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サリアの巫女ルディア
公は神聖サリアの誓いを破られ、唯一の愛を
佯(いつわ)り語り、花嫁をその手に抱こうとなさいました。
サリアはそれをごらんになり、み手もて
その絆を阻まれました。サリアをたばかる者は
サリアの呪いを受けねばなりません。
――― シルニウス「クリスタルの歌」
三幕二場より
グインサーガ第10巻のタイトル『死の婚礼』
10巻の表紙は、純白の婚礼衣装に身を包んだ美しい男女。 パロの王位継承者アルド・ナリスとモンゴール大公の娘アムネリス。 いよいよ、婚礼なのか。
さて、物語は、一気に動き出す。 アルド・ナリスとアムネリスの婚礼の準備は、 着々と全く滞りなく進められていく。
いよいよ婚礼の日、サリアの日を迎える。
政略結婚と割り切って、パロに来たのに、
一目で恋に落ち、相思相愛で結ばれると信じ、
幸せの絶頂にいたアムネリスだったが、
その婚礼の最中に、愛しい人が暗殺される。
暗殺の刺客は、かつてアムネリスが率いる赤騎士隊の
アストリアスだった。
悲しみの中、アムネリスは、黒い喪服に身を包み、
パロを後にする。
これが、上澄みの物語である。
しかし、その沼底には、さまざまな陰謀がうごめいていた。
知らぬが仏の幸福の絶頂にいるのは、
アムネリス、ただ一人だった。
全くもって、残酷だ。
○アルド・ナリスの暗殺をした刺客・アストリアスは、
パロ王家とモンゴール大公家の縁組を阻む、
パロのリーナス伯に使える魔導士ヴァレリウス
に利用されていた。
「アムネリス様をお救いする」
その一途さのみで、アルド・ナリス暗殺をした。
でも、親愛なるアムネリス様の怒りをこうむってしまったわけだ。
○アルド・ナリスは、死んだのか。
まさかまさか。
ナリス自身も、替え玉を用意して、闇に一旦消えただけ。
「かわいそうに、アムネリス――
私のような男に出くわすには、十八ではあまりにも
若すぎたのだな。
あれも、人の云うほどじゃじゃ馬の、
手におえぬむすめではないよ、ルナン。
かわいいものだ――
ひとつ間違えばそれこそ雌サソリになってしまうだろうが、
もともと決してことさら強い性格でも、
むずかしい女でもない。
フェリシアのような女の方がどれだけ海千山千だな」
ひどい、アルド・ナリス。
いつか地獄に落ちるな。
ここで、第二部陰謀編完結。
さて、今回登場しなかったグインたちは、どうしているのか。
悲劇のアムネリスの反撃はあるのか。
極悪非道のアルド・ナリスは、地獄に落ちるのか
次回に期待。
参考:『グインサーガ10 死の婚礼』 栗本薫著 早川書房 1982
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グインサーガシリーズ
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汝(なれ)、人間(ひと)なるもの、
淫(いたず)らに生を弄ぶ事勿れ。
そは人間(ひと)の触るるべき所に非ずなればなり。
汝(なれ)、人間(ひと)なるもの、
徒(いたず)らに死を恐る事勿れ。
そは全ての人間の免かれざるところなればなり。
――― 《ドール祭祀書》巻之一より
グインサーガ、第9巻『紅蓮の島』の後、
作者栗本薫は、2巻目の外伝を出版している。 それがこの『イリスの石』 今回は、多分本作第9巻から近い話だ。
なぜかというと、第9巻の『紅蓮の島』の中で、
モンゴールのミアイルの暗殺の疑いをかけられ、
いずことなく姿を消していった
パロの放浪王子・マリウスが、赤い街道で
行き倒れとなっていたところを、豹頭の戦士・グインに
助けられたところから、物語は始まるのだ。
マリウスは、彗星のように登場し、
アルド・ナリスの弟、という屈折した役柄で、 なかなか面白いキャラクターになりそうだったのに、
あっという間に舞台から去っていってしまった。
しかし、わからんぞ、これからきっと、彼には、 彼の役割があるのだろう。
それを楽しみにしておくことにしよう。 私は、『紅蓮の島』を読んだ時、このように思った。
そしたら、案の定、作者もこの子に愛着をもったようで、
早速、外伝の方で登場させた。
それも、リンダとレムス、イシュトバーンと別れた後の
旅に出たグインと出会わせ、旅の相棒にしてしまったのだ。
マリウスは、グインに聞く。
どこへ行く途中で、何をしていたのかと。
グインは、人を探していると答える。
『アウラ』という言葉だけを手掛かりに。
赤い街道をすみずみまで歩いているのだ。
「ともかく、俺は、南からはじめて、北へ行き、
また振り出しに戻ってきたので、
明日あたり、サルドスを北西に折れて、
そのままケイロニアを目指そうかと考えているところだった。
中原の三大国のうち、未だ足を踏み入れておらぬ、
唯一の国だからな。
―― そこは、ゴーラよりは、俺の性に合いそうだ。
モンゴールにせよ、クム、ユラニアにせよ、
どうもゴーラという国とは、俺は気が合わん。」
おお、外伝1のネタバレのケイロニアが出てきたぞ。
マリウスはそれを聞き、グインについていくことに決めるのだ。
ぼくの従妹には、中原一の予知者といわれている娘が
いるくらいでね。
だからぼくだって、ちょっとした霊感力はもちあわせている。
きっと、この街道でぼくとあんたが出会うのだって、
あらかじめヤーンによってさだめられていた
できごとなのにちがいない。
ぼくとあんたはしばらく一緒にいくように決められていたのだよ。
そしてあんたはかずかずのふしぎな冒険に会い、
ぼくはその―― 豹頭のグインの冒険をキタラにのせてうたって、
中原に大詩人の名をのこすのにちがいない。
きっとそうだ。
ぼくはあんたの事蹟を世の中に正しく語りつたえるために
えらばれた、そのために生まれてきた詩人にちがいない。
だからぼくたちふたりは出会ったんだ。これは運命なのだよ」
本当によくしゃべるので、グインも呆れてしまう。
この調子のよさに、ちょっとイシュトバーンを思い出すくらいだ。
しかし、グインは少しマリウスと時を過ごしただけで、
マリウスの素性に気づいてしまう。
今度は、グインがマリウスに聞くのだ。まあ当たり前か。
「俺のことを、どこから来たの何のというが――」
「お前こそ、ただの吟遊詩人だと云いぬけても、ムダなことだぞ。
一体―― お前は何者だ。国はどこで、父親の位は何だ?」
「云え。お前は、リンダの何だ」
さすが、鋭い。
マリウスは、必死にごまかすので、今回はグインは見逃した。
さて、ケイロニアへ向かって進んでいるつもりが、
二人は道に迷い、世にも奇妙な国へ入り込んでしまう。
それは、死の都「ゾルーディア」だった。
マリウスからのゾルーディア情報
○ゾルーディアは、独自の支配体制をもつ自由都市である。
○『死』をその国の主要産業としている、きわめておぞましい、
秘密めいた町である。
○ゾルーディアは、ミイラ作りのギルド。
住人はすべて葬儀屋、墓つくり、ミイラづくり、
骨拾いをなりわいとしている
死体のひきとりやミイラづくりや葬儀の、その手数料で
つねに富んでいる。
○ふつうの人々からは『死を売る都』と言われ、忌み嫌われている。
○毎日、すべての祠と墓のまわりで線香がくすべられているし、
三つの火葬場はひっきりなしに死者を荼毘に付しているため、
晴れた日がない。
○ゾルーディアには、葬式をする人、死病にかかったり、
絶望して死を待つばかりの人々が、すこしでもいい条件で
あの世にいけるように、金のかかったミイラになれるように
働いている。
グインとマリウスは、ゾルーディアの街で、
美しい娘に声をかけられる。
「イリスの石は手に入ったの?」
彼女は《死の娘》タニアと名乗り、
グインが、イリスの石を持っているはずだから、
それを渡せと詰め寄る。
グインは、イリスの石というのが、なんだかわからないし、
持ってもいないと言うが、
《死の娘》タニアは、信じようとしない。
そこへ、ゾルーディアの支配者のアル・ロートからの使者が
来て、アル・ロートの冥府宮へ案内される。
《死の娘》タニアもついてきて、二人ともイリスの石の行方を
グインから聞き出そうと躍起になるのだった。
グインは、イリスの石が何なのか、わからなかったが、
死を恐れる娘を助けるために、イリスの石を持っていると
嘘をつき、取引をしようとするが、
死刑執行人に、「かたり」だと見抜かれてしまい、
冥府宮の奥底の牢舎へ放り込まれてしまう。
果たして、グインたちは、無事にゾルーディアから
脱出できるのか。
イリスの石とは何か。どんな力をもつのか。 《死の娘》タニアの正体とは。 タニアが、イリスの石を欲しがる目的とは何か。
ところで、マリウスの語るゾルーディアの伝説の中に、
美女タニアの話がある。
何千年も昔、ゾルーディアの王で、ミイラづくりの名人の
アル=ケートルの手でミイラにされた娘がいた。
この娘は、自分が死んだことに気がつかず、夜な夜な
たくさんの男たちと愛をかわしてはかれらを死においやっていた。
その娘の名はタニアと言った。
外伝2巻表紙は、青白く光った不気味な美女と
大剣をかまえた豹頭のグインが、対峙している。
この不気味な美女が、《死の娘》タニアか。
そのタニアの背後に、ミイラの顔が大きく描かれている。
このミイラは、タニアが闇から呼び出した
アル=ケートルか。
あ、死刑執行人の一人が実は、
金目当てに、ゾルーディアに忍び込んでいた
イシュトバーンであった。
イシュトバーンよ、おまえもか。 ←どういう意味?
ネタばれながら、漫画家の木原敏江さんが
特別にあとがきを書いておられる。
グインサーガの主要キャラクターをコミック化してくださっている。
○主役のグイン(これは背中)
主役のはず(?)のリンダとレムス
タフで陽気で屈折しているイシュトバーン
梓さん超えこひいきのクリスタル公アルド・ナリス フィリップふう
烈しさも女らしさゆえのアムネリス
おひさま・・・・というより春風のように笑うやさしいマリウスくん
わたしえこひいきのアマゾォヌ・リギア
どれも、うつくしい少女漫画風ですよ。
リギアは、アルゴスのブラックプリンス・スカールと
くっつくのだそうです。
相変わらずネタバレしてる〜〜〜。
参考:『グインサーガ外伝2 イリスの石』
栗本薫著 早川書房1982
*いやあ、グインサーガの第9巻の記事を探したら、
2010年でした。
5年間、放置していました。
過去の記事にもし興味がありましたら、
どうぞ、探してみてください。
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兵を動かすには、星を見、時を見、人を見ることが大切である。 |
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古き者について知れる者は古き者について語らず、 |
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汝(なれ)は見たり |







