シルクロードから嫁が来た!!

キルギス共和国出身のロシア人と結婚した男のムダ話。旧ソ連諸国のお話も

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【アメリカに渡った国際養子縁組数の国別割合。ロシアと中国二国で半数を占めています。人口増加に余力のある中国に対し、出生率が依然低調のロシアの場合、国際養子縁組のストップは緊急課題です。ところで国際養子縁組数の4位が韓国なのは少し驚きでした。韓国独自の養子に関する考えやルールでもあるのでしょうか?(画像は、アメリカのWebサイト『Pregnancy stages, Details&problems』より】

2013年1月4日。
ロシア政府が承認した『ジーマ・ヤコブレフ法』が物議をかもしています。

ジーマ・ヤコブレフは人名。
アメリカに養子として引き取られたものの、炎天下に放置され亡くなった子供の名前だそうです。

この法案成立は、昨年12月にアメリカで成立した『セルゲイ・マグニツキー法』への対抗措置とマスコミは報じています。

セルゲイ・マグニツキーも同じく人名。
欧米系企業に所属していた弁護士で、アメリカがロシア政府が不当逮捕し、獄中で殺害されたとしている人物です。

この法案は、人権侵害にかかわった経歴や疑いがあるロシア人へのアメリカビザ発給停止などを盛り込んだ内容。ロシア側は、自国への敵対行動であると激しく反発してきた経緯があります。

ところが、ロシアでは、アメリカにでなく、プーチン政権に対し、抗議の声が上がりました。
理由は、ジーマ・ヤコブレフ法がロシア国籍の子供がアメリカへ養子として送られる国際養子縁組の禁止をうたっているからです。

つまり、批判者は『ロシアの子供を政治の道具に使うな!』と主張している訳です。
事実だけ捉えると、なるほど批判者の言い分は正しい様に思えます。

アメリカがロシア人のビザ発給制限をするならロシアも同趣旨の法案を作って意趣返しするのが普通の流れ。ビザ発給制限に対し、国際養子を認めないと言うのは対抗措置として奇妙に思えます。

実のところ、この出来事は、マスコミが報じるアメリカへの対抗措置でないと僕は考えています。
むしろ現代ロシアの問題が意外な形で露呈した現象であると感じます。

そもそもアメリカとの養子縁組をストップして困るのは、ロシア自身です。
何故ならアメリカはロシアの養子縁組先として最大の引き受け手だからです。

ロシアでは、多数の子供が施設で育っています。
親のドラッグ、飲酒、虐待、親権放棄の問題が絶えないのです。

状況は、ソビエト崩壊後の混乱期を脱した今も変わっていません。

ロシアのNGO組織『子供の人権』の調査によると毎年10万人が孤児になるとのこと。
2009年度の統計では、既に施設にいる子供だけでも20万人を越えているそうです。

そのため、他国との養子縁組が盛んに行われています。

過去20年に4万人以上のロシア国籍の子供がアメリカに養子として引き取られました。
ここ数年は経済の復興で数はやや減ったものの、依然年間1000人以上がアメリカに渡っています。

ですので、養子縁組を促進する法案であればまだしも、敢えて禁止するロシアの動きは妙です。
実は、ここに現代ロシアが抱える問題があります。

『人口減少』です。

以前も記事にしましたが、ロシアでの少子化は深刻です。

世界銀行の統計では、ソビエト崩壊後の1991年から出生率は激減。
人口維持の目安とされる2.0をずっと下回ったままでした。

幸い2012年はやや出生率は向上しましたが、依然低水準であることは変わりません。

一方、深刻な少子化に加え、ロシアでは男性の寿命の極端な低さが危機に拍車をかけています。
ロシア名物(?)のアルコール問題だけでなく、自殺、犯罪、事故等も原因となっています。

WHO(世界保健機構)調査によると2011年のロシア男性の平均寿命は、62歳。
パプワ・ニューギニアやミャンマーと同レベル。発展途上国なみの短命国家です。

『ロシアの出生率は先進国。死亡率は発展途上国』
以前知り合いのロシア人からこんなジョークを聞きましたが、まさにその通り。

低い出生率と高い死亡率のコンビは、当然深刻な人口減少につながります。

アメリカ国勢調査局の調査では、2050年頃には、ロシアの人口は1億人程度になるとのこと。
ソビエト崩壊時の人口が1億5000万人でしたから、半世紀で3割以上ダウンする計算になります。

これは、広大な国土、長い国境線の維持が不可欠なロシアには致命的な問題です。

コワモテのイメージが先行してあまり日本では報道されていませんが、プーチンさんは、第一期大統領時代から人口減少問題には、非常に熱心に取り組んでいます。

2人以上の子供を持つ家庭へ25万ルーブル(約70万円)を支給するロシア版子供手当『母親資本』。
その他、育児手当増額や医療保険制度改革などを次々に実行してきました。

第二期大統領時代になっても同様です。

『国家社会政策の実施』(大統領令597号)
『保健分野における国家政策実施』(大統領令598号)

上記の大統領令が就任直後の2012年5月に他の項目と共に最優先事項として署名されました。
2つの大統領令はどちらも医療体制の整備や拡充をうたっていますが、特に598号は明確に平均寿命の改善に触れています。

『強いロシアの復活』。

プーチンさんのこのスローガンは多分に軍事的観点から論じられることが多いです。

これは、正しい捉え方ではありません。
むしろ最近のロシアの動静を見ると軍備に関して言えば、優先順位がやや低めな印象すら受けます。

ロシアは、豊富な資源により経済が持ち直し、それにより得た資金で軍備を立て直す目処もつきました。
『ヒト・モノ・カネ』の“モノ”と“カネ”が一息ついた今、残る課題は“ヒト”です。

人口の増加によるロシア強化をプーチンさんが今後の課題と考えていることは間違いありません。
そして、この課題は経済や軍備と違い、長期にわたる施策が必要であることも認識しているはずです。

中でも国際養子は、将来のロシアにおける人的損害のシンボルとも言えるもの。
ならば、どこかのタイミングで国際養子の悪しき風習を断たなければならない。

法案を二つ返事に近い形で承認したプーチンさんの脳裏にはそんな思惑があったと考えられます。


ジーマ・ヤコブレフ法案は、誰に向けたものなのか?

アメリカと言う『外敵』に向けた刀ではないのは明らか。
むしろ人口減少と言う『内敵』に向けたものなのです。

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