ミッドウェー海戦研究所

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中国の空母が日本の海を自由に行き来する日
圧倒的な米海軍と、そこに果敢に挑む中国海軍
2010.05.06(Thu) 保井 信治
 
 赤城、加賀、蒼龍が米国急降下爆撃機の攻撃を受けて一瞬のうちに炎上したのは、わずか5〜6分間の出来事であったという。残った飛龍は孤軍奮闘したが被弾炎上、翌未明、友軍の魚雷で海に没した。
 

ミッドウェー後、熟練搭乗員を失ったことが最大の敗因

 それでもまだ、ミッドウェー海戦後も実は日米の航空戦力は拮抗していた。一部繰り返しになるが、その後、南太平洋海戦では日本が勝利し、この時点で太平洋に稼働できる米空母はゼロとなっている。
 
 しかし、日本は南太平洋海戦には勝利したものの、同海戦ではミッドウェーで失った以上の熟練搭乗員を失っていた。
 
 次の空母同士の海戦は約2年後のマリアナ沖海戦である。この間、日米ともに航空戦力の充実、新たな搭乗員の養成に務めた。しかし、真珠湾奇襲を受けて空母戦力の優越を思い知らされた米軍は、戦艦至上主義からいち早く思想を転換して、空母戦力の急速な拡充を開始していた。米国には国力の差のみならず先行の利があった。
 
 さらに米国は、押収したゼロ戦からその弱点を徹底的に研究して対抗戦術を部隊に周知させ、1942年後半にはゼロ戦と同等の操縦性能を有し、エンジン馬力及び防弾性ははるかに凌駕する強力な新鋭戦闘機F6Fヘルキャットを戦場に投入、そのうえ直接弾が当たらなくても航空機の近傍で破裂してダメージを与える近接信管(電波利用)付弾丸を開発した。
 
 その後も、レーダの性能向上、同射撃指揮装置への応用、CIC(Combat Information Center)を設けて部隊の火力を適切に配分するなど、斬新なアイデアを終戦に至るまで積み重ねた。これらの結果、マリアナ沖海戦時点、明らかに日本空母戦力はもはや米国の敵ではなくなっていた。
 

「マリアナの七面鳥撃ち」で次々海の藻屑と消えた「ゼロ戦」

 米空母に到達する前に、日本軍艦載機は次々に撃墜された。米国はマリアナの七面鳥撃ちと呼称しているほどだ。米国は以後、今日に至るまで世界に圧倒的な航空母艦戦力を有し、今日も11隻の正規大型空母を有する米海軍は7つの海に圧倒的な海上戦力を維持して君臨しているのである。
 
 さて、次に冷戦時、旧ソ連海軍は圧倒的な米空母戦力に対して、いかに対抗しようとしていたのだろうか。まず、ソ連海軍は長距離対艦ミサイルをもってする集中飽和攻撃戦術、いわゆる「ONE SHOT BATTLE」戦術を採用した。
 
 近接する米空母部隊を追跡、待ち伏せして、米空母艦載機の行動圏外から、艦艇、爆撃機、および潜水艦から大量の対艦ミサイルを発射して、米空母に同時に集中して弾着させる戦法である。
 
 そのために対艦ミサイルは大型化し、超音速、大型の爆撃機バックファイアーを開発した。軍艦も、短時間に多数の大型対艦ミサイルを発射できることを運用の基本としたために、対艦ミサイルの発射管を艦上に並べるだけ並べたスラバ級、キーロフ級の様なソ連特有の軍艦を建造した。
 
 潜水艦も、長射程対艦ミサイルを24基の垂直発射管に搭載したオスカー級を建造している。そのため米国は、多数の対艦ミサイルを同時に要撃できるイージスシステムを開発して対抗策とした。米海軍は現在約80隻のイージス艦を保有している。
 

対艦弾道弾の開発を試みるも断念した旧ソ連

 
 加えて、ソ連は弾道弾を改修して対艦弾道弾とし、空母の攻撃を計画したが、この計画は断念したようである。
 
 同時にソ連は、段階的な空母建造計画も推進した。まず、モスクワ級ヘリコプター巡洋艦2隻を建造した。引き続いて、先に述べた垂直離着陸機を開発して、これを搭載するキエフ級航空巡洋艦(艦載機は垂直に発着艦)4隻を建造した。
 
 その次は、前記のスキージャンプを有する正規空母クズネツォフを1990年に完成させている。しかし同型2番艦のヴァリヤ−グはソ連の崩壊に伴い、1992年に建造が中止された。ちなみにヴァリヤ−グは、その後中国にテーマパークとして売却されたが、今は中国初の航空母艦として甦りつつある。
 
 さらに、ソ連初の原子力空母ウリヤノフスクの建造も始まっていたが、同じく1992年に工事は中止、同艦は解体された。一部報道によれば、中国は同ウリヤノフスクの設計図を秘密裏に入手しているとのことである。
 
 また、ソ連は水中からの魚雷攻撃、すなわち潜水艦の隠密性にも賭けていた。しかし米国は、空母打撃部隊に1〜2隻の攻撃型原子力潜水艦を随伴してこれに対抗した。潜水艦には潜水艦で対抗するのが米軍の対抗手段である。
 

潜水艦の所在を全地球規模で掌握しようとする米軍

 米国の潜水艦に比較すると、ソ連の潜水艦はノイジ―で探知されやすい。そのため、ソ連はより深く、より高速の潜水艦を開発して被攻撃を避けるとともに、被雷してもダメージを局限する構造を工夫し、空母の航跡を探知追跡する長射程のウェーキホーミング魚雷を開発した。
 
 確かに、水中の音波伝播は複雑であり、海底地形も複雑、海潮流の経路も複雑であるため、潜水艦は航空機や艦艇に比べて探知されにくい。このため空母にとっては厄介な脅威である。
 
 ゆえに米国は、海洋観測艦、音響測定艦、監視衛星、SOSUS(全地球的な海洋音波監視網)などを駆使して潜水艦の所在を全地球的規模で定常的に掌握できる、とてつもないシステムの構築に連綿として資材と人材を投入し続けているのである。
 ところで、一時勃興したソ連海軍の大量の艦艇は、ソ連の崩壊とともに半ば放置されて無残な姿を世界中にさらした。
 
 しかし、ソ連海軍はロシア経済の復興とともにロシア海軍として甦りつつある。2008年、ドミトリー・メドベージェフ大統領は2015年までに2隻以上の新規原子力空母建造計画に着手すると表明したことを紹介しておく。
 


(4)へ続く
 
jbpress.ismedia.jpより引用。
 
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中国の空母が日本の海を自由に行き来する日
圧倒的な米海軍と、そこに果敢に挑む中国海軍
2010.05.06(Thu) 保井 信治
 
 視点を我が国に当ててみたい。海上自衛隊の護衛艦にDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)「ひゅうが」がある。2009年3月に就役した最新鋭の護衛艦である。排水量は2万トン近く、全長約200メートル、幅33メートルは海上自衛隊最大の護衛艦である。
 

軽空母の性能と遜色ない日本の護衛艦「ひゅうが」

 
 例えば「ひゅうが」は全通型の飛行甲板を持つ、まさに空母型の護衛艦である。しかし、スキージャンプもカタパルトも有しないことからも自明の通り、当初からV/STOL機の運用は考慮外に、ヘリコプターの活用を第1の目的に建造された。
 
 従って、我が国は空母とは呼称しないが、分類上はヘリ空母と見なされる。排水量、大きさともに、先に挙げた各国の軽空母に遜色はない。
 
 ちなみに、海上自衛隊は主として対潜水艦作戦能力の向上のためにヘリコプターの艦載化に着目し、その嚆矢として1972年、我が国初のDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)「はるな」を就役させた。
 
 つまり、高速で移動する原子力潜水艦に対抗するためである。「はるな」はコンパクトな船体にヘリコプター3機を搭載した、当時としては画期的な護衛艦であった。
 しかし「はるな」は、前甲板に5インチ砲を2基搭載するなど、DDHではあるがヘリコプターの運用を最優先して開発された護衛艦ではなく、ヘリ空母とは違う。
 

太平洋戦争開戦時相当の対潜水艦能力

 爾来、護衛艦隊の汎用護衛艦(DD)にもヘリコプター1機の搭載が標準化された。海上自衛隊の1個護衛隊群は8隻の護衛艦で構成されるが、8機のヘリコプターを運用の基準としているので、一部マスコミに8艦、8機を略して「八八艦隊」と言われることもある。
 
 狭い機内、激しい騒音と振動、難しい操縦操作、暗闇の中で猫の額の様な、しかも縦横に揺れ動く護衛艦のヘリ甲板からの発着艦、波・潮風からの防錆等々、艦載ヘリコプターを取り巻く環境は想像以上に苛酷である。
 
 しかし、営々と積み重ねてきた海上自衛隊艦載ヘリコプター部隊の作戦能力は、装備の更新と人材の養成に怠りがなければ、有事には、かつて帝国海軍が太平洋戦争開戦当初に発揮した航空戦力に匹敵する対潜水艦能力を発揮するであろう。
 
 領海侵犯した中国の漢級原子力潜水艦を徹底して補足追尾した2004年の海上警備行動に、その能力の片鱗を示したことは記憶に新しいのではないだろうか。
 

毎朝一斉に行われる甲板上のゴミ拾いの意味

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/b/9/250/img_b9741cbde90146ee2cca3f5edb72aaaf558636.jpg蒸気カタパルトの内部を点検する航空母艦の乗組員たち(ウィキペディアより
 
 以上、現代の航空母艦について紹介したが、併せて海上自衛隊の誇る艦載ヘリコプターの運用の一端にも触れさせていただいた。次は、正規空母の運用に進むこととする。ついては、筆者の見聞を中心に米航空母艦の運用の一部(飛行作業)を紹介することにしたい。
 
3.米航空母艦の飛行作業
 
 米航空母艦では、1日に何度行うのか知らないが、飛行作業を開始する前に何十人(もっと多くいるかもしれない)という隊員が飛行甲板全体に横数列に並び、一斉に甲板上のゴミ拾いを始める。
 
 エンジンに吸い込むと危険なボルトやその他のものが甲板上にないことを、万全に確認するためである。
 
 さて、航空母艦は艦載機を発着艦させる時は、事前に飛行作業の開始を全部隊に通報する。空母は相対風速を極力稼ぐために、風上に向かって高速で航行を始める。風向きが変われば風の向きに応じて航空母艦は猫の目のようにその針路を変える。
 
 そのため空母を護衛する部隊は、空母の針路変更に常に緊張して備えなければならない。航空母艦はその独特な形状から、どの方向に針路が向いているのかを判断しにくい。
 
 かつ、空母は空母が部隊の基準であり、他の艦が空母の行動を邪魔することはあり得ないとの前提に、まさに自己中心的に高速で突っ走る。
 

推力が必要に達するとボルトが折れて艦載機が発進

 そのため、ぼやぼやしていると衝突の危険性が生じるのである。実際に1975年、地中海で夜間演習(Air Excises)中、米空母ジョン・F・ケネディと巡洋艦ベルナップが衝突している。
 
 筆者は航空機が発艦時に使用する直径数センチの金属製のボルトを見せてもらったことがある。ボルトと言っても実は、ちょうどその中間部分でパックリと破断したその片われである。
 
 説明によれば、航空機が発艦する時、航空機はこのボルトで甲板上に固定されている。このため、航空機を載せたカタパルトは高圧蒸気が注入されてもすぐには動かない。注入された蒸気は、おそらく機械的に圧縮されて、圧力がいよいよ高まる。
 かつ、航空機がエンジンをスタートして所要の出力に達すると、両者の機体を押し出す力がボルトの耐破断力を超えた時にボルトが破断する。満を持したカタパルトは前方に走り、航空機は一気に甲板を滑走して空中に飛び出す、と言うよりも打ち出されるのである。
 
 先のボルトは、多分甲板上に残ったボルトの片われである。航空機側に残ったであろうもう半分がどこに行くのかは聞き忘れた。
 

発艦・着艦時には大きな加速度で体が全く動かない

 
 また筆者は、艦隊輸送用プロペラ機のパッセンジャーとして太平洋沖の空母キティホークに着艦した経験があるが、アレスティングワイヤーにフックが拘束された時は、急速なG(加速度)にギューッと体が動かなくなった。
 
 しかし、ジェット戦闘機がカタパルトから発艦する時の加速度はこの比ではないということだ。訓練を積み重ねたパイロットでさえ、体が動かないという。空中に打ち出された直後、操縦桿はどうするのであろうか、と心配になる。
 
 この空母の飛行作業中、飛行甲板では恐らく200人を超える隊員が、色とりどりのゼッケンを着けて、それぞれのグループが一見無統制に、しかし全体的には一糸乱れぬ秒単位の作業を行っている。
 
 甲板上はヘッドセットを着けていても、ジェット機の発着艦時の轟音に会話など聞こえない。遠くから見ても直径15センチはあろうかと思われるアレスティングワイヤーは、航空機が着艦するたびに甲板上に吊り出され、航空機がフックを外すやうねうねと大蛇のように元の位置に復帰していく。
 
 ひとつ狂えば大惨事が生じるだろう。この飛行甲板上の作業ひとつを見ても、空母はただ造ればよいというものではないことをつくづくと思い知らされる。まして甲板上で作業している隊員は10代後半から20代前半の若者がほとんどであるとの説明に、米海軍の教育体系にも畏敬の念を覚えるのである。
 

なぜ米軍は夜間の発着訓練を重視するのか

 なお、筆者は米空母と行動を共にした機会を通じて、米海軍にとって熟練搭乗員の養成、維持がいかに重要であるかということを思い知らされた。演習中も、演習のシナリオにかかわらず終日黙々と飛行作業を行っている。
 
 飛行作業中風に向かって航行する空母は、通常、波やうねりも正面から迎える。すなわち、この場合空母に横の動揺(ゆれ)はほとんどないが、縦方向には動揺がある。
 
 航空母艦の艦尾に立てば実感できるが、艦尾付近の飛行甲板は穏やかな海面でも数メートル、荒れた海面では十数メートルを超える上下動を繰り返しているのである。このような中、夜間でも艦載機は発着艦しなければならない。
 
 一瞬の判断ミスが致命的な事故につながる。このため、米海軍艦載機は事前に、昼夜の別なく、陸上の滑走路を飛行甲板に想定し、着陸した瞬間そのまま離陸するタッチアンドゴーを繰り返し訓練する。
 
 実際、空母では、着艦に失敗した航空機が再びエンジンを吹かせて何度も飛び立っていく。しかし、空母での飛行訓練開始当初は多く見られるこの光景も、訓練の経過に従い数が少なくなるという。
 
 米海軍が特に夜間の離着陸訓練(NLP:Night Landing Operation)を重視する理由も理解できよう。
 

乗組員のために1日当たり3万食が用意されている

 以上、簡単に空母の飛行作業の一端を紹介した。米海軍初の航空母艦は給炭船からの改造空母ラングレイであり、空母としての就役は「鳳翔(ほうしょう)」と同じ1922年のことであった。
 
 以来、米海軍航空母艦には、太平洋戦争で我が帝国海軍との死闘、熾烈な空母戦から学んだ戦訓をはじめ、数々の教訓を反映した100年近い歴史がある。
 
 また、米空母には約6000人の隊員が乗り組んでいる。計算が合わないが、食事は1日に3万食近く用意すると聞いた。コンビニエンスストアや食堂、理髪店、病院、洗濯屋、ジムさえも完備した1つの高密度な都市なのである。この管理も含めて、空母は一朝一夕にならずということを理解していただければ幸いである。

4.航空母艦の攻防(中国の空母建造)
 
 巷間、中国の空母建造に関するニュースが盛んに報道されているが、中国海軍は米国海軍の空母戦力とどのように対抗しようとするのであろうか。その将来を予測する前に、航空母艦の攻防を歴史上の例から簡単に紹介してみたい。
 
 第2次世界大戦中、大西洋では、連合軍の航空母艦は主としてドイツ潜水艦を捜索攻撃するために使用された。枢軸側ドイツの空母は未完成に終わっている。
 

空母VS空母の会戦は歴史上太平洋戦争だけ

 実は歴史上、航空母艦対航空母艦の海戦は、太平洋戦争において日米の間に戦われた以外に例がない。
 
 ご参考までにその主な空母戦を列挙する。珊瑚海海戦(1942年5月)、ミッドウェー海戦(1942年6月)、第2次ソロモン海戦(1942年8月)、南太平洋海戦(1942年10月)、マリアナ沖海戦(1944年6月)、レイテ沖海戦(1944年10月)である。
 
 詳細は省略するが、珊瑚海海戦、南太平洋海戦は日本の勝利、そのほかは米国の勝利である。しかし、ミッドウェー海戦は勝利を確信していた日本側に重大な過誤、慢心など様々な敗因が重なり、片や日本側の暗号を解読していた米軍は、ミッドウェー島への航空機を含めて何とか同数の航空機を戦場にかき集めて決死の戦いを挑んだ。
 
 紙幅の関係上その結果のみを記せば、一瞬の幸運に恵まれた米軍が完勝した。


(3)へ続く
 
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中国の空母が日本の海を自由に行き来する日
圧倒的な米海軍と、そこに果敢に挑む中国海軍
2010.05.06(Thu) 保井 信治
 
空母艦、略して空母、英語では Aircraft Carrier と言う。単純に言えば、航空母艦とは、飛行甲板と格納庫を有する軍艦であり、海戦における航空機の活用を第1の目的に開発された艦種である。

第1次世界大戦後に急速に進歩した航空機

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/8/4/250/img_847e9457e64495eb2f36c5464126741f157198.jpgライト兄弟が世界で初めて飛行に成功させたライトフライヤー号(ウィキペディアより
 
 拙稿では、航空母艦の生い立ちから今日の現状まで、分かりやすく紹介できればと考えている。
 
 航空母艦をカタログ的に紹介するのは簡単であるが、それは既に数多く巷間に紹介されているので、今回は筆者の見聞、実体験を通じた、もう少し現場のにおいがするリポートとしたい。
 
1.航空母艦の生い立ち
 
 まず、航空機の生い立ちから始めることにしよう。ライト兄弟がライトフライヤー号で世界初の有人動力飛行に成功したのが1903年12月のことだった。
 
 その後、航空機は、第1次世界大戦(1914〜1918)開戦当初から陸戦の偵察に活用され、弾着観測さらに機関銃を搭載した戦闘機、爆弾を投下する爆撃機に使用され始めると、その開発に各国がしのぎを削り急速に進化した。
 
 当時、この利点を海戦にも活用できないかと考えるのは至極当然の成り行きであったであろう。事実、英国は軍艦を改造した航空母艦「ユーリアス」を、世界最初の航空母艦として第1次世界大戦に投入している。
 

世界で最初に航空母艦を作ったのは日本だった

 
 しかし、初めから航空母艦として計画された、世界で最初の航空母艦を完成させた国は、なんと我が国、日本である。艦名は「鳳翔(ほうしょう)」、就役は1922年(大正11年)のことだ。
 
 基準排水量7470トン、全長168メートル、最大幅17.98メートルは、今日、海上自衛隊の誇る「こんごう型」イージス艦の基準排水量7200トン、全長161メートル、最大幅21メートルにほぼ等しい。この大きさに、「鳳翔」は搭載機に常用15機を数えていた。
 
 ちなみに「鳳翔」は日支事変、太平洋戦争において実戦にも活用されたが、戦後も生き残り、復員輸送にも活躍した幸運な航空母艦であった。
 
 その後も日本海軍は、航空機派と、当時は日本海軍の主流であった戦艦(大艦巨砲)至上派との軋轢を重ねながらも、空母自体の改善、運用能力の向上、艦載機および航空魚雷等武器の開発、搭乗員の養成に人と資材をつぎ込み、空母戦力の充実強化に営々と努力を傾注した。
 
 航空母艦を集中運用する空母機動部隊を世界で初めて採用したのも、日本帝国海軍である。それらの成果が結実したのが真珠湾奇襲攻撃であり、太平洋戦争開戦初期の破竹の進撃は、この航空戦力の優越によるところが大きい。
 

熟練搭乗員の損耗で米国に追いつかれ、そして完敗した

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/8/3/250/img_833d1ae95135946d1daad3ba5362b57b82281.jpgミッドウェー海戦で米軍の爆撃機B-17の爆撃を回避する日本の空母「飛龍」(ウィキペディアより
 
 米国、英国も気がつかない間に、世界最強の空母航空戦力を築き上げていたわけである。
 
 しかしながら、ミッドウェー海戦の結果、日本海軍は4隻の空母と同時に歴戦の操縦士を一瞬にして失ってしまった。
 
 その後もしばらく日本帝国海軍は米海軍となお互角の空母戦を遂行したが、累積する熟練搭乗員の損耗に新たな搭乗員の養成が追いつかず、急速に空母隻数および搭乗員数ともに回復させた米海軍が徐々に形勢を逆転して航空優勢を獲得していった。
 
 一度、航空優勢を失うや形勢は一転して、帝国海軍は世界最大の戦艦「大和」「武蔵」をはじめとする残存兵力で勇戦敢闘したものの、奈落の底に落ちるがごとく急速に戦力を失って壊滅した。
 
 以上、簡単に航空母艦の生い立ちと、航空母艦の存在意義、すなわち海上戦闘における航空優勢の絶対優位を述べてきた。第2次世界大戦終結後65年を経過した今もなお、航空優勢の有無が艦隊の死命を決定する最大の要因である現実は、いささかも変わっていない。
 
2.今日の航空母艦
 
 そこで次に、今日の航空母艦について紹介することとしたい。
 
 今日、航空母艦を保有する国は米国、英国、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、インド、タイ、ブラジルの9カ国である。しかし、航空母艦と一言で表しても様々な種類がある。
 

短い滑走路で離着陸できる理由

 航空母艦の分類は、今日、主として搭載機の機種、排水量、航空母艦の推進力などを分類の基準としている。それは大別すると、正規空母、軽空母、ヘリ空母、原子力空母などと分類される。
 
 正規空母とは、CTOL(Conventional Take Off and Landing)機、すなわち、通常型離着陸機(陸上の飛行場と同じように平らな滑走路=飛行甲板=に離着陸する航空機)を運用する航空母艦である。
 
 ただし、陸上の滑走路のように2000メートル、3000メートルの飛行甲板を有する空母を建造することは不可能であるため、正規空母には、離陸(航空母艦では発艦という。以後「発艦」)する時はカタパルトという発射機で航空機を打ち出す機構を備えている。
 
 逆に着陸(航空母艦では着艦という。以後「着艦」)する場合には、複数のアレスティング(拘束)ワイヤーを飛行甲板に横断して張り渡し、航空機がぶら下げるフックに絡ませて航空機を減速させ、停止させる機構が欠かせない。
 
 これらの機構を用いて初めて、300メートル程度の飛行甲板から重装備のジェット戦闘機が発着艦できるのである。
 

正規空母は米国、フランス、ブラジルの3カ国が保有

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/5/f/250/img_5f3e73131fcc7ff4e5f4ca5859186fcd758576.jpg米国の最新鋭航原子力空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」(ウィキペディアより
 
 今日この正規空母を保有するのは米国(11隻)、フランス(1隻)、ブラジル(1隻)の3カ国である。
 
 実はロシアも、CTOL機を運用するという意味では正規空母(1隻)を保有しているが、発艦方式が異なるので、理解を容易にするため、軽空母を紹介した後に触れることとする。
 
 米国の航空母艦はすべて原子力推進で、搭載機数は約80機、排水量はいずれも8万トンを超える。フランスの航空母艦シャルル・ド・ゴールは原子力推進ながら排水量約4万トン、搭載機数は40機であり、排水量、搭載機数ともに規模は米空母の約2分の1である。
 
 ブラジル海軍の航空母艦サン・パウロは旧フランス海軍の空母フォッシュであり、蒸気タービン機関推進、艦齢は既に50年、かろうじて作戦可能状態を維持しているらしい。
 
 排水量3万トンから6万トンの空母を中型空母、8万トン以上の空母を大型空母と分類することもあり、米国のみが大型正規空母を、しかも11隻と多数保有しているのである。
 

フォークランド紛争で大活躍、英国の軽空母と「シーハリアー」

 次に、軽空母とは、英海軍の「シーハリアー」に代表される、V/STOL(Vertical/Short Take Off and Landing)機、すなわち垂直離着陸機を運用する航空母艦である。
 ちなみに、シーハリアーは1982年、英国とアルゼンチン間のフォークランド諸島を巡る紛争で、艦隊防空の空中戦に撃墜23機、被撃墜ゼロ機と、戦前の不安を払拭する予想以上の大活躍をした。
 
 軽空母にカタパルトはないが、通称スキージャンプと呼ばれる、まさにスキーのジャンプ台のような形をした飛行甲板を有しているのが特徴である。艦載機は飛行甲板を滑走して、スキー選手がジャンプ台から空中高く飛び出すように、揚力を増して発艦する。
 
 垂直に離陸することも可能であるが、スキージャンプ方式に発艦する方が燃料消費量は少なく、かつ離陸重量も重くできる。
 
 なお、着艦時は垂直に降下する。軽空母はカタパルトを有しない分、船体構造は簡単であり、かつ安価、艦内の空間もその分余裕ができるというメリットもある。英国、イタリア、スペイン、インド、タイの5カ国が保有している。
 

正規空母と軽空母の中間にある特別なロシア空母

 各国の艦載機は先に述べたシーハリアーもしくは同派生型であり、それぞれ約10〜20機を搭載できる。排水量は1万〜2万トン、全長は約200メートル、幅20〜30メートルというスケールである。
 
 さて、ロシアの航空母艦である。ロシアは独自にV/STOL機(Yak−38)を開発したが様々な問題があり、結局、今日ロシアが保有する唯一の空母アドミラル・クズネツォフは、V/STOL機を運用していない。
 
 搭載しているのは、CTOL機(Su―27の艦載型Su−33)である。艦載型とは、陸上機の機体に前述のフックを取り付けたり、狭い艦内にできるだけ搭載スペースを確保するため翼を折りたためる機構にしたり、動揺する飛行甲板に発着陸するために脚部を強化するなど、艦載機として必要な改装をした航空機を言う。
 
 また、ロシアは既にカタパルトの技術力を有していることが確認されているが、アドミラル・クズネツォフはこれを採用せず、CTOL機をスキージャンプ状滑走路から発艦させ、拘束ワイヤーで着艦させるという正規空母と軽空母の中間的な運用をする独特な空母である。
 
 排水量約6万トン、艦載機最大60機、全長約300メートル、飛行甲板最大幅70メートルは、米国海軍を除くと世界最大級の航空母艦である。
 

ロシアから2隻の空母を購入するインド

 なお、インドは近々ロシアから2隻の空母を導入する。1隻は旧ロシア海軍の空母アドミラル・ゴルシコフであり2012年再就役の予定、他の1隻は2015年就役予定のヴィクラントである。この2隻は排水量約4万トンとやや小型であるが、アドミラル・クズネツォフと同じく、Su―33を同様の方式で運用する航空母艦となる。
 
 次は、ヘリコプター空母と呼ばれる空母である。
 
 先に空母とは、単純に言えば飛行甲板と格納庫を有する軍艦であり、海戦において航空機の活用を第1の目的に開発された艦種である、と述べた。同様に定義すれば、ヘリ空母とは、飛行甲板と格納庫を有する軍艦であり、海戦においてヘリコプターの活用を第1の目的に開発された艦種である。
 
 先に挙げた空母は正規空母も軽空母も、いずれも固定翼機と併せてヘリコプターを搭載している。中でもイタリア及びスペインの軽空母は、状況によりヘリコプターのみを搭載して運用することも想定した空母であるが、上記の定義から外れるためヘリ空母には分類されない。
 
 また、タイの空母チャクリ・ナルベルトは、現在同国では外洋哨戒ヘリコプター母艦と呼称しているものの、ヘリコプターの活用を第1の目的に建造された軍艦ではないため、これもヘリ空母には分類されない。


(2)へ続く
 
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「海軍は新兵器への対抗を」、ゲーツ米国防長官
【5月5日 AFP】米国のロバート・ゲーツ(Robert Gates)国防長官は3日、米海軍の退役軍人らの集会で演説し、公海での米国の軍事的優勢が新兵器によって脅かされていると述べ、経費のかかる空母や潜水艦に依存する海軍力のあり方に疑問を呈した。

 ロバーツ長官は世界的に展開する米海軍が、対艦ミサイルやステルス潜水艦といった新兵器に攻撃される可能性に触れ、米軍の空母や潜水艦は危険にさらされていると述べた。

 長官は06年にイスラエル軍を対艦ミサイルで攻撃したレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラ(Hezbollah)や、「周辺海域で米軍の軍事力に対抗すべく」設計されているイランのミサイルや機雷、高速艇などを例に挙げ、追跡がより困難な高性能潜水艦などの新型水中兵器によって、米海軍が西太平洋で行動の自由を享受した、過去60年の大半にわたった時代が終わる恐れもあると指摘した。

 ゲーツ長官が注意を喚起しているのは、膨大な資金をつぎ込んでいる米艦隊が、そうした新時代の兵器に対抗するものとしてそぐわなくなることだ。米海軍の攻撃型潜水艦隊や水上艦隊の規模は他国を大きくしのいでおり、戦略的展望が変化する中でこれまで同様の配備に多額を投じることが賢明かどうかと疑問を投げかけた。「他国が複数の艦隊をもっていない状況下で、わが国はこれからの30年間もこれまで同様、本当に11もの空母打撃群を抱えておく必要があるのだろうか」

 また空母や世界各地の基地への依存度を縮小するために、無人機や無人水中艇、現在よりも小型の潜水艦などを使用してより長距離を狙う攻撃方法を開発する必要があるとも述べた。

 冷戦時代に端を発する巨額の軍事計画の縮小にゲーツ長官は消極的ではない。このところ国防費を従来型の兵器から、イランやアフガニスタンで必要とされているヘリコプターや無人機の拡充に振り向けて「現実的な」脅威に対応すべきだと主張してきた。(c)AFP/Dan De Luce
↓ゲーツ国防長官が懸念すると思われる太平洋の最新情勢です。
 
 海上保安庁は4日、鹿児島県奄美大島の北西約320キロの日本の排他的経済水域(EEZ)で3日、海上保安庁の測量船「昭洋」(98メートル、3000トン)が、中国の国家海洋局の海洋調査船「海監51」(88メートル、1690トン)に約1キロの距離まで接近、追跡されたと発表した。海監51は無線で「中国の規則が適用される海域だ」と測量中止を要請してきたという。測量船に中国船が接近し、調査の中止を要請したのは今回が初めて。外務省は4日、「日本のEEZ内での正当な調査だった」として中国政府に抗議した。

 海上保安庁によると、現場は両国の地理的中間線から約40キロの日本側海域。昭洋は海底に設置した地殻構造の観測用機器を引き揚げる作業中だった。海監51が3日午後2時ごろから約3時間にわたって追跡したため、昭洋は調査を断念して同海域を離れた。

 海上保安庁によると、EEZの海域を巡っては日中間に隔たりがあり、今回の現場海域は中国が自国のEEZと主張している。他国のEEZ内で調査をする場合、相手国の事前了承を得る必要がある。

 東シナ海では4月にも中国海軍のヘリコプターが2回にわたり海上自衛隊の護衛艦に近接飛行。外務省が「安全航行上、危険な行為」として抗議したばかりだった。【池田知広、石原聖】 毎日新聞 2010年5月4日 20時08分
 
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米国に力を見せつけた中国の最新鋭潜水艦
「原子力空母も撃沈できる」〜元海将が緊急提言
2010.04.19(Mon) 小林 正男

進んだ捜索技術、しかし潜水艦の対策も進化

 このほかにも、合成開口レーダーの開発によって潜望鏡等の小目標の広範囲な捜索が可能となった。また偵察衛星の発達によって、港に停泊している潜水艦を発見することもできるようになった。
 
 もちろん従来のアクティブソナーも、信号処理を改善するなど少しずつ進歩してきた。現代の潜水艦への対抗策は、これらすべての手段を有機的に連携、相互補完しつつ利用することである。
 
 というのは、潜水艦側も当然のことながらこれら手段に対抗して、静粛な潜水艦を造り、アクティブソナーの音を反響させないコーティングをしたり、潜水艦桟橋を偵察衛星から見られないトンネル内に造ったりしており、どれか1つの手段で決定的に潜水艦に対抗できるという状況ではないからだ。
 
次に、こうした手段を使用して、どんな作戦が行われているのかを見てみよう。
 
その7 平時の作戦の姿 − TAGOSと潜水艦の例
 
 平時における潜水艦との戦いは、潜水艦の位置情報を得る戦いである。例えば空母機動部隊を運用する際、潜水艦の位置が判明していれば、わざわざ危険を冒してそこに出ていく必要はない。
 

米軍が誇るTAGOSの能力とは

 その潜水艦位置から行動の意図を判断して、それを阻止することも可能になる。例えば、ある潜水艦がグアムの方向に進んでいる時、護衛艦やP-3Cがアクティブな捜索武器を使うことによって明示的に追尾活動を行い、情報収集活動を断念させるといったことも可能になる。
 
 
 こうした潜水艦位置情報を得るために活動しているのが、米海軍の音響測定艦(TAGOS)である。
 
 この艦艇は近年、LFAと言われる低周波アクティブ探知装置と曳航アレイの2種類のセンサーを運用して、広範囲の潜水艦探知に努めている。
 
 その潜水艦捜索能力は通常の水上艦艇とは比較にならないくらい高いため、攻撃能力は持っていないものの潜水艦運用国にとっては重大な脅威である。昨年3月、南シナ海の公海上で発生した、米海軍インペッカブルが中国艦船5隻に取り囲まれ活動を妨害された事件は、中国海軍がこのTAGOSの潜水艦捜索活動を妨害したものである。
 
 一方、目に見えないところで相手国潜水艦を監視している部隊がある。それは実は米潜水艦部隊である。潜水艦部隊の行動は秘密のベールに包まれており、ほとんど目にすることはできないが、時折それをうかがわせる情報に遭遇する。
 

米原潜は対象国のミサイル潜水艦を常に追尾

 例えば、冷戦期に米高官が「戦争が始まれば5分以内にソ連SSBNを撃沈する」という趣旨の発言をしたというが、これなどはまさに好例である。
 
 この発言を考えてみれば、冷戦期には米国の攻撃型原子力潜水艦(SSN)が常時ソ連SSBNを追尾していたとしか思えない。また、すべての米潜水艦がTAGOSの曳航アレイと同じアレイを搭載していることが各種公開資料から読み取れることから、米SSNは一般に言われる空母打撃群の護衛任務だけではなく、広域の潜水艦捜索や追尾任務も行っていると考えられる。
 
 こうした米潜水艦の高い対潜水艦戦能力が、陰から空母打撃群を支え、相手国SSBNをいつでも撃沈できる態勢を維持することにより、米国の核の優位を支えているのであろう。
 
 これらの例は、弱者の潜水艦とは異なる潜水艦の使われ方と、米国の潜水艦技術の高さを示しており、興味深い。
 
その8 「ソン」級潜水艦事件の意味
 
 ここまで説明してくると、「ソン」級潜水艦事件の意味が見えてきたと思われるが、念のため最後の知っておくべきこととして説明しておこう。
 

米国の最新技術を突破した中国の潜水艦

 事件の際、キティホークは訓練中であったと説明されていることから、当然護衛艦艇などに取り囲まれていたであろう。これらの対潜捜索がどのように行われていたかは想像によるしかないが、前程の対潜哨戒機によるソノブイやレーダーによる捜索、護衛艦艇による曳航アレイなどを使用したパッシブ捜索などが行われていたことであろう。
 
 SSNの護衛がついていなかったという報道もあるが、常識的にはSSNやTAGOSによる広域捜索結果から潜水艦が存在しないと思われる海域を空母打撃群が行動していたと考えるのが、妥当であろう。そして万が一見落としていた潜水艦を発見するとしても、それは護衛艦艇等が形作る陣形の外側でなければならなかった。
 
 陣形の内側で「ソン」級潜水艦が発見されたということは、偶然か故意かは別として、米海軍の様々な対潜手段を駆使した陣形が突破されたということを意味する。この陣形突破がたまたま当日の海洋状況の所為だとしても、そういうことが起こり得ることだけは認めざるを得ない。
 
 そして1世代古い「ソン」級でそれが起こったということは、最新型の「ユアン」級ではより確実にそれが起こるということであり、東シナ海は米空母打撃群が容易に活動できる海域ではなくなったことを、事実として証明した事件とも言えよう。
 1996年の台湾海峡ミサイル危機の時には、米空母打撃群が近海に姿を現して危機が沈静化したが、今後米空母打撃群が台湾に近寄る時には、それが太平洋側であっても、東シナ海同様相当のリスクを覚悟せざるを得ないと思われる。
 

わざわざ米軍に見つかって能力の高さを見せつけた中国

 この事件が今後の台湾問題に与える影響は、決して小さくはないであろう。
 ちなみに「ソン」級が浮上したのは、これが示威であるならば陣形内で米側に発見されなければ意味がないことから、陣形を突破した後にわざわざ見つかるための行動を取ったということであろう。
 
おわりに
 
 潜水艦の関係するニュースは、潜水艦に関わる知識がないと分かりにくいことが多い。しかし今、読者のあなたは少なくとも基礎的な知識を手に入れたわけである。
 例えば、米海軍が使用している低周波大出力のアクティブソナーの使用が海洋生物保護のために制限されるというニュースを見た時、これがTAGOSのものであると気づけば、この制限の及ぼす影響をおおよそは想像できるようになったのではなかろうか。
 
 国際関係は経済だけでは分からない。この記事を機に安全保障にも目を向けていただければ、望外の喜びである。


jbpress.ismedia.jpより引用。
 
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