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著:マーシャ・ガッセン 評:福岡伸一(分子生物学者) 新聞書評より・・・ 数学という営みの孤独 数学史上最大の難問「ポアンカレ予想」。 その証明が2002年、インターネット上に突如出現した。 しかし投稿したロシアの数学者ペレルマンは深い謎に包まれた人物だった。 数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を拒否し、世界中から降るように舞い込んだ ポストの申し出も断り、友人とも恩師とも連絡を絶って隠遁してしまう。 この天才の生い立ちを、本書は克明に浮かび上がらせる。 それを可能にしたのは、著者自身がペレルマンと同じ1967年に生まれ、 旧ソ連の社会主義体制下で同じように数学のエリート教育を受けたユダヤ人だったからである。 彼女が自分のことを回想した部分はとりわけ鮮やかだ。 1970年代のソ連の子供たちは全土で毎朝、同じ時間に同じ服で学校に出かけ、同じ内容を学習した。窒息しそうな日々。 しかし彼女は、数学の才能を発掘するため全国を回っていたスカウトの目に留まる。 「私はかすかに胸が高鳴るのを感じた。心地よい興奮が肩のあたりまで広がっていく。 それが希望というものの感触だった」。 自由への淡い予感。 ソ連の科学はイデオロギーに従属していた。 そんな砂漠の中に奇跡のようなオアシスが存在した。 なぜそれが可能だったのか、その中でペレルマンはどのように育まれていったのか。 同級生や教師たちの証言が丹念に辿られる。 90年代に入り、西側への扉が開く。 ペレルマンは自分が解くべき問題を知る。 だが、彼はその問題に自身が焼き尽くされてしまうことに気がつかなかった。 全力を使い切った数学者の前に立ち現れたものは、証明の完全さに対する称賛ではなく、 耐えがたいまでに醜悪な騒動だった。取材、褒章、賞金、学会、剽窃騒ぎ。 彼は自ら社会との回路を切断した。 数学を全く知らずとも、数学という営みの孤独と美しさを感じうる稀有の物語。』
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