シルクロードから嫁が来た!!

キルギス共和国出身のロシア人と結婚した男のムダ話。旧ソ連諸国のお話も

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【キルギス土産のひとつ、フェルト製のタペストリー。民族衣装を着た女性の装いがいかにもシルクロード的です。羊の遊牧が盛んなキルギスやカザフスタンでは羊毛を利用したフェルト製品が人気です。品質はピンからキリまでありますが、ハズレの方が多いような(笑)。ちなみに高級デパートなど外国人向けのお店では同じ製品でも高い価格で売られていますから、通はデパートの仕入先である郊外のバザールなどで入手したりしています。】

先日のこと。
キルギスのお隣、カザフスタンに住む家内の叔母が僕の母の誕生日プレゼントにと贈り物を送ってくれました。

プレゼントは、カザフスタンの民族楽器ドンブラーの木製ミニチュア。
日本の琵琶を太らせた様な愛嬌あるフォルムに母も喜んでいたのですが、、、、

2、3日も経たぬうちにボロボロと崩れてしまい、単なる木屑と化したのでした。
調べてみると、接着部の貼り付けが甘く、随分と雑な仕上げであることが分かりました。

今回の件に限りません。

中央アジアから持ち帰るお土産は少なくない割合で帰国後すぐに壊れてしまいます。

キルギスで購入した衣類はすぐに糸がほつれて雑巾になりました。
ウズベキスタンで手に入れたティーカップは、少しの衝撃で粉々に砕けました。

色々集めた中央アジア土産で今も無事なのは、初めてキルギスに渡航した際に入手したもの。
仲良くなった現地の学生からもらった手作りタペストリーと大きな鷹の置物のみという有様です。

それにしても、何故ここまで中央アジア土産はすぐ壊れるのでしょうか?
僕の疑問に家内はニヤニヤしながら、こう答えました。

『ゲルマンスキー(ドイツ人)がいなくなったからよ。』

中央アジアには多くのドイツ人が住んでいました。
現地の人の話では、カザフスタンだけで100万人ものドイツ人がいたとされています。

何故中央アジアにそんな多くのドイツ人が??

色々と理由はあるのですが、独ソ戦におけるナチスドイツの敗北が大きく関係していることは確かです。
この敗北で多数のドイツ人が中央アジアに強制移住させられたのです。

強制移住の目的は、まだ未開拓の中央アジア開発でした。
この辺境地でドイツ人は持ち前の器用さを見せ、ソビエト人を驚かせます。

家内も学校時代、強制移住したドイツ人の子孫にあたるクラスメートがいました。
このうちの何人かは長じて職場の同僚にもなります。

後に僕自身、家内から彼らを紹介されたのですが、いかにもマジメそうな感じの人たちでした。
そのうちの一人は、僕の上着のほつれを見つけ、携帯裁縫セットであっという間に直してくれました。

『さすがBMWやベンツを作る国は違うワイ。』と内心感心したものです。

閑話休題。

人並みはずれて器用な“ドイツ気質”にはソビエト政府も注目。
単なる労働力扱いから次第に重要な仕事にシフトさせていきます。

中央アジアのドイツ人は、しばしば輸出品製造に携わっていました。

ソビエトにとって外貨を稼げる輸出品は重要でした。
中でも珍しさで重宝されたのが、“中央アジア民芸品の製造”だったのです。

当時中央アジアは冷戦の鉄のカーテンからさらに離れた秘境中の秘境。
さらに、軍事的な秘密施設が多く、非常に閉ざされた地域。

外国人には、なかなか訪れることのできない幻の地でした。

ちなみに作家の井上靖さんは、キルギスのイシク・クル湖を訪れることを終生の悲願にしていました。
しかし、結局ソビエトの許可が得られないまま生涯を終えたことはよく知られています。

(イシク・クル湖はソビエト海軍の新型魚雷実験施設や政府高官の保養所があり、外国人立入りは厳しく制限されていたのです。)

それだけにこの地域の品物は珍品中の珍品。
大金をはたいてでも買い求めたい好事家がいました。

この民芸品製造にドイツ人が投入されたのです。

木彫りの人形や名産のフェルトを使ったテーブルクロスや絨毯、独特のデザインの洋服や靴、さらに美しい模様をあしらった民族衣装やインテリア品、、、

しっかりした作りの中央アジア土産は、『さすがシルクロードの民が作ったものだ!』と大評判になりました。もっとも、実際は欧州出身のドイツ人が作っていた訳ですがね(笑)。

この“ドイツ人が作る中央アジア土産”の伝統は突然終わりを告げます。

1991年のソビエト崩壊です。

これにより、行動の自由を得たドイツ人が次々に母国に戻り始めたのです。
故郷の欧州と違いすぎるせいか、中央アジアの帰国ドイツ人は特に顕著で急激に数が減少します。

2008年にJETRO(日本貿易振興機構)発表した中央アジア現況報告によると、、、、、
先述したカザフスタンのドイツ人は、かつての100万人が今や30万人程度。

これなどまだマシな方です。
その他の地域では、もはや0に限りなく近くなっています。

ともあれ、民芸品製造を一手に引き受けていたドイツ人がいなくなった今、
次を担うのは、中央アジアの人々のはずなのですが、、、

残念ながら世界有数の職人民族ドイツ人の後釜は少々荷が重いようです。
おかげでどうしても以前より製品の出来にバラツキが出はじめたのです。

“ヨソ者”ドイツ人の方が“地元”中央アジアの人々より上手に民芸品を作る。。
何とも皮肉な話です。

これに対し、最近では、自分たちの文化を見直し、ビジネスにつなげようと懸命に伝統文化を復活させるべく、民芸品製造に励む人々もいるとのこと。

もちろん、この手の製品の技術伝承は簡単でありません。
かつての“ドイツ製”のレベルに追いつくまでは長い時間がかかるかもしれません。

それでも、自身の文化を見直し、懸命に復興させようとする姿勢は素晴らしいことですし、応援してあげたいもの。

持ち帰るたびにすぐに壊れる中央アジア土産だけど必ず中央アジアの人々自身の手で復活するはず。
そんな祈りを込め、もう少し我慢して壊れやすい中央アジア土産を買い続けてみようと思います。



閉じる コメント(20)

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お久しぶり。覚えていただいていました?ライクさんと論争しておられたところに割って入った琵琶です。
まさか、キルギスにドイツ人とは?思いもよりませんでした。貴重な情報感謝!

「津軽海峡冬景色」の替え歌「麻生内閣冬景色」歌詞公表。次期総理推薦受付中!よろしかったらどうぞ

2009/3/2(月) 午後 6:35 [ 琵琶 ]

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中央アジアのドイツ人は戦争捕虜?でしたかね?それともどこからの強制移住?カリングラード方面から?

2009/3/2(月) 午後 11:38 [ 無名者 ]

ほえ!!!そんな歴史があったとは知りませんでした!中央アジアの研究者の一人で間野英二という方の本を読んだことがありましたが、全くそんなことは書いてありませんでしたし(笑)ただ、書かれたのが1970年代だったと思うので、致し方ないところはありますが。
是非、伝統保護に期待ですね!

2009/3/3(火) 午前 0:25 [ shinya ]

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へえええ。ドイツ人たら中央アジアにもたくさん住んでたんですね。そしてドイツ人の特徴を生かして貢献されてたとは!大変面白いです。
彼らは細かいと言うより、こだわり派ですからね。プロセスとかルールをキチっと決めるのが大好きですし・・・。
個人的にはドイツの民芸品よりロシアの民芸品の方が細工が細かくて色合いとかもキレイなので好きなんですけどね・・・。笑 クロネコ

2009/3/4(水) 午前 6:02 [ ban*aiu*lau* ]

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初耳です。ドイツ人凄いですね〜
そういえば、昔日本のシベリア抑留兵の本を読んでいたら、見よう見まねでバイオリンを作ったら、待遇がよくなったが、たくさん作る羽目になった・・・という話しを思い出してしまった。

2009/3/10(火) 午前 0:57 nin*ku*o

ПРИВЕТ!皆さん、もっと帝政ロシア、旧ソビエト、そして現在のロシア連邦、CIS諸国を勉強しましょう。とくにユダヤ人のレーニン、グルジア人のスターリンが何をしたのかを。ドイツ人が中央アジアに何故連れてこられたのか・・ちなみに私の元カノはバシキリア人、今カノはチュバシア人です。意味分かるかな?

2009/3/10(火) 午前 3:34 [ - ]

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ミグさんお久しぶりです。昨年、中央アジアを周遊したMillfeです。

私、中央アジアは、お土産の宝庫だと思っていました。旅行中不要になったものを捨てても帰国の時には30キロオーバーでした。カードが使えればもっと買えたのにぃ〜って感じです。

キルギスでは、荷物の関係で物欲を抑えるのが大変、なので“口琴”ばかり探していました。ビシュケクでは、なぜかBetaストアが一番安かった。オアシス都市が沢山あるウズベキスタンは、本当、良かった。今度行ったら、300$のブックスタンドを絶対買います。窯元で購入した茶碗は、毎日使っていますが欠けていませんよ。

海外のお土産の失敗談を聞くと、物価の安い所だからといって安いものを買ったり、値切り倒しているのが多い。どこでも良いものは高い。店も値切る人には元から安い(=質の悪い)モノを勧めるようです。職人さんに値切るなんて言語道断です。(国籍問わずどこにでもそーゆー人、いるんです)

私は、日本のえらく賞味期限の長い、得体の知れない日本のお土産菓子を職場で貰うのが嫌です。

2009/3/15(日) 午後 4:35 [ Millfe ]

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昨夏ビシュケクに行った際、私もデパートでお土産を買おうとしましたのですが・・・・買いたいモノが全く無かったので、現地の友人に進められたお酒(ウイスキー)にしました。「香り」が強くて、咽喉がヒリヒリするお酒でしたが、美味しかったですよ。
次回は、ワインを買ってみようと思います。

2009/3/19(木) 午後 6:52 [ meta-bou ]

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内緒さん 出張でお返事が遅れてしまいすみません。その通りで、僕もYさんがカザフにとどまったらどんな人生を送ったのか、、、と時折夢想します。でも、恐らくYさんはやはりカザフを出たと思います。あそこは旅行者と地元民との国に対する印象が随分違うはずですから。不景気とは言え、まだまだ平和な日本。私たちは空気のように太平を謳歌していますが、ロシア圏の人から見るとたまらないほど贅沢なのかもしれませんね。

2009/3/22(日) 午後 2:13 mig21

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琵琶さん 出張と年度末仕事ですっかり世情とうとくなっていましたが、麻生さんに加え小沢さんも大変なことになりましたね(笑)。政治家なんて結局みんな同じようなものなのかもしれません。ここは一発、現職議員抜きでの国民投票制の総選挙をやるほうが日本復興への近道かもしれんですねえ。

2009/3/22(日) 午後 2:16 mig21

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無名者さん 出張でお返事が遅れてしまいすみません。中央アジアのドイツ人は戦時捕虜もそうなのですが、それ以外も様々な理由でヴォルガ川東地域などから連行されていたみたいです。この辺りは出張中も色々と興味深い話を聞きましたので、いずれ記事にしてみたいと考えています。期待せずに(笑)お待ちください!!

2009/3/22(日) 午後 2:19 mig21

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Michael Daisukeさん 出張&年度末仕事でお返事が遅れてしまいすみません。中央アジアの抑留者や強制移住の被害者のお話は次第に明らかになっているようで、今後も研究は続くと思われます。

20世紀の激動を送った数奇な人生の物語は今後も様々な角度からお伝えしていきたいと考えています。どうぞお楽しみに!!

2009/3/22(日) 午後 2:22 mig21

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クロネコさん 出張&年度末仕事でお返事が遅くなりゴメンなさい。死ぬほど忙しいのですが、世界不況の中、商売繁盛なんですから、贅沢言えませんわね。

で、ドイツ人の話。ビックリするでしょう。戦争でドイツ人はあちこちに移住や強制移民、亡命しましたが、個人的には中央アジアのドイツ人の人生は波乱万丈レベルでは3本の指に入ると思います。

家内の友達にも明らかにドイツ系の名前の人がいて、本当に不思議な気持ちになりましたよ。なんで中国の隣の小国にドイツ人がおんねん???って。

ところで、ロシアの民芸品ですが、僕はむしろドイツの方が好きです。なんかロシアのはゴテゴテしてるかそっけないかのどちらかで、どうも中間がない印象を受けるんです。まあ、よくも悪くもメーターを振り切るお国柄が出ていてそれはそれで味わい深いのですが(笑)

2009/3/22(日) 午後 2:42 mig21

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になちゃんさん ドイツ人、日本人、そして朝鮮半島の人々はその真面目さとバイタリティで今もロシア圏では非常に有能視されています。確かにロシア圏の人々が好む製品はサムスンにベンツにSONYとそのマンマすぎる嗜好です。こういう部分を日本人はもっと誇ってもいいような気がします。

2009/3/22(日) 午後 3:11 mig21

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↑になちゃんさん すみません、出張と年度末仕事で忙しくお返事が遅れていたのをお詫びするのを忘れていました。ゴメンなさいね。

2009/3/22(日) 午後 3:13 mig21

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kat*u_s**_gogoさん レーニン、スターリンの所業は本場ロシア人から聞けるので別に講釈は結構ですよ。

一方チュバジア人の件は興味あるのですが、僕のブログでやり取りするのは流石にめんどくさいので、ご自身でブログを立ててTBで送ってもらえると助かります。それと出張&年度末のお仕事でお返事が遅くなりすみませんでした。

2009/3/22(日) 午後 3:17 mig21

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Millfeさん 出張&年度末の仕事が忙しく、お返事が遅れてすみません。で、ご指摘の通り中央アジアはお土産の宝庫ですよね。ホントにもう少しカードが使えれば言うことないんですが、、、バザールのオバハンなんてカードそのものの意味も知らなかったし(笑)。

ところで、口琴といえば、テミル・コムズを探されていたのですか!それはまたディープな!お主ホンモノの中央アジアマニアだなと嬉しい気持ちです。それにしてもベータストアが安いとは驚きました。あこぎなトルコ型商売をあきらめて安売り商売に心を入れ替えたのかな(笑)。

ま、どちらにせよ、値切り倒すのはよくないですね。僕の場合はそんな精神力も語学力もないため、ひたすら可愛い値段交渉で大抵、引き下がっています。うーん奥ゆかしい日本式だ(笑)

2009/3/22(日) 午後 3:23 mig21

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meta-bouさん 出張&年度末の忙しさでお返事が遅れたことをお許しください。香りが強くてのどがヒリヒリするお酒ですか、、、色々なお酒があるのですが、アラシャンかなあ。黒砂糖入りみたいな度の強い酒なのですが、なかなか味わい深く、美味しいです。もしアラシャンと書かれていたら紅茶に数滴入れてみてくださいな。いい匂いで美味しいですよ。

2009/3/22(日) 午後 3:29 mig21

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ゲルマンスキーがいなくなったところをキタイ製が埋めるのがパターンかと思いましたが、中国人はものだけでなく直接進出するのはロシア極東と同じですね。

レコードチャイナ:中国の安価な製品と労働力が流入、移民急増に不満高まる―キルギスタン
http://www.recordchina.co.jp/group/g29707.html

2009/3/23(月) 午後 3:43 [ ゴンベイ ]

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ゴンベイさん 以前記事に書いたのですが、キルギスでは反中感情が年々高まっています。もちろん移民問題が大きいですが、彼らの無遠慮なビジネスぶりが大きいです。

とは言え、豊富な資金を持っていますから表立って反抗はしにくいのですが、やがて大きな問題となって爆発するかもしれません。

2009/4/13(月) 午後 10:45 mig21

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