LUPOの地球ぶらぶら紀行

地球をこよなく愛する産婦人科女医の多少マニアックな旅行記です

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University College London Hospital(ロンドンの東大みたいなもん?)の新型インフルエンザと妊婦Q&Aをゲットしたので大体訳しました。

新型インフルエンザに関しては当然エビデンスが無く、先に冬を越したオーストラリアの疫学データを参考にするしかないようですが、妊婦、肥満、糖尿病の患者が特に重症化しやすかったようです。

エビデンスが無いからQ&Aやガイドラインは作る人の臨床センスがそのまま出るのかなあという感じ。
UCLHと日本産婦人科学会のQ&Aに全く異なる個所がいくつか出てきます。
日本のはとにかく手厚く(?)して後で責められるのを防ごうって感じもしますねえ。

まずはUCLH編。

Q1.妊婦でインフルエンザが疑われる症状があったら、確認するためにスワブ検査が必要ですか?
A1.いいえ。スワブ検査は必要ありません。直接受診するのでなく、電話か何かでGP(家庭医)に連絡を取り、指示を仰いでください。
産科的に問題がなければ入院する必要はありませんし、診断のために救急外来を受診する必要もありません。
それ以上の情報に関しては、GPか助産師か分娩部に電話で聞いてください。

Q2.新型インフルエンザと診断された妊婦は抗ウイルス薬による治療が必要ですか?
A2.はい。妊婦で新型インフルエンザが疑われるもしくは診断された場合は抗ウイルス薬による治療が必要です。(GPにもらってください)

Q3.家族や職場の同僚などが新型インフルエンザと診断され、妊婦が濃厚接触をしていた場合、予防的に抗ウイルス薬を飲むことは必要ですか?
A3.いいえ。この時点の広がりようでは、妊婦に症状がない限り、接触後の予防的抗ウイルス薬ない服は必要ありません。

Q4.無症状の妊婦の職場の同僚が新型インフルエンザの疑いもしくは診断されました。仕事を休んだ方がいいでしょうか?
A4.いいえ。この時点の広がりようでは、ウイルスから完全に逃れるのは無理です。なので仕事を休む意味は少なく、手洗いなど衛生面の基本を徹底して下さい。

Q5.どの抗ウイルス薬が推奨されますか?
A5.UKの健康省(?)は妊婦にはリレンザを推奨しています。リレンザは吸引薬なので血中レベルは非常に低く、胎児への影響が最小限だと考えられるからです。リレンザには気管攣縮の副作用の報告がありますので、重症喘息の妊婦にはタミフルの方がいいでしょう。

Q6.新型インフルエンザ様の症状がある場合、病院に行った方がいいですか?
A6.重症でない限り、分娩部であろうと救急外来であろうと病院には行かない方がいいです。
それ以上の情報に関しては、GPか助産師か分娩部に電話で聞いてください。

Q7.新型インフルエンザと診断された妊婦は病院に入院した方がいいですか?
A7.いいえ。新型インフルエンザと診断された妊婦全てが入院する必要はありません。重症の場合は一般病棟か妊婦病棟へ入院が必要となります。褥婦の場合、出来る限り母児同室とし、授乳を勧めます。
7日以上症状が続く場合や、ウイルス感染の悪化や細菌感染の併発をきたした場合は入院が考慮されます。それまでは自宅で身体の冷却、38.5度以上の発熱があればアセトアミノフェンのない服が勧められます。

Q8.新型インフルエンザの症状を持つ妊婦に対しての、選択的帝王切開や誘発分娩は急ぐべきですか、延ばすべきですか?
A8.産科的に急ぐ理由があるなら予定通り行ってください。待てるのなら5日ほど延ばした方が妊婦に体力が回復し、医療スタッフや他の妊婦への感染のリスクを減らすことが出来るので良いでしょう。


イギリスでは普段はGP(家庭医)というかかりつけに診てもらい、妊婦検診は助産師が行うので、病院に行くという機会は非常に限られているので日本とちょっと違う部分はありますが、なるべく病院に近寄らない、スワブ検査(鼻に綿棒突っ込むインフルエンザの簡易検査)は要らない、お産は回復してから、というのはうなづけます。

では、日本産婦人科学会のQ&A。

(文字数がオーバーしたのでURLですみません)
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090907b.html


まあ簡単にイギリスとの違いを書くと、日本は、
○濃厚接触したら抗ウイルス剤の予防内服
○可能な限り母児別室(搾乳で授乳は第三者が行う)
○リレンザじゃなくてタミフル
○分娩時期についてのアドバイスは無し
って感じでしょうか。

日本だとタミフル耐性ウイルスが速攻でてきそうですね。
でも何もかもが手探りですから・・

無事に冬を越せるといいですね。

(おまけ)
日本感染症学会の提言
http://www.kansensho.or.jp/news/090914soiv_teigen2.html#n06

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閉じる コメント(6)

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最大の違いはGP制です。保険制度の違いもありますし。

日本からのタミフル耐性ウイルス出現での拡散はあまり気にしなくて良いともいますが。そのうち、オセルタミビルと関係なく出現しますし。 無駄に消費しているとの問題は別途として(ワクチンより抗ウイルス剤の方が好まれるのでしょうね)。

2009/9/18(金) 午前 10:21 [ おみぞ ] 返信する

ドイツでも予防的なタミフルの投与はしない様です。日本は使い過ぎでしょうか?

2009/9/20(日) 午後 4:35 roaring YJ 返信する

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使いすぎでしょう・・
そのうち使ってなかった患者さんが無くなったら逮捕させるかも知れませんね。マジで。

2009/9/21(月) 午前 7:07 LUPO 返信する

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ワクチン後進国の選択のなさでしょうが、

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090918-00000949-yom-soci

厚生省結核感染症課での事務連絡が出されていますので、民事裁判は厄介そうですが。

警察がはなさそうとおもいますが。

2009/9/21(月) 午後 8:30 [ おみぞ ] 返信する

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はじめまして、たまたまこのブログに出会い、一気に読ませていただきました。おもしろかったです。僕は先生の好きな日本の北アルプスのふもとの街から来て、UCLの北のほうの病院で研究生活おくっています。これからも楽しみにしております。 削除

2009/12/6(日) 午後 0:16 [ LIVER ] 返信する

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おおありがとうございます〜
UCLの北ですか!!ユーストンですかね〜

2009/12/9(水) 午前 9:42 LUPO 返信する

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