外の軍事行動(第三国での内戦への介入や、第三国間の紛争に対する軍事介入)をアメリカ大統領が発動するにあたって、国内世論の賛同が低調な場合には、連邦議会の事前承認を求めて武力発動に対する“お墨付き”を得ようとする可能性が極めて大きくなった。
強い世論の反対 米国メディアによる世論調査によると、2001年9月11日にアメリカ本土内で発生した同時多発テロの直後(10月7日)に開始されたアフガニスタンでのアルカイダ・タリバン攻撃の際は、アメリカ国内世論の80%以上が攻撃に賛成した。
また、イラクのサダム・フセイン政権の大量破壊兵器保有と国内での圧政を口実にして2003年3月20日に開始されたサダム・フセイン政権打倒のためのイラク攻撃に際しても、アメリカ国内世論の60%以上が攻撃に賛成した。
しかし今回のシリアに対する軍事介入に関しては、ウォールストリート・ジャーナルとNBCの世論調査によると「賛成33%・反対58%」、CBSの世論調査によると「賛成30%・反対61%」、そしてCNNの世論調査によると「賛成39%・反対59%」、そしてFOXの世論調査では「賛成36%・反対61%」という数字が示された。
軍事介入賛成は30〜39%と若干の幅が生じているが、アフガニスタン戦以前の80%、イラク戦以前の60%からは激減してしまった。そして、シリアへの軍事介入に反対の世論は58〜61%とほぼ6割の世論が反対の立場を示していることになった。
このような数字の背景には、2001年10月7日に開始されていまだに継続しているアフガニスタン戦争や、 2003年3月20日から2011年12月15日まで続いたイラク戦争などの体験がある。「そのような第三国での軍事紛争に介入して、アメリカの国益が増進したのであろうか?」という多くのアメリカ国民の心に宿っている強い疑問からもたらされたものと言えよう。
他国の面倒まで見る余裕がなくなってきたいまだに続くアフガニスタン戦争。爆発物処理中の海兵隊
(2013年、写真:USMC)
ちなみに、現在も継続中のアフガニスタン戦争におけるアメリカ軍将兵の戦死者数は、2013年末までの公式統計によると2271名に上っている。またイラク戦争でのアメリカ軍将兵の戦死者数は4409名、戦闘中の負傷者数は31928名とされている。
イラク戦争終決までのイラク戦争とアフガニスタン戦争での直接戦費は、ブラウン大学の推計によると、少なくとも3兆2000億ドル(およそ320兆円)であり、この他にも同時期における占領統治や再建に投入した費用は少なくとも1兆ドル(およそ100兆円)と言われている。
そして、2013年5月に発表されたハーバード大学の試算によると、イラク戦争とアフガニスタン戦争における戦争関連諸費用は、およそ6兆ドル(およそ600兆円)であり、今後も負傷した将兵や退役軍人に対する治療費などの莫大な費用を支出し続けることになるという。
このように7000名近いアメリカ人の生命を犠牲にし、数万名の負傷兵を生み出し、6兆ドル(およそ600兆円というと単純計算で毎年50兆円ということになり、日本の年間国家予算総額の半分以上も、毎年毎年、戦争関連費用として支出してきたことになる)にも上るアメリカ国民の税金を投入した結果、アフガニスタンやイラクが見違えるような平和で民主的な国家に生まれ変わったならば、多くのアメリカ国民のプライドが強化されたであろう。
あるいは、それらの戦争によりアメリカの国益、それも国民が身近に感ずる国益が増進したのならば、多額の血税を投入した甲斐があったと考えるかもしれない。
イラク戦争最大の激戦地ファルージャで戦闘中の海兵隊
(2004年、写真:USMC)
今回のオバマ政権による対シリア軍事攻撃に対して6割前後の世論が反対したということは、「もういい加減に第三国に対する軍事介入は差し控えるべきだ」という感情が多くのアメリカ国民の間に浸透しつつあることを示す何よりの証拠と言えよう。
米軍による日本救援のタイミングは確実に遅くなる シリアに対する軍事介入は第三国の内戦への介入であり、日中軍事衝突が発生した場合にアメリカが軍事介入するのは条約に基づく同盟国救援であるため、両者を同段に論ずることはできない。しかし、第三国の内戦への介入以上に第三国間の領土紛争には介入を躊躇するのがアメリカ外交政策の伝統的基本原則である。そのため、尖閣諸島や先島諸島の領有権や東シナ海日中中間線確定などを口実にして日中軍事衝突が勃発した場合、そう簡単に本格的軍事介入が実施されることはあり得ない。
上記のようにアメリカ国民の多くが第三国に対する軍事介入に積極的でなくなったというよりは反対するようになってきている風潮では、民主党政権であろうが共和党政権であろうが日中軍事衝突に対して日米安全保障条約を口実に本格的軍事介入を実施するにあたって連邦議会の事前承認を求めざるを得なくなる可能性は極めて高いと言わざるを得ない。
そのような場合、1500名もの無力なシリア市民が化学兵器で虐殺されたらしいという状況下(以前のアメリカの国民性では、この種の“弱者を助け、悪者を懲らしめる”軍事行動に対する反対は極めて少なかった)ですら、6割のアメリカ国民が軍事力行使に反対している事実から類推すると、アメリカ国民の目から見ると立派な軍隊である自衛隊を擁するだけでなく、世界第3位の経済力を持つ日本を「なぜ多くのアメリカ人の血を流し多額の血税を投入して救援しなければならないのか?」という素朴な疑問が湧き上がるのは避けられない。
まして中国共産党は、日本政府や日本メディアと違い、常日頃、米国内で連邦議会や政府諸機関、大手メディアから地方新聞社に至るまで幅広く強力なロビイ活動やメディア対策といった情報戦・特殊作戦を実施している。そして最近では多くの大学や研究機関それにシンクタンクなどに対しても極めて大きな影響力を確立している。したがって中国ロビイや中国共産党の息がかかったメディアや研究機関の宣伝工作などによって、尖閣問題に関するアメリカ国内での世論も中国寄りに誘導されつつある。
いよいよ日中軍事衝突という事態が迫った際には、「世界有数の経済大国である日本は、自分たち自身の血を流すのが嫌だからアメリカ軍を引き込んでアメリカの若者の血を流させて日本の国土を守らせようとしている」といった類のデマ宣伝を各方面に垂れ流すのは必至である。
実際、筆者周辺の軍情報関係者や研究者たちの間でも、「中国側のアメリカ政界・財界・メディア・学界に対する食い込みには目を見張るものがあり、第2次世界大戦以前に日本が中華民国ロビイに敗北した状況など比較にならないほど中国共産党は情報戦・特殊作戦で対日勝利を収めている」という事実は常識になっている。
このような状況下で、日中軍事衝突が勃発した場合には軍事介入に反対が7割・賛成が2割といった状況が現出しても全く不思議とは言えない。もちろん、中国ロビイの術中に取り込まれている多数の連邦議会関係者たちは、「第三国間の領域紛争への不関与」という伝統的原則を盾にして局外中立を主張することは間違いない。すると、たとえ大統領はじめ政権首脳が極めて親日的であったとしても、世論の強い反対にさらされ、連邦議会の事前承認を得るのにも手こずる結果となってしまう。
したがって、もし日米安保条約に基づいて米軍による本格的軍事介入が実現したとしても、介入のタイミングは決して早くはなく、(現状の防衛体制が続く限り)日本側が相当甚大な被害を被ってからになってしまうであろう。
ますます急務な自主防衛力確立 本コラムのような予測に対して、「強固な同盟関係がある以上、悲観的すぎる」と考える向きも少なくないであろう。だが、そのような考え方は日本側の希望的期待に過ぎない。
日本にとってはアメリカが“全て”であり“頼みの綱”であるが、アメリカにとっては日本は“多数の中の1つ”にすぎない。そして、アメリカ軍事戦略にとって日本に確保している基地は極めて有用であるが、もしそれらを失陥しても代替戦略はいくつか用意しているのである。
「余裕がなくなってしまったアメリカ社会」が、少なくとも外見上は強力な軍隊を保有している日本を救援するために、多くの人命と多大の戦費を躊躇せずに提供する、と期待するのは、あまりにもアメリカ社会の現実から乖離した虚しい期待と言わざるを得ない。
オバマ大統領が発動しようとした対アサド政権軍事攻撃が、ある意味ではアメリカの国内世論に阻まれたと言える状況は、日本の国防にとっても暗雲を投げかけたのである。
日本が軍事衝突に直面した際に、たとえ米軍の救援を得られたとしても、日本単独で相当の期間にわたる防衛戦を戦い抜かねばならなくなりつつある厳しい現状に対応して、真に効果的な自主防衛能力の強化を(理念だけでなく)実質的に推進しなければならない。 JBpress.ismedia.jpより引用
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アメリカ
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台湾海峡危機で露呈した米国の本音
曖昧(あいまい)戦略の米国は尖閣有事に介入するか
2013.08.26(月)樋口 譲次
(2)からの続き
(2)防衛力を増強し、自国防衛により主体的に取り組め
中国やインドなどの飛躍的な台頭によって、米国の地位とパワーが相対的に低下していく傾向は、米国国家情報会議「GLOBAL TRENDS 2030」も予測する通り、否定し難い世界的な潮流と見られている。
米国は、中国の覇権拡大に伴い、リバランシング(rebalancing)あるいはピボット(pivot)によってアジア太平洋地域を重視した戦略態勢の強化に努めている。
しかし、今年3月から発効した「歳出強制削減」によって、米国防予算は10年間で約5000億ドル(約46兆円)の大幅な削減を求められており、アジア太平洋地域における戦力増強やその運用を縮小せざるを得ない事態に追い込まれている。
チャック・ヘーゲル米国防長官は、7月30日の国防総省における記者会見で、「『米議会が強制削減の見直しを行わなければ、海軍の空母11隻のうち最大3隻が運用停止になる』と述べて、即応戦力の維持に強い危機感を示した」(8月2日付産経新聞)。
国防総省の強制歳出削減に伴う「戦略的選択・管理の見直し」と題する報告書では、陸軍54万人(2013年2月現在)が削減目標の49万人よりさらに7万人少ない42万人に削減されるなど、大規模な削減計画があることを明らかにしている。
我が国を取り巻く安全保障環境は、中国の脅威が増大する一方で、同盟する米国の地位とパワーが相対的に低下し、アジア太平洋地域におけるプレゼンスや即応態勢に重大な懸念が表明されるなど、一段と厳しさを増している。
そのようななか、我が国の安全保障・防衛体制の強化は必然の要請であり、「自分の国は自分の力で守る」の基本原則を再認識し、防衛力を大幅に増強して、自国の防衛に主体的に取り組むことが何よりも重要である。
我が国の防衛努力は、防衛費の対GDP比0.8%という数字が示すように、列国と比較して極めて不十分である。
主要国の国防費(2010年度)は、対GDP比にして、米国4.6%、中国2.2%、ロシア5.3%であり、英国、ドイツ、フランスは平均して概ね2%である(平成24年版「日本の防衛」)。
我が国は、今後ますます強まる中国からの一方的な軍事的挑戦を確実に抑止し、自国の「生存と安全」を確保しなければならない。
そのためには、安倍政権下で今年末策定予定の新「防衛計画の大綱」において、欧米列国並みに「防衛費を10年間に倍増(対GDP比2%に)する」との大胆かつ明確な方針を打ち出すことが、最もその目的達成に資することになるのではないだろうか。
(3)日米同盟の深化と関係諸国との安全保障・防衛協力の強化を図れ
日米同盟を維持し、それを有効に機能させるためには、1.価値・目的の共有、2.負担の共有、3.リスク(危険)の共有、そして4.利益の共有の4要件が不可欠である。
「思いやり予算」を中心とする接受国支援(HNS)によって、我が国の2.負担の共有は、一定の成果を上げている。しかし、いま論議されている集団的自衛権の問題は、これまで我が国が一方的に同盟による4.利益の恩恵を受けながら、3.リスク(危険)の共有を避けてきたことにある。
同盟関係は、日本が自から国を守るために必死の覚悟で行動することが大前提であるが、同時に、1.価値・目的および4.利益を共有するため、同盟国とともに血を流す覚悟が無ければならない(3.)。自ら血を流す覚悟のない国を、同盟国の米国とて、一方的に米国兵だけに血を流させてまで守る義務はないのである。
日本の安全保障・防衛戦略は、我が国の政治や国民意識の現状を踏まえると、当分の間、米国の拡大抑止(「核の傘」)への依存なしには成り立たないであろう。
我が国は、「自分の国は自分の力で守る」を基本として、格段の防衛努力を行うとともに、集団的自衛権の問題を早急に解決しなければならない。
同時に、日米首脳会談や「2+2」の場で拡大抑止を両国の公式テーマとして取り上げ、ガイドラインの見直しを通じて共同の核抑止戦略を構築し、共同作戦計画の作成、日米共同調整所の常設など、米国の拡大抑止の信頼性を高める方策の具現化が急務である。
他方、米国は、下図の通り、極東(アジア太平洋地域)だけでも、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、オーストラリア、ニュージーランドとの間で安保条約や相互防衛条約を締結している。極東(アジア太平洋地域)有事の際には、これらの国との同盟上の義務を果たさなければならない。
その米国が、それぞれの同盟国と中国などとの間で抱える島嶼等の領有権問題に対して「主権中立」の姿勢をとり、軍事介入の言質を与えることを回避しつつ、曖昧戦略によって同盟上の義務を果たそうとする立場を選択せざるを得ない事情は、全く理解し難いことではないであろう。
したがって、我が国は、尖閣諸島などの有事に際し、自国の領土や主権を守るための力と態勢は自ら整備しなければならないのである。
そのうえで、米国の曖昧戦略を有効に機能させるためにも、米国が現実的に介入する条件や可能性を作為し、それを顕示して中国の軍事行動を牽制する主体的な取り組みが必要である。
すなわち、日米ガイドラインを基に、両軍の第一線レベルにまで至る共同作戦調整所や共同作戦規定を整備し、例えば尖閣諸島防衛を想定した共同演習・訓練を目に見える形で実施するなど、日米同盟をさらに深化してその実効性を高め、我が国の抑止力の強化に万全を期さなければならない。
一方、中国の海洋戦略は、尖閣諸島の略取にとどまらない。尖閣諸島は、あくまで中国の海洋進出の前哨戦であって、対米核戦略上の確実な報復戦力(第2撃力)としてのSSBNの潜伏海域を南シナ海に確保しながら、目標は第1列島線そして第2列島線の海域を支配し、西太平洋からインド洋にわたる地域に覇権を確立することにある。この中国の覇権的拡大に対抗して、その挑戦を抑止できるのは米国をおいてほかにない。
米国は、前述の通り、極東(アジア太平洋地域)有事の際には、多くの国との間の同盟義務を果たさなければならない。
我が国は、「日米安保中心主義」によって我が国の安全保障・防衛を果たそうとしているが、米国の広範多岐にわたる同盟義務を考えた場合、極東(アジア太平洋地域)有事に多方面に分散して支援せざるを得ない米国の軍事力に大幅に依存する安全保障・防衛体制は、すでに成り立たなくなっていると考えるべきではないか。
あえて付け加えれば、本地域の主要国であり、世界第3位の経済大国である日本が、いまだに「日米安保中心主義」の安全保障・防衛政策を掲げること自体、もはや滑稽を通り越して、恥ずべきであると言われても致し方ないのではないか。
むしろ、これから米国の地位とパワーが次第に低下する趨勢を踏まえるならば、日本は自らの防衛に主体的に取り組むのは当然であり、さらに、極東(アジア太平洋地域)における米国のコミットメントを後押しする責任ある役割を求められている、と強く認識しなければならないのではないだろうか。
中国の戦略は、西太平洋を焦点として、北極海からインド洋の広域に及ぶ壮大かつ息の長いものであり、日本が独力でこれに立ち向かうことは困難である。
我が国は、米国との同盟を堅持しつつ、台湾およびフィリピン、ベトナムなどのASEAN(東南アジア諸国連合)各国、オーストラリア、インドなどとの戦略的連携が欠かせない。
特に、台湾の帰趨は、我が国に死活的影響を及ぼすことから、日本版「台湾関係基本法」を制定して、平時から安全保障・防衛協力を行なうなど、日米安保体制を基軸として、中国による「力ずくでの挑戦」を受けている周辺諸国との連携を一段と強化できるか否かが、今後の我が国の「生存と安全」を左右する重要な鍵となるのは間違いなかろう。 JBpress.ismedia.jpより引用
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台湾海峡危機で露呈した米国の本音
曖昧(あいまい)戦略の米国は尖閣有事に介入するか
2013.08.26(月)樋口 譲次
(1)からの続き
大陳島砲撃と同日(11月1日)、アイゼンハワー大統領は、ダレス国務長官およびチャールズ・ウィルソン国防長官と緊急に協議し、中国の軍事行動に対して「米国は基本的に大陳島をはじめとする大陸沿岸諸島を防衛するため、武力行使を行わない」ことを決定し、台湾海峡近海を警備していた第7艦隊はあくまで「防御」任務に徹することを確認した。
また、国府には、中国に対する報復行動を行わないように要請するとともに、中国による砲撃の拡大を防ぐため、国府軍に対して兵站支援を強化する方針を打ち出した。
11月2日の国家安全保障会議(NSC)において、米国は、新たな台湾政策として下記の3つの原則を決定した。
(1)国連安保理停戦案提出の有無にかかわらず、米華相互防衛条約締結に向けて米台交渉を開始すること
(2)米国が米華相互防衛条約締結の意思を国連安保理停戦案の提出以前に、あるいは同時に公表すること
(3)国府に国連安保理停戦案の内容を認めさせるとともに、米華相互防衛条約の「適用範囲」に限定を加えること
米華相互防衛条約の締結交渉は、台湾側の建議(イニシアティブ)によって、1954年11月2日に開始され、12月1日の締結まで9回に及んだ。
特に、(3)の「適用範囲」については、米華相互防衛条約締結交渉において両国の主要な争点の1つになったところであるが、米国は、台湾の対中軍事力行使に対して厳しい制限を加えるという方針を打ち出した。
米国は、米華相互防衛条約を反共防衛ラインの一部を形成するとの戦略的な意味合いで捉えるとともに、あくまで、台湾海峡危機を終息させ、台湾海峡の安定を図るものと見なしていた。
そして、本条約があくまで米台両国が協力して「防衛」に専念するための条約であり、国府が「大陸反攻」を行うことを許さず、中国から受けた攻撃には報復措置を行わないことを締結の条件と考えていた。
他方、国府(台湾)には、米華相互防衛条約の締結によって国府の正統性を認めさせ、国際的地位を高めようとの思惑があった。そのうえで、米国の支援なしに「大陸反攻」はなし得ないとの認識の下、「大陸反攻」に固執せず、また、その意思はないことを強調しつつも、条約の条文にそのことを明示することは避けるべきであると主張した。
明文化することによって、国府が中国の軍事力に屈服した印象を与え、国府(軍)の士気を低下させるのみならず、中国の軍事行動をさらに助長させることを懸念したからである。
この結果、米台両国は条約が「防衛」に専念することを認め、また、国府の強い要請を受け入れて、「大陸反攻」を行わないという趣旨の文言を盛り込むことは避けるとの決定を行った。
米華相互防衛条約締結交渉の最大の焦点は、前述の通り、防衛条約の「適用範囲」をどのように規定するかにあった。
米国は、太平洋地域の安全保障上不可欠な「鎖」の一部として、「台湾・澎湖諸島」を「死活的」として位置づけ、「台湾・澎湖諸島」の安全保障が脅かされることになれば断固として戦う意思があることを国府側に示した。
しかし、「台湾・澎湖諸島」以外の地域、つまり、金門・馬祖島や大陳島をはじめとする「大陸沿岸諸島」防衛への関与については、中国をいたずらに刺激し、さらには米中軍事対決に発展する可能性を懸念して、あくまで消極的であった。
結局、1954年11月2日の米国家安全保障会議(NSC)において、「適用範囲」はあくまで「台湾・澎湖諸島」とし、「大陸沿岸諸島」への対応については、「曖昧(fuzzing up)」にしておくのが望ましいとの結論に達した。
「中国が大陸沿岸諸島を攻撃した場合、米国がいかに反応するか共産中国を疑心暗鬼にさせておく」ことを、米国政府は狙った。つまり、米国は、「適用範囲」を曖昧あるいは柔軟にすることによって、中国へのいたずらな挑発を避けると同時に、中国の軍事行動を牽制しようと試みたのである。
これに対して、国府側は、中国にとって大陸沿岸諸島が「台湾解放」を実現するための「足がり」として戦略的に重要な価値があることを強調し、その防衛の重要性を主張した。
最終的には、「適用範囲」に「大陸沿岸諸島」を明記しない代わりに、「(「台湾・澎湖諸島」以外の)その他の領域(other territories)についても適用される」との文言を付け加えた。大陸沿岸諸島も「適用範囲」に含まれる可能性がることを示唆する表現とすることによって、米台相互の合意が成立するに至ったものである。
米国の「恐るべきジレンマ(a horrible dilemma)」と我が国の防衛 米華相互防衛条約締結交渉を通じて露呈した米国の本音と採用した戦略は、尖閣諸島有事における米国の対応を想定するうえで、きわめて例示的である。つまり、尖閣諸島有事に際して、米国には「恐るべきジレンマ(a horrible dilemma)」があり、「尖閣諸島に関する米国の立場」には、そのジレンマが内包されているとは言えないだろうか。
米国は、尖閣諸島防衛への介入によって中国との全面的な軍事衝突に拡大することは何としても回避したい。
一方、中国の尖閣諸島への攻撃を黙認し、あるいは介入を完全に放棄すれば、中国の軍事行動はエスカレートし、東アジアにおける日本、台湾、フィリピン、ベトナムなどの安全保障が脅かされるとともに、各国との同盟の信頼性を著しく損なうことへの懸念がある。
その結果、米国は、「(中国との)尖閣諸島の帰属に関する実力行使を伴う国際紛争の場合、日米安保は発動しない」(モンデール元駐日大使)。
一方、中国が尖閣諸島を攻撃した場合、米国がいかに反応するか中国を疑心暗鬼にさせておくため、「尖閣諸島は、日米安保条約第5条の適用対象である」(クリントン国務長官)として、「適用範囲」に「曖昧(fuzzing up)」性や柔軟性を持たせることによって、中国へのいたずらな挑発を避けると同時に、中国の軍事行動を牽制しようと考えていると見て間違いなかろう。
当初の問題設定に戻れば、米国の真意は、モンデール元駐日大使とクリントン国務長官の双方にあり、いずれも米国の立場を表明していると言えるのではないだろうか。
では、我が国の防衛は、どうあらねばならないのか――。
(1)領域(沿岸)警備、特に国境防衛を強化せよ
我が国では、尖閣諸島有事に際して、米軍への来援期待度が大きい。しかし、尖閣諸島は日米安保条約の「適用範囲」であるとの見解は、あくまで米国の曖昧戦略上の立場を表明しているに過ぎないと見るのが自然で、尖閣諸島有事に「米国が助けに来てくれる」と安易に考えるのは、いかにも早計である。
もとより、尖閣諸島の防衛は、国境の防衛であり、寸土たりとも譲れない日本の領土主権に関わる問題であるが、我が国では、その意識が希薄で、自助自立の体制も不十分である。
諸外国の沿岸(領域)警備のあり方は、安全保障あるいは国防を第一義的に捉え、その役割を準軍隊である国境警備隊か正規軍(国防軍)に担わせている。
我が国では、戦前、沿岸防備については海軍が担任していた。しかし、戦後、占領軍の非軍事化(非武装化)・弱体化政策によって、陸海軍はことごとく解体され、安全保障あるいは国防の機能が極度に制限された。
その戦後体制は今日までなお続き、沿岸警備は、一義的に「海上の安全及び治安の確保」を任務とする海上保安庁が対応することになっているため、ただ単に警察機能(活動)として捉える傾向が強い。
中国は、歴史的にも国際法上も疑いのない我が国固有の領土である尖閣諸島を、実力によって実効支配の実績作りを本格化させている。この中国の一方的で、無法な挑戦を断固として払い除けるには、沿岸(領域)警備、特に国境防衛の強化は、もはや避けて通れない。
そのためには、海上保安庁の組織規模や装備を強化し、準軍事組織に制度変更するか、「領域警備法」を制定して自衛隊に領域(沿岸)警備の新たな任務を付与するか、あるいはその2つを同時並行的に行なわなければならない。
そして、国境の島には、普段から一定の部隊を配置することを基本として、平時から有事に至る隙のない領域(沿岸)警備・国境防衛の体制を、米国に頼らず自ら確立することが優先すべき課題ではないだろうか。 (3)へ続く
JBpress.ismedia.jpより引用
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台湾海峡危機で露呈した米国の本音
曖昧(あいまい)戦略の米国は尖閣有事に介入するか
2013.08.26(月)樋口 譲次
1996年、当時のウォルター・モンデール米駐日大使は、「(中国との)尖閣諸島の帰属に関する実力行使を伴う国際紛争の場合、日米安保は発動しない」と発言して物議をかもし、我が国では日米同盟の信頼性に対する疑念が広がった。
尖閣諸島有事に米国の軍事介入はあり得るか バラク・オバマ政権になって、ヒラリー・クリントン国務長官は、2010年9月の前原誠司外務大臣との会談において「尖閣諸島は、日米安保条約第5条の適用対象である」と述べ、モンデール氏の発言を否定する格好になった。
さらに、同長官は、2013年1月、岸田外務大臣との会談において、前言に立脚しつつ「日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行為にも反対する」と明言した。
米国の真意は、どの辺にあるのだろうか。モンデール駐日大使側か、あるいはクリントン国務長官側か、あるいはその双方にあるのか――。
外務省は、ホームページで「尖閣諸島に関する米国の立場」について次のように説明している。
「尖閣諸島は、第二次世界大戦後、サンフランシスコ平和条約第3条に基づき、南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、1972年発効の沖縄返還協定(「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」)によって日本に施政権が返還されました。サンフランシスコ講和会議におけるダレス米国代表の発言及び1957年の岸信介総理大臣とアイゼンハワー大統領との共同コミュニケに明示されているとおり、我が国が南西諸島に対する残存する(又は潜在的な)主権を有することを認めていました」
・・・
「また、米国は、日米安全保障条約第5条の適用に関し、尖閣諸島は1972年の沖縄返還の一環として返還されて以降、日本国政府の施政の下にあり、日米安全保障条約は尖閣諸島にも適用されるとの見解を明確にしています」
しかし、以上の説明からは、さらに次の2つの疑問が生じるであろう。
第1に、米国は「我が国が南西諸島に対する残存する(または潜在的な)主権を有することを認めて」いるが、その「残存する(または潜在的な)主権」とは、一体何を意味するのか。
第2に、米国は「尖閣諸島は・・・日本国政府の施政の下にあり、日米安全保障条約は尖閣諸島にも適用される」との見解を示しているが、それは尖閣諸島有事に際し、米国が直ちに、あるいは自動的に軍事介入することを意味するのか、という問題である。
外務省で条約局長、欧亜局長、駐オランダ大使を歴任した東郷和彦氏は、著書「歴史認識を問い直す」(角川oneテーマ21、2013年)第1部「領土問題」第1章「尖閣問題」の中で、次のように述べている。
米国の対尖閣問題の原則は、尖閣諸島を安保条約第5条の適用範囲と認め、これに対する攻撃があれば日本側に立つという姿勢を明らかにすると同時に、主権に対しては日中いずれか一方の立場を支持しないという中立の立場(「主権中立」)を堅持するという2本の柱である。
しかし、「あの小さな島のために本当に米軍が動くのか、という問題」があり、第5条に基づいて米軍が実際に行動するためには、日本が自から国を守る覚悟で行動することが重要で、アメリカ兵だけに血を流させることは許されないこと、そして、日本が先に動いて中国を挑発しないこと、逆論すると、中国が先に動けば米国はその挑発に対し強い態度をとることができるとの2つの条件を挙げている。
また、「主権中立」については、「ニクソン政権は、1971年6月の沖縄返還協定調印の際、『施政権の返還』という考え方をはっきりさせるとともに、71年10月の同協定批准の際に議会に対し、『返還は、施政権の返還であって、潜在主権は含まれない』という立場をとった。『主権中立』の考えはこのときから明確にされたのである」と、高原秀介氏の論文「日中関係におけるアメリカの影響」(「京都産業大学世界問題研究所紀要」第28巻)を引用して説明している。
つまり、米国は、中国の尖閣諸島に対する武力攻撃に対して、直ちに、あるいは自動的に軍事介入することはあり得ないことを示唆している。
また、尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も、我が国の固有の領土であり、主権は一貫して日本にあるとの我が国の立場を容認しておらず、この問題を日中が対決する紛争として残すというのがその基本姿勢であることを指摘しているのである。
実は、米国は、第1次台湾海峡危機(1954年9月〜55年1月)において、台湾の国民政府が実効支配していた金門・馬祖島や大陳島などの大陸沿岸諸島防衛に関する米国の関与について「積極派」と「消極派」に大きく分かれた。
台湾海峡危機は、中国との全面対決に拡大する恐れのある事態であった。その意味で、尖閣問題と極めて類似している。そのような事態に直面した米国は、台湾側の強い要請を受けて、危機が進行する状況の中で米華相互防衛条約を締結した。
そこで、改めて同条約締結交渉の経緯とそこに盛り込まれた内容を考察することは、尖閣問題の渦中にある我が国にとって、米国の本音とその戦略の特性を見極め、日米同盟の本質を明らかにする上で、極めて今日的意義があるのではないだろうか。
台湾海峡危機で露呈した米国の本音と曖昧戦略 第1次台湾海峡危機は、朝鮮戦争(1950年〜53年)休戦の翌年、1954年9月に発生した。
当時、米国は、「アリューシャン列島に連なる『鎖』―日本、韓国、琉球、台湾・澎湖諸島、フィリピン、東南アジアの一部の地域、およびオーストラリア、ニュージーランド―は、中国大陸を囲むようにしてつながっており、この『鎖』こそ、アメリカの考える太平洋地域の安全保障上不可欠なものである」(U.S. Department of State, Foreign Relations of the United States, 1952-54、P845)との基本認識に立っていた。
このため、米国は、「鎖」の最も弱点と見なしていた東南アジア地域に安全保障の枠組み、すなわち東南アジア条約機構(SEATO)を結成することを優先した。それに引き続いて、米国、日本、韓国、台湾による北東アジア条約機構(NEATO)を結成し、これらを相互一体的に連結してアジア戦略上の安全保障枠組みを実現させるという構想を持っていた。
この動きに対して、中国は、米国が主導する朝鮮半島から東南アジアにかけての安全保障体制の構築はまだ完成しておらず、それに乗じて台湾に攻撃を仕かけることによって、米国の東アジアにおける地域戦略の弱点をさらすことができると考えていた。
そして、1954年9月3日、中国は、「台湾解放」の第一歩と捉えていた金門島を砲撃し、「第1次台湾海峡危機」が始まった。
その後の経緯については、松本はる香「台湾海峡危機[1945-55]と米華相互防衛条約の締結」(日本国際政治学会『国際政治』第118号「米中関係史」(一九九八年五月))に詳細かつ具体的に記述されている。それを参照しつつ、米台両国の対応の経緯を要約して述べてみよう。
中国軍の金門島砲撃に対して米国は、同島付近の米国艦隊を増強するとともに、第7艦隊による台湾海峡警備を強化したが、対応の基本方向を早急に打ち出せずにいた。
米国統合参謀本部では、危機発生同日、それへの対応が協議され、「(金門・馬祖島や大陳島などの)大陸沿岸諸島の防衛は『重要(important)』であるが、戦略的に見て、台湾・澎湖諸島を防衛するために『死活的(essential)』な存在ではない」とのコンセンサスが形成された。しかし、大陸沿岸諸島防衛に関する米国の関与については「積極派」と「消極派」に大きく分かれた。
当時、米国の軍事専門家の間では、「中国と一戦交えずに、大陸沿岸諸島を防衛することは不可能」であり、「米中戦争を引き起こしてまで、大陸沿岸諸島を防衛する価値はない」というのが一般的な見解であった。
そのようななか、統参本部は、いわゆる「積極派」であり、金門島を中国の砲撃によって喪失すれば、台湾の国民党政府(以下「国府」)に致命的な心理的打撃を与えかねないこと、アジア地域における非共産主義国の士気を低下させることなどを憂慮した。
そのため、中国の軍事行動に対しては、金門島をはじめとする大陸沿岸諸島防衛に積極的な支援を与えるべきであり、中国大陸への攻撃も辞さずとの立場をとり、核兵器の使用も排除しないという強硬な意見を主張した。
他方、ドワイト・アイゼンハワー大統領は、いわゆる「慎重派」であり、金門島そのものの戦略的価値を統参本部の見積りほど高く評価しなかった。
そのうえで、当面する危機は、限定的な「小競り合い」ではなく、米国が大陸沿岸諸島に介入すれば、米中戦争を誘発するにとどまらず、米ソ全面戦争(第3次世界大戦)に発展する可能性があるとして、重大な危惧の念を表明した。
そして、大統領は、あくまで非軍事的手段(「国連安保理停戦案」)によって台湾海峡危機を終息させることに固執した。
ジョン・フォスター・ダレス国務長官は、「米国が大陸沿岸諸島の防衛に介入した場合、米中戦争、ひいては米ソ戦争に発展する可能性がある一方で、中国の金門島砲撃を中国が米国の反応に探りを入れているという側面から捉えれば、仮に米国が大陸沿岸諸島の介入を放棄した場合、中国の軍事行動はエスカレートし、極東地域における韓国、日本、台湾、フィリピンの『反共防衛ライン』が脅かされる可能性がある」と考え、「米国は『恐るべきジレンマ(a horrible dilemma)』に立たされている」と述べた。
最終的に、アイゼンハワー大統領は、米国が台湾海峡危機に直接介入すれば、朝鮮戦争以来の大規模な紛争に発展する可能性があることを恐れて、「積極派」の主張を退けた。
そして、米国政府は、国連安全保障理事会に台湾海峡危機の解決のための停戦案、すなわち「国連安保理停戦案」を提出することとし、同時に、「国連安保理停戦案」を通じて台湾海峡の「現状維持」(「2つの中国」の固定化)を図ろうとした。
台湾側は、米国の「国連安保理停戦案」は大陸沿岸諸島問題を国連に委ねられるだけでなく、事実上「2つの中国」を生み出し、国府が今後一切「大陸反攻」を行えない条件を作り出すものとして「現状維持」の固定化を受け入れることはできない旨を表明した。
一方、中国は、1954年10月10日、「米国が中国の領土である台湾を侵犯しているため、中国は国連に大して米国の侵略行動を停止させ、台湾・澎湖諸島、およびその他の大陸沿岸諸島における軍事行動を解除し、撤退させることを求める」という主旨の文書を国連に提出して外交戦を展開した。
そして、11月に入り、中国は再び大陸沿岸諸島のうちの大陳島に対して大規模な攻撃を開始した。
台湾海峡は再び戦火に包まれ、台湾海峡危機を解決するための「国連安保理停戦案」の準備は中断を余儀なくされた。 (2)へ続く
JBpress.ismedia.jpより引用
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米国の諜報活動では、日本は最大敵国の1つ
スノーデン事件から日本が学び、すべきこと
2013.07.09(火)織田 邦男:プロフィール (1)からの続き
日本とドイツから平和の配当を回収せよ 政権発足後、クリントン大統領がまず手がけたのは「国家経済会議(NEC)」を設置したことである。
目的は冷戦最大の受益者、日本とドイツから「平和の配当」を回収することであり、これを政権最大の経済戦略とした。CIA本部内には「貿易戦争担当室」まで設置し、手段を選ばず経済戦争に打って出た。このときのCIA長官はロバート・ゲーツ氏が留任していたのである。
こういった米国の動きは、日本ではなぜかほとんど報道されなかった。冷戦時、漁夫の利を享受しつつ、ぬるま湯にどっぷりと浸かり、惰眠から覚めやらぬ日本は、国益を巡りアンダーテーブルで熾烈な諜報活動が行われる厳しい国際社会の実態が理解できなかった。
そればかりか、同盟国である米国が日独にかざす刃にも気づかなかった。結局、これが同盟漂流、そして失われた20年の始まりだったわけである。
1993年だけでもCIAによって発覚させられた贈収賄事件は51件あり、これによって米企業にもたらされた契約金は約65億ドルと公表されている。公表されるのはもちろん、合法で差し支えないものだけである。
日本企業が外国との商談を直前になって米企業に取られたり、取引を突然、米企業に奪われた事例も数多くあった。これらは既にゲーツ長官が暗示していたことだ。もちろん、非公然活動ゆえ、真相はすべて闇に葬られ、表に出ることはなかった。
また、法と秩序を口実とした恐喝まがいの巨額訴訟で大損害を被った日本企業も多かった。
3400万ドルを支払った三菱セクハラ訴訟、燃料パイプ検知器欠陥訴訟で巨額の民事制裁金を要求されたホンダとトヨタ自動車。パソコンのキーを22万回叩けば1回出るか出ないかのバグにより東芝は1000億円支払わされている。これらも諜報組織が絡んでいたと言われている。
2000年2月には、電子盗聴網システム「ECHLON」の存在が暴露された。これはNSAが運営する暗号解読部隊を発展させた高度な技術を有する全世界通信傍受システムである。このときも欧州議会は産業スパイ疑惑解明のための暫定委員会を設置している。
今回のスノーデン事件と同様、ECHLONにも英国が一枚噛んでいた。この時も「大多数の先進国がやっていること」と英国が欧州議会沈静化に一役買っている。
アングロサクソンにとっては、情報を巡っての暗闘、つまり「アヒルの水かき」は日常の所作に過ぎない。歴史をひもといても、事例は枚挙にいとまがない。世界規模の盗聴システムは、ECHLON以外にもフランスやロシアが保有している可能性も指摘されている。
最も利己的な存在が国家であり、米国はその最たるもの米国は利益追求のためには手段を選ばない(写真はメリーランド州にあるNSA本部)〔AFPBB News〕
2000年3月、ジェームズ・ウルジー元CIA長官(ゲイツ長官の前任者)が記者会見で次のように述べている。開き直りとも言える発言はECHLON事案の信憑性を裏づける。
「我々は過去にヨーロッパの贈収賄活動をスパイしていた。米国は今もその種の活動の監視を続けていることを期待する」「他国の民間企業や政府が行っている不正行為の情報を収集することはずっと以前から米国政府に容認されてきた」
ウルジー元長官は不正行為の摘発といった合法の分野にのみ言及しているが、合法の分野を炙り出すには非合法の分野まで活動範囲を広げなければならないことは誰でも分かる。
これら諜報活動は今回のスノーデン事件同様、全く驚くには値しない。また今さら驚くようではいけないのだ。
国際社会において、国家は最も利己的な存在であり、国益追求のためには、手段は選ばないのが「普通の国」である。日本以外の先進諸国は、どこの国でもやっているいわば公然の秘密活動なのである。
フランスのフランソワ・オランド大統領は「テロの脅威が存在するのは、我々の大使館やEUではない」と非難した。
だが、この非難をニュースに真剣に取り上げる国は日本くらいである。自分たちもやっている活動は棚に上げ、実態を百も承知のうえで米国の活動を非難する。これは実は諜報活動での米国との暗闘なのである。米国の諜報活動を萎縮させ、自らの諜報活動にフリーハンドを与えるための手段に過ぎないのだ。
今回スノーデン氏は、香港紙とのインタビューで、NSAによるハッキング工作は世界全体で 6万1000件以上に達していると述べた。これまでの電話や電信の盗聴から、活動範囲がインターネットに広がり、かつての「不正行為の摘発」という大義名分が「テロの未然防止」に変わっただけである。
英紙ガーディアンは、英国政府の通信傍受機関「政府通信本部(GCHQ)」が過去1年半、光ファイバーケーブル経由の国際電話や電子メールの通信情報を傍受し、米国のNSAとも共有していたと報じた。
同紙によると、通信傍受の対象は大西洋を横断する英米間の海底ケーブル、電話の会話、電子メールやソーシャルメディアの内容、インターネット利用者の接続記録などであり、一般市民の通信情報も傍受されていたという。
自国以外すべての国が仮想敵国=チャーチル 英情報筋は同紙に対し、法律内で行われ、深刻な犯罪を防いだことがあったと説明している。デービット・キャメロン英首相もこれまで「英国の法律内で実行されている」と述べている。
英国は今でこそ中流国家とはいえ、もともと7つの海を制した国であり、情報を最も大切にする「ジェームズ・ボンド」の国である。米国の情報活動の陰には、必ず英国がいる。
ポーカーゲームは、手中のカードを対戦相手に知られたら、その時点でゲームセットである。国家間の交渉はポーカーゲームに似て、情報は死活的に重要である。
かつてウィンストン・チャーチルは「英国にとって仮想敵は?」と聞かれ、「英国以外のすべての国」と答えたという。
近々、日本はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加する。国家を挙げての熾烈な国益争奪戦である。日本以外の国はすべて敵だとの認識がまず必要である。もちろん、同盟国の米国も例外ではない。
日本は今回のスノーデン事件に驚いているような場合ではない。国家間の盗聴やハッキングを制約するものは現在何もない。国際条約もなければ、国家間の取り決めもない。あるのは当該国の国内法の縛りだけである。国際社会では無秩序、無法状態にあるのだ。
各国は国益争奪のため、必死で諜報活動を実施していることを、改めてスノーデン事件は教えてくれた。
日本版NSA創設の議論もなされているようだが、厳しい国際社会の現実を直視した組織の設立、そして活動範囲と任務付与が求められる。
当面、TPP交渉にあたっては、我が国も急ぎ情報収集体制を構築するとともに、特に担当者の防諜意識、そして防諜体制を根本から見直すことが喫緊の課題となっている。 JBpress.ismedia.jpより引用
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