日本政治
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何に怯えている、丹羽宇一郎・前中国大使
文藝春秋の独占手記に強い違和感を覚える
2013.01.17(木)宇佐 静男:プロフィール (1)からの続き
氏に限らず、日本の指導者層に軍事的知見が乏しいのは、日本の宿痾のようなものである。軍事的観点なき外交などは存在しない。最低限の軍事知識さえ持たないようでは、情勢判断を誤り、時として国益そのものを毀損する可能性があることを自戒しなければならない。
陸に警察があり、海に海保があり、平時、日本の領域の治安、秩序を維持している。だが、空には航空警察という組織がない。
従って空の秩序維持は、航空自衛隊が航空警察の役割を果たしている。それが「対領空侵犯措置」であり、実施していることは防衛行動ではなく警察行動である。
日本の厳格なポリシーこそ国際社会に向けて発信すべし中国の航空機による領空侵犯に緊急発進する航空自衛隊のF-15戦闘機〔AFPBB News〕
諸外国では警察行動と防衛行動の境界をあえて不明確にしている。状況に応じて臨機にこの境界を乗り越えることがあり得る。であるからこそ、奇襲にも対応できる即応性が維持できるわけである。
航空自衛隊の場合、この境界は明確かつ厳格である。高度な政治判断がない限り警察行動から防衛行動に移ることはあり得ない。
国際法、国際慣習からの逸脱はあり得ない。武器の使用についても厳しく縛りがかかっている。某国のように民間旅客機でも領空侵犯したら撃墜するようなことは決してあり得ない。
紙幅の関係上、詳細は省くが、一言で言えば海保が海上で実施する活動を上空で実施しているだけである。これ以上でも、これ以下でもない。
「過度に応ずることがあれば」という言葉自体が、現場の実情把握不足を露呈している。さらには、中国に対して「過度に対応」できるかのような誤ったメッセージになる可能性もある。
「過度に対応」云々を言う前に、元大使であれば、我が国の対領空侵犯措置のポリシー、厳格性、そして隊員の規律厳正さこそ国際社会に向かって公言すべきではないだろうか。
「外交は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す外交である」と言われる。氏の発言を引用するまでもなく、日本外交の弱点はこのような軍事的知識不足によるところも大きい。相手の軍事力に必要以上に気おされたり、威嚇に怯えたりするようでは、外交のオプションが狭められ、相手国の主張に譲歩するしかなくなる。
そもそも、中国は尖閣諸島で軍事力を行使する可能性はあるのか。結論から先に言うと現状ではほとんどない。
これまで中国は南シナ海では次のように領有権を獲得してきた。まず大量の漁船団を使って違法操業をさせ、文民を大挙上陸させて主権碑などを設置する。そして漁民、民間人保護の大義名分の下、軍事力を行使して支配権を獲得する。
この南シナ海パターンは尖閣には適用できない。多数の人員を上陸させるには、大量の補給物資輸送が継続できることが条件となる。補給物資が滞ると「尖閣版ガダルカナル」となる。そのためには制空権、制海権を獲得することが必須である。
中国空軍は現在、第4世代戦闘機は航空自衛隊の2倍以上保有する。だが、航続距離、管制能力ともに劣り、洋上での航空作戦能力はいまだ成熟の域に達していない。東シナ海上空での中国空軍の航空作戦能力は、航空自衛隊単独であっても凌駕することは難しい。
戦力のパラメーターは自衛隊だけではない。日米同盟を考慮に入れると、日米共同の航空戦力は格段に中国に優っている。中国による東シナ海の制空権獲得は、現段階ではほぼ困難である。
軍事行動には出られない中国の国内事情 制海権でも日本が優位を占める。海上自衛隊は対潜作戦や機雷掃海の実力で米軍に次いで世界第2位である。海上自衛隊のイージス護衛艦の能力は最新鋭の中国艦艇と比べても、ケタ違いの能力差を有する。海上自衛隊単独でも十分強力である。まして日米同盟が睨みを利かしている。
米国は尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安保の適用対象であること確認する条項を2013年度国防権限法に追加した。日米共同ともなれば東シナ海の制空権、制海権の獲得は不可能なことを知り尽くしているのは人民解放軍自身である。中国首脳が冷静な分析をする限り、尖閣諸島での軍事力行使は現段階ではあり得ない。
中国は国内事情によっても軍事力行使が大きく制約されている。中国の目下の最優先課題は経済成長である。これを失うと共産党独裁の正統性をも失いかねない。共産党一党独裁の維持は、中国では何より優先される。胡錦濤から反日強硬派と言われる習近平に政権が代わっても、この方針は変わらない。週刊紙「南方週末」に対する言論統制騒動を見ても分かる。
欧州債務危機のあおりを受け、経済成長も政府目標である前年比7.5%を下回る懸念が指摘され始めている。中国は経済成長率が7%を切ると危険水域だと言われる。中国経済はグローバル経済に依存しており、国際協調路線が欠かせない。軍事行動を採ることによって国際的評判が失墜し、経済成長に響く事態は何としても避けたいのが実情である。
近年、中国では国民の不満が鬱積している。ジニ係数0.61が示すように所得格差は驚くほど拡大し、公務員の腐敗は蔓延っている。暴動・デモの件数は年間20万件、1日平均548件と言われ、治安維持予算が国防予算を上回っていることからも事態の深刻さが分かる。
国民の不満が鬱積している時の軍事力行使はリスクが高い。完璧な勝利を達成できれば共産党独裁政権への求心力は高まるだろう。だが、少しの失敗でも、不満が暴動となり、燎原の火のように全国に広がる可能性がある。
過去二十数年間で国防費は三十数倍に拡大され、強化した軍事力を背景に対外強硬路線を望む者がいることも確かである。軍事の論理と経済の論理との相克はあるものの、米国を敵に回し、経済を犠牲にしてまで軍事力を行使するほど、中国首脳は冷静さを失っていない。
では、中国が尖閣で軍事力を行使するとしたらどのような場合であろうか。1つは、何らかの事情で中国共産党の一党独裁が崩れそうになった場合である。
「国内矛盾は国外へ特化せよ」というのは独裁者の常道である。だが米国との戦争を視野に入れねばならず、それは自爆テロに近い。
2つ目は、軍事力を行使しても国際社会から非難を受けないで、日米同盟も機能しないような事態である。考えにくい事態であるが、日本に一方的に非があるような事態だろう。日本は間違っても先に手を出すような「真珠湾の罠」に二度と嵌ってはならない。
丹羽氏の手記から多くの賛同できる点もある。例えば「尖閣問題は長期戦を視野に入れて」「中国を国際経済の表舞台に引っ張り出す」「歪められた日本人像を打ち消すためにも日本の文化を輸出する動きを強める」「外交には、一時の感情に流されることのない、総合的な判断が必要」等々である。
だが、全体を通して読み取れるのは「無用な怯え」である。たぶん軍事的知見不足に起因する情勢判断の誤りであろう。
無用な怯えを排除し粛々と備えよ 軍事力をもって尖閣領有権問題を解決できないことを最もよく知っているのは中国政府である。だからこそ、「不戦屈敵」、つまり武力を伴わない戦争である「三戦(心理戦、世論戦、法律戦)」に全力を傾注しつつある。軍事力を直接ではなく、間接に使い、経済、政治、外交を組み合わせて多様で総合的な威圧をかけようとするものだ。
対日暴動、日本製品不買運動、通関手続きの意図的遅延、人的交流や友好行事中止、露骨な公船による領海侵犯、海軍艦艇による周辺航行、戦闘機の防空識別圏侵入などは「心理戦」なのだ。これらにオロオロするようでは、既に「心理戦」に負けている。危機を煽るだけのメディアも「心理戦」に荷担していることを忘れてはならない。
国連での対日非難演説に見られるように、今後はさらなる国際社会での宣伝攻勢、つまり「世論戦」も強めてくることが予想される。尖閣領有権主張の理論的根拠を詰めて「法律戦」にも臨んでくるだろう。
中国の挑発行動は始まったばかりである。これからの長期戦に臨もうとする時、ただ見えない影に怯えて「領土係争を認めるべきだ」「国有化以前の状態に棚上げすべきである」といった主張が国内で出てくることは憂慮すべきことである。
我が国が今、なすべきことは、丹羽氏が述べる「相場の世界」でいうところの「待つ」ことであり耐えることである。
中国外交には「相手国の徹底した抵抗と国際社会の非難には敏感に反応」するという特徴がある。今後、さらに海保を充実させながら実効支配を維持するとともに、防衛力を強化して日米同盟の緊密化を図ることであり、脅しや嫌がらせなどの「心理戦」に屈しないことである。
併せて国際社会に対し日本の領有権の根拠を堂々かつ理路整然と主張し続け、「世論戦」「法律戦」にも負けないことが大切なのだ。 JBpress.ismedia.jpより引用
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何に怯えている、丹羽宇一郎・前中国大使
文藝春秋の独占手記に強い違和感を覚える
2013.01.17(木)宇佐 静男:プロフィール 民間出身では初の中国大使を務めた丹羽宇一郎氏が、月刊誌文芸春秋2月号で「日中外交の真実」と題し、独占手記を発表した。手記の中で、丹羽氏は2年半弱の駐中国日本大使勤務を振り返り、「尖閣に始まり尖閣で終わった」と感想を漏らす。
悪化の一途を辿る日中関係について、「私のせいではない」という言葉は使わないものの、全体を通じてやや自己弁護的なトーンが感じられるのは「回顧録」や「独占手記」に特有の傾向なのかもしれない。
国益に対する深慮遠謀が感じられない発言の数々北京の日本大使館を出る日本政府の公用車。丹羽大使時代には襲撃を受けて国旗を奪われる事件が発生した〔AFPBB News〕
筆者は日中関係悪化の原因を彼に押しつけるつもりは毛頭ない。ただ、手記に書かれている事実を題材として、民間出身大使の是非をも含め、ここまで悪化した日中関係について総括する必要があると考える。
丹羽氏は「脱官僚」「官僚バッシング」の風潮に乗り、2010年7月、民主党政権によって中国大使にノミネートされた。手記にもあるが、当時「民主党は素人に外交を任せるのか」といった批判が挙がった。
これについて彼は、数々の政府の仕事の経験、つまり「経済諮問会議議員、地方分権改革推進委員会や総務省の独法(独立行政法人)評価委員会の委員長、税制調査会の委員」などを通じて国の重要政策に携わってきており、「日本が直面していた問題も把握していた」と述べ、だから問題ない(明確な言及はないが)というニュアンスで記述している。
今後、同様な人事があり得ることを考えれば、これを好機として真摯に振り返ってみることも有益であろう。
2012年は日中国交正常化40周年であり、本来なら日中友好の節目となるはずだったとしながらも、予想外の事件、つまり石原慎太郎前都知事による尖閣諸島購入計画発表があったと述べる。
着任間もない2010年9月7日に起きた中国漁船と海上保安庁巡視船衝突事件でギクシャクした日中関係が好転する手ごたえがあったが、都の購入計画発表で期待は大きく裏切られたとする。
都の購入計画が明らかになってから中国外交部も非常に神経質になっていたと言うが、その2カ月後、丹羽大使は「フィナンシャル・タイムズ」紙のインタビューに応じて「もし計画が実行されれば、日中関係にきわめて深刻な危機をもたらす」と述べている。
ここで釈然としないのは、中国側が神経質になっているという認識があれば、プロの外交官ならこういう発言を公にするだろうか、しかも外国メディアを使って・・・という疑問である。
氏の目的は何だったのだろう。大使ともなれば、片言隻句、一挙手一投足に至るまで意図があり、国益への深慮遠謀がなければならない。
この発言により都に対し購入をやめさせようとしたのだろうか。もしそうであれば、国内の問題であり、アンダーテーブルで動くべきものである。まさかこの発言で中国側を宥めようとしたのでもあるまい。いずれにしても、この評論家的発言の意図が分からない。
日本国内でも様々な批判が上がったが、都が公式に購入計画を発表した後であり、この発言は火に油を注ぐこととなった。
結果として日中双方を後戻りできない状況に陥らせたという意味で、駐中国日本大使としては極めて不適切な発言であったと言える。素人の民間出身大使の負の側面が出たと言われてもやむを得まい。
手記では、この発言について、「今になって、自らの発言についての是非をコメントするのは控えたい」「『あのボールが失敗でしたね』などと、後出しじゃんけんのような真似はしたくない」と述べて多くを語らない。
今は語れないということかもしれないが、いずれかの時点で後世のために当事者が率直に語るのは元大使としての責務であろう。総括なきところに進歩は生まれない。
あの時点において、外国メディアのインタビューを受ける是非はさておいても、大使としては国際社会に向かって、次のように情報発信すべきだったのではないだろうか。
外交官ではなく評論家?暴徒化した反日デモで略奪と破壊され尽くした日系スーパーのジャスコ〔AFPBB News〕
「都の購入は『所有権の移転』に過ぎない。土地の所有が認められていない共産主義国家では分かりにくいかもしれないが、日本は民主主義国家であり、土地の所有は認められている。もともと日本人個人が所有していた土地を都が買い取るという所有権の移転に過ぎない」と。
インタビューについて丹羽氏は「都が購入に踏み切っていいタイミングなのかという観点で、自分なりの意見を申し上げた」と述べている。だが、意見を述べるだけであれば評論家にすぎない。
もし購入のタイミングがふさわしくないと考えるのであれば、あらゆる手段を使って石原都知事に翻意させる努力をすべきだったろう。万策尽きて翻意させることができなかったならば、次の一手として、事態の悪化を抑制すべく中国政府への働きかけ、そして国際社会へ上記のような説明をすべきだった。
都に対する意見を外国メディアを通じて述べるなど、外交センスを疑われてもしようがない。
次に彼の持論である「係争の存在を認めるべし」という点である。丹羽氏は昨年12月20日、日本記者クラブでの会見でも、尖閣を巡る中国との関係について「外交上の係争はある。『ない』というのは理解不能だ」と述べ、日本政府の「領土問題はない」とする立場を変更するよう求めている。
手記の中でも、尖閣諸島については、「歴史的経緯、国際法に照らし合わせても、我が国固有の領土」ではあるが、「外交上の係争は存在する」と認めるべきだと主張する。でないと「交渉のテーブルに着くことすらできない」と述べる。
そもそも中国との領有権問題について交渉のテーブルで解決できると考えているのであろうか。もしそうであれば、あまりにもナイーブ過ぎる。だが、文中を見る限り、そこまでナイーブでもなさそうだ。
「現在、日本と中国の国力は均衡しており、そう簡単に白黒がつきません。物理的な力が加わらない限り、100%解決しない。つまり戦争以外に完全解決の道はない。これは断言できます」
そう言いながらも「係争の存在」を認めてテーブルに着けという交渉の目的は何であるのか。このままでは中国の軍事力行使がやがて生起すると情勢を判断し、それを防ぐためと考えたのか。もしそうであれば、低い軍事的知見によって情勢判断を誤っていることになる。これについては後述する。
「歴史的経緯、国際法に照らし合わせても、我が国固有の領土」であると述べる尖閣諸島について「係争の存在」を認めることは、日本側の譲歩であるに違いない。
記者会見で、「日本が係争の存在を認めれば中国の挑発行動は治まるか」との問いに対して丹羽氏は、「それ以外、道はない」と述べた。相手のブラフに怯えて展望なく譲歩するのは外交の敗北であり、まさに中国の思う壺である。
他方、フランスとドイツ国境に位置するアルザス・ロレーヌの400年近い紛争の歴史を持ち出し、第2次大戦後フランス、ドイツが和解し、ここにイタリア、ベルギー、オランダなどが加わりECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が結成され、後のEU誕生の礎になったと説く。
アルザス・ロレーヌとは事情が全く異なる尖閣諸島海域で中国の漁業監視船を監視する海上保安庁の巡視船〔AFPBB News〕
尖閣もこの例に倣え、とばかりの主張である。だが、価値観があまり違わないフランス、ドイツの例を、価値観ばかりか政治体制も180度異なる日本と中国の係争に当てはめようとするのはあまりにも乱暴すぎる。
丹羽氏は、商事会社で務めてきたビジネスマンらしく次のように述べる。
「相場の世界には『森羅万象、売りか、買いか』という言葉があります。(中略)本当の相場のプロは、この二つの選択肢だけでなく『待つ』『休む』というカードを持っている。今の尖閣諸島をめぐる日中の状況を考えると、この『待つ』という判断が必要なのではないかと私は考えています」
この点については筆者も全く同感である。だが、一方で丹羽氏は「係争を認めろ」と主張する。「係争を認める」のは、1つの譲歩であり「待つ」ことではない。「待つ」というのは、「領有権をめぐる問題はない」との主張を変えず、海保による実効支配を維持した今の状態を継続することである。
「日本の総理、大臣には、短期的に考えるのではなく、長期的視点にたって、もっと外交の現場の声をくみ取って尊重してほしいと思います」とも述べているが、短期的に考えているのは氏自身なのではないだろうか。
「現場の声をくみ取る」ことは重要なことである。だが、国益という大所高所から国家戦略を考えぬき、時には「現場」を犠牲にしてでも貫徹することがあるのが国家の政策というものではないだろうか。
昨年12月の領空侵犯についても述べられているが、対領空侵犯措置の現場に長年いた筆者としては、いささか違和感を覚える。
「中国側の安易な挑発行為に、日本が過敏に反応することがあってはなりません。(中略)過度に応じることがあれば、両国は後戻りできない事態になるでしょう」
暗に航空自衛隊の対領空侵犯措置の中止を求めているようにも窺える。そもそも丹羽氏は日本の対領空侵犯措置の実体を御存じなのだろうか。 (2)へ続く
JBpress.ismedia.jpより引用
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