蓂莢亭の物書きペンギン

泣いても一生、笑っても一生、ならば今生泣くまいぞ。

ウサギとタマゴと屍姫

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短い話に絵をつけてみました。

トゥーイ(月に暮らすウサギ)のお話です。
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眠るウサギは夢をみる。

屍姫の笑う夢。

夢見るウサギは旅をする。

月が見下ろす青い星。

満月に照らされて

旅するウサギは今夜も静かに眠りにつく……。

                             おわり

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「私にはタマゴを運ぶ他に、いくつか仕事があるのさ。一つ、タマゴを育てる者に真実を

明かすことなく監視すること。二つ、心と体が一つになってしまった時、その者を喰らう

こと」

 トゥーイは肩をビクリと震わせ、白蛇を見ました。

「僕を食べるの?」

「そういうことだ」

 トゥーイは、慌てて蛇から離れました。

 しかし、白蛇はいつまでたってもトゥーイを喰らおうとはしませんでした。

 ただ、その場で困ったような顔をしただけです。

「喰らうところなんだが……今回は事態が変わっちまった。屍姫はあんたの中へ完全には

戻らず消えちまった。いや……消えたという言い方は違うね。あんたがタマゴを与えちま

ったから、新しい命と一緒に人間どもの星へ堕ちちまったんだよ」

「それって」



「あんたに選択を与えてやるよ」

 白蛇は、トゥーイの声を遮りました。

 そして、指を一本立てました。

「ここであんたは私に喰われる。残りの心……屍姫は私が人間どもの星へ行き責任もって

喰らってやる」

 白蛇は二本目の指を立てました。

「あんたが人間どもの星へ行き、残りの心……屍姫が宿った人間を探し出し私から護り続

ける」

 白蛇は真摯な声音をぶつけてきました。

「さぁ、どちらを選ぶんだい?」

「僕は……」


 トゥーイは、即答しました。

 白蛇は嬉しそうな顔で、「いい度胸だ」と言いました。

 トゥーイは、「絶対に護ってみせるよ」と力強く答えました。

 それからすぐ、トゥーイと白蛇は闇の中へと消えました。

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 白蛇の言っていること。

 言葉は解りましたが、意味が解りません。

 キョトリとしているトゥーイを置き去りに、白蛇は淡々と話を続けます。

「誰も来ない月の裏で、タマゴを一人で育て続けることはとても難しいことだ。そこに心

があれば悲しみや淋しさによって仕事どころじゃなくなる。だから、神様はあんたから心

を抜いた。しかし、心と体は常に近くにいなければならない対を成すものだ。もし、心が

側になければ、体だけのあんたはとっくの昔に、この世界から消えているよ。だから、神

様はあんたの心を屍姫の姿に造り変えて体の側に置くことにしたのさ」

「そんなの嘘だ」

「本当だよ。あんたは気づいていたはずだよ。屍姫の近くにいると新しい心が生まれたよ

うな感覚を。けどね、あれは、生まれたわけじゃない。元々はあんたの心だ。あんたの中

に少しずつ戻っていっただけなんだ。もし、あのまま心が戻り続けていたら、心と体は一

つになり屍姫は消えてあんただけが残る。タマゴを育てる者に心は不必要だ。神様はあん

たを殺して、新しい者をここに連れて来るのさ。ただ、それだけのことさ」

 白蛇は最後に「解ったかい?」と付け加え、説明を終えました。

 トゥーイは頭を振りました。

「そんなの解らないよ! 屍姫が消えるなら、きちんと教えてくれたらよかったじゃない

か!」

「信じたかい?」

「……」

「初めから『こうでした』と説明してやったら、あんたは信じたかい? 屍姫に近付かな

いようにしたかい?」

「それは……」

 トゥーイは答えることが出来ませんでした。

 白蛇が初めから説明してくれたとしても、信じることなどしなかったでしょう。

 項垂れるトゥーイに、白蛇はランランと輝く瞳を向けたのです。

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 しばらくすると、石造りの牢屋が闇の中に浮かび上がりました。

 トゥーイは目を凝らしました。

 しかし、いくら見ても中は空っぽでした。

 ここには人喰い鬼がいなければならないというのに……。

 トゥーイは、白蛇に答えを求めました。

 白蛇は静かに口を開きました。

「鬼は初めから存在しないだよ」

「いない? どうして?」

「月の裏に誰も寄せ付けないためさ」

「どうして?」

「ここには大切なタマゴがあるからね。タマゴを護るための極上の嘘さ」

「嘘……」

 急に全身の力が抜け、トゥーイはへたりこみました。

「屍姫はいたよ。それでも人喰い鬼がいないなんて嘘をいうの?」

 トゥーイは縋るような表情で白蛇を見上げました。

 白蛇はイタズラっぽい笑みを浮かべました。

「屍姫はいたさ、あんたは見ただろ触れただろ」

 トゥーイは静かに頷きました。

「だけどね、あれは人喰い鬼に捧げられた可哀想な人の子じゃないよ」

「なら、あの子は誰?」

「そりゃあ、決まっているだろ」

 白蛇はゆっくりと腕を挙げ、トゥーイを指差しました。

「屍姫は、あんただよ。トゥーイ、あんたが屍姫なんだよ」

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 呆然とするトゥーイの前に、白蛇が現れました。

「私はちゃんと忠告したはずだよ」

 白蛇の声は呆れていました。

 そんな白蛇をトゥーイは睨みつけました。

「消えるなんて言わなかったじゃないか! 罰を受けるのは僕たちだっていったじゃない

か!」

 白蛇はトゥーイの怒りのこもった声に臆することなく真っ直ぐ受け止めると、クルリと

背中を向けました。

「ついておいで」

 それだけを言い、白蛇は闇の中へ消えてしまいました。

 トゥーイは立ち上がり、白蛇を追いかけました。

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