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急速に復活の兆しを見せるロシアの軍事力
世界は再び冷戦の時代を迎えるのか
2011.11.22(火) 矢野 義昭:プロフィール (2)からの続き
10 戦略防衛システムをめぐる米ロの対立
戦略防衛システムを巡っては、ソ連時代から米国との間に長い角逐の歴史がある。ロシアの科学者たちは冷戦期に、攻勢的報復に基づく相互抑止による停滞を解消することを任務として与えられていた。
その1つの結論が、モスクワの周りにミサイル防衛システムを配備することであった。それに対し米議会では、これを憂慮し、対抗するシステムの配備を求める声が出た。しかし、当時のソ連のミサイル防衛の技術は、米側と同様に信頼のできるものにはならなかった。
同じ時期にソ連は、ハイテクと核戦争の敷居以下の通常戦争について、理論研究と実際的議論を展開していたものの、攻勢的弾道ミサイルの戦略的防勢に対する優越を打ち破ることに、米国ほどは成功しなかった。
ソ連の1980年代の文献ではすでに、1990年代に米国の軍事著述家や研究開発グループが熱心に取り組んだ軍事革命が予期されていた。
この軍事革命は、湾岸戦争で米軍により示された戦闘技術の目を見張るような効率性のおかげで、さらに加速されたが、ソ連解体後のロシアは、21世紀の戦争における先端技術面でNATOに後れを取っていることを自覚している。
その結果、ロシアとNATOは冷戦期の戦略に似た戦略に逆戻りした。すなわち、ロシアは初期段階における早期の核使用を強調し、NATOは最後の拠り所として核兵器を使用することを予期するようになったのである。
ソ連時代からロシアの核戦略の歴史と現在のロシアの取りつつある方向を検証してみると、ロシアは再び、欧米との対決姿勢を強め、第2の冷戦時代を迎えつつあるかのようである。
前述したように、モスクワ条約が締結され核弾頭の大幅削減目標には米国と同意した。しかし、核弾頭自体およびその運搬手段の廃棄義務はなく、その構成、構造も両国がそれぞれ独自に決定する。
従ってICBM、SLBM、戦略爆撃機の種類と数、MIRV化(個別に誘導が可能な複数弾頭を搭載した)弾頭の保有なども規制されない。削減した核弾頭の保管も可能である。
その意味では、一応削減目標には合意したものの、ロシア側の劣勢と見る懸念は、本質的に解消されたとは言えないであろう。
この懸念を打ち消し、対米パリティを回復するには、ロシア側としては、MIRV化弾頭に規制がないことから、ミサイル防衛(MD)システムを突破する能力のある、MIRV化弾頭を搭載した新型のICBMとSLBMの展開配備を急がねばならないことになる。
今のところ、米国は攻撃的な戦略核戦力では有利に立っているうえに、MDを極東のみならずロシアの心臓部である欧露正面にまで配備し、ロシアの戦略核報復力まで無力化しようとしている。
そのうえ、ウクライナのNATO加盟問題、中央アジアへの米軍基地の展開など、旧ソ連圏諸国にまで勢力を拡大しようとしている。
このような、米国の対応には我慢ならないというのが、ロシアの立場であろう。米国がMDシステムをチェコとポーランドに配備することに対し、ロシアが強硬に反対した理由も、このような危機感が背後にあるのであろう。
ロシアは2002年6月の米国の一方的なABM条約(Anti-Ballistic Missile Treaty)の脱退を受けて、SALT IIの無効を宣言し、多弾頭核ミサイルの廃棄を中止するなど、対抗手段を講じることを明らかにしている。
さらにロシアはすでに欧州通常戦力条約(CFE)の履行を中止する方針を表明し、2007年後半には軍事ドクトリンを改正し、NATOを敵と規定する動きを見せている。
ロシアも「S500」など新型の対ミサイル防衛システムの開発・配備を急いでおり、ミサイル防衛システムの削減も軍備管理の対象に上がってくる可能性が高い。今後戦略攻撃兵器だけではなく、戦略防衛システムも米露間の軍備管理交渉の焦点になってくるであろう。
11 日米への影響
ソ連は崩壊したが、ロシアは依然として世界一の領土と豊富な資源を保有する大国である。軍事力の面でも米国と拮抗する核戦力を維持し、通常戦力の面でもIT化の推進を重点として、急速な装備の近代化に取り組んでいる。
米国は、2010年に出された『4年ごとの戦略態勢見直し報告(QDR)』でも、ロシアはもはや敵ではない、むしろ、ロシアは核兵器の削減や核不拡散、テロとの戦いにおける重要なパートナーであるとしている。
しかしロシアの核戦力の近代化は好調な経済に支えられ、着実に進展している。
新型の地上配備移動式多弾頭ICBMは、MD網も突破できるとされており、移動式のため事前制圧も困難と見られ、残存性は高く、第2撃能力は向上している。
これに新型SLBMを搭載した秘匿性や行動能力に優れた新型SSBNが8隻就役すれば、第2撃能力はさらに飛躍的に向上するであろう。その結果、対米核抑止能力はパリティを回復すると予想される。
それだけではなく、経済の好調が継続し、政府が力を入れているIT関連技術を中心とする先端技術が根付き軍需生産に転用されれば、ロシアが質的にも量的にも米国と並ぶ核大国となる日が再来する可能性もある。
軍備管理交渉が頓挫し、相互不信が高まれば、再び冷戦時代のような米国との攻勢、防勢両面での、戦略戦力の軍拡競争が再来することもあり得るであろう。
また、日本の周辺では今年に入ってからも、東日本大震災直後から日本領空への接近飛行などを繰り返し、9月には初めて爆撃機2機による日本周回飛行を行っている。
他方で、産業のIT化や極東でのインフラ整備などがなかなか進まないロシアは、日本からの投資や技術導入を求めている。
ロシアとしては、日本に軍事的圧力を加えることにより、領土問題の進展や極東開発への支援を引き出すとの戦略的狙いがあるのかもしれない。このような手法も戦略的狙いも、冷戦時代のソ連と基本的に変わってはいない。
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ロシア陸軍
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急速に復活の兆しを見せるロシアの軍事力
世界は再び冷戦の時代を迎えるのか
2011.11.22(火) 矢野 義昭:プロフィール (1)からの続き
4 新軍事ドクトリン
ロシア軍の新ドクトリンでは、北大西洋条約機構(NATO)のある種の状況下での行動は差し迫った脅威となるとほのめかしており、国境近くに軍事インフラを展開し、「国際法違反」に対して全地球的に戦力を使用するとしている。
また、そのほかのロシアにとっての問題は、外部空間の軍事化、とりわけ先進的な精密誘導兵器の展開とミサイル防衛システムの展開であるとしている。
ドクトリンでは、ベラルーシを最優先とし旧ソ連圏中央アジア諸国との集団的安全保障条約が重視され、ロシアはこれら諸国と市民を軍事的に支援する義務を強調している。
ドクトリンは核の予防的使用または先制使用についての条項を含むものと見られているが、実際の核関連の条項では、核使用の敷居が少し上げられている。
5 人的戦力不足対策
少子化に伴う徴集兵の適齢人口の減少が大きな問題になっている。2011年に年15万人であった契約軍人は2011年には8万人に減少し、徴集兵が主体となっている。
しかし徴集適齢人口の減少は、2020年頃まで出生率の低下により続くとみられている。これを補うため、新兵の週末外出の容認、給与引き上げなどの処遇改善や、文官の戦場使用なども試みられている。
6 装備の近代化
ロシア軍は現在装備の近代化、更新を極めて重視している。調達調整のための専門局が創設され、意欲的な支出計画が進められている。国家装備計画のための資金は2011年から20年頃までの間に5割増しになる。
この計画によれば、資金は、戦略核戦力、精密誘導兵器、C4I、近代的な軍用機の配備、10隻の新造艦艇と5隻の通常動力型潜水艦を2020年までに配備するなど海軍への再投資、ロシア国内を迅速に機動するための長距離輸送機などに重点投資される。
単なる旧式装備の更新改善や長期的な削減の流れを改めて、新装備を取得するための追加投資も行われる。
またT-50ステルス爆撃機と新型ヘリなど新型の航空機を1500機と200基の防空システムが取得され、「An-124」「Il-112」などの戦略輸送機が生産される。
ロシア空軍向けに「Mil-28」「Ka-52」「Mi-8」などの新型の武装ヘリ、輸送ヘリ400機も計画されている。60機の「Su-34」「Su-35C」などの長期契約も署名された。また「S-400」防空システム5個大隊分が調達され、地対空ミサイル・対空砲10個システムも稼働する。
国家装備計画では、2011年から2020年の間に、装備に6280億ドル、MoDに1157億ドルを投入する予定である。その間年率9〜11%で装備を更新し、2020年までに近代的な装備を70%増加させる。
7 予算確保と軍需産業の能力不足対策
しかし予算の確保と軍需産業の能力不足が問題になっている。2010年度は、装備調達に380億ドルが使われ、そのうち124億ドルが新装備に使用された。軍事予算は2011年の1兆5200億ルーブルから2013年には2兆1000億ルーブルに増加する予定である。
また2010年度の調達、整備、修理の予算は3800億ルーブルであったが、2013年には9800億ルーブルに急増する。しかし研究開発予算の比率はその間に、22%から13%に下落する。
最大の懸念は、ロシアの軍需産業が産業力の不足からハイテク製品を製造できないのではないかということである。そのためMoD用は一部外国製品を購入している。
イスラエルからは無人機を購入し、フランスからはミストラル級強襲揚陸艦を購入する契約が成立した。イタリア製車両のカマズでの生産も始まる予定である。
8 東部軍管区の軍事力配備
『ミリタリー・バランス2011』によれば、極東軍管区とシベリア軍管区を統合してできた東部軍管区(司令部ハバロフスク)の、現在の展開軍事力は以下の通りである。
軍司令部: 4個
旅団: 戦車1個、機械化10個、機械化予備10個、 特殊部隊2個、空中攻撃2個、砲兵4個、多連装ロケット2個、 地対地ミサイル3個とSS-21 機関銃砲兵師団: 1個(北方四島)
艦艇: 主要艦艇8隻、水陸両用4隻、補給支援15隻、潜水艦23隻 航空機: 戦闘機74機、多用途機173機、対地攻撃機72機計319機 ヘリ: 攻撃ヘリ24機、輸送ヘリ48機 このうち基幹となる戦車旅団と機械化旅団の合計数は11個と、北部7個、中央8個、南部7個の中で最多で3分の1を占めている。
予備旅団の数も北部3個、中央3個、南部0に比べ10個と全体の6割以上を占めている。そのほかに北方領土には唯一の機関銃砲兵師団が配備されている。
艦艇数は、主要艦艇が北部10、中央なし、南部5と北部の8割、水陸両用は北部5の8割、後方補給艦は北部20の75%、潜水艦は57%である。
空軍については、北部が戦闘機89機、中央が戦闘機73機、南部が戦闘機、多用途機、対地攻撃計257機であり、東部が最多である。
このように東部軍管区は、地上軍と空軍の主力と海軍の北部に次ぐ戦力が集中している要衝であることが、その軍事力の展開状況から明らかである。
9 米露軍備管理交渉の経緯と今後
ロシアにとり軍事、安全保障面で最大の懸案は、対米核戦力バランス面の不均衡である。戦略核兵器削減条約START I、START IIに基づく戦略核ミサイルの均衡は、2001年当時、ロシアにとり不利になっていた。
ソ連解体によりロシアの戦略核ミサイル製造工場の一部がロシアの領域外に残されたため、ソ連崩壊から10年間、ロシアが国内で生産できる地上配備の新型ミサイルはトーポリM(Topol-M)のみであった。
START IIは2000年4月にすでにロシア議会により批准されていた。START IIではSTART I以上の制約は、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)については課されていなかったが、批准当時デルタIII型、デルタIV型、タイフーン級の3種類が就役中であった。
しかしデルタIII型は2003年には老朽化のため退役し、タイフーン級も「SS-N-20」が退役するため、デルタIII型よりも早く退役しなければならなかった。
他方、後継の新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射試験は、その後2005年12月にようやく成功したものの、それを搭載可能に改造するために最新型SSBNタイフーンの生産は一時中止になっていた。
STARTIIを前提とした場合は、SSBNは生産が再開されても年間1隻の能力しかなく、2008年のSSBNの総数は7隻、SLBMの弾頭数は450発となると見積もられていた。
ICBMについては、300基のトーポリM道路移動式ICBMと約100基の「SS-19」を保有することになり、爆撃機についても、2001年現在と同水準の62機の「Tu-95」と15機の「Tu-160」により550基の長射程核巡航ミサイルを運搬することになる。
その結果、ロシアの総核弾頭数は1400発にとどまるのに対し、米国は3500発を保有することになる。そのうえ、米国は展開核弾頭数を緊急に5500発まで増加させる能力を保有している。
しかし、このようにロシアにとり不利なSTART IIを発効させることを拒否すれば、ロシアは今後十年間、一応3000発から3500発の弾頭を維持できるであろう。しかし「SS-18」や「SS-19」は既に老朽化しており、2010年までには新型に換装しなければならない。他方米国は6000発の弾頭を維持できる。
いずれにしても、米国が有利であることに変わりはない。そうであれば、米露双方とも核弾頭数を1500発程度に削減するとする新しいSTARTという選択肢がより魅力的であるとし、2003年以前にロシア側は米側とそのような合意に達するものとの前提で、ロシアは2001年時点では戦略戦力の整備を進めていた。
このような見積もりを踏まえ、プーチン政権は2002年5月24日にモスクワ条約(『アメリカ合衆国とロシア連邦の間の戦略的攻撃(能力)の削減に関する条約』)を締結した。この条約により、両国は2012年末までに核弾頭を1700〜2200発まで削減することになった。
さらにその後、2009年4月のバラク・オバマ大統領のプラハ演説での呼びかけに応じて、米露間では新STARTに合意し、2011年2月に発効、発効後7年間で戦略核弾頭数を1550発の範囲まで削減することになっている。
今後は非戦略核兵器の削減が軍備管理交渉の焦点の1つになってくるとみられる。特に冷戦時代以来、極東ロシアには多数の戦術核弾頭が配備されているとみられるが、その保有数や配備の実態については何ら情報がないままである。
1975年当時、地対地弾道核ミサイル「SS-11」は350基が配備され、うち120基が極東に配備されていた。また陸上の師団数などもソ連時代には全戦力の約3分の1〜4分の1が極東に配備されていた。
これらから戦術核も、ロシア領土内にある総数2000発の約4分の1に相当する500発以上が配備されていると見積もられる。
戦術核兵器はモスクワ条約でも軍備管理対象になっていない。特に欧州と異なり、極東正面の戦域、戦術核兵器は、ソ連時代にアジア正面の「SS-20」が問題となり廃止された以外、交渉の対象としてあまり取り上げられてこなかった。
しかし、欧州での戦争計画から類推しても、戦術核は極東有事にはロシア軍により、かなり初期の段階で使用される可能性がある。
極東ロシア軍の戦術核戦力の実態は、日本防衛にとっても死活的に重要な問題であり、極東正面でのロシア軍の戦術核に関する情報公開および軍備管理交渉が不可欠である。
ただし、長大な陸地国境を持つロシアとしては、戦術核弾頭なしで少子高齢化のため限定された通常戦力のみで国土防衛を全うするのは困難として、戦術核の削減交渉には容易に応じないであろう。交渉は難航が予想される。
また米側が核弾頭の新技術により、削減対象外の備蓄プルトニウムを迅速に兵器化する能力を保有し、兵器級プルトニウムを温存しようとした場合には、それらへの査察、検証方法も含め、備蓄されたプルトニウムの扱いは、ロシア側として米側との交渉の大きな争点になると思われる。
さらに、新たに軍備管理交渉に参加を求められる中国、インドなどと、ロシアが交渉においてどのような立場を取るのか、特に米国に対抗して中印などと協力関係に立つのか、米国と歩調を合わせるのかも、多国間軍備管理交渉の成否を決める大きな要因になってくるであろう。
JBpress.ismedia.jpより引用
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急速に復活の兆しを見せるロシアの軍事力
世界は再び冷戦の時代を迎えるのか
2011.11.22(火) 矢野 義昭:プロフィール はじめに
ソ連は冷戦時代、米国との軍拡競争で量的な拡大に力を注いだ。ロシアが現在保有する核兵器は当時のものである。しかし、ウラジーミル・プーチン前大統領(現首相)は「質」で勝負する方向へ転換した。
目次
プーチン政権が重視してきた軍事力の近代化は、戦略核兵器の近代化と指揮・通信・統制・コンピューター・情報・監視・偵察システム(C4ISR)の改善である。
いずれも、米国の高精度の先制戦略核攻撃から、戦略核兵器とその指揮統制システムを残存させ、MD(ミサイル防衛)網を突破して核報復を可能にするために、最も重要な機能である。
核戦力の対米均衡を維持することを主眼として、これらの開発配備が急がれているのであろう。
1 近年急増しているロシアの軍事費
ロシアの軍事費は、原油などの資源高により国庫収入が潤ったおかげで、毎年2割から3割の伸び率で急増している。一時リーマン・ショック以降落ち込みが見られたが、軍事費は経済全般よりは増加傾向にある。
ロシアの軍事費は公表額に、年金、準軍隊の関連経費、武器輸出代金などが含まれていない。印象的なのはその近年の伸び率である。
2005年のロシアの公表軍事費は187億ドルと韓国並みだが、その他の経費を加算すれば258億ドル、購買力平価に換算すれば591億ドルに達すると見積もられた。
2007年当時には、オイルマネーの流入で、ロシアのGDPは1兆ドルを突破したが、米国との経済力の格差は依然として大きかった。2007年度のロシアの国防予算は311億ドルだったが、米国は5000億ドルであり、ロシアとしては新型戦略核ミサイルなど少数精鋭の武器に力を入れるしかなかった。
しかしロシアは2008年以降、プーチン首相、ドミトリー・メドベージェフ大統領の双頭体制の下で、力と安定と秩序を回復しつつある。経済面でも軍事面でも重点とされている施策は、ソ連時代に後れを取っていた、経済と軍事のイノベーション、特にIT化の促進である。
特に軍事面では装備の近代化が急がれており、2020年を目標に大規模な軍改革が現在推進されている。
ロシアの経済規模は2010年現在、1兆4240億ドルと我が国の4兆4200億ドルの約32%に相当する。しかし今後ロシア経済は2025年頃までは年率3〜4%程度の安定成長を維持するとみられ、2020年頃には2兆2720億ドルと我が国(4兆9780億ドル)の約46%に、2025年頃には2兆7280億ドルと我が国(5兆2600億ドル)の約52%に達する。
ロシアの軍事費の公表額は、2009年度が1兆2110億ルーブル(383億ドル)、対国内総生産(GDP)比率3.1%である。しかし公表軍事費に含まれない関連予算を含めると、2009年度で約1兆8090億ルーブル(約572億ドル)、GDPの4.63%に上る。
この額は中国の公表額498.4億ドルを上回る世界第2位の額となる。さらに購買力平価で換算すれば、国際通貨基金(IMF)によると、2009年のロシアのGDPは2兆1160億ドルとなり、その場合の軍事予算額は979億ドルになる。
このようにロシアの軍事費は、資源高に支えられた経済規模の拡大以上の速度で急成長を遂げていると言えよう。
またその実質的な軍事予算は公表額の1.5倍程度あると見積もられている。同様に、国際標準で見積もれば公表額の2倍から3倍の軍事費を使っているとみられる中国に次いで、世界第3位の軍事費を毎年投じ、その額は毎年1割から2割増しの勢いで急増している。
2 戦略核戦力の近代化
核戦略面での対米劣勢を巻き返すためプーチン政権が採っている対応策の第1は、戦略核戦力の近代化と増強である。
ロシアは依然として米国に次ぐ規模のICBMとSLBMを保有しており、唯一の鉄道移動型ICBMであった「SS-24」は2005年までに全廃したが、ほかの旧式ICBMの耐用年数を延長している。
ロシアの新型ミサイル「ブラバ」
(ウィキペディア)
またブラバはトーポリMを潜水艦搭載型に改良したものと言われ、両新型ミサイルはいずれも、慣性弾道を取らないため弾道予測ができず迎撃は困難であり、現在の米国のMD網を突破できると、ロシア側は発表している。
なおかつ、いずれの発射母体も秘匿性や移動性に優れ、先制攻撃による破壊は困難と見られている。まさにロシアが要求している新型ミサイルであると言えよう。
戦略核戦力は、2016年までに、8割がMIRV化した「Topol-M」と「RS-24 Yar」に更新され、2016年までには投射重量の大きい液体燃料の大型ミサイルがサイロに配備される予定である。
3 組織改革と改編
大幅な組織改革も進んでいる。全国は各軍管区に対応して、北部、南部、中央、東部の4個の統合軍に改編される。指揮階梯は統合軍、軍、旅団の3段階に簡素化される。2009年末までに公式的には、23個の師団は改組され40個の旅団となる。
各旅団の人員充足率は95%、装備は完全充足され、恒久的な即応性を維持するとされている。40個旅団は、35個の自動車化旅団と4個の戦車旅団と1個の後方旅団からなる。その他の45個旅団は多連装ロケット、砲兵、工兵、通信、電子戦などの旅団からなる。
戦車旅団は各31両の戦車からなる3個戦車大隊と1個機械化大隊からなる。各機械化旅団は、3個機械化大隊、戦車41両からなる1個戦車大隊、多連装ロケット大隊、2個砲兵大隊、防空ミサイル大隊、対空砲大隊などからなる。
砲兵大隊は3個砲兵中隊からなり、そのうち1個は対戦車中隊である。このように、機械化旅団はソ連時代の機械化連隊に近い戦力構造になっている。
また保管装備と整備用の基地は各予備部隊に割り当てられ、全国で60カ所計画されている。これらのMoD(動員基地)の60%の旅団は、指揮能力の不足、C4Iの立ち遅れなどにより即応性に欠けている。
メドベージェフ大統領は2012年までに全軍の指揮通信システムのデジタル化を完了するように指令した。しかし実態はまだ追いつかず、ボストーク演習では、徴集兵の8割が訓練期間2カ月以下であった。
旅団には、戦車の重旅団、装甲兵員輸送車の中旅団、車両化された空挺、山岳などの軽旅団の3種類がある。空挺部隊はまだ師団編成を取り、2個独立空挺師団、2個独立空挺連隊、2個独立空中攻撃旅団、2個独立空挺連隊からなる。
空挺連隊を2個から3個に増強し、各空挺師団に防空ミサイル連隊を新編し、空中攻撃旅団にヘリ60機からなるヘリ連隊を新編することが提案されている。ただし目下、ロシア空軍は同時に1個空挺連隊しか運べない。
空軍は基地を52に統合し空軍部隊の単位数も340から180に削減され、各機種混成の任務部隊に改編されている。第5世代の「T-50」は2015年から16年に配備される予定だが、技術者と工場の生産能力の不足が制約となっている。 JBpress.ismedia.jpより引用
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2011.12.11 12:41
産経ニュースより引用
2011年12月10日7時6分
【モスクワ時事】4日投開票のロシア下院選に不正があったと訴える若者らの連日の抗議デモをけん制しようと、軍や治安当局が「デモ参加者は兵役に送る」と相次いで警告している。これに対し、兵士の母親らでつくる団体は「軍隊は『刑務所』ではない」と怒り心頭だ。 引用した訳の解らない画像は、ロシア軍でググッたところヒットしました!w 引用先は、画像のリンク先をご覧下さい!
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ロシアのナビを搭載したiPhone4S
米ロの衛星システムを組み合わせ世界はますます便利に
2011.11.10(木) 小泉 悠:プロフィール のっけから私事で恐縮だが、つい先日、携帯電話を「アイフォーン4S(iPhone 4S)」に替えた。筆者はこの手のガジェットにはほとんど興味のない人間で、KDDIがiPhoneの販売に乗り出すと聞いてもほとんど聞き流していたのだが、さすがに3年間使い続けた電話機が老朽化の極みに達したことと、あるニュースを耳にしたことが買い替えの契機になった。
ロシアの位置情報システムを採用したアップルアイフォーン4Sを紹介するアップルのエディ・キュー上級副社長〔AFPBB News〕
アイフォーン4Sでは、位置情報の取得に米国のGPSだけではなくロシアのGLONASSを併用しているというのである。これを聴いて俄然、アイフォーン4Sが欲しくなってしまったのだ。
ところで、GLONASSとは一体何なのか。
米国の開発したGPSについては、すでに多くの読者がご存じであると思う。GPSとはグローバル・ポジショニング・システムの略で、軌道上に配置された24基(+予備7基)の衛星によって、地球上のどこに居ても自分の位置を把握できるというシステムだ。
もともとは米軍の活動を支えるために開発されたが、今ではカーナビや各種モバイル機器をはじめとしてあらゆるところで使用されている。
一方、GLONASSは、米国のGPSに対抗するためにソ連で開発が始まった。もちろん、当時のソ連のことであるから、使用目的は純粋に軍事用である。
1996年にはすでに実用システムが完成していたが・・・ GLONASSは全24基の測位衛星(うち3基は予備)から成るシステムで、地球のどこから見ても常に5基以上の衛星が地平線上に見えるように配置されている。
これらの衛星からの電波を受信することで、GPSと同様、常に自分の位置が把握可能となるわけだ。
GLONASS用測位衛星の第1号は1985年に打ち上げられ、1996年には予定通りに24基体制が達成された。
だが、当時のロシアは経済的苦境の真っただ中にあり、この体制を維持し続けることができなかった。
当時、GLONASS用として打ち上げられていた「ウーラガン」測位衛星は設計寿命が3年程度しかなく、頻繁に代替衛星を打ち上げないとあっという間に衛星群が機能を喪失してしまうのである。
宇宙予算の削減で飛行している衛星は7基にまで減少カザフスタン・バイコヌール宇宙基地で、衛星測位システム「グロナス(GLONASS)」衛星の打ち上げ準備作業をする作業員たち〔AFPBB News〕
特に1998年の経済危機はロシアの宇宙予算を直撃し、2001年までに軌道上で機能している衛星はわずか7基まで落ち込んでしまっていた。
こんな状態では、GLONASSの利用が普及するはずもない。
ロシア政府は当初、GLONASSを15年間は民生用に無償開放するとしてGLONASSユーザーの拡大に努めていたが、ロシア軍でさえ航法システムとして米国のGPSを採用する始末で、民間ではほとんど使用されることはなかった。
しかし2000年にウラジーミル・プーチン政権が成立すると、GLONASSの復活に向けた動きが始まった。
宇宙予算が増額され、なかでもGLONASS関連の予算は「連邦特別目的プログラム(FTsP)」に指定されて優先配分が受けられるようになった。
2007年には民生用信号の開放が始まる さらに2001年には、新型の「ウーラガン-M」の打ち上げが始まった。「ウーラガン-M」の寿命は7年とされており、これによって代替衛星の打ち上げ頻度を半分以下まで減らすことが可能になったのである。
こうして軌道上のGLONASS衛星数もどうにか回復傾向へと転じるようになり、2007年には正式に民生用信号の開放が始まった。
2008年には軌道上の衛星数は18基に達し、ロシア国内でならどこでも使用できる体制も整った。
だが、GLONASSの前途はまだまだ多難だった。
2008年にイワノフ第1副首相(当時)が明らかにしたところによれば、実際にはロシア全土でGLONASSを利用できる地域は60%程度に過ぎず、しかも場所によっては誤差が10メートルと米国のGPS(誤差1メートル)に大幅に劣っていたという。
連邦宇宙庁長官を罷免したメドベージェフ大統領 さらに2010年末には、3基の「ウーラガン-M」衛星を搭載したプロトンロケットが燃料搭載量の計算ミスで太平洋に落下するという事故が起こった。
本来ならばこの3基でついにGLONASSシステムは24基の完全編成に達するはずだったのが、最後の最後で躓いたわけである。
この事故の後、ドミトリー・メドベージェフ大統領は連邦宇宙庁のペルミノフ長官を罷免した。
このような苦難を乗り越えて、GLONASSがようやく24基体制に達したのは今年10月のことである。
11月初頭にはさらに3基の「ウーラガン-M」が軌道上に追加され、現在は27基体制で運用中だ。
最新衛星は寿命が10年に延び精度も向上 しかも、この27基の中には今年打ち上げられたばかりの新型衛星「ウーラガン-K」が含まれている。
「ウーラガン-K」は寿命を10年まで延長したうえ、測位精度を向上させたタイプである。しかも民生用衛星のバスを使用することで大幅な軽量化に成功しており、プロトンロケットなら最大で6基いっぺんに打ち上げることが可能となった。
このように衛星の数が順調に増加していく一方で、ロシア政府は強権的とも言える手法でGLONASSの普及を進めている。
政府所有の公用車や船舶、航空機へのGLONASS搭載はもちろん、民間のカーナビや携帯電話にもGLONASSのインストールを義務づけることも検討中だ。
さらにはGPSのみを搭載する機器に対してはロシアに対する輸入関税を引き上げるとの案もある(ただし、当初は今年から関税引き上げを検討しているとも言われたが、結局、現時点では実施に移されていない)。
ロシア軍も本格的にナビシステム導入へ第2次世界大戦の戦勝記念日に曲芸飛行するロシアの「Suー25」戦闘機〔AFPBB News〕
GLONASSの本格稼働開始は、本来の目的である軍事用途でも重要な意味を持っている。
ロシア軍は現在、従来型の量の軍隊を質の軍隊へと転換すべく軍改革を推進中だが、そのためには自動的に正確な位置把握の可能な衛星航法システムは欠かせない。
また、衛星誘導システムを爆弾やミサイルに搭載すれば、夜間・悪天候・砂嵐といった条件でレーザーや赤外線が使えなくても正確な爆撃を行えることは、これまでに米国が実施してきた数々の空爆作戦で実証済みだ。
これまでのロシア軍は、米国のGPSに依存することを恐れてこのようなシステムの導入に踏み切ることができていなかったが、GLONASSが稼働したことで、独自のシステムを配備することが可能になった。
ロシア軍で試験配備が始まっている「ESU-TZ(戦術レベル統一指揮システム)」や「KAB-500S衛星誘導爆弾」などはいずれもGLONASSを利用しているし、すでに多くの航空機に搭載されているA737衛星航法システムはGPSとGLONASSを併用している。
ロシアの意向と関係なくGLONASSを採用したアップル GLONASSはロシア軍ハイテク化のカギであると言えよう。
一方、アイフォーン4SにGLONASSがインストールされたことは、もちろんロシア政府の意向とは無関係だ。
むしろ、こちらの方が重要なことだが、アップル独自の判断としてGLONASSにメリットを見出したのだろう。
原理上、GPSは常に地平線上に4つ以上の衛星が見えていることを前提としており、衛星の配置もそのように工夫されている。
だが、これは平坦で地平線が見渡せるような場所での話であって、高いビルや山に囲まれた地域では思うように電波を受信できない。
こうした弱点をカバーするために様々な補正手段が用いられているわけだが、GLONASSを併用すれば、これまでより確実に位置把握が可能となることが期待される。
このような全地球をカバーする衛星測位システムとしては、ほかに欧州の「ガリレオ」計画や中国の「北斗」計画があるものの、いずれも実現にはまだ時間がかかると考えられている。
したがって、当面の間、地球上のあらゆる地点でGPSを代替・補完できる衛星測位システムはGLONASSしか存在しないことになる。
軌道上に十分な衛星数が揃い、アイフォーン4Sにも採用されたGLONASSシステム。さらなる利用の広がりが見込めそうだ。
JBpress.ismedia.jpより引用 |



