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ツヨシにとって、今晩のデートは特別期待していたものではない。 映画「Back to the future 2」を観て、居酒屋で少し飲んで、 それでお開きと思っていた。 しかし、その雲行きがおかしくなってきたのは、 マユミが親友タダシとのことを相談し始めた頃からだ。 マユミがタダシとただならない仲であることは薄々判っていた。 でも、タダシには彼女がいるのだ。 もちろん、マユミもその彼女の存在は知っている。 だから、変な関係にはなっていないだろう...とたかをくくっていたのだ。 しかし、実際はそうではなかったらしい。 「それでね、あの晩は二人でたくさん飲んだのね、それでタダシが私の部屋に泊まることになったわけ...」 最後のオーダーはもう随分前に終わり、マユミの酎ハイのグラスはとっくに空っぽだが、 その空っぽのグラスを目の前に持ち上げ、思い出すように語り始めた。 「最初は二人で抱き合っているだけだったのね。それが段々エスカレートして... タダシは一枚ずつ私の服を脱がすわけ...もちろん優しくキスしながらよ...」 何故かその時、マユミの眼は意地悪そうにツヨシの眼を見つめた。 「最後はスリップ一枚になってね、それで敷いてあるお布団に二人してなだれ込んだのよ...」 「ふ〜ん、それで?」 ツヨシはあくまでも平静を装う。 「うん、タダシはとっても優しくてね、キスだってものすごく上手なの、べろべろ舌なんか入れないのよ(笑)。 まぶたの上にやさし〜くキスして、ほっぺたにやさし〜くキスして、首筋にやさし〜くキスして、 唇に触るか触らないかくらいのとこにやさし〜くキスして、なんかね、もうじゅってしちゃうわけ♡」 「『じゅ』ってしちゃうってなにが『じゅ』ってするの?」 ツヨシはあくまでも真剣だ。 「ばかね、ツヨシったら...決まっているじゃない、ア・ソ・コがよ、ウフフ...」 マユミの目は何か小悪魔的な輝きを放っている。 「....」 「それでね、私の手を握っていたタダシの手がね、少しずつアソコに近づいてきてね、優しく撫で回すわけ。 タダシには彼女がいるのは知っていたわ、でもね、あの時の私はもうどうなっても良かったの... でも、本当に何も無かったのよ、それだけだったの、こんなことツヨシだから告白出来るのよ... ツヨシには嘘を言いたくなかったの...ねぇ、ツヨシ、私どうしたらいいんだろう...」 本来なら何か気の利いた一言をかけるべきなのだろうが、 その時、ツヨシの頭をよぎったのは思いがけもしないことであった。 「『じゅ』って、なんだかもんじゃ焼きみたいだな。 そういえば、♪日野〜れんじゃ〜、どんなもんじゃ、というTVコマーシャルがあったよな... もんじゃを食べてどんなもんじゃ、冴えているな、俺...」 マユミを見つめるツヨシの眼差しはあくまでも真剣だった。 (終わり) 注、この物語はフィクションであって、過去にあった実話を元にしたものでもありません。 |
お茶目な官能小説
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今回は気分転換に官能小説など。 タイトルは「朱に染まった白衣」です。 「朱に染まった白衣」 「おなかすいたねぇ...」 幸子は顕微鏡を覘いたままの姿勢で呟いた。 幸子とヒロシはA製薬の生体検査官、 今回は投薬実験に使われた動物の肝細胞を調べている。 隣でTVモニターに映し出された画像から肝細胞のサイズを計測していたヒロシは、 マウスを動かす手を休め、 「そろそろ飯でも食いに行くかぁ...駅前のコリアンでクッパでも食う?」 と顕微鏡をのぞく幸子の後姿に訊いた。 壁にかかった会社のロゴが入った時計を見ると8時43分を過ぎたところだ。 「もうちょっと...もう少しで区切りになるから....」 幸子は顕微鏡を覘いたまま答える。 椅子に浅く腰掛け、天井見てぐるぐる椅子を回してたヒロシは突然すくっと立ち上がり、 顕微鏡を覘く幸子の後ろに立った。 まえかがみになり顕微鏡の覘く幸子の、 アップに結わいた髪の毛と白衣の襟の間にのぞくか細いうなじにそうっと指を這わせた。 「....」 幸子は何も言わずに顕微鏡を覘いている。 這わせた指のあとを、触るか触らないかの距離で唇を這わす... 「ヒロシ...もう少しで終わるから....」 這わせた唇は耳元に達した。 ふっと小さく息を吐きかける。 そのほんのわずかの吐息で、ぴくん、と幸子の体が反応した。 顕微鏡を覘いたまま、足を閉じ、必死に堪えている。 ヒロシの唇が耳元で囁いた。 「し・た・い...」 「ダメよ、こんなところで....」 その言葉を遮るように、ヒロシは唇を耳元からうなじにかけて這わせた。 「あ〜ん〜」 堪えられなくなった幸子がのけぞる。 そして... のけぞった幸子の頭は、まともにヒロシの顔面を直撃、 その瞬間、ヒロシの顔からは鼻血が飛び散り、幸子の白衣を朱に染めた。 遠のく意識の中、 「したいが失態...冴えているな、俺....」 己の血で真っ赤に染まる白衣を見つめながら、 まるでスローモーションのようにゆっくりと倒れてゆくヒロシは、 最後までお茶目だった。 (終わり) 注、この物語はフィクションであって、過去にあった実話を元にしたものでもありません。
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